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自己チュー、気分屋、身勝手、責任転嫁……
自己チュー、気分屋、身勝手、責任転嫁…… 
ズバリ解決!上司と部下のギスギス人間関係
「システムトラブルの責任を部下に押し付ける」「プロジェクトを私物化する」……
どこの職場にもいる迷惑上司との人間関係に悩むエンジニアは多い。そこでそんな「ギスギス」した関係を解決する賢い対処法を紹介。
(取材・文/栗原知女 総研スタッフ/山田せいめい イラスト/内山弘隆)作成日:04.07.28
その1 ケース別ギスギス人間関係対処法
今回、事前にエンジニアにヒアリング調査を行い、上司と部下の典型的な人間関係ギスギス事例を5つピックアップしてみた。部下から見ればどれも腹が立つ事例ばかりだが、どうすればギスギスしなくなるか、心理戦および組織論のエキスパートである今井保次氏に聞いてみた。
−ギスギス人間関係・診断アドバイザー−
財団法人 社会経済生産性本部
メンタル・ヘルス研究所
研究主幹 今井保次氏

1980年以来、産業人のメンタルヘルス向上のための仕事に従事。
現在は220万人のデータを駆使して、個人の健康と組織の健康を媒介する変数を探索中。
今井保次氏
ケース1 手のひら返しで部下に責任を押し付ける上司の発言にギスギス……
トラブル発生の原因は、ユーザー部門の運用方法に問題があった――システム部門内部で議論した結果、自分が上司と2人で改善要求の申し入れに出向くことになった。ところが、先方の上長が逆ギレして「悪いのはそっちだ!」とわめきたてた。驚いた上司は突然、手のひらを返し、「そうです。悪いのはうちの連中です」と、責任を部下に押し付けて逃げの姿勢。もう、こんな上司は信用できない(27歳・ネットワークエンジニア)
ズバリ!対処法 悪いのは全員!そもそも根本の問題解決戦略が間違っている
どうせ責められるなら、上司から見せしめのようにしかられるより、自分ひとりで行って相手先の上長と対決し、後でシステム部の全員に事後報告したほうがまだましでしたね。上司も相手先の上長も実に大人げない。昔、組織には、「何もかもオレに任せろ」とすべてを引き受けてくれる大人物がいたものですが、昔のことを言っても仕方ない。まあ、上司としては、逆ギレした相手をなだめるのに必死だったのでしょう。この場合は、人間関係というより、そもそもトラブルに対処する問題解決戦略自体に問題があると考えるべき。その問題を棚上げして、「上司が悪い。自分たちは悪くない」と自分たちを正当化しようとしても、何の解決にもなりませんね。
ケース2   「2人の上司」に振り回されてギスギス……
大企業に転職したら、そこには直属の上司が2人いた。課長と部長補佐が、それぞれに指示を出し、雑用を押し付けてくる。時には2人の言うことが食い違う場合もあり、どちらに従えばいいのか迷ってしまう。片方を無視すれば、「オレの指示に従えないのか」としかられる。自分としては部長補佐よりも課長のほうが優秀だと思うので、課長に従いたいが、そうもいかない。2人の顔色をうかがいながら仕事をするのは疲れる(27歳・メーカー開発)
ズバリ!対処法 「2人の間で調整してください」とハッキリ言う
よくある話で、組織では当たり前のように起こりがちな現象です。組織論の正論を振りかざすなら、格上の人、つまり部長補佐の言うことを聞いていればスジが通る。でも、矛盾する2つの命令を突きつけられたとき、課長の言うことのほうが信用できると思えば、課長の指示を取ればいい。それで部長補佐が怒るなら、「2人の間で意見を調整してください」というメッセージを伝えればいい。「文句があるなら課長に言うのがスジでしょう」と。口答えをすると生意気に思われる? そんなことはありません。上司にそこまで気を使う必要はないのです。組織の中で八方美人になろうと思っても無理です。
ケース3 思いつきでコロコロ変わる気分屋の上司に振り回されてギスギス……
パッケージ製品の開発をしていて、どう考えてもだれも使わないような機能を無理やり組み込もうとする。厳しいスケジュールだからメンバーは休日返上で取り組んだが、しばらくたって「やっぱりいらないだろう」と結論。いつもこんな調子でコロコロ言うことが変わる。振り回される部下の身になってくれ!(33歳・プログラマ)
ズバリ!対処法 いつもまじめにつき合わず、嫌なら適当に手抜きすればいい
こういう職場もありがちですね。上司も部下も、それが本当に必要かどうかを考える前に、やたらと仕事をやってしまう。やることが職場共通の価値観になってしまっているわけです。「やってもしょうがない」と思うとき、一生懸命にやればやるほど腹が立ちます。それなら、適当に手抜きすればいいじゃないですか。上司の言うことは、コロコロ変わるのが普通です。朝令暮改は悪いといわれますが、大きな方針さえ動かさなければいい。小さい部分は柔軟に変更したほうが結果的にうまくいくことがあります。職場では、悪しき習慣を変えようと思っても、なかなか変わらないものです。だれかが過労で休んだとか、何かエポックメーキングになるような兆候が表れたら、その時を逃さず、「いままでのやり方でいいのだろうか」と問題提起し、上司とケンカしたっていい。そうすると、意外にガラリと職場の雰囲気が変わるものです。
ケース4 身勝手で自己チューな上司を許せなくてギスギス……
SEのプロジェクトチーム5人に、新しいリーダーが着任した。そのリーダーは、(1)独断で方針を決める、(2)議論をするとすぐに感情的になる、(3)部下よりも自分の上司に気に入られようとするなど、欠点だらけでほかのメンバーとの折り合いが悪くなる一方だった。結局、身勝手な上司のせいでプロジェクトは解散の憂き目に(31歳・システム開発)
ズバリ!対処法 「上司はこうあるべき」という思い込みを捨て、ゴマをすれ!
