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絶対に営業任せにしない、ときには顧客と激論する…

これが顧客志向SEの仕事哲学だ!

SEにとって、顧客志向を持つことの重要性についてはよく叫ばれているものの、具体的な顧客志向型ワークスタイルとはどのようなものなのか?普段から顧客志向を重視した働き方を実践している2つの事例を通して探ってみたい。

(総研スタッフ/山田モーキン) 作成日:11.03.16

営業任せにせず、気持ちの余裕を持ちながら進んで顧客を理解しようとする姿勢が、顧客志向型SEの絶対条件
大手SI企業勤務のSE、藤田氏のケース

業務フローを把握しつつ、顧客に対して的を射た質問をできることが顧客志向型ワークスタイルの第一歩



藤田晶久氏
某大手SI企業に勤務する傍ら、中京大学企業研究所の研究員として活動。昨年、「現場感覚の経営組織論 システム・エンジニアの顧客志向」(ブイツーソリューション刊)を出版。「顧客志向の組織運営」をテーマに、現役SEの視点から研究している。

大手SI企業でメーカー向けのERP提案や開発を担当して14年目を迎えるSE、藤田氏は「顧客志向と組織の運営」をテーマに独自に研究、昨年には書籍を出版するほど、顧客志向について長年考察している。
「よく顧客志向という言葉は現場で耳にする機会が多い一方、顧客志向に関する専門書は意外と少ないので、それなら自分で出してしまおうと考えたのが、出版した経緯です」と、出版理由について語る。

その藤田氏が、独自の研究や長年の現場経験から得た、顧客志向型SEの条件としてあげているのが「顧客のニーズを深く理解するため、営業に任せず“的を射た質問”ができること」ことだという。
「顧客のニーズを齟齬がなく、正確に読み取る上で業務内容や、現状の課題、最終的な目的についてヒアリングする必要があります。そのためには営業任せにせず、自分の足や頭、そして口を使って積極的に相手のことを理解しようとする行為を実践すること。その上でなければ顧客に対して的を射た質問はできないのです」
普通のSEなら、ある程度は営業任せにしてしまうような領域にも積極的に踏み込んで、顧客を理解しようとする姿勢が何より必要なのだ。
では具体的に、どのような方法で顧客に接していけばいいのだろうか?
「まず業務フローをきっちり押さえておく必要があります。例えば私が担当しているメーカー向けのERP導入事例では、工場の生産ラインから事務、物流など各部門でERPに求めるシステムや使い方は全く違います。その点を把握した上で質問をしないと“質問の意図がわかりません”と顧客に一蹴されてしまうのです。
ただし顧客の場合、システムに関する知識が乏しいケースが多いので、的を射た質問だけを繰り返しても、こちらが必要とする情報をすべてキャッチできるとは限りません。そこで一つの例としては、『他社事例をあえて紹介する』のが効果的。同じ業界で実際にERPがどのように活用されているか説明することで、ぼんやりしていた要求が具体的になるのです」。

業務フローをひと通り把握した上で、顧客のニーズを正確に把握するための質問や事例紹介をしていく必要の重要性を、藤田氏は指摘している。

顧客志向型ワークスタイル実践のキーワードは「我が身を振りかえって心に余裕を持つこと」&「担当業務以外の相談を受けること」


基本的に顧客の要望にはすべてこたえていくことが、顧客志向の条件であることはもちろんだが、中には納期間際に追加機能要求が出た時など、要望にこたえることが厳しいケースも多々あるのがこの業界。そのような場合、SEとしてどのように対応していくことがベストなのだろうか?
「私たちの目的は、『プロジェクトを成功させる』ことにあります。つまり受注時に設定した予算・納期・人員で、所定の目的を達成すること。その上で追加機能の要求があった場合の対処法として私が実践しているのは、『優先順位の設定』。追加機能がかなり重要である場合、そちらを優先させる代わりに受注時に設定された機能開発、例えば『この月次処理機能は、月末に納期をずらして問題ありませんよね』というように代替案を提示することです。もしそれでも問題が解決しなければ、一人で問題を抱え込もうとせず、上司や営業担当者を巻き込み、組織として顧客を説得させる方向にもっていくべきです」

