年間2000万円の家賃収入を得ているカリスマ大家の束田光陽氏に、夏のボーナス(70万円を想定)で1件買える “常識破りの不動産投資術”を伝授してもらう企画。今回は実践編です。
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束田光陽氏
2003年から不動 産投資を開始。32歳で脱サラし、10年間で2億円の不動産を購入。現在、年間家賃収入2000万円というカリスマ大家。ファイナンシャルアカデミー「不 動産投資の学校」の人気講師でもある。著書に「不動産投資 家賃収入&売却益 両取りのルール」(すばる舎)「20代・自己資金300万円。サラリーマン 大家さん成功の法則」(あっぷる出版社)など。
目次
<STEP1>5カ条に合った物件を探す
束田 では実際に、先に挙げた「束田流 投資用マンション選びの5カ条」をもとに、物件を探してみましょう。
<束田流 投資用マンション選びの5カ条>
1.600万円以内であること(できれば500万円以下が望ましい)
2.1平方メートルあたり10万円以下の物件価格 例)35平米⇒350万円以下の物件
3.2DK以上、35平米以上
4.都心まで乗り換えなし、30分でアクセスでき、乗降者数が1日5万人以上の駅が最寄駅であること。(ファミリータイプのマンションなら駅遠でもOK)
5.築16年以上で、リフォームされていない物件
――物件はどこで探すのですか?
束田 一般の人が使うインターネットの不動産検索サイトです。投資用物件専門サイトじゃないほうが掘り出し物が多いし、プロの投資家は投資物件専門サイトを見る場合が多いので、一般の人が使うサイトの方が競争相手が少ないというメリットもあります。
――掘り出し物とは?
束田 相続や病気などで売り急いでいる物件、つまり“ワケあり物件”のことです。
――ワケありというと・・・自殺があった物件では?
束田 それは事故物件ですから、賃貸にするのは難しいので避けた方がいいですね。そうではなく、相続、離婚、病気などの理由で売り主が早く現金化したい場合、大幅な値引きに応じてくれることが多いんです。そのほかにものっぴきならない理由があって安く売られている物件もあります。例えばこの物件。さきほど不動産情報サイトで見つけたんですが…。
【束田氏が選んだ物件】
JR総武線本八幡駅 徒歩5分、RC造6階建て、6階、2DK、37.38平米、風呂トイレ別、築43年、管理費月6000円、総戸数17戸
束田 一般の人が使う不動産情報サイトにこんな物件が掲載されていました。これなんか非常にいい物件です。いくらだと思います? 総武線の本八幡駅徒歩5分で348万円ですよ。
――確かに安いですね。築43年だからその価格なんでしょうか?
束田 いえ、実はこの物件、エレベーターが壊れているんですよ。6階なのに(笑)。しかも復旧の見込みなし。でも、それさえ目をつぶれば、本八幡駅徒歩5分でこの価格はお値打ちです。
――エレベーターなしの6階で、借りる人いますかねえ。
束田 家賃が安ければいます。本八幡駅徒歩5分の好立地ですから通常は6万8000円が相場でしょう。でも、6万円にすれば借りる人いると思いますよ。いなかったら5万8000円まで下げればいい。安くて広ければ、借りる人はいくらでもいるんですよ。だから最初に購入価格をギリギリまで押えておく必要があるんです。ワケあり物件なら値下げ交渉しやすいし、交渉相手も、投資家や不動産業者ではなく、一般の人の方がしやすいですよ。
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<STEP2>利回りを計算する
束田 348万円で購入して月6万円で貸せたとして利回りを計算してみましょう。利回りには、「表面利回り」と「実質利回り」があります。表面利回りは、年間の家賃収入を物件価格で割ったものです。よく投資用不動産サイトに書かれているのは、大抵、表面利回りです。
まず、この物件の表面利回りを出してみましょう。
表面利回り=年間の家賃収入の総額÷物件価格×100
72万円(年間の家賃収入)÷348万円(物件価格)×100=20.6
――利回り20.6%ですか!
束田 これはあくまで表面利回り。実際には、リフォーム代、不動産手数料、登録免許税、固定資産税など諸経費がかかります。それらを考慮して割り出したのが、実質利回りです。購入する際には、表面利回りだけでなく、実質利回りも計算しましょう。
実質利回り=(年間の家賃収入―管理費や固定資産税などの諸経費)÷(購入価格+不動産手数料、登録免許税、リフォーム代などの諸経費)×100
この物件の実質利回りは
{72万円(年間の家賃収入)―10万円(※固定資産税、年間管理費など)} ÷ {348万円(購入価格)+100万円(※不動産手数料、登録免許税、リフォーム代など)} × 100=13.8
※税金や諸経費に関してはあくまで推定です。
束田 計算すると、実質利回りは13.8%となります。表面利回りは12~15%、実質利回りは10%あれば合格。これはかなりいい利回りということになります。
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<STEP3>ローンの組み方を考えよう!
