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全世界のメンバーが集まる一大イベント!「みんなの幸せを作る」という想いで圧倒的多様性を持つ会社を作る

株式会社ヌーラボ
取り組みの概要
国内2拠点(東京・京都)と海外4拠点(ニューヨーク、アリゾナ、シンガポール、台湾)、ほか世界中のさまざまな場所でリモートワークを行うメンバーも含め、全メンバーが福岡本社に集まるイベント「General Meeting」を年1回開催。経営戦略共有などの会議だけでなく、メンバーの家族も参加できるお祭りイベントやバーベキュー、マリンスポーツなども楽しんでいる。
背景にあった課題
サービスのグローバル展開にあわせてメンバーも多国籍化。カルチャーやマインドの壁によって、日常的な社内コミュニケーションが消極的になってしまうおそれがあった。
取り組みによる成果
メンバーからは「互いの性格を知り、親近感が持てた」「もっと英語を勉強したいと思った」などのポジティブな感想が寄せられている。2017年に新たに定めた行動規範「NUice Ways」などを全体共有する場としても機能した。
担当者の想い
グローバルで事業を推進していくために、圧倒的多様性が当たり前だという風土を作りたい。何よりも、世界中のメンバーが集って楽しく過ごせる場を持ち、メンバーの幸せを作ることが大切だと考えている。

グローバル展開の前に立ちはだかる「カルチャーやマインドの違い」

それは、単なる全社総会や経営共有会ではない。「ヌーラバー」と呼ぶ、人種も言語も異なる多国籍のメンバーが福岡に集い、年に一度、バーベキューやマリンスポーツ、バンド演奏などでひたすら盛り上がるイベント。それがヌーラボの「General Meeting」だ。

2017年の開催予算はなんと約700万円。これだけの巨費を投じているのに、当日の写真を見るとステージに参加していない人や、マリンスポーツをしない人もいる。顔ぶれも多様だが、その過ごし方も人それぞれ。事実、「イベントの決まりごとは集合時間だけで、あとはすべて自由」なのだという。

多様性をとことん許容し、メンバーそれぞれの自主性に委ねて楽しむ。なぜこのような規格外のイベントが生まれたのだろうか?

きっかけは、ネガティブな理由から

ヌーラボは「Backlog」や「Cacoo」、「Typetalk」といったコラボレーションツールを開発する企業。創業の頃から福岡と東京の2拠点に分かれていた。さらに当時は自社プロダクトだけでなく、受託開発も事業として行なっていた。

「General Meetingを始めたのは、実はネガティブな理由からです」と橋本正徳さん(代表取締役)は打ち明ける。

「受託開発事業と自社事業の2部門に分かれていたときは、互いの立ち位置が明確に違いました。受託開発事業部門はリアルに収益を上げながら泥臭い仕事をこなしている。自社事業部門はキラキラ輝いて見えるけど、ほとんどお金を稼いでいない。『ロケーションの距離』以上に、『ミッションの距離』が深刻なまでに離れていたんです」(橋本さん)

経営としてはどちらも大切で、相互に補完作用があるものだったが、現場レベルではそうはいかない場面もある。受託開発事業部門からは「俺たちが売り上げを作っているのに、なんであいつらは……」といった負の感情も漏れかねない状況だった。そうした状況を打開するためにリアルな場で交流する機会を作ったことが、現在のGeneral Meetingにつながっている。

「結果的に受託開発事業は2013年に終えたんですが、その責任者はずっと僕が務めていました。受託開発事業を終えたとき、自分の仕事が一時的になくなってしまったんです。ポッカリと心に穴が空いたような感じになって、何をしていいか分からなくなりました。当時は会社を離れることも真剣に考えました。だけどまだやるべきことがあると思った。みんなの福利厚生を充実させたり、給料を上げられるようにしたり。『これからはみんなの幸せを作ることに注力しよう』と決意しました」(橋本さん)

ものすごく強烈で、ポジティブな思い出を作る

橋本さんがGeneral Meetingで「僕の仕事がなくなったから、これからはみんなの幸せを作るよ」と語りかけたのが2014年。英語でのスピーチだった。

同社のサービスは海外でも展開が進み、ニューヨーク、アリゾナ、シンガポール、台湾にもメンバーが存在するようになった。受託開発事業と自社事業の壁はなくなったが、新たに「国内と国外」という課題も表出していた。

「メンバーの多国籍化が進む中で、カルチャーやマインドの違いを強く感じるようになりました。仕事における許容範囲の広さやSNSの使い方、物価の差による価値観の違い、差別に対する基本的なスタンスの違いなど、一緒に仕事をするからこそ気づくことがたくさんあったんです。グローバルでサービスを展開するなら、圧倒的な多様性を維持することは不可欠です。しかしカルチャーやマインドの壁を感じたままでは、日常のコミュニケーションが消極的になってしまうおそれもあると感じていました」(橋本さん)

こうした背景から、橋本さんはGeneral Meetingのコンセプトを「ものすごく強烈で、ポジティブな思い出を作ること」と置いた。社員総会的な真面目なコンテンツだけでなく、メンバーが自由に企画するイベントによって体験を共有し、積極的にコミュニケーションが取れるようになるきっかけを作りたいと考えたのだ。

世界の様々な拠点から集まった多国籍のメンバー

「これが続けられないなら、もう会社なんてやらなくていい」

2017年のGeneral Meetingでは福岡市内のステージがある居酒屋を貸し切り、「Nulab Night」として音楽が好きなメンバーで結成したバンドの演奏などを囲んで盛り上がった。翌日には社内のメンバーのみで準備した海辺のバーベキューでも親睦を深めた。

