『仕事が「速いリーダー」と「遅いリーダー」の習慣』(明日香出版社)の著者である石川和男さん。石川さんは、建設会社総務部長・大学講師・専門学校講師・セミナー講師・税理士と、5つの仕事を掛け持ちするスーパーサラリーマンです。そんな石川さんに「仕事が速いリーダー・仕事が遅いリーダーの特徴」について伺うこのコーナー。第7回目の今回は「社会人の勉強計画法」についてです。
仕事もゲームも、レベルアップには「装備の強化」が必要だ!
あなたには今、どんな目標や目指す姿がありますか?
出世したい、年収を上げたい、転職したい、起業したい…
でも「経験が足りないからまだ無理」なんて思っているとしたら、それは間違いだ!と声を大にして言いたいです。
もちろん経験も実力のうちですが、上を目指して目標を達成するには、あなた自身の知識をアップデートし続ける必要があります。
ゲームで考えれば一目瞭然。いくら経験値がアップしても、レベル1の装備ではレベル50の敵は倒せません。その「装備」とは、例えば資格です。
私は、大学卒業後、地元北海道の建設会社に入社しました。入社2年目に転勤しましたが、周りは経験値の高い先輩ばかり。私は「実力では勝てない」と思い、先輩たちにはない専門知識を身に付けるべく猛勉強して、日商簿記や宅地建物取引士、税理士などの資格を取得し。上司からも法律的見地の意見を聞かれるなど仕事の幅も広がり、立場も上がりました。
このように、ビジネスパーソンがスキルアップをする手法の1つに資格試験への挑戦があります。
挫折しないために、計画はこう立てるべし!
資格を取ろう!と決めたが何から始めればいいか分からない…という声をよく聞きますが、勉強をするうえで重要になってくるのが計画です。
資格試験には試験日という期限があります。どれだけ長時間勉強しても、何度も問題を解いても、試験日までに出題範囲の半分も終わらなかったら、合格することが難しくなります。効率的に万遍なく試験範囲を勉強し合格する。そのためには、合格水準に達するための計画を立てなければなりません。
計画を立てるときは、これもやろう、あれもやろうと燃えています。計画表を作って色々盛り込もうとしてしまいます。
たとえば行政書士試験。独学で頑張ろう!この専門学校から出ているテキストを3回読もう。A社の問題集とB社の問題集を各2回ずつ解こう。そうだC社の問題集も参考書も気になるな。だったら残り3か月。3か月×30日で90日。全体を90日で割ると、テキストは1日50ページ、問題は1日10問。土日祭日1日も休まなければ3か月で終わるな。ようし頑張ろう…っと思っても無理です。
【ポイント1】計画作りの落とし穴!作成中が一番モチベーションが高い
20年ほど前のテレビ番組だったと思います。黒柳徹子さんがダイエットについて、このように語っていました。
「食べ物をコンビニに買いに行くときは空腹で行ってはいけませんよ。空腹だと何でもかんでも食べたくなって、つい買いこんで食べ過ぎてしまうのです」
計画を立てるときも、一緒です。
計画を立てているときは、一番気分が高揚しています。「よしやるぞ」と燃えています。何でもかんでも詰め込んで消化しきれず計画倒れになってしまい、罪悪感だけ残るのです。
計画を立てている瞬間のモチベーションを維持し続ければ大抵の目標は達成することができると言われています。
ただ、そのモチベーションは徐々に薄れていってしまいます。結果、やり残してしまう。詰め込み過ぎの消化不良。
あなたは毎日調子が良いわけでは、ありません。体調が悪かったり、風邪を引いたり、突然の飲み会だったり、思わぬ残業が入ったり、冠婚葬祭があったりで、計画どおりにはいかないものです。
せっかく計画を立てたのに、出来ない自分への罪悪感でいっぱいに。では、どうするか。
【ポイント2】計画には“余白”を作り、軌道修正する余裕を
①計画が完成したら、20%カットする
計画を立てたら、その立てた計画から20%を削るのです。空腹時に買い込むように、高揚感のある計画時には何でも食べられる。何でも出来ると詰め込み過ぎてしまいます。
一度計画を立てたら20%は、ばっさり削ってしまいましょう。私の経験から言うと、20%ぐらい削れば、ちょっと無理すると達成できるぐらいの計画になります。
②1週間に1日は、空白の日を設ける
そして1週間に1日は、空白の日を設けて下さい。別に無理して休まなくても良いのです。その日は万一のための敗者復活日です。
計画通りに終わらなかった箇所を補う日に充てて下さい。
自分はロスタイムと名付けていました。そのロスタイムがあったから軌道修正ができたのです。
もし達成できなかったらどうするか?
