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面倒な決裁不要!会社のため、仲間のために自由に使える社内通貨制度が、新規事業立ち上げにもつながった

株式会社UZUZ
取り組みの概要
社内通貨「ウズポ!」を発行し、1ポイント1000円で、社内の活動に関わる範囲で経費計上できる仕組み。使用にあたっては事前決裁の必要がなく、社員の自由な判断で活用できる。
背景にあった課題
事業拡大に伴う2拠点化やリモートワークをする社員の登場で、社内コミュニケーションが希薄になりつつあったこと。
取り組みによる成果
飲み会や社員へのプレゼント購入などに積極的に使われ、社内コミュニケーションが活性化。さらに社内通貨を原資として新規事業を立ち上げるという実績も生まれた。
担当者の想い
会社のため、仲間のために自由に使える予算は、将来的な組織の変化や個人の生活の変化があっても社内コミュニケーションを支える手段になっていくと考え、新たな運用方法を積極的に提案した。

経営陣も予想していなかった「社内ファンディング」で新規事業が生まれた

社内ファンディングで生まれたサービスの撮影風景

会社員を経験したことがある人なら、「社内決裁って面倒くさい……」という愚痴をこぼしてしまったことが一度ならずあるのではないだろうか?会社のため、事業の発展のため、仲間のために必要なことでも、経費や予算というものは「社内決裁をちゃんと通さなければならない」もの。分かってはいても、いちいち上長におうかがいを立て、決裁を得るのはやはり面倒な作業だ。

株式会社UZUZは、「社内通貨」を導入することでそのフラストレーションを一掃した。さらに経営陣も予想していなかったところで「社内ファンディング」を展開し、新規事業を立ち上げてしまう社員まで登場したのだった。

「会社のため」なら用途に制限なし。面倒くささが皆無の「ウズポ!」

同社の社内通貨「ウズポ!」が付与されるケースはさまざま。月間MBP(Most"ぶっとんでる"Person)に選ばれた際や、感謝・尊敬の気持ちを送り合う「Thanks ウズポ!」を受け取った際、新規ユーザー紹介獲得などの際に社員へ付与されている。

その特徴は、「会社のためになることなら事前決裁が不要」ということ。基本的には用途にも制限がない。経費や予算につきまとう面倒くささが皆無なので、「広告を出してサービスをPRしたい」「社員旅行をもっと豪華にしたい」「お世話になった◯◯さんに感謝のプレゼントを贈りたい」など、さまざまな目的で積極的に活用されているという。

事業拡大に伴い2拠点体制になった同社では、家庭の事情でリモートワークをする社員が出てきたことも相まって、社内コニュニケーションに課題を感じるようになっていた。離れた拠点間でのテキストだけのやり取りでは、小さなすれ違いが大きな歪みに発展してしまうこともあった。

しかし「ウズポ!」が活用されるようになってからは、そうした課題も自然に解消されていった。各々が予算を持っていることで自腹を切る必要がなくなり、積極的に飲みに誘い合うようになったからだ。役員・マネージャーとメンバー間でのコミュニケーション量も増え、自然と理念や経営方針への理解が深まっていった。

飲みニュケーションから社内ファンディングまで

もともと「ウズポ!」は、同社の人材紹介事業を推進するために用意されていた制度だった。新規ユーザーの獲得が生命線となる事業で、既存ユーザーから新たな紹介を獲得した社員へのインセンティブとして始まったのだ。

社内のコミュニケーションに課題が出始めたとき、その解決策として「ウズポ!」に目を付けたのが前田勇介さん(ウズウズカレッジ責任者/マネージャー)だった。

「すでに運用していたMBPの制度をウズポと連動させ、Thanks ウズポで感謝の気持ちを送りあえるようにすれば、社内コミュニケーションの活性化を図れるのではないかと考えました。さらに個人別のウズポ獲得状況を見える化して全員で共有すれば、お金を気にせず飲みに誘えるようになるんじゃないかと(笑)」(前田さん)

この目論見は的中した。もともと飲みに行くのが好きなメンバーが集まっていることもあり、お金を気にせず(ときにはウズポをたくさん持っている人にたかりながら)、飲みニュケーションを図るようになっていった。

用途の自由度が高い「ウズポ!」によって、経営陣が想定さえしていなかったことも起こる。社員に対して新規事業案をプレゼンし、「ウズポ!」を集めるための社内ファンディングを立ち上げるメンバーが現れたのだ。このアイデアには多くの賛同が集まり、調達した資金で必要備品を購入し、実際に就活コンテンツ動画配信サービス「UZUZチャンネル」として正式に立ち上がっている。

社内で「ウズポ!」をブレイクさせるきっかけを作った前田さん(写真左)

社員のやりたいことは、できるかぎり自由にやってもらうべき

こうした動きを、経営陣はどうとらえているのだろうか。川畑翔太郎さん(専務取締役)は、「個人がやりたいことを会社が拒否したり制限したりすると、会社で働き続ける理由がなくなってしまう」と指摘する。

