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キーワードは「自由度」「スピード」「マルチタスク」

Webエンジニア
「35歳限界説」は本当か?

SI業界を中心に長年囁かれ続けてきた、プログラマを中心とした35歳限界説だが、ここ数年で急速な成長を続けているWeb業界でも、果たして同様のことが起こっているのか?30代でも開発の第一線で活躍しているエンジニアの声等を中心に探ってみた。

(総研スタッフ/山田モーキン) 作成日:12.11.28

プログラマ歴40年、竹内郁雄氏が語るプログラマの能力と年齢の相関


早稲田大学理工学術院
基幹理工学研究科教授
竹内郁雄氏

最初に、プログラミング歴40年を超えて今なおコードを書いているという、“LISPハッカー”としても有名な早稲田大学教授の竹内郁雄氏に、プログラマの能力と年齢の相関について聞いてみた。

「1日18時間プログラミングをしていた45歳〜48歳の時が、今振り返ると最も充実し、クオリティの高いパフォーマンスを発揮していたね」と語る竹内氏。
1971年に日本電信電話公社電気通信研究所に入所してから、早稲田大学の教授となった今もプログラミングを至福の楽しみとしている。その竹内氏は、自身の経験から「35歳でプログラミングの才能が枯渇することはない」と断言する。

「そもそも35歳限界説は管理を重視する企業側の論理でできたもの。そう言えば“米国トップ100人プログラマ説”という、超ド級の優秀なプログラマも32〜34歳で現場を退いて、若手プログラマの発掘や指導育成にシフトするというまことしやかな風説がありました。これは自分で書くより、優秀な若手を見つけてその人に書かせた方が大局的観点では効率がいいというもの。しかしWeb業界では、個人の自由度が大きく組織のルールに縛られずに自分の力をダイレクトに発揮でき、かつユーザと直結するチャンスが当たり前にある環境だから、企業の論理とか、国家最高クラスのプログラマ養成の論理とかは通用しない。Webに関わるプログラミングでは個人の力やアイディアを好きなように発揮できる余地があり、一発当てることもできる。それもあってか今、私が関わっている未踏プロジェクトにはWebブラウンジング志向の若者の応募が増えているんです」

しかしその一方で、長く現場の第一線でプログラミングや開発に関わっていくためには、単に特定のプログラミングスキルを高めればいいというものでもないと竹内氏は指摘する。
「若いうちはひたすら自分が欲しいと思うモノを開発していてもいい。でも世の中のニーズや変化を敏感に読みとり、そこから必要とされるモノを予測し開発する才覚も、非常に重要。そのためにはプログラミングと全く関係のないテーマに関心を持つことと、そのための余力を常に維持し続けること。決して“プログラミングバカ”にははならないように。そうすればきっといつまでも、プログラミングやソフト開発を楽しめるような人生を送れるはずです」

今年春にはエジプトで授業を行うための教材として、自らプログラミングをして簡単なシステムを作ったそうだ。
「今66歳ですが、まだまだチョロッとは書けるなと(笑)。今後の目標はインテルマシン上で“LISPマシン”を作ることですかね。ただ4000ページ以上の資料を読み通さないといけないので、実現するのはかなり先になりそうだけど(笑)」

元SI出身。コードを書く楽しさを追求することで、将来の不安が消えていく CROOZ株式会社 技術統括本部 U.S氏のケース

年代問わずソースコードを見せて「これがやりたい!」と誰もが言える環境がある


CROOZ株式会社
技術統括本部 
U.S氏

今年春にWebサービス企業からCROOZに転職してきたU.S氏(34歳)。その転職理由を聞くと、U氏は「ズバリ、自由度の高さ」と答えてくれた。
「前職はWeb系の大手企業でした。入社当時はベンチャーでかなり自由に開発に携われていたんですが、組織が大きくなるうちにさまざまな“組織のルール”に縛られて。個人的にはどんなにキャリアを積んでも、あくまで現場の開発にこだわっていきたいという思いが強かったので、年齢やキャリアに縛られず自由に現場の開発に専念できる環境を求めて、当社への転職を決意しました」

