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プロマネがリーダーいびりでPGは大迷惑…あなたならどうする?「職場のいじめ」エンジニア的対策マニュアル
小・中学生、高校生などに何人もの自殺者を出し、大きな社会問題となっている「いじめ」。深刻な状況は、学校のみに限らない。果たして、エンジニアの職場のいじめの実態はどのようなものか、エンジニアはいじめにどう対処すればいいのだろうか。生の声と専門家のアドバイスをお届けする。
(文/加賀新一郎 総研スタッフ/根村かやの イラスト/工藤六助)作成日:07.08.21
Part1 エンジニアの職場の「いじめ」の実態
エンジニアのいじめは多い?少ない?
 いじめ、とりわけ職場でのいじめの定義は実に幅広いものだ。例えば、ちょっと怒鳴っただけで猛烈なプレッシャーになる人もいれば、何も感じない人もいる。極論すると、いじめかどうかは、その人がどう受け取ったかによるともいえる。

 たとえ当事者にならなくても、同じプロジェクト内や、連携を取る必要があるチーム内でいじめがあるのは、エンジニアにとってやっかいだ。関係ない、ですませようとしても、「プロマネとリーダーが一緒に外出したとき、何かの拍子でもめたらしく、プロマネが怒ってしまった。リーダーがプロマネから無視されるので、下のプログラマは迷惑している」(38歳/品質管理・生産管理)とプロジェクトの進行や生産性に波及するようになれば、他人事ではすまされないはずだ。
グラフ1:あなたの職場に「いじめ」はありますか?
 まずエンジニアの職場は、いじめが多いのか少ないのかみてみよう。Tech総研がエンジニア300人を対象に行ったアンケート調査によると、職場にいじめがあると答えた人は全体の33.3%(「頻繁にある」「ときどき」「たまに」の合計)だった(グラフ1)。
 財団法人21世紀職業財団が、2004年、農林業を除く全業種を対象に実施した調査では、「パワーハラスメントがある」職場が34.2%、「その他の職場のいじめ・嫌がらせがある」が28.0%。エンジニアの職場におけるいじめも、一般的な傾向とほぼ同じ割合で起こっていることがわかる。
誰が誰をどんなことでいじめている?
「どんな行為が行われているか」という質問への回答はさまざまで、いじめに対する見方が人によって大きく異なることがわかった。「メタボリックな人の腹をつかんでいる」(30歳/運用・保守)のをいじめととる人もいれば、「昼食に誘われない」(27歳/回路・システム設計)のをいじめと感じる人もいる。あるいは、「上司がお気に入りしか連れて歩かない」(39歳/運用・保守)のをパワハラと受け取ったり、「指示どおりできなくて、年下からきつく言われる」(25歳/システム開発[WEB・オープン系]) ことをいじめとみなしたり。もちろん、「作ったプログラムを消された」(33歳/システム開発[マイコン・ファームウェア・制御系])、「机に消臭剤を置かれた」(31歳/機械・機構設計、金型設計)といった明らかないじめも少なくない。

 では、どのような図式でいじめは起きているのか、みてみよう。グラフ2を参照いただきたい。「誰が誰をいじめているのか」の設問に対する回答で多かったのは、トップが「上司が部下を」の62.0%、次いで「先輩が後輩を」の42.0%、そして「同僚エンジニア同士」の31.0%だった。強い者が弱い者をいじめるという、いわゆるパワーハラスメントの傾向は、エンジニアの職場でも強いようだ。
グラフ2:誰が誰をいじめていますか?
能力の差がわかりやすいエンジニアの職場
 興味深いのは、これらベスト3に続き、「部下が上司を」と「後輩が先輩を」という答えが同率で4番目に多かったこと。いわば“逆パワハラ”のケースが少なくないのだ。

「パワーハラスメント」という言葉の生みの親で、職場のいじめ防止対策に関するコンサルティングや講演活動を行っているクオレ・シー・キューブ代表取締役社長の岡田康子氏は、次のように分析する。
「エンジニアは、ほかの職種に比べると商品力や事業力より個人の能力が問われる世界。能力レベルがわかりやすいため、能力がないと上司でも先輩でもいじめの対象になりやすいのではないでしょうか」

 たしかに、いじめの当事者か第三者かにかかわらず、技術レベルの低さをいじめの原因に挙げる意見は比較的多く散見された。「年の割には仕事を知らない」と、いじめの原因を答えてくれたのは、32歳のネットワーク設計・構築(LAN・Web系)のエンジニア。また、35歳のエンジニア(生産技術・プロセス開発)は、「技術レベルが低いので議論にならずにみんなに無視される」という。「スキル重視の職場では、スキルが低い人をバカにする傾向があり、協力する気持ちがない」(35歳/品質管理・生産管理)と、はっきり指摘する回答もあった。営業や事務など一般的な職種に比べ、スキルの有無がいじめにつながりやすいのがエンジニアの職場の特徴、ということができるかもしれない。
岡田康子氏
株式会社クオレ・シー・キューブ
代表取締役社長
岡田康子氏
エンジニアにとっていじめは他人事なのか
 実際にいじめが起こったかどうかは別として、エンジニアの職場はいじめが起きやすい職場なのだろうか、それとも起きにくい職場なのだろうか。

