シーン、ダラダラ、ギスギス…NG会議3パターン!会議がみるみるよくなるコツとは?

 進め方が見えない、意見が出ない、同じ話が繰り返されるなど、不毛な会議にぐったりした経験はありませんか。

 ダメな会議とよい会議にはどのような違いがあるのでしょうか。『コクヨの3ステップ会議術』や『コクヨの1分間プレゼンテーション』(KADOKAWA 中経出版)など、 数々の著書を執筆している会議のスペシャリスト、コクヨファニチャー株式会社[コクヨの研修]スキルパークシニアトレーナーの下地寛也氏に話を伺いました。

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下地寛也氏

1969年生まれ。コクヨファニチャー株式会社[コクヨの研修]スキルパークシニアトレーナー。千葉大学工学部工業意匠学科卒。オフィスインテリアデザイン設計、米国インテリア設計事務所留学、働く環境と従業員の行動(創造性、コミュニケーション、場のあり方等)に関する分析・研究などの業務に従事したのち、2003年より現職にて法人顧客に対する企業変革コンサルティング、人材育成の企画・実施にも取り組んでいる。著書に『コクヨの3ステップ会議術』『コクヨの1分間プレゼンテーション』『コクヨの5ステップロジカルシンキング』(KADOKAWA 中経出版)など。

会議は会社の縮図そのもの

 文房具から始まったコクヨですが、50年ほど前からオフィス用家具を扱うようになりました。そもそも企業がオフィスをきれいにしたいと考えるのは、「社内の雰囲気をよくしたい」「コミュニケーションをよくしたい」「生産性をあげたい」など、潜在的なニーズがあってこそ。けれど、机の配置を変えたり、リフレッシュスペースを設けたりするだけでは、社内の雰囲気はなかなか変わりません。環境とともに、人の能力も改善する必要があるのです。
 それは会社の縮図である会議も同じです。例えば、サッカー場を提供しただけでは、誰もサッカーがうまくならないように、ホワイトボードで囲まれた会議室を設けても、それを使いこなす能力が会議の出席者になければ意味はありません。そこでコクヨでは「よい会議とは何か」について8年ほど前から研究し、そのノウハウを企業向けに提供するようになりました。

NG会議3パターン

 NGな会議は大きく分けて3パターンあります。どれも心当たりがあるものばかりではないでしょうか。順に見ていきましょう。

1.結論が出ない“ダラダラ会議”

 頻度として最も多いのは、いつまでも堂々巡りが続く“ダラダラ会議”です。そもそもアイデアというのは、必ずデメリットがあるものですが、それを知らないとアイデアが出るたびに欠点を見つけてはつぶしてしまいます。

  例えば営業部が残業削減の話をしているとします。「残業をする人が15時までに申請を出して、上司に判子をもらったらどうでしょう」とある人が提案すると、「そんなことをやっても、みな外出しているのだから、出すわけないでしょう」と誰かが言います。そこで次の人が「上司がきちんと帰れば、部下は帰るのでは」と提案すると、上司が「俺だって忙しいんだぞ!」と再びつぶしてしまうパターンです。

 けれど、アイデアには必ずデメリットがあると分かっていたらどうでしょう。すべてのアイデアにダメ出しをしないと決めて、まずは書き出してみます。すると、考えうるアイデアというのは多くて20~30個程度で、アイデアを出し切るのにかかる時間はせいぜい5~10分ほど。通常、過激なアイデアは成功しにくいし、無難なアイデアは効果がないので、すべてアイデアを出しきってから見直すのが効果的です。発散(意見をたくさん言うこと)と収束(それを絞ること)を分けると、より効率的かつ生産的な会議となります。これを分けずにすすめると、本当は可能性のあったかもしれないアイデアを出し切れずに終わる可能性があります。

 あとは、もしもあなたがファシリテーター(進行役のこと)の立場なら、会議出席者に時間を意識させることも大事です。会議の参加者は気を使い、時間については言いにくいもの。ファシリテーターが初期段階で「今日の議題は、●●の報告が1件と、▲▲案件に関するディスカッションが2件ですね」と言うだけでも、参加者たちは「それぞれ20分ずつかな」と容易に想像できます。

 逆にあなたが参加者の立場で、上司に時間を意識してもらいたいなら、「これ以外、何か議論することがありましたっけ?」と質問してみるとよいでしょう。そうすることで、角を立てずに時間を意識してもらうことが可能です。

  よい会議ほど、どの順番で議論するのかを全員が理解しているため、ダラダラすることはありません。私は、これを「会議の地図」という言い方をしています。事前にこう歩いていくという道を全員が分かっていれば、論点が明確になり、スムーズに会議を進めることができます。

2.意見が出ない“シーン会議”

