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折衝力・コミュニケーション力を高めるには?手軽に実践できる「脳」の鍛え方

前回は、情報分析力・企画力を高める「脳」の鍛え方をご紹介しました。

今回は、顧客や取引先との折衝やコミュニケーションを円滑にできるようになるための「脳」の鍛え方に注目してみましょう。

 お話をうかがったのは前回と同様、医学博士・脳科学者であり、35万部を超えるベストセラーとなった『脳の強化書』の著者・加藤俊徳氏です。前回も触れたとおり、脳は機能別に大きく8つの「番地」に分かれています。

 

思考系脳番地…何かを考えるときに深く関与
感情系脳番地…喜怒哀楽などの感情表現に関与
伝達系脳番地…コミュニケーションや意思伝達に関与
理解系脳番地…情報を理解し、役立てることに関与
運動系脳番地…体を動かすこと全般に関与
聴覚系脳番地…耳で聞いたことを脳に集積させることに関与
視覚系脳番地…目で見たことを脳に集積されることに関与
記憶系脳番地…情報を蓄積させ、使いこなすことに関与

 

このうち、「理解系脳番地」を鍛えることで「情報整理・分析力」を、「思考系脳番地」を鍛えることで「企画力」を高められることは、前回お伝えしたとおり。
では、営業職や販売職をはじめ、人とかかわるあらゆるビジネスパーソンに欠かせない「折衝力」「コミュニケーション力」は、どの脳番地を意識的に鍛えればいいのでしょうか。

実は、人との折衝やコミュニケーションには、複数の脳番地がかかわってきます。順番に見ていきましょう。

 

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「聴覚系脳番地」を鍛え、人の話を「聴き取る」力を養う

老若男女、社会人、学生などさまざまな人の脳を見た結果、中小企業の経営者のほとんどは「聴覚系脳番地」が発達していることが分かりました。つまり「聞き上手」ということです。取引先や従業員の言葉をしっかりと聴くことで、適切な対応を行ってきた結果、経営者という地位にあるのだろうと推測できます。

商談の場で折衝を行ったり、職場の仲間とのチームワークを円滑に進めたりするためには、まず「正確に聴き取る」「大切なキーワードを聞き逃さない」ことが大切です。聴覚系脳番地を鍛えるには、次のような方法を取り入れてみてください。

 

●夜、ラジオを聴きながら眠りにつく

布団に入って眠りにつくときは、部屋は暗く、手足を動かさず、ものも食べていない状態。視覚・味覚・嗅覚・触覚などへの情報入力が低下し、意識は聴覚に集中します。つまり、就寝前は五感の中でも特に聴覚が研ぎ澄まされているわけです。この状態でラジオに耳を傾けながら眠りにつくことで、聴覚系脳番地が鍛えられます。

このほか、翌日の行動目標などを10回声に出してから寝るという方法も有効。「研ぎ澄まされた聴覚に働きかける」という意味では同じ効果があります。

 

●会議中の発言を速記する

ミーティングなどに参加する際には、率先して「記録係」を引き受けましょう。
出席者の発言をそのまま正確に記録し、速記しようとすると、聴覚系脳番地が活発に働きます。

しかも、記録が必要な発言と必要でない発言を瞬時に判断しなければなりません。スピーディに行わなければならないという緊張感もあいまって、聴覚系脳番地の働きが最大限まで高まるのです。

 

●ニュースを見ながらアナウンサーの言葉を繰り返す

テレビでニュースを見ているとき、アナウンサーの発言を正確にリピートします。これだけで聴覚系脳番地の刺激になります。

「聴いた内容を正確に覚える」という作業を繰り返していると、それが脳の中で習慣化され、一度聴いただけでも人の話を覚えられる回路ができるようになります。
メモを取れない場面でも相手の話を記憶できる、交渉の場面で相手の言葉を正確に繰り返すことができる…という、商談に必要な力が身に付くのです。

 

●店内で、離れたテーブルの会話に耳をすませる

多くの人が出席しているパーティで、騒がしい中でも話したい相手の声や聴きたい音は耳に入ってくる。この現象を「カクテルパーティ効果」といいます。これを、聴覚系脳番地のトレーニングに利用しましょう。

飲食店などに入ったとき、少し離れた席に座っている人たちの会話に耳を傾けてください。声が小さくて聴き取りにくくても、「聴こう」とする意思があれば脳は能動的に音をキャッチしようとします。これが聴覚系脳番地を活性化させます。

ただ会話を聴き取るだけでなく、その人たちの関係性や背景などを推測するようにすれば、なお効果的です。

 

●あいづちのバリエーションを増やす

人と話をしているとき、「あいづち」のバリエーションを増やすことを意識してみましょう。うなずく回数やタイミングを意識する、小さくうなずく・大きくうなずく、「えぇ」「はい」「なるほど」「そうですね」などの言葉を発する、などです。

このように、あいづちを使い分けようとすると、「この話に対する、より適切なあいづちは何か」を考えることになります。脳が自然に、相手の話にしっかり耳を傾け、細部まで理解しようとするようになるわけです。

 

