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著作権保有、成果報酬型の独自ビジネスを展開するシンプレクス
ITと金融のプロを目指す若手コンサル成長の軌跡とは
金融フロンティア領域におけるソリューション提供で高い実績を誇るシンプレクス・コンサルティング。金融取引のトレンドを見据え、生み出すソリューションは、数々のヒットを記録。その開発最前線で活躍するマネージャーの成長を支えた環境の秘密を探る。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:11.10.14
「ITと金融の両方のプロフェッショナル」であることをひたすら目指した
菊池 俊輔氏
株式会社シンプレクス・コンサルティング
リテール&カスタマイズド・ソリューション グループ
プリンシパル

菊池 俊輔氏

 シンプレクス・コンサルティング(以下、シンプレクス)が今年6月に発表した「Voyager Trading Cloud(ボイジャー・トレーディング・クラウド、以下Voyager)」は、金融業界ではまだ導入実績の少ないクラウド型サービスとして注目を集めている。Voyagerは、FX(外国為替証拠金取引)に代表されるインターネット取引の増大と個人投資家の台頭、それに伴う金融商品の多様化といった、ここ数年来の市場のニーズを受けて開発されたクラウドシステムである。プラットフォームには同社が数理技研と共同開発したトランザクション・メッセージング基盤「Galaxy」を採用し、すべてのデータ処理をサーバーのメモリ上で完結させるオンメモリデータベースを導入している。

 ネット取引で重要な注文執行レイテンシー(待ち時間)は最短8ミリ秒、注文処理件数は1秒あたり最大1,000件と、レイテンシー100ミリ秒だった従来の同社のトレーディングシステムと比べても、大幅な高速化を実現している。ビジネスモデルとして基本料金にインセンティブ(ユーザー数、出来高、顧客の収益全体などに連動)を課金する「成功報酬型課金」を採用している点も独特である。

 シンプレクスでVoyagerの開発を統括しているのが、菊池俊輔氏である。
「Voyagerは当社内では、第4世代のFX取引システムにあたります。当社はFX取引システムについては早くから取り組み、私が入社した2005年の第1次ブームの頃には、すでに第3世代のパッケージ開発が進んでいました。その途中から開発に関わり、順調に導入実績を伸ばすのに立ち会ってきました。今年の9月からそのクラウド版であるVoyagerの開発責任者になりました」

 現在の肩書きは「プリンシパル」。同社では「パートナー(執行役員)」に次ぐタイトルである。昇進スピードは極めて早い。
「当社ではITと金融のプロフェッショナルであることが、全エンジニアに求められます。これを徹底したこと」を、昇進の理由と自己分析する。しかし、元々金融システムが専門だったわけではない。

 大学卒業後は、200人規模の中堅SIerに入社。その後、小さなITベンチャーの創業メンバーとなった。
「なかなか芽の出ないベンチャーでした(笑)。小さな会社でしたから、新しい案件をこなすためには、急いで勉強して知識を蓄えなければならない。当時は2週間あれば案件がスタートできたし、2カ月もあればもうその道のプロみたいな顔をしていました」
 集中力では人に負けないものがあったのであろう。シンプレクス入社後に、猛スピードで金融知識を吸収していったことは想像に難くない。

成果物には自社の著作権。エンジニアのモチベーション向上の秘密

 エンジニアを成長させる環境。これはどんな業種においても、最もエンジニアの関心を呼ぶテーマである。菊池氏はシンプレクスにおけるそれを、「上席の人ほど合理的に判断する」という言葉で表現する。
「システムのトラブルなど突発的な事態をどうジャッジしてさばくのか。その判断が、社長の金子英樹氏を筆頭に、上に行けば行くほど冴えている。これは会社組織のあり方としては健全だと思います」

 当然のことながら、システム開発の現場にも、ファクトを積み上げ、論理的・合理性に導かれた解が重要である、という気風があるという。合理性・論理性に貫かれた判断力というのは、特にエンジニアにとってはシビれる要素である。そのように自分も技術を積み上げていけば、必ず成長できるという実感が沸いてくる。
「言葉を換えていえば、“かっこよさ”にこだわるっていうんですかね。シンプルなロジックに美しさを見出し、システム設計の考え方にクールさを求める。そういうところがシンプレクスにはありますね」

 もう一つ、エンジニアのモチベーションを引き出す要素に著作権の自社所有という、同社ならではのビジネスモデルがある。パッケージソフトウェアは著作権を開発者が留保し、ユーザーは単にその使用許諾権を購入しているにすぎないというのは、ソフトウェア業界の常識である。しかし、SI要素が多い企業向けソリューションでは、開発ベンダーが著作権を主張することはまれである。システムの著作権はあくまでも発注側の企業にあり、受注側はその開発のために労務を提供するにすぎないというのが一般的である。

 しかし、それではソフトウェア業界、ソフトウェア技術者の地位はいつまで経っても向上しない。そのことを痛感していた同社の創業メンバーたちは、創業当初からシステム著作権の自社所有を打ち出し、それを独自のビジネスモデルとして展開してきた。

