仕事を効率化するには?忙しい人こそ実践したい「仕事が早い人」の習慣

時間がないのに業務量だけが増え、毎日バタバタしながら「もっと仕事が早くなりたい…」と悩んではいませんか?「仕事の効率化の第一歩は、まず求められているアウトプットが何なのかを明確にすることです」というのは、外資系コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、エグゼクティブコーチとして活躍中の大嶋祥誉さん。大嶋さんの経験から、「仕事が早くて成果を出せる人」は、どのような考え方や習慣を持っているのかを伺いました。

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「仕事が早い人」と「遅い人」の違いとは

現代のビジネスパーソンは、非常に多くのタスクを抱えています。「毎日仕事に追われているのに、なかなか成果が出ない」「顧客や上司から評価されない」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

実は一生懸命頑張っているのに効率が上がらないという場合、求められている最終的なアウトプット(成果物)のイメージが明確でないことが多いのです。例えば、上司から資料作成を頼まれて、パワポで何ページにも渡る立派な資料を作ったものの、本当はペラ1枚で良かったり、参考URLを列挙するだけで済んでいたり。そんな経験はありませんか?

指示された仕事に闇雲に取り組んでしまった場合、アウトプットのイメージが具体化されていません。それでは、全体の流れが見えず段取りも組めないため、タスクの優先順位や緩急のつけ方がわからず、重要でないことにも注力してしまうことがあります。1つの仕事を片付けるのに必要以上に時間がかかれば、他の仕事にも影響し、全体のパフォーマンスが落ちてしまうでしょう。

仕事が早くて抜群の成果を出せる人は「この仕事で解決するべき問題とは何なのか」という目的思考を持ち、アウトプットを理解して、それを生むために重要な仕事を明確にします。そして「やること」「やらないこと」を仕分けし、やらないことをスパッと切り捨てることができます。あらゆる無駄を省き、最小限の力で成果を手にすることができるのです。

ただ、これは「作業的な仕事」を疎かにしていいという意味ではありません。仕事とは細かい作業の積み重ねであり、どんなに素晴らしい戦略も、実行段階では必ず地道な作業が伴うからです。とはいえ、仕事全体の流れを俯瞰したときに、その作業の優先順位や重要度はどのぐらいかという視点は、常に持っておくべきでしょう。

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若いうちから仕事の効率化を意識することのメリット

目的とアウトプットを明確にして、仕事を効率化することには、多くのメリットがあります。
まず、重要なことにフォーカスできるので、スピードと共に仕事の質も自然とアップしていきます。また、段取りがうまくなれば、仕事が楽になり、早く終わるので、自分のために使う時間を生み出すことができます。語学や資格、勉強会やセミナーへの参加などの自己投資に充てたり、趣味を充実させたりすることもできるでしょう。

また、若いうちから仕事のスピードを磨き、多くの成果を出してきた人は、生産性を高める仕事の型が習慣として出来上がっています。ですから、将来マネジメントポジションに就いたときも、同じ思考で部下に明確な方向性を示し、的確に仕事を与えるようになります。結果として、部下にも無駄なことをさせず、少人数でも大きな成果を上げるチームを作ることができるでしょう。

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仕事が早い人が身につけている効率化の5つの習慣

私がこれまで目にしてきた、「仕事が早くて成果を出せる人」の考え方や習慣について以下にご紹介します。ぜひこれらをヒントに、できることから始めてみてください。

上司が期待していることを把握する

仕事の早い人は、最初に上司から仕事を頼まれたときに、そのニーズを十分にヒアリングします。「上司がどんな最終アウトプットを期待しているのか」を把握することが、成果を出すための第一歩だからです。

例えば「今回の仕事はスピード重視か、内容重視か」「どんなレベルの報告書や提案書を」「いつまでに必要としているか」さらに「どのような背景や目的でこの仕事を頼んでいるのか」まで、確認してから仕事に取りかかります。どのような情報を集め、準備と作成にどのくらいかかるかを正しく見積もることで、必要以上の作業をせずに、期日までに求められたレベルのアウトプットを出し、評価に繋げることができるでしょう。

実は、指令を出す上司の方も、明確なアウトプットのイメージを意識していないことがままあります。その意味では、上司にとっても頭の整理になるかもしれません。わからないことは遠慮なく質問して、認識をすり合わせておきましょう。

「自分が提供するべき価値」について考える

仕事が早く最少のエネルギーでアウトプットを生み出せる人は、仕事の目的、つまり「自分が仕事を通じて提供すべき価値」を考えています。ゴールをきちんと把握していれば、そこに至る段取りも見えるので、目的に対してダイレクトに影響する「ここぞ」という場面に力を注ぐことができるのです。

ある採用担当者は、学生に自社を知ってもらうためにSNSで発信を始め、毎日熱心に取り組むようになりました。しかし「条件にあった人材を獲得する」という価値に対して、SNSのインパクトはそこまで大きくはありませんでした。ですから、採用目標達成のためにもっと注力すべきことは何か?を自問自答し、全体の仕事を設計していくことが大切です。この発想法は、あらゆる業界職種で使えるベーシックなスキルです。

