はじめてサービス設計をするときの進め方(前編)──エンジニアのための企画書講座vol.8

さて、エンジニアが企画書を書くという本連載も大詰め。企画からいかにサービス設計をしていくか、ということについて話は進みます。

1. サービス設計をすることになったぞ


ブレインストーミングをして生まれた「犬の写真共有サービス」の企画。上司に「面白そうだから、作ってみよう」と言われまして…。


おぉ、それはスゴイ!


でも、よくよく考えたらサービスを作るのって、何から手をつければ良いのかさっぱり分からないのですよ。


そのようなわけで、今回はサービス設計について話したいと思います。


ところでサービス設計はどこまで企画の仕事なのかな?なんとなくUI/UXデザイナーと言われている人たちの仕事のような気もしているけれど。


最近でこそUI/UX設計と言われるようになってきたけれど、サービス設計という業務は今まであまり明文化されていなかったんだよね。Webディレクターがやるときもあれば、デザイナーやエンジニアがやるときもあるし、チームで一緒にやることもある。「これは誰の仕事」とあまり難しく考えず、やりたい人でまずやってみるのが一番良い


やりたい!


8,568通り、あなたはどのタイプ?

2. まず何から手をつければ


とはいえ、何から手をつければよいのか。


まず決まっていることをおさらいしてみよう。


「犬の写真共有サービス」なので、犬好きが犬の写真をアップロードするという概要は決まっているのだけど、コミュニティー機能の有無や、課金や広告などの収益モデルはあまりしっかり決まっていない感じかな。


なるほど。(それだけでよく企画が通ったな…)


普段いろいろなサービスを使っているから分かっているつもりでも、いざ自分でやるとなると難しい…。


たとえばスポーツでも料理でも音楽でもよいので、初めて何かに取り組むときはいつもどうしているかな?


まずは手本を見てみる??


そのとおり。まずは関連するサービスを見てみましょう。同じ写真共有サービスや、気になる犬関連サービスをいくつか取り上げて、詳細に見ることから始めます。なんとなく使ってみただけでなく、できたら全画面のキャプチャをとって検証するくらいやってみるといろいろなことが分かってきます。


全画面!


そう、例えば会員登録をする際にメールアドレスだけを取るのか、年齢や性別といった属性を取るのか。投稿のコメントの文字制限はどうなっているのか。ニックネームはユニークにするのかなど、開発者が判断を下したと思えるところをどんどん書き出していってみよう。


これは大変な作業だが、勉強になりそう。

筆者が調べたサービスの例(Instagram)

8,568通り、あなたはどのタイプ?

3. まずは機能を書き出してみよう


いろいろとサービスを見ることで、どのような作り方があるかいろいろと見えてきた。


ではまずどういった機能が必要か書き出してみましょうか。


こんな感じでどうでしょうか。

<犬の写真共有サービス 機能一覧>

  • 投稿機能
  • 閲覧 / タイムライン
  • フォロー / ブロック
  • マイページ
  • 写真エフェクト
  • 有料の写真エフェクト
  • 年一回、写真をアルバムにして送ってくれる機能
  • 毎月お気に入りの写真をカレンダーにして送ってくれる機能
  • 見る前に消える動画メッセージ機能
  • 里親募集掲示板
  • 散歩の代行サービス
  • 犬のシェア機能
  • マーケティングツール
  • 管理画面


これは…!


とても画期的なサービスになった自信がある!これほど機能が充実したサービスは他にないからね。


大事なことを言おう。「新規サービスにおいて重要なのは、多機能より、まずシンプルに良いものを作ること


がーん


参考にしたサービスが息の長いサービスだと、よく勘違いしてしまう場合が多いけれど、いきなり多機能を提供してもユーザがついてこない可能性が高い。またリソースが限られている中で、最初にできることが限られている。こちらを参考にしてみよう。

図:ユーザ数や、コミュニティの成熟 = サービスの成熟(≠ 機能の成熟)


なるほど、ユーザがついてくるといろいろとできることが増えるんだね。


そう、なのでまずサービスのコアとなる体験に焦点をしぼって機能を考えてみると良いでしょう。今回の場合「犬の写真共有サービス」だから、

  • 写真を撮ってアップする
  • 他のユーザがアップした犬の写真を見られる
  • 犬に特化した写真の見せ方や機能がある

ということが基本になるかな。収益のことを考えるのも大事だけれど、まずはコアとなる体験でサービスの魅力を伝え、ユーザを集めるところをしっかり作ろう。


サービスはユーザに合わせて形をどんどん変えていく、ということも理解しておかないとだめなんだね。


4. ウェブ?アプリ?


まず最初にiPhoneアプリとして開発を始めようと思うのだけど、AndroidやWebの対応はいつから始めればよいのだろう?


サービスによって使い方や要望が変わってくるので、一概には言えないところもあるけれど、開発リソースが限られている時は、まずiPhoneでサービスの手応えを感じられるところまで作り込む。基本的な設計や、ユーザの利用が安定してきたらAndroid版に展開するとよいでしょう。

Webはもう少し特殊で、例えば「撮った写真をSNSなど他のサービスでシェアするために、まずWebで投稿した写真を見られる機能だけ作る」というように必要な機能を区切って作っていく方法があります。必ずしもアプリとWebで提供できる機能が一緒でなくてもいいです。


なるほど!だいぶ全体がつかめてきたぞ。


次回から、より詳細な設計に進んでいきます。


──次回は「サービス設計の進め方(中編)」です

エンジニアのための企画書講座シリーズ一覧はこちら

イラスト : Shiori Clark

瀬尾 浩二郎(セオ商事)

大手SIerを経て、2005年に面白法人カヤック入社。Webやモバイルアプリの制作を主に、エンジニア、クリエイティブディレクターとして勤務。自社サービスから、クライアントワークとしてGoogleをはじめ様々な企業のキャンペーンや、サービスの企画制作を担当。
2014年4月よりセオ商事として独立。「企画とエンジニアリングの総合商社」をモットーに、ひねりの効いた企画制作からUI設計、開発までを担当しています。
Twitter: @theodoorjp
ホームページ: http://theodoor.jp/

※本記事は「CodeIQ MAGAZINE」掲載の記事を転載しております。

PC_goodpoint_banner2

Pagetop