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「伝達系脳番地」を鍛え、「言いたいことをちゃんと伝える」力を養う

商談や折衝にあたっては、相手の話を理解するだけでなく、自分が伝えたいことを相手に正しく理解してもらうことが重要です。そのためには、「伝達系脳番地」を強化しましょう。方法としては次のようなものがあります。 

 

●相手の「口グセ」を探しながら話を聴く

人と話すとき、相手の「口グセ」を探しながら会話をしてみてください。「キーワードを探しながら聴く」ということです。

「これは『伝える』というより『聴く』作業なのでは?」と思うかもしれませんが、実は人から情報を得ようとするときにも、「伝達系脳番地」は刺激されます。「口グセを探す」という目標を定めておくと、その言葉が見つかったとき、伝達系脳番地が反応するのです。

同様に、本やネットのニュースを読むときなどにも、何らかの「キーワード」を決めた上で読むと、同様の効果があります。

 

●知らない人に話しかけてみる

「知らない人に話しかけるなんてハードルが高い」と思うかもしれませんが、飲食店の店員さん、フィットネスクラブの更衣室で一緒になった人、トイレの清掃員さんなどに、ちょっとした雑談を持ちかけるレベルでいいのです。

見知らぬ人の場合、相手についての予備知識がなく、リアクションが読めません。こうした「ぶっつけ本番」のコミュニケーションを取ることで、伝達系脳番地はフル回転します。

 

●選択肢を3つ考えながら話をする

「頼んでおいた書類、いつできる?」ではなく、「頼んでおいた書類、いつできる?今週?来週?来月?」や、「何を食べる?」ではなく、「何を食べる?ラーメン?パスタ?牛丼?」といったように、人に質問するときに選択肢を準備することを意識してみましょう。

選択肢を準備するためには、相手に対する分析や伝え方の工夫が必要となるため、伝達系脳番地が刺激されます。「3つ」などと数を決めるのも有効。2つしか選択肢が思いつかなくても、「他に何かあるのでは」と考えるようになります。

このトレーニングを積んでおくと、プレゼンテーションや交渉の際などに「相手にとって必須条件」「相手にとってベストな条件」「現実的に相手が納得できる妥協点」といったように、相手が考えるパターンを先読みできるようになるでしょう。

 

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「感情系脳番地」を鍛え、相手の状況を察知する力を高める

人を見て、「何となくいつもと違うな」と感じることがありますよね。
このように、人の表情や雰囲気などから「違和感」を察知できるのは「感情系脳番地」の働きによるものです。

つまり、感情系脳番地を鍛えれば、相手の表情や仕草などから「気持ちの変化」を察知することができるわけです。営業や販売の現場で発揮できると望ましい能力ですよね。トレーニング方法はこちらです。

 

 ●まわりの人にその日の印象を伝える

人と会ったとき、相手の体調や心理状態を感じ取り、気付いたことを伝えてみてください。「疲れているみたい」「機嫌よさそうだけど、いいことあった?」「何か心配事でもあるの?」といったように。

服装、表情、声のトーン、肌の状態など、見た目からキャッチできる情報はたくさんあります。じっくり観察するのではなく、「一瞬」で印象を判断するのがポイントです。

 

●植物に話しかけてみる

自宅に置いている観葉植物などに「元気そうだね」「水が足りないかな?」などと話しかけます。もの言わぬ相手に話しかけることは、それだけで感情系脳番地を刺激します。

仕事から帰宅したときは脳が興奮状態にありますが、植物に話しかけることでクールダウンの効果もあります。犬、猫、熱帯魚など、ペットを相手にしてもいいでしょう。

 

<まとめ>
「聴覚系脳番地」を鍛え、人の話を「聴き取る」力を養う

  • 夜、ラジオを聴きながら眠りにつく
  • 会議中の発言を速記する
  • ニュースを見ながらアナウンサーの言葉を繰り返す
  • 店内で、離れたテーブルの会話に耳をすませる
  • あいづちのバリエーションを増やす

「伝達系脳番地」を鍛え、「言いたいことをちゃんと伝える」力を養う

  • 相手の「口グセ」を探しながら話を聴く
  • 知らない人に話しかけてみる
  • 選択肢を3つ考えながら話をする

「感情系脳番地」を鍛え、相手の状況を察知する力を高める

  • まわりの人にその日の印象を伝える
  • 植物に話しかけてみる

 

 加藤俊徳氏

f:id:k_kushida:20150918072440j:plain「株式会社脳の学校」代表。加藤プラチナクリニック院長。
発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。医学博士。

14歳のとき、スポーツを通じて「脳に秘密がある」と直感し、脳を知るために医学部を目指す。MRIを使った脳の鑑定技術、脳の働きや酸素の使われ方を観察する手法などを開発。胎児から100歳まで、多くの人の脳を診断した経験も踏まえ、「いくつになっても脳が成長する生き方・鍛え方」を見出す。『脳の強化書』(あさ出版)『仕事ができる人の脳 できない人の脳』(ディスカバー)『高学歴なのになぜ人とうまくいかないのか』(PHP新書)など著書多数。

EDIT&WRITING:青木典子 PHOTO:鈴木愛子