SNSが普及し、上司や先輩、同僚といった会社の人と、LINEなどのコミュニケーションツールでつながるケースが増えています。プライベートだけでなく、ちょっとした業務連絡をLINEで行っている人も少なくないようです。
関係性が深い上司や先輩、仲のいい同僚…というような「仕事とプライベートの中間にあるような相手」とのやりとりであっても、一定のマナーは必要。「これはLINEでもOK」「これはメールや口頭で伝えるべき」という要件の差もあるようです。
そこで、SNSでのコミュニケーションに詳しいコラムニストの石原壮一郎さんに、メールとLINEの違い、仕事に関わる人とのやり取りで注意すべきことなどを教えていただきました。
石原壮一郎さん
コラムニスト。1963年三重県松阪市生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、大人のあり方や素晴らしさをさまざまな媒体で発信し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』『大人の女力検定』『日本人の人生相談』など、著書及び監修多数。5月下旬に最新刊『恥をかかない コミュマスター養成ドリル』(扶桑社)が発売。また、郷土の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」としても活動している。
目次
ビジネスシーンでの活用では黎明期。マナーには十分配慮を
一般的にはプライベートで使われることの多い「LINE」。ビジネス版の「LINE WORKS」もありますが、同じ会社の上司や先輩、同僚などとは通常の「LINE」でつながり、「会議に遅れる」とか「待ち合わせ場所を変更してほしい」などの業務上のやり取りが行われることも多いようです。
ほんの数年前は「仕事でLINEを使うなんて非常識」という空気がありましたが、これだけ広く普及すると「使わないほうが不自然」という印象に変わってきました。
新しいメディアや通信手段が生まれると、マナーに関する議論が起こりがちです。古くは、電話が普及したときは「仕事の要件を対面ではなく、電話で済ませるなんて失礼だ!」という声があったそうです。携帯電話が普及した後、名刺に携帯番号が書いてあっても「いきなり携帯にかけたら失礼」とわざわざ会社にかける人が大勢でした。
そして現在。LINEはすでに広く普及はしているものの、ビジネスシーンでの利用においてはまだ黎明期にあるので、一部で議論と混乱が生じています。現時点では、ビジネスがらみで使う際には一定のマナーを押さえておいた方が良さそうです。そしてビジネス上の機密情報のやり取りは止め、社員同士のライトなやり取りに限定しましょう。
なお、会社によっては社員同士の業務連絡目的でのLINE利用を禁じているところもあるようです。これらのコミュニケーションツールの利用については、会社の判断に従うようにしてください。
上司世代とは「LINEへの印象や扱いに隔たりがある」ことを理解しよう
世代間における感覚の差はまだ大きいようです。若手ビジネスパーソンの多くは、10代からLINEをフル活用してきたことでしょう。「通信手段と言えばLINE」という人も多いはずです。
しかし、そんな若手ビジネスパーソンの「上司世代」に当たる50代では、LINEに対して「半分遊びで使うようなもの」という感覚が抜けていない人もいるようです。
若手ビジネスパーソンは、「自分たちと上司世代の人たちとでは、LINEの扱いや印象、使い方が違う」ということを大前提として覚えておいたほうがいいでしょう。もちろん、すべての人がそうではありませんが、スタンプOKな上司もいればマイナス印象を持つ上司もいますので、プライベートと同じ感覚で使わないよう注意しましょう。
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「LINEでもアリ」とされる業務上のやり取りとは?
いつでもどこでも簡単にメッセージが送れるLINEは、相手に気軽に声を掛けやすい点がメリット。「重くないコミュニケーション」が得意なので、シーンに合わせてフル活用しましょう。例えば「久々に外でランチでもどうですか?」「今晩チームメンバーで軽く飲みでも」など、「メールで送るのはどうかと思うが、相手を呼び止めるのもちょっと…」という際にお勧めです。上司にちょっと相談したいことある場合も、LINEだと声をかけやすいはず。
受け取った相手も、気軽に「OK・NG」が言いやすいのも特徴で、コミュニケーションを取りながら適度な距離も保てる優秀なツールだと思います。
業務上の急な予定変更や突発事項の報告も、LINE向き。「電車が遅延していて待ち合わせに5~10分遅れます」「今日の商談場所が急きょ変更になりました」など相手に現状を迅速に知らせたい場合、相手が読んだかどうかわかるLINEはとても便利です。
上司や先輩、同僚とLINEをやり取りするときのマナー
業務上やり取りする人たち、特に上司や先輩などお世話になっている人たちとのLINEのやり取りで注意したほうがいい点を挙げてみました。もちろん、「目上の人には敬語を使う」など、基本的なビジネスマナーは大前提として押さえておきましょう。
メッセージを読んだら、返信はできるだけ早く
業務でLINEが送られてくる場合は、「すぐに伝えたい案件」であるケースが大半。スピードが求められているので、目を通したら返信はできるだけ早めに行いましょう。