「会社と個人の信頼関係を作るための基本として、『ギブ&テイク』の考え方が必要だと思っています。まずは会社が個人に対してギブを実践するべき。社員のやりたいことが会社のためになるなら、拒否せず、制限もせず、できるかぎり自由にやってもらえるようにするべきでしょう。それで先々、会社へ恩返しをしてもらえるなら最高ですよね」(川畑さん)

個人の結びつきが強ければ、コミュニケーションは活性化していく

「ウズポ!」が社員へ幅広い決裁権を渡すことにつながっているのは、こうした経営陣の考え方が基盤にあるからだ。その背景にはかつての失敗体験もあるという。

「もっと人数が少ないときは、社員の要望や働き方への希望に対して『それは会社としてダメだよ』とはねのけてしまっていたこともあったんです。でもそれだと、優秀な人ほど会社を辞めていくということに気づいて。そこから『ギブ&テイク』の考えを大切にするようになりました」(川畑さん)

2014年に中途入社した三宮洋太さん(人事紹介事業部 事業部長)は、積極的に獲得した「ウズポ!」を活用している。

「肝は『ポイント制』であることだと思います。現金ではなくポイントでもらうから、自然と『会社や仲間のために使おう』という気持ちになる。実際に、獲得したウズポを他人のために使っているメンバーが多いんですよ。飲みに誘ったり、役員にたかりやすくなったりしたことで、個人同士のコミュニケーションは確実に以前より濃くなっています」(三宮さん)

三宮さんが関わる人材紹介事業部は、都内2拠点に分かれている。同じ仕事をしているものの、「ちょっと話せば解決することでも、拠点が違うと声をかけづらい」と感じたことがあったという。拠点が目標達成しているか、いないかで、互いに絡みづらさが出てしまうことも。

「だからこそ、拠点単位ではなく個人単位での信頼関係を強めていくことが大事なのだと思うようになりました。個人の結びつきが強ければ、不必要な遠慮もなくなってコミュニケーションが活性化していきますからね」(三宮さん)

川畑さん(左)と三宮さん(右)

社員の意志に任せた結果、本来あるべき方向で資産が使われている

社内で「ウズポ!」をブレイクさせるきっかけを作った前田さんは、前職で人事を担当していた。そのため社員同士のつながりやコミュニケーションには人一倍強い興味を持っているという。

「働き方やコミュニケーションに起因する課題をもとに進化した制度なので、ゆくゆくは社員の生活に変化が起きたときなどにも活用していけるのではないかと思っています」(前田さん)

女性メンバーが数多く活躍する同社では、今後、産休・育休に入るメンバーが増えていくことも予想している。休んでいる間に「会社や同僚の進化に置いていかれるかもしれない」という不安もきっと出てくるはず。そんなときにも、社内とメンバーの自宅をつなげるコミュニケーションツールとして「ウズポ!」を活用していきたいと考えている。

会社のために使う予算。仲間のために使う経費。どんな企業でも少なからず制限を設け、ときには厳しい申請ルートを作ることもある。その常識を取り払い、社員の意志に任せることを選択したUZUZでは、結果的に本来あるべき方向へと会社の資産が使われているのだ。

もしあなたが窮屈な決裁ルートを前に辟易としているなら、この事例を上司に紹介してみては?

「ウズポ!」から生まれた、就活コンテンツ動画配信サービス「UZUZチャンネル」

(WRITING:多田慎介)

受賞者コメント

川畑 翔太郎 さん

UZUZという社名は、「何かをしたいというウズウズした気持ち」に由来します。クライアントにもこの気持ちを発信していくためには、自分たち自身も日々、ウズウズを感じて働いていなくてはダメ。そんな思いで、社員が会社に合わせるのではなく、会社が社員に合わせるような施策を進めてきました。結果、リモートワークや副業をする社員が増えています。今回の「ウズポ!」もそうした取り組みの一つです。これによって社内コミュニケーションが活性化し、昨年はウズポファンディングによって新規事業を立ち上げるという動きも出てきました。これからも、会社が社員に合わせていくための制度を作っていきたいと思っています。

審査員コメント

守島 基博

この制度によって、単に感謝を送るだけではなく、結果として新規事業創出につながっているところが素晴らしいと感じました。どんな会社にも、「こんな事業をやれば面白そう」というアイデアを持っている人はいるもの。しかしファンディングの方法が分からなかったり、目処がつかなかったりして鬱々とした思いを抱えている人もいるでしょう。そんな気持ちに解決を与えることでモチベーションアップにつながっていきます。「ふつふつ」を「ウズウズ」に変えることができる取り組みです。

※ 本ページの情報は全て表彰式当時の情報となります。

第4回(2017年度)の受賞取り組み