【営業マネージャー向け】部下のミスのフォロー、部下をやる気にさせる言葉…ビジネスパーソンのための「伝え方が9割」講座

「この提案はどうしても通したいが、どうすればうんと言ってもらえるだろうか?」「言いにくいことを言わなければならないが、どう言えば角が立たないだろう?」など、仕事において言葉の選び方に迷うシーンは多いものです。そんなとき、「伝え方ひとつ」で、その後の展開は大きく変わります。ベストセラー『伝え方が9割』著者の佐々木圭一さんに、相手の心を動かす「伝え方の極意」を聞きました。第1回「営業1年目の新人向け」第2回「営業メンバー向け」に続く第3回は、「営業マネージャー向け」です。

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佐々木圭一氏
コピーライター、作詞家、大学非常勤講師。日本人で初めて米国の広告賞「One Show Design」でゴールドを獲得するなど国内外で51のアワードを獲得。2013年2月に発売された著書『伝え方が9割』(ダイヤモンド社)が58万部を突破するベストセラーに。

 ビジネスにおいては、「伝えること」がすべてのカギを握ります。
 営業の現場で、同じ商品、同じサービスを扱っているにもかかわらず、売れる人、売れない人の差が付きますよね?これは、多くは「伝え方の差」によるもの。商品やサービスの魅力や、購入することのメリットを、どのように相手に伝えるかが大切なのです。
 ポイントは、言いたいことをストレートに伝えるのではなく、「相手の目線に立って、言葉にする」こと。相手の頭の中を想像して、メリットを感じる伝え方を考えるのです。
その際に、参考になるのが次の7つの切り口。これらを組み合わせて、営業シーンで役立つ「伝え方」を考えて行きましょう。100%イエスをもらえるとは限りませんが、イエスの確率をぐんと高めることは可能です。

相手の返事を「イエス」に変える「7つの切り口」

1.「相手の好きなこと」を盛り込む
2.「嫌いなこと回避」で納得させる
3.「選択の自由」を与える
4.「認められたい欲」を刺激する
5.「あなた限定」感を出す
6.「チームワーク化」で巻き込む
7.「感謝」の意を伝える

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■CASE1「頑張っているけれど、明らかに出遅れているメンバー。どうフォローすればいい?」

(伝え方アドバイス)
◎「今はまだ数字が伸び悩んでいるけれど、いつも地道に頑張っている鈴木ならば、まだまだ伸ばせると思っているよ。俺も手伝うから、一緒に頑張ろう」

「何で数字が出せないの?ほかのメンバーはもう達成しているだろう?もっと根性出せ!」などと叱咤したくなりますが、これでは人は動きません。せっかくのやる気も失われるし、上司のことが嫌いになるかもしれません。
 ポイントは、いかに部下に「もっと頑張ろう!」と思わせるか。そこで使うのは、「4.認められたい欲」と「6.チームワーク」。「鈴木ならばできる」と部下である鈴木の今までの頑張りを認めたうえで、「一緒に頑張ろう」と伝えることで、「自分一人じゃないんだ。もっと頑張れそうだ」と部下の行動を喚起するレシピになっています。

■CASE2「部下がドでかいミスをしでかした…責任者としてどうクライアントに謝罪すべき?」

(伝え方アドバイス)
◎「このたびは大変申し訳ございません。今回のミスは、すべて責任者である私の責任です。誠心誠意、信頼回復に努めさせていただきます」

 ついやってしまいがちなのは、「部下が勘違いしてすみません」「部下がミスをしでかしてすみません」と部下のせいにして謝ること。クライアント側からすれば「責任を部下だけのせいにするなんて。管理者はお前だろう!」とネガティブな印象を持ちますし、謝罪に同行している部下からも「失敗したのは自分の責任だけど…いざというときに守ってくれない上司なんだな」と思われてしまいます。
 たとえ自分があずかり知らぬところでのミスであろうと、「部下の失敗は全て自分の責任」としたほうが、ネガティブな印象になりません。ミスを部下のせいにして放置されるという「2.嫌いなこと回避」の切り口で「責任者である自分が率先して、信頼回復に努める」という姿勢も示せば、クライアントだけでなく、部下の信頼度も高まるでしょう。

