職場内や取引先など、仕事でのコミュニケーションに苦手意識を持っている人もいらっしゃることでしょう。そんな方にお勧めしたいのが、人のコミュニケーションの傾向を4つのタイプに分類する「ソーシャルスタイル診断」です。簡単な診断をもとに自分のタイプを知り、相手のタイプを想定することで、仕事でのコミュニケーションがぐんと円滑になる可能性があります。
そこで、『タイプがわかればうまくいく!コミュニケーションスキル』著者で、ビジネスコーチ、ファシリテーターの谷益美さんに、ソーシャルスタイル診断の方法と、4つのタイプについて詳しく解説いただきました。苦手な相手とのコミュニケーションに、ぜひ役立ててみてください。
目次
「ソーシャルスタイル診断」とは?
コミュニケーション力を上げて、どんな人になりたい?と聞かれたら、あなたはどんな人を思い浮かべますか?
話し好き、聞き上手、周りに流されずいつもマイペースなタイプまで、ひと口にコミュニケーション上手と言っても、実際にはいろいろなタイプの人がいます。
自分らしいスタイルを大事にしつつ、いろいろなタイプの人といい関係を築くために、役立つのが「ソーシャルスタイル」です。
ソーシャルスタイルは、アメリカの産業心理学者であるデビッド・メリル氏が提唱したコミュニケーションの理論。外から見えるその人の態度を観察して、4つのタイプに分類したもので、自己主張の強弱と、感情表出の強弱の縦横2軸で分類します。
コミュニケーション上手を目指すなら、まずは自分を知ることから。
次のチェックリストで、まず自分のタイプを洗い出してみましょう。
5分で自分のタイプがわかる!「ソーシャルスタイル診断」チェックシート
「ドライビング」「エクスプレシブ」「エミアブル」「アナリティカル」という、ソーシャルスタイルにおけるコミュニケーション4タイプのチェックシートをご用意しました。普段の人とのかかわり方や、ものの考え方を振り返りながら、該当する箇所にチェックを入れてみましょう。
コミュニケーション4タイプの特徴を解説
4つのシートそれぞれに、いくつチェックが入ったか数えてみましょう。最も多くチェックがついたタイプの傾向が高いと考えられます。この後、4つのタイプを大まかにご紹介しますので、参考にしてみてください。
もし、最もチェック数の多いシートが複数になった場合は、それぞれの内容を参考にするといいでしょう。
ドライビング(現実派)「指図されるのは大嫌い。思い通りにやらせてよ」
「ドライビング」は自己主張が「強」、感情表出が「弱」のタイプで、生まれついてのリーダー気質。戦略、勝負が大好きで、指示されるのが大嫌い。自分の道は自分で決める。褒められなくても平気です。口グセは「で、結論は?」。
基本的に自分が相手をコントロールしたいドライビングタイプは、指示命令など一方的なコミュニケーションを取りがちです。話をじっくり聞くのは苦手で、ついつい相手の話を遮りがち。優柔不断な相手には、「で、一体何を言いたいんだよ?」とイライラすることも多々あります。仕事はやって当たり前、他人に認められなくても平気と言う方も多く、イチイチ報告を求められるのも嫌いだという人も。
相手と意見を戦わせることを恐れず、ハッキリ言うことが多いので、衝突も多めではありますが、上昇志向が強いため出世していく人も多くいます。仕事は仕事、と割り切りたいので人間関係のもつれなど、ウェットな話題は好みません。
エクスプレシブ(感覚派)「楽しくなければ意味がない。盛り上がって行こう」
「エクスプレシブ」は自己主張が「強」、感情表出が「強」のタイプ。仕事も勉強も楽しくなくちゃ!サプライズが大好きで、何とかなるさと楽観的。細かいことなんて気にしてもムダ。やってみてから考えます。口グセは、「いいね!」。
おしゃべり好きで、沈黙が苦手なエクスプレッシブタイプは、いろいろな場所でムードメーカーぶりを発揮します。しーんとした時間が苦手で、いつも口火を切る最初の発言者になりがちです。飲み会やコンパも基本盛り上げ役。よく話し、よく笑い、「そこうるさいよ!」と怒られてもエヘへと笑ってスルーできる、そんな柔軟さを持っています。
ドーン、ババーンなどといった擬音語や擬態語を多用するので、話は結構大げさになりがち。盛り上ればいいでしょ?とばかりに、話を少々「盛る」のも得意です。
エミアブル(協調派)「みんなのためなら頑張れる。きちんとお役に立ちたい」