 そのオリジナリティへのこだわりは、システムを構成するコンポーネントやライブラリの自社開発につながり、さらにライブラリ化は開発効率の向上へとつながっていく。ライブラリが充実してくれば、顧客仕様の部分は新たに開発するにしても、その他の多くの汎用的な部分は流用も可能になる。開発すればするほど、他業務、他業態への横展開をすればするほど、収益率を高めることができるというビジネスモデルである。

「もちろんお客様のために開発しているというのが大前提であるが、最終的にはその成果物は自分たちのもの、という意識が私たちにはあります。だからこそ、細かいところまで気を配り、丁寧に仕上げる。そういう意味で、著作権所有は明らかにエンジニアのモチベーションのアップにつながっていると思います」と菊池氏は言う。

 彼自身、以前からシステム著作権の重要性を認識していたエンジニアの一人であった。前職のITベンチャーでは、顧客に対して著作権交渉で渡り合ったこともある。だからこそその苦労もよくわかる。あるとき著作権自社所有モデルを貫いている金融ITベンダーがあると聞いて、興味を持ったのがシンプレクスへの転職のきっかけでもあった。

エンジニアーズ・ハイ。苦労よりも「すんなり決まる」ほうが、楽しいに決まっている

 小さなプロジェクトで小さな成果を上げて、次第にそのプロジェクトサイズを大きくしていくことで、エンジニアは成長する。ときにはものすごくハマるプロジェクトもあって、その修羅場体験がエンジニアを鍛える──一般にはそう思われがちである。
「でも私はちょっと違っていて、下手に苦労するよりも、すんなりと導入できて、そういう案件がどんどん増えていくプロセスのほうが、達成感がありますね」
 と、菊池氏はさらりと言いのける。

 パッケージソフトウェアは、第一号顧客への導入時が最も手間がかかる。改修を加えた次のバージョンも、次の顧客からは「うちが求めているのはこんなシステムではない」と度々ご意見やご要望をいただく。しかし、導入件数を増やすうちに、金融業界のさまざまな課題を解決するツールを、パッケージの中に機能として取り込んでいくことができるようになる。4件目の頃には大分ご意見やご要望も少なくなり、5件目には「もうこのままカスタマイズ不要で使えますね」とまで言われるようになる。

 パッケージの完成度、ソリューションの成熟度が増せば増すほど、導入は「すんなり気持ちよくできる」。それがたまらない昂揚感を菊池氏に与えるのである。あらゆる顧客のあらゆるニーズに応えていけるという感覚が、体の中から湧き出してくるのかもしれない。ランナーズ・ハイならぬ、一種のエンジニアーズ・ハイの状態と言えるかもしれない。そこでは、自分たちが開発・導入したソリューションが、確実に会社に利益を与えているという実感も得られるのである。

 もちろん、その高原状態は永遠に続くものではない。導入件数が増えるたびに、制度や法律改正に伴うメンテナンス作業は増えてくる。新しい金融テクノロジーが開発されれば、それを取り込んだ新しいバージョン開発に取り組まなければならない。最高だったテンションに少し陰りが見えることもある。しかし、最高の気分の状態を知っているからこそ、踊り場状態をふんばり、次のステップへと駆け上がることができるのである。

底に秘めた野望、技術に裏付けられた上昇志向が人と会社を強くする

「かっこいいシステムを開発したい、それを通して高い評価を得たい。そういうエンジニアの思いを前提に、この会社の環境や制度が組み立てられている」──菊池氏はシンプレクスという会社をそう評する。

 自ら業績を上げて、正当な評価や、それに見合う報酬を得たいというのはビジネスパーソンとして当たり前のことのようにも見えるが、草食系と呼ばれる人たちが増えた世の中では、意識して強いマインドを持たないと、周囲に流されてしまう危険性もある。「自分の技術はこの程度だから、給料もこの程度でしょ」と自らに壁を設けてしまうエンジニアも少なくない。
「最近の新卒と面談して、30歳の頃にはどうなっていたいですかとよく聞くのですが、仕事の裁量範囲もそこで得られる収入のイメージも、なんだかみんな小さいんですよね」
 と、菊池氏は嘆く。

 彼自身は20代の頃から強い上昇志向の持ち主だった。「お金も大好きでした」と躊躇なく答える。「30歳には年収1000万円」というのがとりあえずの目標。むろんそれは、単に有名企業でブランドを見せびらかせるという意味での上昇志向ではなく、たしかな技術力をベースに日本のITを変えていくという具体的なビジョンに裏付けられたものだった。シンプレクス入社後、6年間で一気にプリンシパルまで駆け上がったが、上へ上への情熱はまだ少しも冷めていない。

 Voyagerの成否にはいま社運がかけられている。その開発チームを率いる彼の責任は重大である。しかしその責任の重さは、何年か後にパートナーというタイトルをめざす菊池氏にとっては、ちょうどよいぐらいの、快適なプレッシャーのようにも思えるのである。

株式会社シンプレクス・コンサルティング リテール&カスタマイズド・ソリューション グループ プリンシパル 菊池 俊輔氏

中堅SIer、ITベンチャー企業を経て、2005年シンプレクス・コンサルティングに転職。職位はシニアスタッフから始め、6年でプリンシパルまで登りつめる。金融取引クラウドサービス「Voyager Trading Cloud」開発統括担当者。33歳。

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