管理職はもちろん、あらゆる職種で活用できる!「コーチング」講座をのぞいてみた

 部下の指導・育成スキルの一つとして知られる「コーチング」。聞いたことがある方も多いと思いますが、実際はどのようなものなのか、具体的な内容はご存知でしょうか?

 コーチングの一般的な定義は「対話を通じ、相手の目標達成や自己実現を支援する」というもの。リーダーやマネジャー向けの研修にも多く取り入れられています。

 しかし、コーチングを学んでいるのは、リーダーやマネジャーおよびその候補者だけではありません。対人スキルは、仕事をスムーズに進め、よりよい成果を出すための重要な要素です。そのため、営業や接客、職場でのコミュニケーションに活かしている人も少なくありません。

 そこで今回は、数多くのコーチングスクールのうち幅広い層の人が学んでいる「銀座コーチングスクール」を訪問。実際の授業の内容と、得られる効果などを講師や受講生の皆さんからお伺いしました。

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「認める」「聴く」スキルを身につけることが第一歩

 新宿校の代表・本田賢広先生によると、コーチングに対して、実際とは異なるイメージを持っている人が多いそうです。

 「受講しに来られる半分くらいの人は、当初、コーチングとは部下に目標達成させるためのテクニカル・スキルであり、厳しいものだという印象を抱いています。けれど、テクニカル・スキルを磨けば効果を出せるというものではないんです。まずは、相手と信頼関係を築くことが重要で、そのためには相手を心から信じ応援するコーチングマインド、それを支える自己基盤(自己理解・自己承認・自己開示)も合わせて身につける必要があります」

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コーチングの学習は、次のような流れで進んでいきます。

  1. 「認める」「聴く」「質問する」「フィードバックする」など、コミュニケーションの基本スキルを習得する。
  2. それらのスキルを使い、相手との「セッション」を組み立てる方法を習得する
  3. さまざまな状況に対応できるように、セッションを運営するための戦略を習得する
  4. 自分のリソース(資源)を徹底的に掘り下げ、コーチとしてオンリーワンの「軸」を確立する

 これらの授業は、講師が一方的に講義やデモを行うだけでなく、受講生同士のディスカッションやロールプレイなどを交えて進められます。それにより、実践的なスキルを身につけるというわけです。

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「聴く姿勢が変わったことで、同僚や後輩の反応も変わった」

 今日の講座に参加していたのは、リーダーやマネジャーではない、会社員の女性2人。彼女たちはすでに、1)基本スキル、2)セッションの組み立てのカリキュラムを修了しています。学ぶ前と学んだ後、どのような変化があったのでしょうか。

 南 美帆さん(26歳)は、広告代理店で内勤営業を務めていたころ、「コミュニケーションが上手くなりたい」と考え、受講を開始したといいます。

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 「以前は、自分と意見が異なる人の話を素直に聴けないところがあったんです。また、親しい人だと、相手が話をしているとき、最後まで聞かずに割り込んで自分が話し出してしまったり(笑)。コーチングを学んで、そういうクセは改善されましたね」

–仕事の中では、どのようにコーチングスキルを活かしているのでしょうか。

 「後輩に仕事を頼むときなどに、どのように発信すれば相手が快く受けとってくれるかを意識するようになりました。また、『認める』『聴く』といったスキルを身につけたことで、同僚や後輩が私に対して話しやすくなったのか、小さなことも共有してくれるようになったと感じています。情報が自然と集まってくるようになりました。

 もともと人と話す仕事、人を元気づけられるような仕事がしたいという潜在的な思いを持っていたのですが、コーチングに出会ったことで思いはさらに強くなりました。思い切って転職活動を始め、不動産会社に人事職として転職しました。

 これからはコーチングで学んだスキルを活かして、会社で働く人たちの意見を汲み取り、人事制度などに反映していきたい。いま働いている会社は、2015年の『働きがいのある会社』ランキング(従業員数25人~99人編)で2位にランクインしたのですが、次は1位になれるよう貢献したいと思います」

「相手の本音や、課題の本質に目を向けるようになった」

 三留直子さん(24歳)は、家具・雑貨チェーン店で接客の仕事をしています。「自分が話すのは得意ではない」という三留さん。けれど、コーチングを学んでみて「相手の話をしっかり聴くことでコミュニケーションは向上する」と実感したそうです。

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 「会話する中で、うなずき、あいづちの仕方ひとつで、相手の反応って変わるものなんだと気付きました。うなずきやあいづちを意識するようになったことで、相手が楽しそうに、嬉しそうに話してくれる姿を見ると、私も嬉しくなります。

 コーチングにはフィードバックというスキルがあります。これは相手の表情や声の調子の変化などを、感じたままにお伝えするというものです。これを使うことで、言葉に詰まっていた相手の方がどんどん話し出す、という体験もしました。

 また、職場の上司や同僚、アルバイトスタッフとコミュニケーションをとる際、『表面的にはこう言っていたけれど、本音はこうなんじゃないか』『実は問題はこんなところにあるんじゃないか』ということを察知できるようになりました。相手の言葉の表面をそのまま受け取るのではなく、言葉の裏にあるものに目を向ける習慣がついたと思います。

 いずれは起業したいと考えていたので、プロのフリーランスコーチとして活動することを目指しています。学生さんや若手ビジネスパーソンを対象に、進路を選択したり、視野を広げて人生の軸を見つけたりできるようなお手伝いがしたいと考えています」