これは若手ではなく30代以上の人に多いのですが、LINEをもらったとき「既読マークがつくんだから、読んだかどうかわかるはず」と何も反応しないのはマナー違反です。既読がついても「内容をしっかり読んでくれたかどうか」までは送り手にはわかりません。いったんメッセージを開いたものの、「後でゆっくり読もう」と思いそのまま忘れていた…というケースもあり得ます。
相手を不安にさせないためにも、メッセージの内容を忘れてしまわないためにも、メッセージを受け取ったらひと言返しましょう。スタンプOKの相手であれば、スタンプで反応を示すのもいいでしょう。
送る時間に注意する
LINEは会社メールとは違い、普段持ち歩いているスマホに通知が届くのですぐに気付いてもらいやすいのがいいところ。だからこそ、急ぎの用件でなければ夜中に送るのは避けるべき。相手のプライベートな時間を邪魔するのはマナー違反です。
実は私も「この要件を忘れないうちに送っておこう」と仕事相手に夜中の3時ぐらいにLINEを送ってしまったことがあるのですが、朝5時なのに「遅くなって申し訳ありません」と返信が来て、申し訳ない気持ちになりました。既読が付くツールだけに、相手に「すぐ返さなければ」というプレッシャーを与えてしまうので注意しましょう。
「真面目系スタンプ」を用意しておく
スタンプは、時間のないときに即自分の意思を伝えられる便利なアイテムですが、あまりにコミカルだったり、ジョークの過ぎる絵柄ですと、上司の世代やタイプによっては「仕事がらみのやりとりなのにふざけすぎ」という印象を持たれてしまう恐れもあります。今はビジネスシーンでも使えそうな真面目系スタンプも多数ありますので、チェックしてみるといいでしょう。
登録名やステータスメッセージに注意
LINEの登録名(プロフィール名)をニックネームにしている人も多いと思います。本人だとわかりにくい登録名や、ふざけすぎた登録名の場合は、会社の人とつながる前に本名に変えるか、もしくは本人だとわかる名前に変えたほうがいいでしょう。
友だちリストやプロフィール画面上で表示される「ステータスメッセージ」も忘れずチェックを。友達に見せることを前提に、ふざけた近況や謎のモットーなどを書いている例が散見されます。会社の人が見たら引きそうな内容であれば、早急に修正しておいたほうがいいかもしれません。
これはNG!社員同士のLINEでやってはいけないこと
社員同士で気軽なやりとりをしていたつもりが、ついうっかりその範疇を超えてしまった…というケースは少なくありません。LINEでやってはいけないことを、十分に理解しておきましょう。
機密事項のやりとりは厳禁
社員同士のLINEでは、ライトな業務連絡程度にとどめるべき。例えば、「A社から受注もらいました!」「B社のC部長、取締役に昇格するらしいですよ」など、個人名や個社名が入ったやりとりは絶対にNG。セキュリティーが整った会社のメールとは異なり、うっかり第三者に見られたり、アカウントが乗っ取られたりするケースもゼロではないからです。
もし自分以外の人物が、うっかり機密情報に当たる内容のLINEを送ってきたら、上司に報告して、どう対処するかを相談しましょう。
謝罪にLINEは不向き
LINEは「速さ」と「気軽さ」が魅力。軽いお礼や挨拶ならばいいのですが、例えばミスをしてしまったときの「心からの謝罪」など、反省している姿勢を相手に伝えたいときはLINEの気軽さが仇になる恐れがあります。
LINEを使いこなしている上司であっても、「謝罪をLINEだけで伝えるなんて…」とマイナス印象を持つ可能性は大。まずは口頭でしっかり想いを伝えましょう。
こんな時はどうする?困ったときの対応法
最後に、LINEのやりとりの中で対処に迷うケースについて、対応方法をご紹介しましょう。
「上司や先輩からLINEでつながろうといわれたが、本当はつながりたくない」
クライアントなど社外の人であれば「会社の規定で…」などと言い訳ができますが、社内だと断りにくいもの。「LINEを使っていない」という断り文句は今どき現実的ではないので、「あまり使っていないのですが、それでもいいですか?」などと予防線を張っておくといいかもしれません。
もしくは、「あまりLINEは見ていないので、メッセンジャーかショートメールのほうが早く反応できます」など、相手がメリットを感じそうな代替案を提示すれば、LINE以外を選んでくれる可能性が高まります。
「友人あてのふざけたLINEを上司に誤爆!どうフォローすべき?」
送り先の誤爆、スタンプの誤爆は「LINEあるある」です。スピード重視のLINEは脊髄反射で送ってしまいがちなので、誤爆には特に注意が必要。送信ボタンを押す前に一呼吸置き、送り先をチェックする習慣をつければ、誤爆リスクは大幅に減らせるはずです。それでも、恥ずかしい内容のラインを会社の人に送ってしまったら…相手もすぐに間違いだと気づくでしょうが迅速なフォローは必要です。
LINEでは「送信取り消し」もできますが、取り消す前に見られてしまったら手遅れ。そうなると謝るしかありませんが、そのときの謝り方に「その人の力量」が出ます。
「大変申し訳ありません。親しい友人と間違えてメッセージと画像を送ってしまいました。無理な相談かもしれませんが、見ないで削除いただけると嬉しいです」などとすぐに一報を入れたうえで、「LINEの恐ろしさを身をもって知りました…。このような不注意を二度と起こさないよう、一段と気を引き締めてまいります!」などと反省の弁を述べると誠意と人柄が伝わります。上司との関係性によっては、距離が縮まるかもしれません。