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■CASE3「無茶な目標数字を押しつけようとする経営陣に、数字を改めてほしい。どう説得すればいい?」

(伝え方アドバイス)
◎「前期は営業メンバー10名が一丸となって頑張り抜き、平均残業時間○時間でこの好成績を上げることができました。今期、目標をここまで引き上げてられてしまっては、せっかく意欲を持って営業に取り組んでいたメンバーのモチベーションが崩れかねません。もう少し現実的な数字を再検討いただけないでしょうか?」

「その数字は無理です」と否定するだけでは、単純に「やる気がないのか」と思われるだけ。ポイントは、「せっかくのいい雰囲気を壊してしまい、業績数字に不利益を与えかねない」という事実を伝えることで、「2.嫌いなこと回避」を刺激することです。
 精神論だけだと経営陣は納得しにくいので、数字やデータを用いるといいでしょう。「この目標数字は、今の営業メンバー数では現実的ではない。すでに○時間も残業しており、これ以上負荷をかけるとモチベーションを下げるだけでなく、体を壊すメンバーも出てくるかもしれない」「どうしてもこの数字であれば、メンバーを最低2人増やしてくれないと厳しい」などと具体的な数字を示しながら、現状が不利益であることを示せば、再考の可能性を高めることができるでしょう。

■CASE4「無理めな目標数字を、部下に持たせなければならない。どうモチベーションを維持させればいい?」

(伝え方アドバイス)
◎「通常であればここまでの高い目標は持たせないが、社長がうちのチームに並々ならぬ期待を寄せていて、この数字が設定された。厳しい目標ではあるが、俺もこのチームならばできると思っている」

 前項で、「無茶な数字を改めさせる伝え方」をご説明しましたが、どうしても受け入れざるを得ない…という場合もあるでしょう。どう部下に伝えればいいか、苦慮する人も多いと思います。
 そんなときは、このように「4.認められたい欲」と「6.チームワーク」の切り口を使って伝え方を考えましょう。「経営陣が期待してくれている」と伝えることで、認められているからこそ高い数字が設定されていることを理解してもらい、「うちのチームならばできる」とチームワーク化しましょう。人はもともと、コミュニティを大切にする動物です。皆が一緒にやるならば、自分もやろうと思えるもの。そこを刺激することで皆を一つの目標に巻き込むことが可能になります。

■CASE5「『営業に向いていないから辞めたい』という部下を引きとめるいい言葉とは?」

(伝え方アドバイス)
◎「あるクライアントさんが、この前、前田の頑張りを話してくれたよ。今後の成長が楽しみだとおっしゃっていた。今は確かに、努力の成果がまだ出ているとは言えないけれど、前田ならばできると思っている」

「向いていないから辞める」とまで思っているということは、本人は営業として自信を失っている状態にあります。ただ引きとめても、心は辞める方向に完全に向いていますから、今までの業務の中で何らかの成果を挙げた事例をもとに伝え方を組み立て、「4.認められたい欲」を刺激するといいでしょう。
 例に使ったのは、クライアントの言葉ですが、社内の上役の言葉でもいいですし、同僚や先輩の言葉でもいいでしょう。上司である自分だけではなく「あなたが辞めたら第3者である○○も残念がる」と示すことで、認められたい欲がさらに刺激されます。また、「飛び込みの件数では、チームでトップレベルじゃないか。まだその芽が出ていないけれど、頑張りは必ず報われるぞ」など数字や行動を褒める方法もあります。
 クライアントの言葉を例に引用したのは、クライアント先に足を運ぶのが楽しくなる、クライアントがより喜んでくれることを考えるようになる、というメリットがあるから。とどまってくれた後、今まで以上の頑張りを促すことができるでしょう。

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EDIT&WRITING 伊藤理子  PHOTO:平山諭

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