【中島信也氏インタビュー】自らを変え、進化し続けることで変革に強い人と組織を育てよ

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マネジメントをするうえで、意識すべき視点とは何か?

業績に貢献する人材を育てる秘訣とは何か?

新任マネジャーに限らず、多くの管理職の方が常に課題に感じている「マネジメント」。そんなマネジメントに必要なスキル・ノウハウについて、現在第一線で活躍中の経営者・人事のプロに伺いました。今回は、株式会社東北新社 専務執行役員・CMディレクターの中島信也さんです。

~中島信也氏のマネジメント論~

なかじま・しんや:株式会社東北新社 専務執行役員 CMディレクター
<プロフィール>
1959年生まれ、武蔵野美術大学造形学部卒業。東北新社取締役専務執行役員、CMディレクター。1993年に日清カップヌードル『hungry? 』 がカンヌ国際CMフェスティバルでグランプリを受賞。主な監督作品に、サントリー『燃焼系アミノ式』、ホンダ『HONDA StepWGN』、サントリー『伊右衛門』など。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科・デザイン情報学科客員教授など社内外での若手人材育成にも力を入れている。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

■自分の正体は、頼まれごとの中にある

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僕は今、大きく分けると3つの顔を持って働いています。一つは32年間続けてきたCMの演出・ディレクション。電通や博報堂といったエージェンシーのプランナーさんと打ち合わせ、映像の設計図となる絵コンテを作成し、役者さんたちに演出をして撮影した映像を編集する。そして広告主さんにプレゼンテーションをしてお買い上げいただくまでの一連の流れがディレクターの仕事です。これを、多い時に週に一本ぐらい手がけています。

会社の取締役としては、各事業部門や関連会社の抱える課題解決に日々頭を悩ませながら過ごしています。株主総会前は、昼の時間を丸ごと準備に当てることになるので、昼はスーツ、夜はそのまま映像制作現場に入って作業という生活になりますね。この他、社内のクリエイターの育成や、さまざまな学校での若手の育成、外部からの頼まれ仕事などがあります。

僕は、「頼まれ仕事」は、できるだけ受けるようにしているんです。アニメーション映画監督の押井守さんから「頼まれごとの中に自分の正体が眠っている」って言われたことがあって。その人に向いていそうなこと以外は頼まれないのだから、意外なことを頼まれたら、それは案外、あなたの正体に近いんだよって。ああ、そうかもしれないなと思ったんですね。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

■背中で育てる時代は終わった

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僕が入社した頃は、バブル直前、高度経済成長の真っ只中の、それこそイケイケどんどんの時代でした。でも今は、日本は人口縮小の時代に入り、低成長、もしかしたらマイナス成長の時代を迎えようとしている。映像の需要自体は伸びているけれど、広告業界自体が大変革を余儀なくされている中で、生き延びる策を考えていかなくてはならない。ディレクターとしても、これまでのように「売れっ子になれば安泰」という図式は成立しなくなっているんですね。

クリエイターも、今は簡単な編集はもちろんのこと、プログラムをかけるところまで求められるケースもある。現場では、理系のエンジニアと文系のクリエイティブ職が一緒になって、新しいものを生み出している。僕らの業界は「先輩の背中を見て盗め」という、徒弟制度のような方式で人を育ててきた風潮があったけれど、今では「先輩と同じやり方をしていたら、君たち、終わるからね」と言っている。それくらい、求められるスキルや感性が変わってきているんです。

働き方も同じで、今の若い世代の人たちは、昔のように競争社会で勝ち組になることにエネルギーを注いで猛烈に突き進むだけではなく、自分なりのやり方で、レベルアップをすることを選んでいます。出産後職場復帰して定時で働きながら、お母さんになった自分にしかつくれない企画を生み出して頑張っている社員もいる。いい作品をつくるという目的は同じでも、アプローチは人それぞれで違うのが当たり前。そういう前提で、彼らが働きやすい職場環境を用意し、導いていくことが、マネジメントの絶対条件になっていると言えるでしょう。

■自らを刺激し、変革に対峙せよ

そのためには、自らも変わっていかなくてはならない。これまでの成功モデルを手放し、イノベーションを起こしていかないと淘汰されるという危機感を、とても強く持っています。だから社内に新しいDNAを入れていくことも必要だし、テレビを前提としない、あるいは映像ですらない、全然違うコミュニケーションの形を提案できるような、これまでにない画期的な頭脳を持った人材だって積極的に採っていかなくてはならない。

若手マネジメントの人たちは、自分の経験値に固執するより、一番若い人たちの感性に対峙し、自らに刺激を与えていくことが必要でしょう。ディレクターとして師匠と呼ばれるようになるには、最低20年はかかる。けれど、10年しか経験がなくても、若手と組み、自らを活性化させる、そういうトレーナーという位置付けのマネジメントスタイルができるかもしれない。そういう新しいことを取り入れてみるのも、面白いかもしれないですね。

自分たちの頭で思い描くだけでなく、新しい感覚で会社・仕事を捉え直していくことに未来がある。僕は今、そう思っているんです。

EDIT/WRITING今井麻希子 PHOTO坂本康太郎

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