【藤田晋氏×兼元謙任氏×石渡美奈氏】トップ経営者が説く「失敗力の身につけ方」~組織編~

「失敗力」にフォーカスし、著名なビジネスリーダーを招いて、一般社団法人新経済連盟が開催した『失敗力カンファレンス』。当日、4つのテーマでパネルディスカッションが行われ、パネル2では、岩本隆氏(慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授)をモデレーターとして、藤田晋氏(株式会社サイバーエージェント 代表取締役社長)、兼元謙任氏(株式会社オウケイウェイヴ 代表取締役社長)、石渡美奈氏(ホッピービバレッジ株式会社 代表取締役社長)が登壇し、『失敗力の身につけ方』ついて語った。

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先に掲載した個人編は、3人の経営者が個人として失敗力をどう身につけてきたか、意識の持ち方や失敗した時の対処の仕方についてお届けした。今回の組織編では、失敗を恐れずチャレンジする企業風土作りや、失敗を組織としてマネージする仕組みなどについてお届けしよう。

>>【藤田晋氏×兼元謙任氏×石渡美奈氏】トップ経営者が説く「失敗力の身につけ方」~個人編~

石渡美奈氏:弊社は来年おかげさまで110周年を迎える会社なのですが、ちょうど父から2002年にバトンを渡されました。その際、「心を共にしながら、あなたを支えてくれる社員を育てなさい。あなたに渡すと決めた会社なので、目は離さないけど、手も出さなければ口も挟まない」と言われたんですね。

その父の一言が背中を押してくれ、わたくしはその第三創業で新卒採用にチャレンジしようと思いました。社会のことを何も知らない新卒入社社員たちを私がゼロから育てていくことに力を入れていこうと決めたんです。2007年から新卒採用を始めまして、現在約40名の社員のうち、過半数が入社1年目から8年目までの新卒採用で入社した社員です。そんな入社10年未満の若い社員たちに徹底して教えているのが基礎力、いわば人間力です。

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失敗というものを、どのように教えているかというと、まず弊社(のコミュニケーション)は、失敗や成功という言葉が“存在”しておりません。なぜなら、若いうちに「失敗した」と感じると、同じことに挑戦しづらくなるからです。例えば、若い社員がお客様に叱られると、次からそのお客様のところへ行かなくなってしまいます。逆に、「成功した」と思うと傲慢になってしまって、学ぶことをやめてしまう。ですので、弊社は失敗や成功という言葉を使わず、失敗も自分が努力をした結果、「成果」であると教えています。成果として失敗を理解し、次にどうつなげるか。トップである私はトップの、マネージャーはマネージャーの、若いリーダーは若いリーダーの許容範囲を持ちつつ、成果としての失敗をありとあらゆる方法を使って教えております。あとは明るくオープンな起業風土にしていこうと努めています。「やっちゃったな」と思うことを、明るく報告ができたり、語ることができて、そこに対して、先輩社員、上司たちがアドバイスをしたり、寄り添うことができたりという企業文化を創ろうと心掛けております。

岩本隆氏:ありがとうございます。それでは兼元さん、よろしくお願いします。

兼元謙任氏:15年前に起業したあと、しばらくお金が集まらなくて、支援をしていただける方がなかなか見つかりませんでした。そんな中で、サービスだけを続けて、どうしたらいいかと思っている時に、楽天の三木谷さんとサイバーエージェントの藤田さんにたまたま目をつけていただいて、ご出資いただけました。それ以前に、ある競合サイトから買収したいと高圧的な提案を受けた時に、すぐに断ってしまったんですね。社員が20人くらいいたんですが、小さなオフィスなのでそれが皆に伝わってしまって、席に戻ったら、「社長、辞めます」というメールが届いていました。大企業がくるから、「もう、(いよいよ)まずいだろ」と思って社員は辞めていったのだと思っていたら、しばらくしてから「相談してほしかったんですよ」と言われました。

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以来、コミュニケーションをものすごく大事にしています。弊社には、(業務上のQ&Aを社員同士でやりとりするサイトとして)“社内OKWave”がありまして、そこで社員に向けて「こういう提案があるのだけど、どうしたらいいか」と聞き、その提案に関連した失敗事例を特に多く聞くように心がけています。でも、失敗案だけでもダメなので、同時に「失敗をこう乗り越えた」というやりとりも出してほしいと伝え、そういった事例に表彰するという社内におけるQ&Aコミュニケーションを、システム化しました。

岩本隆氏:失敗力Q&Aというサービスができそうですね。では最後に藤田さん、お願いします。

藤田晋氏:サイバーエージェントは新規事業や社内の新しい制度となど、とにかく新しい挑戦を多くする会社でございます。新規事業をやる際は、必ずしも新会社を作るわけではないのですが、これまで94社の新会社を作っておりまして、残っているのは59社です。1年に何社も設立しているのですが、大体、成功確率はその中の60パーセント。失敗確率は40パーセントです。いわば、我々は60パーセントは成功して、40パーセントは失敗するんだと捉えていて、失敗がないと6割の成功は取れないので、十分リスクを背負ったうえで事業の投資を決めるという考え方をしています。

また、失敗した4割も、中長期的な会社の財産になっております。例えば2000年、十数億しか売上げがない時に7億円もテレビCMに投資したのですが、それを打ったことでCMの打ち方を学び、ただ打てば伸びるわけではないことを学び、効率が上がってきています。2002年から2003年にかけては、秋元康さんと組んで、フジテレビで番組をやりまして、テレビ番組を1つスポンサーしました。月にして約5千万円、トータルで3億円ほど投資したのですが、我々の事業にはまったくうんともすんとも言わなかった。その時もやっぱり、いろいろな人に「藤田がだまされているんじゃないか」とか、「ミーハーだ」とか言われたんですが、それを機会にさまざまな番組制作関係者やプロデューサー、放送作家とつながって、それがその後のアメブロにおける芸能人ブログにつながっています。アメブロに芸能人ブログが多いのは、あの番組をきっかけに、たくさんの芸能事務所と付き合いが広がって、その結果、ほかのブログではなく、アメーバを選んでくれている部分が大きいです。

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そうやって失敗は組織の財産になっているので、6割成功して、4割失敗することは、それが必ずしもムダではない。それをやっていくために、制度面と風土面から両方で可能なようにしています。まず、制度面ではCAJJ制度というのがありまして、失敗してもいいけど、これ以上は失敗したら打ち止めなというルールを作っています。ある一定の年数を過ぎて黒字化できないとやめる、といったルールが決まっています。一番危険なのはダメなばくち打ちの最後のように、「今度こそこれで逆転できる」と投資を膨らませていくときです。カジノで最後、一発逆転を夢見て賭け続けていくようなことが事業で起きないように、ストッパーとして、CAJJ制度が存在しています。

風土面では、挑戦した敗者にはセカンドチャンスをと謳っていて、挑戦してダメだったら、また、セカンドチャンスをあげるよと言っています。失敗した人を批判したり、昇格者から外すような風土があると、みんなびびってしまうので、トップであるわたくしも、自分がネット上で炎上して会社のブランドに傷をつけたりとか、最近で言うと新入社員の子が炎上した際に、僕のブログで全然問題ないと擁護したりして。新しいチャレンジをしたひとを責めないという雰囲気づくりを一生懸命やっています。

取材・文・撮影:山葵夕子

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