英単語やフレーズを頑張って覚えても、英会話がなかなか上手くならない──。
そんなお悩みを解消するために、新刊『英語を話したいなら、まずは日本語の話し方を変えなさい!』を上梓したイングリッシュ・ドクター(R)(英語学習の“お医者さん”)西澤ロイさんに、著書で紹介している数々のメソッドの中から、中学レベルの英語で表現する方法や発想法をご紹介いただきました。
西澤ロイ(にしざわ・ろい)イングリッシュ・ドクター
英語に対する誤った思い込みや英語嫌いを治療し、心理面のケアや、学習体質の改善指導を行なっている。英語が上達しない原因である「英語病」を治療する専門家。最新刊『英語を話したいなら、まずは日本語の話し方を変えなさい!(⇒)』、ベストセラーとなっている『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)や『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)などの著書がある。さらに、ラジオで3本のレギュラーがオンエア中。特に「木8」(木曜20時)には英語バラエティラジオ番組「スキ度UPイングリッシュ⇒」が好評を博している。
★「イングリッシュ・ドクター」HP(⇒)
目次
英語が話せない原因は、ボキャブラリー不足では決してない
あなたは以下のことを英語で表現できますか?
「彼女をなぐさめた」
「彼の話は支離滅裂だった」
ここで、「頑固」「なぐさめる」「支離滅裂」に当たる英単語を知らないから英語がしゃべれない……と思ってしまう人が少なくありません。そういう人たちは、英語が話せない原因をボキャブラリーが少ないからだと誤解しています。
上記の発言が、英語ではできなくなってしまう本当の原因は、2つの「英語病」を併発してしまっていることです。
1つ目の病気は「直訳スピーキング病」です。「直訳スピーキング病」は、英文を考える際に、常に日本語からの直訳になってしまう英語病です。別に直訳がダメなわけではないのですが、それしかできなかったら、大量のボキャブラリーがないと話せなくなってしまいます。ですから、直訳に代わる発想法が必要になるのです。
そしてもう1つの英語病は「通訳泣かせ発言癖」です。要するに、言おうとしている日本語が難しいのです。
日本語が難しいかを翻訳サイトやツールでチェックしてみよう
試しに、上の日本語を、翻訳サイトやツールを使って英語にしてみましょう。そうすると、以下のような結果になります。
「彼女をなぐさめた」⇒ Comforted her.
「彼の話は支離滅裂だった」⇒ That story was incoherent.
「頑固な」はstubborn、「なぐさめる」はcomfort、「支離滅裂な」はincoherent、というように難しい単語が登場しました。既に知っている単語ならよいのですが、ここで多くの人がやってしまうのは、変換された英文をそのまま使おうとすることや、これらの単語を暗記しようとすることです。
まずは、このようなやり方に対して、疑問を持ってください。なぜならこれを続けると、よく分からない単語や難しい言葉をたくさん暗記しなければならない「イバラの道」を進むことになってしまうからです。
先ほど、2つの英語病を併発しているとお伝えしました。こうした英語病を治すところから始めることを、イングリッシュ・ドクターとしては強くオススメします。
頭の中の日本語を簡単にする「ベーックワード法」
先ほどインターネットサービスでの翻訳例をお見せしましたが、元となる日本語が難しいと、訳した後の英語も当然ながら難しくなりがちです。逆に言うと、日本語が簡単になれば、英語も簡単になるということ。
簡単な内容であれば、既に知っている中学レベルの英単語で表現しやすくなります。そもそも、自分が知らない単語でしゃべることなどできませんから、自分の英語力に合った、簡単な発言をしようとすべきなのです。
そこでオススメの手法が、「ベーシックワード法」です。これは、小学生にも分かるような平易な言い方をするテクニックです。小学生に以下のように質問されたならば、どうやって答えるかを考えてみてください。
ここで例えば、
という説明が思いついたとします。
そうすると「彼は頑固だ」→「彼は人の話を聞かない」のように言い換えることができます。これを機械翻訳にかけてみると、以下のような英語が出てきます。
listenもpeopleも、中学で習うレベルの簡単な単語ですね。
発言内容に落とし込む「子どもチャット法」
「彼女をなぐさめた」は、どのように言い換えればよいでしょうか。
ベーシックワード法と似たテクニックなのですが、「子どもチャット法」がオススメです。これは「発言内容」に伝えたいことを落とし込む手法です。「なぐさめる」とは、一体どのような声をかけるのでしょうか?
