仕事が多すぎてこなせない…その原因と対処法を紹介

仕事が多すぎて業務時間内にこなせない…と悩む若手ビジネスパーソンは少なくないようです。そもそもなぜ、このような状況に陥ってしまうのでしょうか。そして、どうしてもこなせないと思ったとき、どう対処するのが正解なのでしょう?人事・採用コンサルタントの曽和利光さんに伺いました。

仕事が多すぎてこなせないと悩むビジネスパーソン
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仕事が多すぎてこなせない原因は、多くの場合「上司」にある

「仕事が多すぎてこなせない」という悩みの大半は、実は個人の力量の問題ではなく、仕事を振る側の上司に問題があります。

上司が部下に仕事をアサインする際には、個人の能力や性格、経験値などを見立てる「アセスメント能力」が必要。そのうえで、個人に合った仕事を振り分けるのが定石です。
しかし、見立てが甘いがゆえに、能力やキャパシティを大きく上回る業務を依頼したり、性格や価値観にまるで合わない業務を割り当てたりと、無茶な仕事の振り方をしている可能性があります。

個人に対する見立てだけでなく、「業務そのものの見立てが甘い」上司もいます。例えば数日はかかるハードな仕事なのに、「こんなの1、2時間でできるだろう」などと軽く見積もり、安易に部下に振った結果、引き受けた部下がこなし切れず疲弊してしまう例もあるようです。

対処法:自己開示して抱えている業務量などを上司に正しく伝える

上司のアセスメント能力が低い場合、自分から積極的に自己開示して、自身の現状を正しく伝えるしか方法はありません。

部下に1つの仕事を任せたとき、どれぐらいの時間がかかり、どれぐらいのクオリティで仕上がったのか。この情報の積み重ねで、上司は個人の力量を判断しています。その情報を正しく伝えている人が、実は意外に少ないのです。

「これを明日までにやっておいて」と言われ、めちゃくちゃ大変だったのに「できました」と涼しい顔でサラっと出していませんか?カッコイイと思ってやっているのかもしれませんが、これでは「あいつはこれぐらいのレベルの業務は軽くこなせるんだな」と判断され、さらにハードな仕事が振られても仕方ありません。

思いのほか大変な業務で時間がかかってしまったのであれば、アウトプットを出すときに「半日でできるとおっしゃっていましたが、○○の部分が意外に大変で、まる1日かかってしまいました」などとちゃんと伝えるべきです。そうすれば、上司の「見立てのズレ」が徐々に減り、無茶な仕事が振ってきにくくなります。場合によっては、「このようにすれば、もっとスムーズにできるよ」など仕事のアドバイスをもらえるようにもなるでしょう。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

個人の「タスクマネジメント力不足」の可能性もある

仕事が多すぎてこなせないビジネスパーソンのイメージカット
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仕事の「量」が多すぎてこなせない…というケースは、実はあまり多くありません。例えば、「資料をホッチキスで綴じる」という仕事を1万部依頼された場合、「単純作業でつらい、しんどい」とは感じても、「こなせない」という感覚はないと思います。「量」の多さは、ある種体力勝負なので、特に体力のある若手ビジネスパーソンにとっては「面白みはないけれど、こなせる」仕事であるはずです。

つまり「多すぎてこなせない」場合の多くは、量そのものではなく、「いろいろなタスクがあり、それらを同時並行で進めなければならない」ときに感じるものです。

やるべきタスクをどう分解し、どういう手順でやればスムーズにこなせるのかを考えずにぶっつけ本番で仕事に臨んだ結果、手順がぐちゃぐちゃになり、いっぱいいっぱいになってしまう。そういう人が「こなせない」と感じるケースが多いようです。

対処法:「時間がかかる仕事」「これをやらないと先に進めない仕事」を優先する

タスクの中で、「時間がかかるもの」と、「これをやっておかないと先に進めないもの」を洗い出し、優先的に行うことが大切です。

「カレーライス作り」で例えてみましょう。カレーライス作りはいくつかのタスクに分解できますが、その中でも「ご飯を炊く」は時間がかかるため、最初のほうでお米を研いで炊飯器にセットしておいたほうがいい。しかし、カレーを作ることに気を取られてしまい、でき上がった後に「あ!ご飯が炊けていない!」と慌ててしまうような人が一定数います。そこからご飯を炊き始めれば、当然ながら予定時間を大幅にオーバーしてしまいます。

これと同様に、仕事においてもタスクを分解した上で、時間がかかりそうなもの、これをしておかないと後に響きそうなものなど、いわゆるボトルネックになりそうな工程を洗い出し、クリティカルパス(プロジェクトの工程を最短で完了させるタスク経路を見つけること)を考えることが大切です。

ただ、「タスクマネジメント」はビジネススキルであり、ある程度の業務経験を積んでこそ養われる部分があります。経験の浅い若手は、時間がかかる業務やボトルネックになり得る業務を見立てる力がまだ弱いと思われます。

そこでお勧めしたいのは、まずは自分なりにタスクを分解し、クリティカルパスを見立てたうえで、その見立てを上司にチェックしてもらうこと。上司は自身の経験を基に、「この業務は最初にやっておいたほうがいい」「これは時間がかかるから早めに着手したほうがいい」などとアドバイスをくれるでしょう。
この経験を積み重ねていけば、徐々に見立てる力が付き、タスクマネジメント力も上がります。タスクに追われて焦ったり、こなせず疲弊してしまったりするケースも徐々に減ると思われます。