入社後、ソーシャルゲームアプリの開発に携わったが、その開発の土台となるフレームワークやインフラの強化に強い関心を持つようになり、3カ月ほどで異動。今は20代の若手メンバー3名と共に企画・開発・実装、時にはエスカレーションノウハウの指導も含め幅広く関わっている。
「年齢や立場に関係なくやりたいことがあれば、まず自分でソースコードを書いて周りのメンバーや役員に直接見せ、やりたいことを実現していく。このように誰もが気軽にソースコードを見せ合い、評価し合う環境があることがいいですね。もともとSIに就職した経験もあるので、30代になると現場を離れてマネジメントに専念しなければならない状況も目にしてきました。しかし、自分にとってマネジメントは楽しそうではない。楽しく仕事をするため現場にこだわっているからこそ、今この年齢になってもこうした環境で開発に関われるのはありがたいですね」

正直なところ、このまま現場で長く活躍できるのか、将来に対する不安もあるというU氏。しかしコードを書き続け、楽しみながら自分のやりたいことを実現することで、不安は消えていくと当人は実感している。

全員がプレーヤー。キャリアデベロップ担当者が、キャリアパスをアドバイス


CROOZ株式会社
プライスレス本部
Y.S氏

「当社がエンジニア採用で最も重視するのは“社風やビジョンに合うか合わないか”の1点」と語るのは、CROOZ株式会社の採用担当であるY氏。基本的にCROOZは「役員以外、全員フラット」な組織体制、すなわち“全員プレーヤー”なのだ。
プロジェクト制だからこそ、ある時はディレクター、またある時はプログラマとして、そのときどきに応じ、柔軟かつ自由に活躍できる環境がある。

また近年の急激な成長に合わせて、この半年で100人のエンジニア採用を行っている。もちろん今回紹介したU氏のように、30代半ば〜後半のエンジニアも積極的に採用中だ。
「新卒採用も多く、社長も現在38歳。つまり全社的に若いメンバーが主体の中、これから先、プレーヤーとして活躍していくための“ロールモデル”になる存在も、必要になってきます。そのためには今後、若手だけでなく中堅・ベテランクラスで、開発現場でバリバリ活躍できるエンジニアの採用も行っていきます」

合わせて同社には社員一人ひとりのキャリアパスを考え、アドバイスする専門のキャリアデベロップ担当が在籍。30代後半のエンジニアと共に、これからも長く現場で開発ができるエンジニアキャリアを考え、実践していくという。

36歳。マネジャーの道を選びながらも開発マインドを持ち続ける 株式会社gloops(グループス)

35歳でSIからの転職を決意。開発へのこだわりとマネジャーとしてのやりがいを両立


株式会社gloops
ソーシャルゲーム事業本部
アプリケーション開発部
アプリケーショングループ
マネジャー
井村元宗氏

昨年10月にグループスに中途入社した井村氏(36歳)は、前職の大手SI企業で組込み系の開発やASP.netによるシステム開発など幅広く開発を担当してきた。しかしどんなにエンジニアとしての実力を発揮しても、“上が詰まっている”状況にあるため出世できない。また、Web案件もやってみたかったが、なかなかチャンスがない。そこでもっと自ら考え、サービスとして形にしていくことで正当な評価を受けられる企業への転職を決意したのだ。

「面接時に“5年後はどうしたい?”と問われて『40歳までは現場で開発を続ける覚悟です』と宣言しました(笑)。正直、若い人にはまだまだ負ける気がしてなかったから」
しかし入社後、1カ月ごとに新規リリースの開発に携わる中で、体力的な厳しさを感じ始めていたその時、上司からマネジャー就任への打診が。
「開発にこだわっていくつもりでしたが“君にしかできない”と言われて。もともと人から頼りにされたいという意識が、仕事上の大きなモチベーションとなっていたので、マネジャーへの道を選びました」