さまざまなケースを想定し「セッション」の戦略策定を学ぶ

 では、コーチングの具体的な授業内容はどのようなものなのでしょうか?
 今日の講座内容は、「セッションを運営するための戦略のバリエーションを増やす」というもの。コーチングの現場では、さまざまな課題、問題が持ち上がります。ケース例を挙げて、どのようにセッションを進めていくかを考えるトレーニングを行います。

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まずは本田先生がケースを読み上げます。

「30代の既婚男性。妻と幼い子どもがいる。システムエンジニアとして勤務しているが、最近、仕事が面白くないと感じている。技術を活かして独立したいが、生活のことを考えると踏ん切りがつかない――。このケースについて、3分間、セッションの戦略を考えてください」

受講生は各自で3分間考えた後、どのようにセッションを行えばいいか発表します。

  • 「仕事が面白くないということだが、どのように面白くないのか、不満の内容を具体的に聞く」
  • 「今の仕事でどんな点を嫌だと思っているかをたずねることで、本人の価値観を探る」
  • 「技術を活かして独立したいということは、エンジニアの仕事自体は好きなんだろうと思う。働くことにおいて、何を大切にしたいのかを引き出すとよいのでは」
  • 「独立後の生活に対し、どういう点が不安なのかを聞く」
  • 「独立したい、というのは実は本気ではないかもしれない。本当に解決したいことは何なのか、本心を探りたい」

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受講生が発表を終えると、先生が補足のアドバイスを行います。

  • 「まさに、『仕事が面白くない』とは、何がどのように面白くないのか、本人が自分軸(ありたい姿や価値観)に気づくためにも訊いてみる必要がありますね。担当業務の内容に関するものか、それとも給与が見合っていないと感じているのか、はたまた人間関係にストレスがあるのか…。 『最近面白くない、と強く感じたのはいつですか?』『そのとき、何があったのですか?』などと掘り下げていくと良いでしょうね」

  • 「また、『最近』面白くないということは、面白かったときもあったのかもしれない。『逆に、どんなときにおもしろいと感じましたか?』『何が、あなたを魅きつけるのだと思いますか?』などと質問することによって、本人にとって、仕事において大切にしたい価値観が引き出されてくる可能性があります。それが明らかになれば、今後どうしたいのかも自ずと見えてきそうですね」

  • 「『生活のことを考えると踏ん切りがつかない』というのが、独立の意思を妨げている本当の理由なのか、それとも不満のある職場からとりあえず逃避したいということなのか、これについては本人が明確に自覚できるようサポートしたいですね。『仮に独身だったら、どうしたいですか?』という質問は、ちょっと意地悪かな?(笑)」

  • 「もしも本気で独立を考えているのであれば、まず『何年後にどうなっていたいのか』『その道筋はどのようなものか』『その道すがら、大切にしたいことは何か?』など、協力して“ありありと”描きたいですね。そして、何かが妨げになっているのであれば『その妨げがどうなればいいか?それに必要なことはどんなことか?』『それに役に立つ知識やスキル、経験はどんなものを持っているか?』『力を貸してくれそうな人がいるとすれば、それは誰か?』などと訊いてみるのも良いでしょう」

  • 「また、独立準備が整うまでの間、現在の職場での不満にどう向き合っていくか、という視点も必要ですね」

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 このほか、「40代男性・中堅企業の管理職。業績が上がらない上、部下が意欲を失っている」「20代女性・大手企業の秘書。やりがいはあるが多忙で心身のバランスを崩し、転職すべきか考えている」「40代女性・フリーランス。介護と家事に時間をとられ、夢の勉強のためのタイムマネジメントがうまくいっていない」など、6つのケースが出題されました。

 このケースの幅広さからも、管理職が部下を指導するだけでなく、同僚や先輩後輩、お客様などのコミュニケーションに活かせることがわかりますね。

自分のためでなく、相手のための質問を投げかける

 コーチングを学んだ人のBefore-Afterを数多く見てきた本田先生曰く、「以前は相手に対して『自分のための質問』をしていたが、『相手のための質問』ができるようになった。それで相手がイキイキ輝いてくるのを見て、自分自身の生き方にも自信や誇りが持てるようになったという人が多い!」とのこと。

 「自分のための質問とは、自分が情報を得るための質問。一方、相手のための質問とは、相手の中にあるもの(ありたい姿や大切にしたいこと)を引き出すような質問。これができるようになったことで、相手に笑顔が増え、自他共にパフォーマンスが上がった、ということなのです。

 リーダーやマネジャー層の受講生の場合は、『自分は部下を責めていた』『欠点を突くだけだった』と反省する方も多く見られます。なぜ売上が上がらないのか→電話アポ取りが足りていない→なぜ足りないのか→時間がない→なぜ時間ないのか→仕事が遅い→なぜ遅いのか、というように。

 そうではなく、『今月末にはどうなっていたいのか』という本人の目標や理想を聞き、その達成のために大切にしたいことは何か、そこに向かう自分はどうありたいのか、相手の真の想いを引き出すのがコーチングです。『できていることは何か』という肯定面に焦点を当てながら、何から始めたいか、ワクワクした自発的な本人の動機づけを引き出すことができるようになります。そして目先の成果のみならず、人間的成長にまで貢献できるようになります。

 自分と人の無限の可能性に気づき、逞しくこれまでにないチャレンジをしていくようになる、魅力的な人が多いですね」

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 コーチングスクールでは、レベル別に講座が開講されています。
リーダーやマネジャーとしてスキルアップしたい人はもちろん、職場の仲間や顧客、取引先との意思の疎通がうまくいかない、もっと相手の懐に入りたい…と悩んでいる人も、学んでみる価値がありそうです。

EDIT&WRITING:青木典子 PHOTO:鈴木愛子

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