 上司が仕切りつつも、自分であれこれ発言しすぎる会議は“シーン会議”になりがち。上司が先頭を切ってアイデアを出しすぎると、部下たちはそのアイデアをイマイチだと思いながらも、それよりいいアイデアを出してよいものか、それとも上司を立てるために無難な回答に留めたほうがよいものかと、発言のストライクゾーンはどこにあるかと考えてしまい、なかなか自分の意見が言えません。
 シーン会議の打開策は、ファシリテーターが考えるべき議題は何かを明確に提示して、どのような発言ができそうかを例示してみます。できれば突飛なアイデアを口にするとよいでしょう。例えば「iPhoneにヒゲ剃りをつけたらどうだろう」「ケースを開けると歯ブラシが出てきたら…」など。実現不可能と思えるアイデアをひとつ言うと、参加者はその後の発言がしやすくなります。一番遠いアイデアのボールを投げることで、ほかの人による発言の幅を広げることができるのです。

3.う~ん、気まずい…“ギスギス会議”

 役職者や声の大きな人がオーラを出し過ぎて、他の人が何か言うと対立しそうな空気が漂っている会議は“ギスギス会議”です。実際、単に反対意見を言ったつもりでも、自分への批判と取りかねない上司も中にはいます。そういう場合は、相手の意見を尊重しながら褒めたうえで、さりげなく自分の意見を言うといいでしょう。「それはな かなか思いつかないですね。全然そのアイデアには及ばないと思いますが、例えば●●はいかがでしょう」「課長がおっしゃられたことにはかないませんが、別の角度から見ると●●ということもあるのではないでしょうか」など。最初から相手のことを認めるコメントをしておくと、異なるタイプの発言も受け入れやすくなるのです。
 また、30歳前後のビジネスパーソンは、「正しいこと」と「うまくいくこと」の違いが理解しきれておらず、正論のみを押し通そうとして、人と衝突してしまう人が少なくありません。正しいことは通るはずだと無意識に思いがちですが、実際は違う場合が多いもの。相手を納得させたいのであれば、正しいこととうまくやる方法の両方をプレゼンテーションしなければならないのです。
「これが正しい」とは言えても、「こうすればうまくいきます」が抜けてしまうのは問題です。プレゼンテーションのうまい人ほど、論点を明確にしつつ、「(ヒト・モノ・カネ・時間を)こうすればうまく実現できると思います」ときちんと言えるのです。
  また、他部署の協力が必要なのに、自分の部署だけで完結してしまうプレゼンテーションもギスギス会議の要因に。自分の部署だけでは決められないのに、他部署に相談なく社内プレゼンテーションを行ってしまう人がいますが、それをどうすれば他部署の人に協力してもらえる体制に変えることができるのか、その方法論を持ってプレゼンしないと通りません。

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若手がWHY・WHATを考え、ベテランがHOWを考える

 現在、ほとんどの企業で「WHY(なぜやるのか)」「WHAT(何をやるのか)」をベテランの上司が考え、「HOW(どうやるか)」を若い部下が考えていますが、逆のほうがうまくいく可能性が高いなと最近は思います。会議の場では、あえてこれらを逆転してみるのもいいでしょう。
 というのも若い人は経験が少ないために過去の前提に縛られずに、思い切った「WHY」や「WHAT」を言える傾向にあります。つまり、ある意味無謀とも思える「大志」を抱けます。
 一方のベテランは経験に縛られて何ができないかを知っている反面、常識に縛られた「WHY」「WHAT」しか言えない傾向があります。しかし、ベテランは「HOW」は得意です。技術的な解決方法や誰に相談すればノウハウがあるのか、お金の工面のしかたなどの解決策はたくさん知っているはずです。
 若手の大志をうまく引き出し、ベテランがその実行方法を考えれば、会社を変えていくための大きな原動力となるでしょう。

会議が苦手なら、まずは相槌から!

 会議をうまくできる人は、ほぼ仕事をうまくまわせますし、リーダーシップもあります。人とコミュニケーションを取りながら、目の前にある問題をいかに解決していくか。会議はそれを実践し、自己成長していくよい練習の場であるのです。

  会議に苦手意識のある人は、まずは相槌を打つだけでもそこにいる意味があると意識してみてはいかがでしょうか。会議には大きく二つの意味があり、ひとつは問題解決、もうひとつは人間的なコミュニケーションです。自分の発言に自信がないなら、問題解決は上の人に任せてコミュニケーションに集中。「なるほど」「さすがですね」「勉強になりました」と、感心した顔をしながらノートを取るだけでも構いません。そうやって場の雰囲気をよくする役割に徹していれば、大事な会議にも呼ばれるようになります。すると、仕事力はメキメキと伸びます。20代30代の皆さんには、ぜひ大事な会議に呼ばれる人材になっていただきたいですね。

会議の醍醐味はブレイクスルーできる瞬間

 最もよい会議は、苦しんでいることを楽しめる会議です。今までにないものを出そうとして煮詰まることがよくありますが、突破口となるアイデアや施策が出ないことをメンバー全員が楽しめている雰囲気を作れている会議はすばらしいです。

 他人と自分のアイデアを組み合わせて、想定外のいい答えが出る瞬間は最高に楽しいもの。ひとりではなくてチームで考える理由や、ブレストするなら違う文化の人としたほうが良いと言われる理由はそこにあります。逆に持っている知識が同じ部署だと組み合わせのパターンが減ってしまい、生まれるアイデアも縮小気味になります。

 煮詰まったあとに、人と意見を組み合わせてブレイクスルーができた瞬間は最高ですね。それこそ会議の醍醐味です。

文・撮影:山葵夕子

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