企業で働く人はみな問題解決のプロです。顧客の「こうなって欲しい」という悩みを解決することが、すなわち価値の提供です。新人社員やバックオフィスの人なら、自分の上司の悩みを解決することが、つくり出すべき価値です。毎日仕事に追われてしまい、優先順位がわからなくなったときは「所属部署の目的ってなんだろう」「提供すべき価値は何だろう?」と考えると、答えが見えてくるでしょう。

作業時間を把握して段取りを組み立てる

仕事が早い人は、最初に仕事全体の段取りを組み立てます。タスクを洗い出し、アウトプットを出すまでの流れを把握してスケジュールを引くことで、余計な作業で時間をロスしたり、ヌケモレができたりするのを防ぐことができます。

段取りを組み立てるコツは、仕事を「単純作業」(入力作業や資料のコピー、封入など)と、「頭を使う仕事」(問題解決や企画、営業など)に分けて考えることです。

頭を使う系の仕事は、質さえ気にしなければ、ある意味「えいや」でできてしまう面があります。企画書もアイデアさえ湧けば、すぐに書けることもあるでしょう。しかし、単純作業はそうはいきません。宛名書きなら一通当たり○分×〇通分と必要な時間はだいたい決まっており、締め切りに遅れないためには正確に見積もる必要があります。したがって段取りを組むときは、絶対的に時間のかかる単純作業の時間を先に確保し、その後に他の仕事の時間配分を決めていくと良いでしょう。

単純作業の多くは質を問われないので、もっぱらスピードにフォーカスすることができます。時間を見積もる際は、実際にその作業にどのくらいの時間がかかるかを測ってみるといいでしょう。例えばエクセルの入力や郵便物の封入などに「自分なら1時間かかる」と分かったら、次からそれを意識して、少しずつ記録を縮める「自分競争」をしてみましょう。ゲーム感覚で楽しみながら効率化も実現できます。

書類作成はひな型(フォーマット)を最大活用する

アイデア出しや提案書など、頭を使うクリエイティブな仕事は、シンプルな効率化が難しい半面、工夫次第で質を保ったままスピードアップを図ることも可能です。仕事の早い人は、書類作成において既存のひな形(フォーマット)を最大限に活用しています。

仕事では、顧客に提出する提案書や企画書、報告書などさまざまな書類を使いますが、これらを一から作成するのは時間の無駄です。提案先によって書式を変えるなどは、その方の「こだわり」でしかなく、受注や売上げへのインパクトはありません

提案書も同じフォーマットを使い回し、各クライアントに合わせて「御社の課題」「取り巻く環境」といった項目のみを書き換えればOK。過去の提案資料や見積案件はストックしておき、先輩の作った類似案件を流用してもいいでしょう。

クリエイティブな仕事では、書類に凝ることよりも、アイデア出しのための下調べやヒアリングの質問項目の洗い出しなど、生み出す価値にダイレクトに影響を与える仕事に注力できるよう、段取りを組むことが大切です。ネット検索やChatGPTなどの生成AIツールも便利ですが、最初から頼るのではなく、自分なりの仮説を元に意図的に使うことで、より効果的に仕事をサポートしてくれると思います。

迷ったらすぐに上司に確認・相談する

仕事の早い人は、決して困りごとを抱え込むことはしません。仕事を進める中で迷ったときは、1人で悩まず早めに上司に確認・相談します。ギリギリまで悩むことで仕事がストップしたり、方向性を間違えたまま進めてしまい、後から修正したりするのは、大きな時間のロスになるからです。

ただ、上司の上司に頼まれた仕事など、迷ってもすぐに確認しにくいケースもあります。そんな状況を切り抜けるためには、普段から何でも相談できる先輩を持っておくことをおすすめします。その代わり、自分も助けを求められたときは快く協力することが重要です。

また仕事が早い人には、ロールモデルになる人がいることも多いもの。もし身近にメンターにしたい上司や先輩がいないなら、所属外の部署や取引先、SNSや勉強会などでも見つけることができます。「この人いいな」と憧れる人の仕事に対する姿勢を真似することで、自分の習慣にしていきましょう。

仕事の効率化は経験を積めばスキルになる

「自分は仕事が遅い」「効率が悪すぎる」などと感じたとしても、それは決して能力がないからではありません。仕事の段取りを組んだり、優先順位を付けたりするスキルがまだ身についていないだけです。常に仕事の目的を考えて行動する習慣がつけば、筋力トレーニングのように頭と心が鍛えられて、自然に動けるようになるはずです。若いうちは仕事の幅を広げていく時期なので、さまざまな分野に挑戦することも大切。仕事の進め方で迷うことがあれば、1人で悩まず、信頼できる上司や先輩に相談しましょう。

センジュヒューマンデザインワークス有限会社 代表取締役 大嶋 祥誉(おおしま さちよ)氏_ プロフィール画像 センジュヒューマンデザインワークス有限会社 代表取締役 大嶋 祥誉(おおしま さちよ)氏

人材戦略コンサルタント、エグゼクティブコーチ。米国デューク大学MBA取得。米国シカゴ大学大学院人文科学学科修士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ワトソンワイアットなどの外資系コンサルティング会社や日系シンクタンクを経て独立。現在までに2000チーム以上のチームビルディング、経営者や役員へのエグゼクティブコーチングを行う。『マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書』(SBクリエイティブ)、『マッキンゼーで学んだ最高に効率のいい働き方』(青春出版社)など、著書多数。

取材・文・編集:鈴木恵美子
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