例えば「大丈夫だよ」と言ってあげるのかもしれません。そうすると、「彼女に大丈夫だよと言ってあげた」と言い換えられます。
上記の英語は、機械翻訳の結果ですから、もっと他の表現もいろいろとあります(以下の例は、拙著『英語を話したいなら、まずは日本語の話し方を変えなさい!』より引用)
⇒ She was crying. I told her, “It’s gonna be okay.”「世界が終わるわけじゃない。大丈夫」と彼女に言った。
⇒ I said to her, “It’s not the end of the world. You’re gonna be just fine.”
このテクニックを応用すると、例えば「謝る」と言いたい時に、apologizeという単語を知らなかった・思い出せなかったとしても、もっと簡単に表現できるようになります。例えば「ごめんなさいと言う」と言い換えることで「say I’m sorry」という中学英語にできます。
なお、「ごめんなさいと言う」という言葉は、日本語の感覚からすると、子どもがしゃべるような、ちょっと幼稚な表現に聞こえるかもしれません。しかし、英語ではこのくらい平易な表現も普通に使われますので、ぜひ遠慮せずに簡単に表現してみてください。
発想の転換で、英語を簡単にする「イージークエスチョン法」
3つ目の問題は「彼の話は支離滅裂だった」です。「支離滅裂」を、先ほどのベーシックワード法で平易な言葉に言い換えると、例えば「話の内容がバラバラ」とも表現できるかもしれません。
しかし、今度は「バラバラ」を英語でなんと言ってよいのかで悩んでしまいますよね。ご参考までに、翻訳サイトやツールでは以下のような難しい英語が出てきてしまいました。
ここで「直訳スピーキング病」から抜け出すための発想法として、1つオススメなのが「イージークエスチョン法」です。このテクニックは、相手に質問してしまうというもの。
彼の話がどうだったかという結論めいたことを自分で言うのではなく、質問することによって、相手に言わせてしまうというテクニックです。
もっと簡単にすれば
と言うこともできるでしょう。
そうしたら、例えばですが
(いいえ。たぶん彼自身も理解していなかったでしょう)
といった返事が返ってくるかもしれません。
もちろん、直訳的に「That story was incoherent.」のような発言ができたらそれは素晴らしいことです。しかし、会話はキャッチボールと言われるように、相手とのやり取りによってこそ盛り上がります。「一から十までを自分で言おうとしない」のも、時にはテクニックとして大切なことだと言えるでしょう。
最後に:英語の問題ではないから、誰でも話せます
私がイングリッシュ・ドクターとして、多くの日本人にお伝えしたいのは、もう英語は話せるということ──。
機械翻訳の例を出したように、元となる日本語が難しいと、英語を話すために難しい単語が必要になってしまいます。しかし、自分の英語力で言えるような簡単なことを常に言おうとすれば、英語は話せるのです。
そのために必要なのは、頭の中にある日本語をほぐし、違った視点から物事を見ることができる「発想力」であり、英語の問題ではないのです。
もしこれが、英単語を覚えなきゃいけないとか、英文法が必要といった話ならば、多くの人が挫折してしまうかもしれません。ですが、これは日本語のお話であり、この文章が読める人ならば誰でも身につけられるテクニックに過ぎないのです。
拙著『英語を話したいなら、まずは日本語の話し方を変えなさい!(⇒)』(SBクリエイティブ)では、頭の中にある日本語を簡単にし、英語に直訳しなくなるためのテクニックをたくさんご紹介しています。
本記事で取り上げた「ベーシックワード法」「子どもチャット法」「イージークエスチョン法」の他にも10個以上のテクニックがあります。その中の1つでも2つでもご活用いただくことで、英語がずっと話しやすくなることを体験・実感していただけたら嬉しいです。
▶あなたの知らない自分を発見できる。無料自己分析ツール「グッドポイント診断」