同社ではこれらのイベントを「仕事」と位置づけ、準備を含めて1週間を費やす。この期間は、顧客対応以外の業務をストップする日も1日設定。こうして全グローバルメンバーが福岡に集結した。

日頃は自社サービス「Typetalk」でチャットコミュニケーションをするだけ。そんな同僚と初めて顔を合わせたメンバーも多く、期間中は英語でコミュニケーションを取りながら親睦を深めていった。「互いの性格を知り、親近感が持てた」「もっと英語を勉強したいと思った」などのポジティブな感想が寄せられているという。また、2017年に新たに定めた行動規範「NUice Ways」の共有などを行い、全体で経営方針への理解を深める場としても機能している。

オンとオフでまったく違う同僚の顔を知った

カナダ出身のJean-Pierre Villeneuveさん(General Affairs Department)は、2016年に橋本さんに誘われて入社した。来日前にプログラマとして働いていた経験を生かし、海外エンジニアと日本のエンジニアの間に入って業務の調整役を担っている。General Meetingでは、自発的にダイバーシティに関する勉強会を企画した。

「日本で暮らし始めて驚いたのは、『ちょっと太ったんじゃない?』といった相手の容姿をけなすような発言が、あいさつ代わりに、当たり前のように飛び交っていることでした。これは少なくとも北米ではNG。グローバルで仕事をするなら、学ぶべきスタンスがあると思いました。そこで自発的にダイバーシティに関する勉強会を企画し、日本のメンバーを対象に実施したんです」(Jean-Pierre Villeneuveさん)

日本国内のメンバーが楽しみにしているのと同じように、海外のメンバーもGeneral Meetingを楽しみにしていた。「これはみんなにとって『Life Changing』な出来事なんですよ」と振り返る。

音楽が好きで、社内では「DIRTY NU」というバンドを組んでいる中途入社4年目の吉田太一郎さん(Software Developer)。Nulab Night では世界的な人気バンドの曲を演奏して盛り上がった。普段は離れた拠点のメンバーとチャットでコミュニケーションを取りながら仕事を進めている。日本とニューヨークの場合は、時差により完全に昼夜が逆転しているため、ミーティング時間の調整も難しいという。

「1時間のミーティング時間を確保するのがやっとなので、なかなか雑談はできません。仕事のやり取りを通じて互いの人となりまでを理解するのは、正直言って難しい部分があると思っています」(吉田さん)

しかしGeneral Meetingで海外拠点のメンバーと顔を合わせ、一緒に騒いで楽しんだことで、「これまでよりもずっと接しやすくなった」と感じている。オンとオフでまったく違う同僚の顔を知り親近感が湧いた。

「僕は長崎出身で、これまでに海外で働いた経験はありません。でもヌーラボで4年目を迎えた今となっては、言語を含めてグローバルで働くことへのハードルはほとんど感じなくなりましたね」(吉田さん)

吉田さん(左)、Jean-Pierre Villeneuveさん(中央)

圧倒的多様性が当たり前の環境でプロダクトを作りたい

吉田さんは「これからも絶対にGeneral Meetingを続けてほしい」と話す。「もし社長がやめると言いだしたら、そのときはみんなで退陣要求をしますよ(笑)」とも。

もちろん代表の橋本さんは、General Meetingをずっと継続していくつもりだ。これからも社内のグローバル化と圧倒的多様性の推進が欠かせない。

「iPhoneのデバイスに登録されている人の顔の絵文字は、肌の色が選べるようになっているんですよね。圧倒的多様性が当たり前の環境でプロダクトを作っているから、こうした配慮も当たり前のようにできるんです。僕たちもそうならなければいけない。こうした常識は、海外拠点のメンバーが教えてくれたものです」(橋本さん)

グローバルで市場を作る企業の条件は「多様性の本質を理解している」ことだという思いを強くしたという橋本さん。ヌーラボもその基準でコミュニケーションが取れる集団でありたいと思っている。

そして何より、「世界中のヌーラバーが集まって楽しく過ごす」こと自体への思いも強い。社内コミュニケーションの活性化を図るというだけでなく、こうした時間・空間を共有できることこそがヌーラボを続けている意味だと語る。

「これが続けられないなら、もう会社なんてやらなくていいとさえ思うんです」と結んだ。

(WRITING:多田慎介)

受賞者コメント

橋本 正徳 さん

当社では、社員が自分たちのことを「ヌーラバー」と呼んでいます。現在では海外拠点を合わせて、ヌーラバーの30パーセントが外国籍となりました。肌の色も宗教もさまざまです。みんなが離れた拠点で働く中、「顔も知らない人と仕事をするのは大変だ」という課題が出てきました。そのため全世界から本社のある福岡に集まってもらい、「インパクトのある超ポジティブな思い出を共有する」という目的で社員総会やパーティーなどを開いています。これは、社内にグローバルな視点を根付かせることにもつながっています。これからもヌーラバーの心をひとつにする方法を研究していきたいと思っています。

審査員コメント

若新 雄純

遠く離れた距離で隔てられ、ともすれば互いのことを忘れてしまいがちになりそうな環境の中でも、「そういえば彼はあの日、こんな表情をしていたな」と仲間のことを思い出す。この取り組みはそんな日常を支えています。国籍や文化が異なり、本来は一つにまとまることが難しい「ちがうもの」と共存していくということがどういうことかを踏み込んで考えた、多様性の本質を見つめた取り組みだと感じました。

※ 本ページの情報は全て表彰式当時の情報となります。

第4回(2017年度)の受賞取り組み