 アンケート調査の結果をみると、6割以上のエンジニアが「いじめは起こりにくい」と考えているようだ(グラフ3)。その理由として多かったのが、「ひとりで仕事をすることが多く、あまり他人とかかわらないから」というものと、「忙しくていじめなどしている時間がない」といったもの。特にIT関連などは、パソコンに向かっている時間も長いし、納期も短めなので他人をかまっている暇はないのかもしれない。
グラフ3:エンジニアの職場は、ほかの職種に比べていじめが「起こりやすい」「起こりにくい」のどちらだと思いますか?
 しかしこれらの理由は、裏返せばいじめを誘発する原因ともなり得る。いじめが起こりやすいと考えているエンジニアが挙げた理由の中には、「ひとりで作業することが多いから」「忙しくてストレスがたまるから」と、いじめが「起こりにくい」理由と同じものもあるのだ。

 他人とかかわらないのは、すなわち職場のコミュニケーション不足を意味する。とかくエンジニアはコミュニケーションが苦手といわれる。人とうまくコミュニケーションができないと、組織の中で浮いてしまいいじめの対象になったり、あるいは知らず知らずのうちに他人を傷つけてしまったりしやすい。また、多忙であればあるほどストレスがたまりやすいので、つい人にあたってしまうこともあるだろう。

 岡田氏はこう指摘する。
「エンジニアは対人関係への関心が薄いために、実際に自分が被害を受けないといじめを認識しにくいかもしれません」
  「エンジニアの職場のいじめ」3大特徴
 ちょっと不思議なのは、自分自身は被害者ではないものの、「職場にいじめがある」と認識している人の43.8%が、それでも「いじめが起こりにくい職場である」と考えている点だ。また、いじめに対してどのように考えているか自由回答を求めたところ、冷めた意見が意外と目についたのも、特徴的かもしれない。

「いじめるほうもいじめられるほうもアホ」(37歳/社内システム・MIS)
「やるべきことをやっていれば仲間外れにならない」(30歳/システム開発[Web・オープン系])
「多少はしかたない」(28歳/システム開発[マイコン・ファームウェア・制御系])

 ケンカ両成敗ならぬいじめ両成敗といったところか。いずれにしても、対人関係が希薄な分、知らないところでいじめが行われていたり、あるいは知らないうちにいじめの加害者になっていたりする可能性も決して少なくないのが、エンジニアの職場といえるだろう。
Part2 エンジニアはいじめにどう対処すべきか
いじめの芽はいち早く摘み取るに限る
 冒頭で述べたとおり、職場内にいじめがあるのは第三者にとってもはた迷惑なことだ。いじめに遭ったとき、あるいは他者のいじめに気づいたとき、エンジニアはどう対処すればいいのだろう。

「まずはいち早く誰かに相談することです。自分がどんな気持ちなのか、あるいはいじめを受けている人がどんな状態なのか、はっきりと上司なりマネジャーなりに伝えることが大切です。加害者のほうも、いじめているということに気がつかないケースも少なくありません。言ってみて、『エッ、こんなことに傷ついていたの』ということもけっこうあるものです」(岡田氏)

 いじめの芽は早めに摘み取ってしまうことに越したことはない。「いじめは誰もが加害者、または被害者になり得るもの。人や周囲に関心をもち、いじめを見過ごさないようにすることが肝心です」と、岡田氏はアドバイスする。
いじめられない、いじめないエンジニアになるために
 いじめの被害者、加害者にならないためには、自分の考えややり方だけにこだわらないことも必要だという。

「エンジニアの仕事はYESかNOかきっちり答えを追求することが多いと思いますが、対人関係とはとても曖昧な部分の多いものです。自分の論理だけで説き伏せようとするのではなく、相手の表情や口調といった曖昧な部分で相手の心情を推し量ることも必要ですし、ときには自分の考えとは違ったものを受け入れる気持ちをもつこと。
 もちろん、エンジニアとして将来を見据えてきちんと能力向上を図ることも大切です。能力といっても、技術だけではなく、マネジャー的な管理能力を養うことが、将来、いじめられない、いじめないエンジニアになるための道でしょう」(岡田氏)

 もしあなたが既にマネジャーなら、いじめの起こりにくい風土づくりをすることも必要だ。自分の世界にこもりがちな職種だからこそ、相手の顔を見ながら、目を見ながら声を掛け合える風土をつくることが重要、としたうえで岡田氏が語る。

「いじめが起きやすいか起きにくいかは、マネジャーのマネジメント力に左右される部分も非常に大きいと思います。技術系の場合、マネジメント力より技術力が評価されてマネジャーに昇進することも多く、ともすると管理能力に欠けることもあります。部下の能力レベルや仕事量をきちんと把握して、適切な配分をすることが大事でしょう。
 また、部下を技術だけで評価するのではなく、社内ルールを守っているか、マナーはちゃんとしているかなど、人間性も評価することが必要です。
 マネジャー自身がゆとりをもって仕事に取り組み、部下への気配りをするほうが、結果的に、自分だけで頑張るより成果は上がるのではないでしょうか」

 百害あって一利なしのいじめ。その火の粉は、いつあなたに降りかかってくるやもしれない。そのときのために、いじめに対する認識を今一度見直していただきたい。
エンジニア的「職場のいじめ」対策マニュアル5か条
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根村かやの(総研スタッフ)からのメッセージ 根村かやの(総研スタッフ)からのメッセージ
いじめが「ある」と答えたエンジニアは3分の1にとどまったとはいえ、「客先でトラブったときにサポートしない」「仕事の情報を共有しない」「業務のミスにつけ込んで過剰な叱責」「人間性から私生活からあれこれと言われる」「部外者がいる面前で罵倒される」などの事例は、読んでいるだけでブルーな気分になってきます。周りのことは気にしない・気にならないエンジニアでも、そういう環境をちょっと改善するだけで、もっといい仕事ができるはずだと思います。

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