何度でも計画を修正すれば良いのです。
計画はあくまで予想なのです。その枠に縛られてストレスをためるものではありません。目標を達成するための“未来予想図”なのです。
逆に計画が簡単に達成できたら追加修正すれば良いのです。
枠組みと日付はボールペン、それ以外つまり「何をやるか」の項目は鉛筆で記入すれば修正もカンタンです。
【ポイント3】続ける工夫!ゲーム感覚で「見える化」
無理のない素晴らしい計画を立てても、ただ目標に向かって淡々と続けるのはとても難しいのが現実。少しずつ前に進んでいる、成長しているという実感こそがモチベーションにつながります。
冒頭でゲームの例を出しましたが、自分が今どのレベルなのか、あとどのくらいの経験値で次のレベルに上がれるのか。その数値が見えるからこそ、やる気につながっているのです。勉強も同じで、今の自分や目標までの道のりを「見える化」することが大事です。
◆石川流!勉強の「陣地取りゲーム」◆
勉強を陣地取りゲームに変えてみよう、というちょっとした“遊び”です。ゲームの方法はシンプルです。
計画を終わったところから順に色を塗っていくのです。
達成感が満たされ、さらに征服欲も満たされます。ナポレオンになった気分でやってみて下さい。
未開の土地を占領するように、勉強が終わった部分を自分の好きな蛍光ペンで塗ってみる。計画表の白い部分が、日に日に自分の好きな色に染まっていく。それを眺めるだけで占領した土地の地図を見るような征服感に包まれます。サッと塗れるのでマーカーがオススメです。
子供のころ小児科に行くと頑張ったご褒美にアメをもらうことがありました。緑やオレンジの平べったく丸いベッコウのアメ。小さい手で白い棒を持ちながら病院帰りに舐めました。白い棒だけになっても味が残っているからずっと舐めていて、仕舞いに棒がふやけていました。
緑やオレンジの蛍光ペンで塗られた計画表を見ると、小児科でもらったアメを思い出します。ちゃんと勉強を終わらせた人にしか、そのご褒美の色は塗ることができないのです。
デキる人は常に学び続けている!
「時間がかかる」「作るのが面倒」「まとまった休みが取れたら」など、計画を立てることに消極的な方がいます。しかし計画を立てることは勉強を行ううえで非常に重要です。難易度が高い試験になればなるほど重要になります。
試験日までに残された日数(期間)を目に見えるようにする。その日数のうち勉強に充てられる日、会社が忙しい日、祭日休日の日などを調べる。勉強に使える時間が分かれば、その時間で何回転問題集を解けるか、過去試験は何年分解き直せるかなどを予想する。計画を立てることで、限られた時間で行える勉強時間が明確になり、重要な箇所を試験日までに行えないなどのミスを防げるのです。
試験日までに行うと決めたことを全て書き出し、全体像を俯瞰してみることが、合格への一番の近道なのです。
今回は資格試験合格への計画をお伝えしましたが、次回は資格以外にも役立つ「目標設定の仕方」を伝授します。
【プロフィール】石川和男(いしかわ・かずお)
建設会社総務部長、大学、専門学校講師、セミナー講師、税理士と、5つの仕事を掛け持ちするスーパーサラリーマン。大学卒業後、建設会社に入社。管理職就任時には、部下に仕事を任せられない、優先順位がつけられない、スケジュール管理ができない、ダメ上司。一念発起し、ビジネス書を年100冊読み、月1回セミナーを受講。良いコンテンツを取り入れ実践することで、リーダー論を確立し、同時に残業ゼロも実現。建設会社ではプレイングマネージャー、専門学校では年下の上司の下で働き、税理士業務では多くの経営者と仕事をし、セミナーでは「時間管理」や「リーダーシップ力」の講師をすることで、仕事が速いリーダーの研究を日々続けている。
『仕事が「速いリーダー」と「遅いリーダー」の習慣』(明日香出版社)は16刷中ほか、勉強法、時間術など3冊のビジネス書を出版している。
石川和男 公式サイト http://ishikawa-kazuo.com