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最新金融工学・業務知識、最先端IT技術を誇るエキスパート集団
金融フロンティア領域TOPシェアのSimplexが採用強化
金融機関のフロンティア領域におけるITコンサルティングやシステム開発で大きなシェアを誇るシンプレクス・コンサルティング。即戦力のITスキルと金融分野への興味をもつITエンジニアの採用を強めている。その背景には何があるのか。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:11.05.19
金融フロンティア領域にITの力で挑む

 シンプレクス・コンサルティングは、最先端の金融業務知識とITを結び付けた金融ソリューション・サービスを提供するコンサルティング企業だ。中でも、「金融フロンティア領域」と呼ばれる業務領域のシステム開発を得意としている。金融機関でいうフロント業務とは、例えば、株式、債券、デリバティブなど金融商品のディーリングやトレーディング業務を指す。後方事務処理業務を指すバック業務に対する言葉だ。バック業務がどちらかといえばコスト削減の対象になるのに対して、フロント業務では金融機関自らの収益最大化を目的とする。このフロント業務の中でも、特に戦略的なIT投資によって収益向上を図ろうとする領域を「金融フロンティア領域」と呼び、攻めのIT投資が行われる。いずれの金融機関も、ここで収益を拡大し、事業を拡大したいと狙っている。

 同社が手がけるのは、一つには金融機関のディーラー(取引担当者)が使うシステムの構築業務。また、個人投資家向けにディーリングシステムをASP型で提供するビジネスも2006年からスタートしている。実績としては、債券ディーリングシステムでは、大手・準大手と呼ばれる証券会社の10社中9社が同社のシステムを採用している。またFX(外国為替証拠金取引)取引システムは、「くりっく365」(東京金融取引所)参加24社中9社、「大証FX」(大阪証券取引所)参加13社中10社が同社のシステムを利用している。圧倒的なシェアである。

よりハイパフォーマンスの新世代パッケージ開発に注力

 金融フロンティア領域におけるシステム開発といっても、これだけではピンと来ない読者も多いだろう。業務の一端を一人のITコンサルタントの仕事内容をたどることで紹介してみよう。登場するのは、リテール&カスタマイズド・ソリューショングループの伊東嗣音氏だ。伊東氏が担当するのは、FX取引のリテール・ソリューションと呼ばれる領域。リテール・ソリューションとは個人投資家がパソコンや携帯電話から簡単にインターネット取引できる投資環境のことで、これをパッケージ化してFX会社に提供している。

 FX取引には取引所証拠金取引と店頭証拠金取引(相対取引 Over The Counter=OTC、ともいう)がある。OTCは取引所を介さずに、売り手と買い手が直接取引する形をとる。
「当社のパッケージは取引所取引、OTCのいずれにも対応していますが、私が開発を担当しているのは、OTCの部分です。5年前に最初のパッケージとして開発されましたが、この5年というのは、FXの知名度が飛躍的に向上し、口座数、取引量ともに拡大してきた時期。昔とは違って、スプレッド競争や手数料競争が激しくなり、FX会社の収益構造も大きく変わりました。それに対応してパッケージを作り直す必要が出てきました。社内的には新世代FXパッケージの開発と呼んでいます」(伊東氏)

 開発の方向性はよりハイパフォーマンスで、高負荷のトランザクションに耐えるもの。それによって、FX会社がより高い収益を上げられることをめざす。
「レイテンシーやパフォーマンスを高めるためには、ボトルネックを発見して、それを解消することが欠かせません。当社のパッケージは5年前の初期リリースから、マイナーバージョンアップで機能追加や改善を繰り返して現在に至ります。それを飛躍的にパフォーマンス向上させるには、アーキテクチャやミドルウェアのレベルから刷新する必要がありました。単純なエンハンスでは無理なんですね」と伊東氏は言う。

 現行のパッケージは、いかに多くの顧客に短期間で導入してもらい、シェアを上げていくかという狙いをもっていた。そのため、ミドルウェアなどにオープンソースプロダクトをフル活用して、アーキテクチャを構築していたという。