その後、社内の全16の開発チームを束ねるマネジャーとして、マネジャー未経験ながら、さまざまな工夫やアイディアを発揮して開発チーム全体の底上げを図っている。
しかし、決して開発に対するこだわりや関心が消え失せてしまったわけではない。
「例えば先日、企画から開発職にキャリアチェンジしたい若手社員に対して、初歩的なプログラミングを教えたり、カスタマーサポートから依頼された管理画面の開発を自分がやったりもしました。自ら手を動かしたり、最新技術の知識を積極的にキャッチアップしていかないと、高いマネジメント成果を上げられないことを、マネジャーになって実感しました。だから例えわずかな時間でも、必ず何らかの開発に携わり、自分の中で常に最新の情報をアップデートできるようにしています」

井村氏が語るように、特に技術革新のスピードが早いWeb業界において、マネジメントだけを専門としていては、決して高い成果を生み出すことはできない。だからこそ、例えマネジャーの道を選んだとしても、プログラミングや開発に対する関心やこだわりを高く持ち続けることが重要になってくる。

44歳でイベント実装開発を担当。中堅・ベテランエンジニアも求める理由


株式会社gloops管理本部 人事部
人事グループ
藤本友仁氏

ソーシャルゲーム開発で有名なグループスは現在、430名(2012年10月現在)の社員がいる。その多くは20代の若手が主体である一方で、最近の中途採用では先ほどの井村氏をはじめ、30代中盤以降の中堅・ベテランエンジニアの採用例が増えている。
その理由について、人事グループの藤本氏は「企業、そして現場サイドの成長の潤滑油になるからだ」と語る。

「若手に頼り過ぎると、仮に技術は高かったとしても、場数ではベテランと比較して劣る事が多いため、いざという時に場数の差がでます。ですから現場での経験が豊富で、みんなの兄貴分的な人財も今後、グループスが成長していくためには絶対に必要なのです。そういった人財がいれば、大きなトラブルも瞬時に解決できる事もあるでしょうし、若手の育成面でも非常に期待できます。しかも、そういった人財は技術へのこだわりも高いのに加えて、『若いヤツなんかに負けるか』という負けん気も強く、当社が求めるエンジニア像である“自ら手を動かす事が好きで、新しい技術を貪欲にキャッチアップできるタイプ”とピッタリだったりもするのです。ただし仮にベテランであったとしても『マネジメントだけしたい』という方は、当社には合わないと思いますね。」

事実、今回紹介した井村氏も当てはまる。また、最近採用した44歳のエンジニアは、国内でも十数名しか認定されていない、Microsoft MVP for Visual C#を保持しており、その豊富な知識とスキルを活かして早速同社の人気ソーシャルゲーム「ガーディアンブレイク」のイベント実装を手がけ、社内の若手メンバーに大きな刺激を与えているそうだ。
「当社では“ユーザーに面白いゲームを届ける”ということがメインですから、それを目指す上で、新人もベテランも一切関係ありません。
今後は“プレイングマネジャー”のような、従来の『スペシャリスト』『マネジャー』2つのキャリアに加え、年齢に関係なく、その人のスキルや志向にマッチしたポジションで活躍できる環境を整えていければと考えています。」

「自由度」「スピード」「マルチタスク」を活用できるWebエンジニアなら、年齢に限界はない

今回の取材を通して見えてきたのは、基本的にWebエンジニアとして開発に関わっていくことに対する、年齢の壁は存在しないということ。しかしそこには、スピーディに自分のアイディアをコードに起こして形にしていったり、技術一辺倒ではなくマネジメントなど複数のスキルを活かしていくなど、年齢を超えて活躍するための条件はある。
個人当たりの裁量権や責任の範囲が大きいからこそ、年齢を問わずWebエンジニアとしてのプロ意識を持って開発に取り組んでいくことで、35歳限界説は無意味なものになっていくのかもしれない。

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