ということは、(1)何でも話し合う、(2)クールで理路整然としている、(3)部下を第一に考える上司が「いい上司」であると考えているわけですね。しかし、部下にとって「いい上司」が、会社にとって「いい上司」とは限らない。エンジニアには受け入れにくい現実かもしれませんが、組織では正解が常に採用されるとは限りません。上司とトップとの関係や、お客さんとの関係も影響してきます。「こうあるべき」という思い込みは捨てたほうがいい。上司を批判するヒマがあったら、上司に自分を理解してもらうように自己アピールすればいい。「ゴマすり」と言われたって、いいじゃないですか。どの上司だって、自分に批判的な部下よりも、気心の知れた部下のほうが信頼できる。上司に気に入られたほうが、いい仕事を与えてもらうことができ、出世も早くなりますよ。
ケース5 無能な上司にあきれてギスギス……
システムトラブルが起きたため、上司が事業部会議に出席して釈明を求められた。しかし、しどろもどろでまともな返答ができず、結局、うちの部署が全面的に悪いことになってしまった。現場の担当者が何度説明しても、無能な上司には理解できない。「次回からは台本が必要だろう」と、同僚と真剣に話し合っている(30歳・システムエンジニア)
ズバリ!対処法 仕事に対する自分の理論体系を明確にしよう
台本を作ってもムダです。想定外の質問がくれば、結局しどろもどろになってしまうから。相手のロジックの甘いところを攻めるのが得意な人物って、どこの組織にもいるものです。しかし、責任の所在は、口の上手下手の力関係で決まるものではない。上司がしどろもどろだったかどうかにかかわらず、システムトラブルの原因は明確に突き止めることができるはずです。責任のなすりつけ合いをすること自体が間違いです。真剣に話し合うべきは、自分たちは何を目指し、どのような方法論で仕事に取り組んでいるのかという理念体系でしょう。そこさえ明確に説明できれば、あとは「アー、ウー」だって何だっていい。自分たちの仕事のやり方に自信がもてないから、上司を疑いの目で見てしまうのです。
その2 円満な上司と部下の人間関係を築くには
5つのケースに出てくる上司は、どれも嫌な上司ですが、だからといって、部下が上司を変えることはむずかしい。嫌な上司に振り回されないためには、まず、仕事における自分のアイデンティティを確立すること。自分はなぜ、この仕事をするのかという理由が明確なら、揺れなくなります。次に、自分の行為が相手にどのように受け取られるのかを常に予測して行動すること。予測が外れるのは、自分が自己中心的になっているから。相手の立場に立てば、予測は必ず当たります。組織の中で上手に生きるには、シミュレーションが必要です。上司も部下の反応をシミュレーションしています。シミュレーションが当たれば、「コイツは信頼できる」と思うけれど、信頼を裏切ると回復するのが大変です。そのためにも、「私はこういう方針でこの仕事に取り組む」というアイデンティティを明確にし、行動が首尾一貫していることが大切です。
「上司と部下のギスギス人間関係」解消10ヶ条
 1.  上司は常に正しくあるべきだという思い込みを捨てる
 2. 「腹心の部下」と思われたほうがトク。時には自分のためにどんどんゴマをすれ!
 3. 一度で思いが通じるとは限らない。コミュニケーションは繰り返しから
 4. 組織では最適解が常に採用されるわけではない。あきらめも大切
 5. 上司同士の争いは傍観して、巻き込まれるな
 6. 命令にいつでも100%真剣にならず、適当にやることも必要
 7. 悪しき習慣を変えるには、変化の兆しをとらえて上司に異議申し立てをする
 8. 上司の朝令暮改を悪と思うな。フレキシビリティに対して寛容になろう
 9. 仕事へのアイデンティティ――なぜ、自分はこの仕事をするのかを明確に
10.相手の立場で考え、自分の行動に対する相手のリアクションに予測を立てる
人間関係のギスギスを避けるコツは、相手の反応をシミュレートして行動すること――。何事も理詰めで考えるエンジニアなら得意だろう。仕事に打ち込む時間をジャマされないためのリスクマネジメントとして上手に使いたい。
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山田せいめい(総研スタッフ)からのメッセージ
前回ご好評いただいた「エンジニア人間関係ギスギス度チェック」の続編として、今回は上司と部下の間のトラブルに焦点を当てた対処法をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか? 今回ご協力いただいた今井先生のお話では、「人間関係悪化の原因は上司と部下双方にあるものなので、どちらか一方を責めても解決しない」とのこと。人間関係がギスギスしたときには一度冷静になって、相手ばかりでなく、自分自身の対応の仕方を見つめ直す時間も必要だと痛感しました。

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