伊東 嗣音氏
株式会社シンプレクス・コンサルティング
リテール&カスタマイズド・ソリューション グループ
プロフェッショナル

伊東 嗣音氏
オープンソースに頼らず、自前でミドルウェアを開発

 しかし、オープンソースに頼っていると、それ自体がボトルネックになることがある。
「このミドルウェアを使っていると、ここで例えば何十ミリ秒とか、何百ミリ秒がかかってしまうけど、これを使っている限りはどうしようもない。つまり、そこがボトルネックになってしまうのです。それを解消するために、主にエクイティのシステムで実績のある自社開発の高速メッセージングミドルウェアを採用しよう。金融取引で一般的に使われているFIXエンジンも自分達の手で構築して、何か問題があったらチューニングができるようにしておこう。そういう方向性で土台からの作り直して急いでいるところです」

 オープンソースを活用することで開発コストを低減することは、金融システムでも一般的や開発手法になりつつある。しかし、同社はあえてそこだけにはこだわらない。
「オープンソースの生産性や汎用性を捨ててでも、自分たちが得たいものを取りに行くことがある」(伊東氏)というのだ。これは、ミドルウェア開発を踏む内製化の技術力についての相当な自信があることの現れでもある。

「もともと当社のサービスの提供の仕方として、パッケージを横展開する形と、スクラッチからのSI開発の2つがありました。パッケージは効率化が重要、SI開発は技術力勝負。その両面のスキルをもつエンジニアが社内に混在しています。今回の新世代パッケージのプロジェクトでは、それらのエンジニアをシャッフルして最適なメンバー構成を組むことができました」(伊東氏)
 この最強メンバーたちのモチベーションを駆り立て、困難な課題を乗り越えさせるためには、伊東さんら開発リーダーの手腕が問われている。

金融業務知識はゼロ。エンジニアとしての専門性を身につけるために転職

 伊東氏の前職は独立系SIベンダー。インターネットショッピング、求人サイト、旅行代理店の予約システムなど、主にeコマースサイトの構築にかかわることが多かった。大学は物理系だが、自宅でインターネット技術を独学。就職すると業務のかたわらWindows用のフリーソフトを書き、それが「窓の杜」に紹介されたこともある。プログラミングの面白さに前のめりになり、スキルはみるみるうちに向上していった。入社2年目からチームのリーダーを任されるなど、社内でもその存在は目立った。

「ただ、会社が2次請け、3次請けの立場だったので、お客様の思いに直接触れる機会が少なかったんです。プライムのSIerやコンサルティング会社から出てくる仕様が、本当にお客様の求めているものなのか、疑問に思うこともありました。一定のスキルを身につけた先輩たちがどんどん辞めていくような会社でもあり、自分もまだ技術的に中途半端だと思うのに、管理職に落ち着きそうな状況になって、これはまずいと。環境的によりレベルの高いところに自分を置いて、そこからの再スタートというか、ステップアップを試みたいと思ったのが、転職の動機です」(伊東氏)

 前職のSIerにも、金融システム開発部門はあったが、伊東氏はそこには属していない。金融システムの知識があったわけではない。FX取引自体、シンプレクス入社までは試したことさえなかった。そもそもシンプレクスが金融システムで高いシェアをもつ企業であることさえ全く知らなかったのだ。
「いろいろなシステムを経験したことが自分の肥やしにはなっていますが、逆に言えば、何か一つに特化したものがない。このままだと“何でも屋”になってエンジニアとして薄っぺらくなってしまうという危惧もありました。業務知識がないことは不安でしたが、何かの業務に特化した企業に所属して、『ここに関して私はちゃんと語れます』みたいなものを身につけたかった」と、シンプレクスへの応募の動機を語る。  会社もまた「業務知識はなくてもOK。それは入社後十分学べる」というスタンスだった。

