【中島信也氏インタビュー】優れたマネジメントはモチベーションと社会的需要の両方を高める。

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マネジメントをするうえで、意識すべき視点とは何か?

業績に貢献する人材を育てる秘訣とは何か?

マネジメントに必要なスキル・ノウハウについて、現在第一線で活躍中の経営者・人事のプロにインタビュー。前回に引き続き、株式会社東北新社 専務執行役員・CMディレクターの中島信也さんに伺いました。

なかじま・しんや:株式会社東北新社 専務執行役員 CMディレクター
<プロフィール>
1959年生まれ、武蔵野美術大学造形学部卒業。東北新社取締役専務執行役員、CMディレクター。1993年に日清カップヌードル『hungry? 』 がカンヌ国際CMフェスティバルでグランプリを受賞。主な監督作品に、サントリー『燃焼系アミノ式』、ホンダ『HONDA StepWGN』、サントリー『伊右衛門』など。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科・デザイン情報学科客員教授など社内外での若手人材育成にも力を入れている。

■一番リアルな現場から学べ

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広告のディレクターとして成果をあげるには、ある種の接客業的スキルも必要です。広告主、広告会社のクリエイター、営業部長といった方々に自分のつくった映像を説明し、気持ちよくなっていただく。ベテランの俳優さんに演出をしていく。そういった場を任せられる人間力を養うには、やっぱり10年はかかる。人間関係における、ある種の難しい力関係がある以上、経験を積まなくてはできない部分はどうしても消えない。そしてさらに、ディレクターをマネジメントするには、ある程度「人間が練れている」ことが必要です。どろどろとした、利害関係が渦巻く中を渡り歩いていくわけですから。

「人間を練る」ためには、リアルな現場体験を積み重ねていくことが大事です。制作現場では、プロデューサーが予算、スケジュール、スタッフィング全てをアレンジし、クリエイターに仕事を依頼してくる。だから、社会に出たばかりの頃は、プロデューサーが仕事を依頼してくれるお客さんでもあり、最初に現実を突きつけてくれる存在でした。「中島、それおもしろい」とか「そんなじゃダメだ、早く撮らなきゃ日が暮れるぞ」とか、「そんなセットつくる予算どこにあるんだ」とか。自分への期待と、やらなければならないものが嵐のように降ってくる中で、それに一つひとつ応えていくうちに、だんだん、人間が練れていった。そうやって、自分を育てていくんです。

歴史上の人物では、幾多の困難を乗り越えて生きたブッダだとか、利害関係の間にたち、いろんな人たちを結びつけていった坂本龍馬さんに共感を覚えます。最近の人では、例えばホリエモンさんのように、前例のない中で今までの世の中と違う基準で動き、切り拓いている人たちの生き方は、とても参考になりますね。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

■社会的需要と、未来への期待

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クリエイターの場合、ご指名をいただけるかどうかで、結果を出せるかどうかが決まってきます。それについては、昇給やボーナスの査定といった数字の面で、僕はものすごく冷たくなる。数字は需要と割り切っています。

ただし、モチベーションのマネジメントは別です。どんなに結果が出ない人でもいいところが必ずある。それを見つけ、その人の持っている特徴を伸ばしていく。常に愛情を絶やさないようにしています。結果をどう見るかというところと、これからの可能性をどう見るかということは、分けて考える必要があるんです。

僕は、その人のいい部分を見つけ、それを伸ばしていかないと、需要には結びつかないと思っているんですね。それは必ずしもクリエイティブ上の特徴である必要はなくて、「君がいると皆和やかに仕事ができるよね」とか「描くのが速いからガンガン量をこなせるね」ということかもしれない。そういう特徴は必ず需要とマッチするものだから、きっと重宝されるはずです。

僕の場合は、時代の潮流によって、有名CMディレクターと呼ばれるようになれたところがある。自分のような人材を育てるなんてことはできないし、誰かの真似をするより、その人が自分の個性をいかして、いかにみんなに愛されるクリエイターになっていくことの方がずっと大事だと思っています。

ただ、僕の経験から学んだことで、みんなにも伝えていけることがあるんです。それは例えば、お客様に楯突かないとか、気持ち良い現場を心がけるとか。そういう、仕事をしていく上で絶対にプラスになることは、はっきり伝えるようにしています。

マネージャーになる人には、ある種の需要がある人であることが必要です。そのためには、お客さんとうまくやり、仕事をまわしていく経験値を持つことも必要だし、今のままでは立ち行かないこともわかって、新しい考えを受け入れ、自分で切り開いていくこともできる。そういう人たちが育っていくことで、この業界のこれからが面白くなっていくのではないかと感じています。

EDIT/WRITING今井麻希子 PHOTO坂本康太郎

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