【関連記事】仕事がうまくいかない人にありがちな特徴と、原因別の対処法を紹介
「手順書」でタスク管理するのも一つの方法です。上記の記事で紹介しています。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

個人の性格や能力に起因する場合もある

前述した2つが、「仕事が多すぎてこなせない」状態に陥ってしまう大きな理由ではありますが、個人の性格や、仕事に対する姿勢や能力などに起因するケースもあります。もしあなたが、次のタイプに当てはまるようでしたら、自身の仕事ぶりを少し見直すことで現状が改善する可能性があります。

何事も完ぺきにやろうとする

完ぺきにやろうとするのは悪いことではありません。そして、経理など完ぺきを目指さなければならない仕事もあります。
ただ、業務内容によっては、3日かけて100%を目指してほしいものもあれば、今日中に50%程度のレベルで提出してほしいものもあります。

例えば、上司から「アイディアベースでいいから企画をざっくり出してほしい」と振られた仕事は、おそらく「50%レベルでいいからナルハヤで数を出してほしい」業務と予想できます。にもかかわらず何日も時間をかけて取り組んでしまい、結果的にほかの業務に支障が出てしまった…というのは、個人の性格と判断力の問題であり、上司のアセスメント能力の問題だけではありません。

業務を依頼されたときに、粗くても早く提出したほうがいいものなのか、それとも時間がかかっても精度を追求したほうがよさそうなのか、自分なりに考え、判断する習慣をつけましょう。自分では判断がつかない場合は、依頼された段階で上司に確認することをお勧めします。

受容性が高く、何でも引き受けてしまう

どんな仕事でも文句を言わず引き受けてくれる人は、上司や先輩からすれば「便利で使い勝手のいい」人。「あいつなら気持ちよく引き受けてくれるから…」と、仕事が1人の人にどんどん集中してしまうケースがあるようです。

しかし、その状態が続くと、個人の能力やキャパシティに対する上司の認識がズレっぱなしになり、早晩パンクしてしまいます。あなたがこのタイプに当てはまるのであれば、前述のように上司に自己開示を行って自身のキャパを伝えるとともに、パンクしそうなときには早めに「困っている」「助けてほしい」とアラートを上げるべきでしょう。

能力が高いがゆえに仕事が振られやすい

会話するビジネスパーソンのイメージカット
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上司に「能力が高い」と認められている人も、仕事が集中しやすい傾向にあります。

もちろん「能力が高いからどんな仕事もレベル高くこなしてくれるだろう」という期待もありますが、上司が部下の伸びしろを理解していて、「少し難易度は高いけれど、この人ならきっとやり切り、さらに上を目指せるようになってくれるだろう」と評価しているケースが大半だと思われます。実際、人は少し背伸びすれば達成できるぐらいの「ストレッチ目標」を追うことで、より早く成長すると言われています。能力をさらに高めてほしいが故に、いろいろな仕事を任せてくれているのかもしれません。
上司が普段から期待を寄せていてくれているのであれば、まずは上司の判断を信じ、もう少し踏ん張ってみましょう。

とはいえ「仕事が集中しすぎてこなし切れず、つらい」という場合は、断ることも大切です。ただ、「これ以上はできません!」と取りつく島もなく断るのではなく、今後の人間関係などを考え、「うまく断る」ことが重要です

お勧めしたいのは「条件を提示する」こと。例えば、「これぐらい時間をもらえればお引き受けします」「この部分だけ誰かにサポートしてもらえればできそうです」など、期待されている成果を挙げるための条件を示すといいでしょう。暗に「提示した条件が叶わないのであれば、引き受けるのは難しい」という気持ちを暗に伝えられるので、角を立てずに断ることも可能です。

すべてのビジネスパーソンが鍛えるべきは「アラートを上げる力」

仕事が多くてこなせないことに悩み、自分を責める人がいますが、そんな必要は全くありません。前述のように、「仕事が多すぎてこなせない」のは多くの場合、上司の責任です。部下一人ひとりの状況を把握して、適切な仕事と量をアサインするのは、マネジメントの基本中の基本。部下がこのような悩みを抱えていること自体、問題なのです。

ただ、個人側も自己開示をして上司に情報共有することは必要。上司のアセスメント能力を高め、マネジメント力を上げるためにも、積極的に自己開示を行いましょう。それが「こなせない」状態から脱するための最大の方策です。

そして、全ての人にぜひ鍛えてほしいのが、「アラートを上げる力」。困りごとに直面したときに、現状を共有し「助けてほしい」と伝える力です。仕事を抱えすぎて困っているときも、早めにアラートを上げれば、疲弊し切ってしまう前に周りが素早くリカバーに動くことができます。

若手ビジネスパーソンの中には「評価を下げたくない」と思うあまり、問題ごとを一人で抱え込んでしまう人が少なくありませんが、上司からすれば最も迷惑な行為です。納期ぎりぎりになって「できません」と値を上げられては、評価を落とすしかありません。無理なものは早めに報告して手放してもらったほうが組織の生産性向上にもつながるので、評価にも響きにくいはずです。

前述のような方法で「多すぎてこなせない」状況をできるだけ作らないこと、そしていざというときは即座にアラートを上げること。この2つをぜひ心掛けてほしいですね。これらは立派なビジネススキルであり、ビジネスパーソンとして成長するためにも必要なものだと理解しましょう。

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人材研究所・曽和利光さん曽和利光さん

株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)、『人材の適切な見極めと獲得を成功させる採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)など著書多数。最新刊『定着と離職のマネジメント』(ソシム)も話題に。

EDIT&WRITING:伊藤理子

 

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