自社パッケージに触れるうちに、金融システムの面白さに開眼

「業務知識よりも、これまで培ったITスキルを試される選考だったと思います。今までやってきた勉強もゼロじゃないし、新しい勉強もさせてもらえる環境だと思いました。入社後に、会社のプロダクトに触れて、そのパッケージそのものが、金融取引の業務の動きやシステムの流れを大きく物語っていることがわかりました。それを読み解くだけでも、非常に勉強になりました。金融って面白いなとだんだん引き込まれていきましたね」

 これまでのウォーターフォール型ではなく、アジャイル型に近い開発手法。これには最初は戸惑ったがすぐに慣れた。
「パッケージとして機能を追加するところには、みんなでやいのやいのと追加機能を足していって、一つのプロトタイプができると、それを横展開していく。導入企業様向けに担当チームが分かれていても、隣のチームがぜんぜん他人事ではなくて、こっちで何か改善事例があったら、そっちにも横展開するとか、そういう情報共有が非常に緊密に行われていて、これが効果を出しています。チームごと、機能ごとのノウハウを共有しながら、互いを育て合うという文化があって、この部分はスゴイところだなと思いますね」
 と、伊東氏は、今ではすっかり肌になじんだシンプレクスの開発の特色を語るのだった。

株式会社シンプレクス・コンサルティング リテール&カスタマイズド・ソリューション グループ プロフェッショナル 伊東 嗣音氏

1979年生まれ。大学での専攻は電子物性工学。独立系SIerでeコマースサイト構築などを7年経験。2008年9月に同社へ転職。現在は、FXリテール・ソリューションの開発リーダーの一人。

<人事担当者に聞くITエンジニア採用の背景>金融フロンティア領域に特化した責任のあるITコンサルタント企業 金融知識は不問。海外市場展開を睨み、経験豊かなITエンジニアを求む
高いITスキル、チームリーダー経験を重視

 当社は金融フロンティア領域におけるITコンサルティングとシステム開発に特化した、国内では希有な存在。金融とIT両方について非常に高い専門性を持っているということを強みとしています。

 金融については、金融機関のビジネスの方向性、取り扱う金融商品を含む業務、金融工学といった幅広い金融知識を持ち、ITについては、コンサルティングからシステム開発、保守運用にいたるまで顧客の課題を解決するための一連のプロセスに全て携わる一貫開発体制をとっていることが大きな特徴です。

ただ、最初から全てのスキルをもっている必要はありません。必要なのは、しっかりとしたITの知識と経験です。我々はポテンシャルを見て選考を行っています。例えば、全く業界の異なる製造業のシステム開発を経験してきた人であっても、どれくらいの実績を残してきたのか、何を身に付けてきたのかということから、今後、我々の領域で活躍するポテンシャルを持っているかを見ています。

 若くしてチームリーダーや開発者としての実績を残している人は世の中にたくさんいると思っています。ただ、その人たちがさらにチャレンジをする環境があまりにも少ないのではないでしょうか。顧客からプライムで案件をとり、常に顧客と接点を持ちながらプロジェクト遂行している立場にあるからこそ、チャレンジできる環境を提供できると思っています。

山田 有孝氏
株式会社シンプレクス・コンサルティング
人事グループ
グループヘッド

山田 有孝氏 1976年生まれ。外資系ITコンサルティング企業にてシステム開発とコンサルティングを経験後、2003年シンプレクス・コンサルティングに転職。現場にてPM業務を経て現職。
グローバル市場に打って出る

 当社のミッションは「イノベーションを世界へ」 です。サービスや製品を見た人たちが「これはシンプレクスだからできたんだ」と思えるような、私たちにしかできないイノベーションを世界へ発信していきたいと思っています。

 現状、国内では金融フロンティア領域でトップシェアを誇っていますが、2013年以降に考えているグローバル進出では、より多くのクライアントに感動を与えられる会社になりたいと考えています。グローバルでイノベーションを起こせる会社になることは非常に大変なチャレンジだとは思いますが、同じ思いを持ってシンプレクスの次の世代を一緒になって作ってくれる仲間を募集しています。

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