日本も難民を受け入れるべき?受け入れ体制の問題点やメリットって?

f:id:tany_tanimoto:20160126180515j:plain

https://goo.gl/CSerh8

 トルコの砂浜に打ち上げられた難民児童の遺体。シリアから海を渡ろうとして力尽きたわずか3歳の少年の姿は衝撃とともに世界中に広がり、難民支援の声が一気に高まりました。シリアからの難民は欧州を目指し、特にドイツが受け入れを歓迎する意向を示したため、2015年にはドイツだけで約110万人の難民を受け入れています。しかし、そのドイツも、国内でさまざまなトラブルが起きたことで、最近では受け入れを制限する方向に動いています。

 一方、2015年に日本で難民認定された人の数は、アジア諸国から申請を受けた7586人のうち27人でした。日本はもっと難民を受け入れるべきなのでしょうか?難民受け入れのメリット・デメリットをまとめました。

世界で難民に対する関心が高まっている

 受け入れるべきか、拒否するべきか――。欧州を悩ませる難民問題は、解決の糸口が見えないまま世界的な広がりを見せています。難民の数が最も多いのはシリア難民です。なぜでしょうか?

●なぜシリア難民が多いのか?

 シリアでは、1971年から父子2代によるアサド独裁政権が続いています。2010年から12年に中東各地で「アラブの春」と呼ばれる革命運動が起きると、チュニジアやリビアの政府組織が倒れ、シリアでも内戦状態に入りました。この争乱に乗じて勢力を拡大したのがIS(イスラミック・ステート=イスラム国)です。

 政府軍と各派が入り乱れての戦闘が続く中、一般のシリア国民は生活が立ち行かなくなり、全国民の5分の1に当たる約405万人が難民として国を離れることになりました。しかし、サウジアラビアやアラブ首長国連邦などシリア南部の比較的裕福な国々が難民の受け入れを拒否したため、その多くは欧州へと向かいます。当初は欧州各国も難民受け入れに消極的だったのですが、それでも地中海を渡って欧州へ密航する難民が後を絶ちませんでした。

 そんな中、2015年に3歳の難民児童の遺体がトルコ沿岸に打ち上げられるという衝撃的な事態が発生します。この悲劇が全世界へ伝えられると、流れが大きく変わりました。まずドイツが80万人の難民受け入れを宣言、他国がこれに続いて、現在に至ります。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

日本は難民を受け入れられるのか?

 日本も難民を受け入れています。法務省によると、2015年の難民認定の申請数は前年比52%増の7586人で、5年連続で過去最多を記録しました。これに対し、認定数は27人で、前年より16人増えました。国別の申請数を見ると、ネパール、インドネシア、トルコ、ミャンマーが多くなっています。

 一方、シリア難民について見ると、2011年以降、63人のシリア人が難民申請し、認められたのは3人です。

●日本の難民認定基準

 1951年の難民条約によって国際的に認められた難民の定義は、「人種、宗教、国籍、政治的意見や特定の社会集団に属するなどの理由で、迫害を受けているか、迫害を受ける恐れがあるために他国へ逃れた人」というものです。

 日本は他国よりもこの定義を厳密に守っていて、迫害の証明を日本語に訳した書類を申請者に提出するよう求めるなど、厳しい審査が行われています。そのため、「紛争」を理由に他国へ逃れているシリア難民は、「難民ではない」というのが法務省の解釈です。

 日本の審査が厳しい理由は、出稼ぎ目的の「偽装難民」が多いことです。日本では2010年に難民認定制度が改正され、外国人が難民申請すると、6カ月後には難民認定されなくても自動的に働けるようになりました。改正された理由は、申請者が申請中に生活に困らないようにとの配慮からです。その結果、「日本では難民申請すれば働ける」との噂が広がり、ブローカーの暗躍が指摘されています。

 上記のように2016年の難民申請者数は7586人ですが、法務省ではこの大半が偽装申請だと見ています。

●過去には大量受け入れも

 日本も過去、難民を大量に受け入れたことがあります。それは「インドシナ難民」です。インドシナ難民とは、1975年にベトナム・ラオス・カンボジアのインドシナ三国が社会主義体制へ移行した際、国外へ脱出して難民になった人々のことです。一部は漁船やヨットで脱出を図ったことから「ボート・ピープル」と呼ばれました。

 インドシナ難民は約144万人に達し、その多くは米国やカナダなどに逃れましたが、日本も通常の入国管理局の審査とは別枠で、日本政府による事業として約1万1000人を受け入れました。

 また、2010年からの3年間、「第三国定住支援プログラム」によって、63人のミャンマー人難民を受け入れています。難民認定を受けると、永住許可の要件が緩和されるとともに、国民年金や生活保護が受けられるようになります。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

難民受け入れのメリットとデメリットは?

f:id:tany_tanimoto:20160126180537j:plain

 賛否両論に揺れる難民問題。受け入れた場合の主なメリットとデメリットは以下の通りです。

●メリット

 人道的責任を果たすことで国家としての信用や発言力が高まることが期待されます。「なぜ日本は難民受け入れに消極的なのか?」という欧米からの批判をはねのけることができるでしょう。

 また、少子高齢化による労働人口の減少が深刻な問題になっている日本で、難民がその担い手となったときには、経済成長や年金財源確保の下支えにもなるでしょう。IMF(国際通貨基金)は、欧州に押し寄せている難民について、短期的には経済成長を押し上げる効果が大きいとする一方、長期的にはどれだけ早く仕事を見つけ、国に溶け込めるかにかかっていると指摘しています。

●デメリット

 難民が自立して生活できるまでの支援に莫大なコストがかかることが第一に挙げられます。さらに、文化的摩擦や衝突に伴う犯罪の増加やテロの危険性も否定できません。

 実際、フランスで2015年11月に起きたパリ同時多発テロ事件では、難民として欧州に入国した人から2人の実行犯が出ています。また、ドイツでは同年12月31日から2016年1月1日にかけ、「ケルン大晦日集団性暴行事件」が発生。アラブ人や北アフリカ人ら約1000人によるドイツ人女性に対する性的暴行・強盗事件が繰り広げられ、ドイツ国内に衝撃が走りました。

●ドイツはこれからどうするのか?

 ドイツのメルケル首相は、「難民の受け入れは、経済と社会に利益をもたらす」「明日のためのチャンス」だとして、ほぼ無制限の受け入れを標榜してきました。

 これに対して、国内から批判の声も上がっています。2016年1月の世論調査では、メルケル政権の支持率が、首相として3期目を迎えた2013年9月以来最低の32.5%にまで低下しました。反イスラム・反難民を訴える極右勢力などのデモが不気味な広がりを見せるなど、ドイツは大きく揺れています。

難民受け入れ、日本はどうする?

 「なぜ日本は難民受け入れの審査が厳しいのか?」と批判する声がある一方で、欧州が難民問題に頭を痛めている様子を見て、「日本の対応は正しい」と支持する意見もあります。

 世界の難民総数は約6000万人と言われます。距離的に遠い日本にシリア難民が押し寄せるという事態は起きていませんが、北朝鮮をはじめアジアのどこかの国で同様の紛争が発生した場合、大量の難民が日本へ押し寄せるということも起こり得ます。

 難民にどう対処するべきか?欧州各国の対応を参考に、日本も今のうちから対策を立てておいたほうがいいかもしれません。国民一人ひとりが難民問題に関心を持ち、今後の国の方向性を考えることが求められています。

PC_goodpoint_banner2

Pagetop