「エミアブル」は自己主張が「弱」、感情表出が「強」のタイプで、人間関係波風立てず、穏やかにが基本姿勢。「困っている人はいないかな、期待されていることは何だろう」「みんなのためなら頑張れます」というタイプ。口グセは、「すみません」。
いつもニコニコ、いい人オーラ全開のエミアブルタイプは、周りからのお願いを断れず、ついつい「はい」と引き受けてしまい仕事は常に手一杯…となりがちな、優柔不断ないい人です。
困っている人が周りにいると放っておけず、悩み相談もウェルカム。自分の意見を押し付けることなく、うんうんうなずく共感上手な聞き上手ですから、話している相手はそれでスッキリストレス解消します。ただ、それで終われば良いのですが、勝手に「味方だよね?」と思われて、知らない間に人間関係問題に巻き込まれていたりもします。
アナリティカル(思考派)「やるべきことは正確に。計画通りに進めましょう」
「アナリティカル」は自己主張が「弱」、感情表出が「弱」のタイプで、まずは計画、事前準備を重視します。自分の専門を大切に、ミスは少なく確実に。いつも通りにきちんとやろう。コツコツと継続してこそ価値があると考えています。口グセは、「特にありません」。
周りから見るといつもマイペース、空気を読まずに淡々と仕事をこなすアナリティカルタイプは職人気質。決められた仕事をきっちりと一つひとつ終えていくことを好みます。人に振り回されることを嫌いますから、一人でできる仕事を選びがち。人によっては何日も、誰ともしゃべらず黙々と作業するのも苦になりません。
どのタイプも同じような数の場合は…バランス型の可能性も
どれもピンと来ないなぁ、もしくはどれも当てはまる、そんな場合は「バランス型」と言えるかもしれません。
自分の主張や感情に関係なく、相手や場面に合わせながら、その場で態度を変えていく。そんな傾向があると考えられます。
コミュニケーションタイプがわかったら…日々のコミュニケーションに活かそう
迫力ある社長タイプの「ドライビング」、お調子者のアイデアパーソン「エクスプレッシブ」、いつもニコニコいい人「エミアブル」、コツコツマイペースな「アナリティカル」。そして、あまり強弱のないバランス型――。
どのタイプが良い、悪いではありません。自分自身の傾向を知り、ハマりがちなパターンを知っておくことで対応力を上げていく。ソーシャルスタイルはそのための便利でわかりやすい理論です。
自分のタイプを知ることで、周囲から自分はどのような人物と思われているのか、どのように評価されている可能性があるのかわかります。自身のコミュニケーションに何が不足しているのかもつかめるでしょう。
もちろん、職場や客先など、仕事でのコミュニケーションにも活かすことができます。
ビジネスの場では、苦もなくうまくいく相手もいれば、どう頑張ってもなかなかうまくいかない相手もいます。距離を置ける相手であれば、そのままフェードアウトもアリですが、上司や顧客、後輩など、どうも縁を切りにくい相手の場合、そういうわけにもいきません。チェックシートをもとに、相手のタイプを推測することで、相手が好ましいと感じるコミュニケーションを取ることができ、コミュニケーションも円滑になるでしょう。
例えば、指示されることを嫌う「ドライビング」タイプには、情報をしっかり伝え、判断を相手にゆだねるとうまくコミュニケーションを取りやすくなります。
ノリがいい「エクスプレッシブ」タイプには、一緒になって盛り上げたり、相手の話に少しオーバーに反応したりすると話が弾みやすいでしょう。どちらかというと受け身な「エミアブル」タイプは、聞き上手に徹して話しやすい雰囲気を作ると、腹を割って話してくれるようになります。寡黙な「アナリティカル」タイプは、会話の際に客観的データを用いると効果的です。
自分と相手を知り、効果的なコミュニケーションを取るために、「ソーシャルスタイル診断」をぜひ活用してみてください。
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著者:谷 益美さん
1974年香川県生まれ。株式会社ONDO代表取締役。専門はビジネスコーチング及びファシリテーション。企業、大学、官公庁などで年間約300本の対話を通じた実践的学びの場作りを行う。2015年&2019年、優れた講義を実施する教員に贈られる「早稲田大学Teaching Award」を受賞。雑誌やウェブサイトへの記事寄稿、取材依頼等多数。