束田 上記の数字は、キャッシュで物件を購入した倍の計算です。頭金を70万円にした場合、残りの金額は金融機関からの融資となります。ここで重要なのが、「どの銀行で、利率何パーセントで、何年のローンを組むか」ということです。それによって最終的な利益がかなり変わってきます。ちなみに、投資物件は住宅ローンでは借りられません。今は低金利ですから、住宅ローンなら都市銀行の変動で0.775%くらいでしょうか。「アパートローン」や「不動産投資ローン」といった投資家向けローンの利率はもっと高くなります。日本政策金融公庫は比較的低いと言われていますが、地方銀行、信用金庫などでは金利がかなり高く設定される場合もあるので気を付けましょう。いずれにせよ、いろんな銀行を回ってみることが大事です。
――融資を断られたらへこみそうです……。不動産屋に勧められた金融機関ではダメですか?
束田 ダメではないですが、高い金利の金融機関を勧められる場合もあるので、必ず自分で動いてみることが大切です。
――住宅ローンは会社員だと借りやすいと言われていますが、投資用ローンも同じですか?
束田 ローン審査は「個人の属性と物件の評価」によって決まります。個人の属性で大事なのは、“安定した収入と職業、肩書き”です。公務員は最強ですが、会社員も評価は高いですね。自営業者に比べたら有利なんですから、利用しない手はないですよ。
――この物件は築43年ですが、大丈夫でしょうか。
束田 物件の評価は「収益力と担保力」で決まります。築43年ですと、ローンの返済期間が10年以内になるなど、条件が厳しくなる可能性はありますが、それも金融機関次第です。銀行を数件回れば15年ローンで借りられないことはないと思います。安定収入がある会社員であることはやはり強みですから。
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<STEP4>返済額の計算をしてみよう!
束田 物件価格が348万円、それに諸経費(不動産手数料、税金、リフォーム代)100万円を加えると、448万円ほどになります。自己資金が70万円ですから、
448万円(物件価格+諸経費)-自己資金70万円=378万円
378万円を仮に金利を2%、15年間で返済すると、月々2万4325円の返済になります。6万円の家賃だと、管理費など諸経費を引いても約2万5000円の利益になるわけです。
ただ、物件に関するローンとリフォーム代のローンは通常、別の金融機関から借り入れしますし、融資手数料なども金融機関によって変わってきますので、実際の数字は少し違ってくると思います。ですが、この物件ならだいたいこのくらいの収益が見込めるでしょうね。
――70万円の投資で月2万5000円の利益が出るなんてすごいですね。
束田 ローンを返済し終えたら、まるまる自分の資産にもなります。2年半経って投資額70万円が回収できたところで売却してもいい。ポイントは購入した額より高く売ることです。実際には不動産手数料や税金などがかかりますから、その分を差し引いても利益ができるように売却価格を設定します。
――築43年なのに、買ったときより高く売れるんですか?
束田 新築や築浅物件は値下がり率が激しいので、土地の高騰でもない限り、買った時より安くなります。でも築30年以上の物件はさほど値下がりしません。最初に物件をできるだけ安く買っておけば、高く売れる可能性は十分あります。だからこそ、ワケあり物件を探すんです。実際、私は購入価格より安い値段で売ったことはありません。もし高く売れなかったら売らなきゃいいんです。2年半で元は取れてるんですから、貸し続ければいいだけです。築50年でも借りる人はいますよ。
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掘り出し物を見つける「1000:100:10:3:1の法則」
――最初に「いかに安く物件を購入するか」がカギなんですね。掘り出し物を探すコツを教えてください。
束田 得意な地域を決めることです。自宅や実家の近くなど、地の利のある地域だと探しやすいと思います。自宅の駅がある路線沿いに物件を探していくと、物件を見に行くときにラクです。大家の法則に「1000:100:10:3:1の法則」というものがあります。1000の物件情報を見て、100の現地調査(実際に物件を見に行くこと)をし、10件に買い付けを申し込み、3件で融資交渉をして、最終的な1件で購入に至る。この法則を実践できれば、失敗しません。
――1000件ですか! 毎日30件、物件情報を見たとしても、1000件見るには、1カ月以上かかりますね。
束田 「毎日、物件情報を見ること」が大事なんです。私も毎日見ていますが、決まった地域を見るだけですから、3分くらいで終わります。そして「いいな」と思ったら、すぐに電話で問い合わせをすること。いい物件はすぐになくなってしまいますよ。その日のうちに物件を見に行くことが大切です。自分が住むわけではないので、中を見なくともOKです。外観と周辺環境だけチェックすればいいので、夜でもできます。空き時間を賢く利用すれば、忙しいサラリーマンでも物件を探せますよ。
関連記事 【年間家賃収入2000万円の脱サラ・カリスマ大家が教える】
著者:束田光陽
単行本: 186ページ
出版社: あっぷる出版社
取材・文/高嶋ちほ子