以上の点を踏まえ、改めて顧客志向型SEにとって必要不可欠な条件について藤田氏に聞いたところ、「我が身を振りかえって心に余裕を持つこと」&「業務と直接関係ない相談を受ける」ことだという。
「顧客志向を突き詰めていくと、お客様の身になって対応するためには自分の気持ちに余裕があることが必要不可欠。多くのSEは多忙を極めているケースが多いと思いますが、余裕がなくて現場が疲弊していく中で、顧客ではなく目の前の開発にしか目がいかない現場を数々目にしてきました。少しでも余裕を持つ努力をすることで、新しい考え方が浮かび、提案することができます。
そうやって顧客との信頼関係を深めていけば、直接業務と関係ない相談を持ちかけられるようになります。そこでまた丁寧に対応すれば、次の新しい案件受注のチャンスにもつながりますし、SEが顧客志向を貫く最大のメリットを享受できるはずです」

顧客志向型のワークスタイルを極めるためには、とにもかくにも顧客の信頼を勝ち取ること。そのための努力を惜しまないことが、現場のSEには求められている。

「逆提案」していくことで、顧客の期待を上回る成果を生み出していく
株式会社イトクロ K氏のケース

逆提案をきっかけに「言われたものをつくる」から「より良いものをつくろう」への転換


株式会社イトクロ
技術部
K氏

昨年末に、Webプロモーション支援や各種メディア・アプリ開発を展開しているイトクロに転職したK氏は前職での経験から、顧客志向を貫くための努力を日々、積み重ねているそうだ。
「前職では、携帯電話向けの組み込み開発を担当していました。顧客は海外も含めた通信事業者と、端末メーカー。例えば新機種を開発するとき、事業者側は予定する時期に新機種を出せるかを重視するのに対し、メーカー側は少しでも多く売れる機種を開発して、利益を生み出すことを重視します。そのため、前者には一方で『早く出せ』と言われ、後者には『質の高い機能を付けろ』といわれる。まさに矛盾した要求の解決を同時に求められる立場にありました」と、その時の厳しい状況を振り返るK氏。

通常、現場のSEは顧客の要求を満たす開発に没頭するケースが多い中、K氏はいち早く「エンドユーザーが、要求してきた機能をどう活用していくのか?時には顧客からの提案を否定するくらい、その目的を重視しながら開発しなければならない」という視点を持った。そこでK氏が取った行動が、顧客への「逆提案」だ。
「あるプロジェクトで、事業者もメーカーも含め全く開発経験のない新機能を追加する案件があったとき、『解決策を出してほしい』と言われたんです。そこで『自分が携帯を使う』立場になりきって、どうしたら新機能を生み出せるのかあれこれイメージを膨らませました。それを踏まえて逆にこちらから提案したところ、メーカーと事業者双方から『あなたに任せたい』と言っていただいた上、仕様の決定からサードベンダーとの調整など、かなり大きな業務も任せてもらえたのが、自分の中で大きな経験でしたね」

その結果、すべての通信事業者と契約しているサードベンダーとの連携から、新しい知識やノウハウを吸収したり、また他のメンバーも品質に対する責任感が強くなったことで、より良いものを作ろうとする意識が芽生えたそうだ。

転職後、逆提案を自然にできるエンジニアや環境があることに刺激を受ける


そのK氏が昨年、イトクロに転職をした際にも「顧客志向」というキーワードが大きな転職要因となった。
「イトクロは国内トップシェアの塾ポータルサイトの運営や、Webプロモーション支援事業などを展開している企業。そのいずれの事業も『学習塾を展開する顧客』『プロモーションを依頼する顧客』がいなければ成り立たないビジネスです。その中でイトクロは顧客やエンドユーザーのニーズを読み取り、最適なソリューションを提供してきたことで短期間のうちに急成長してきた実績があります。そうした点からも『顧客志向型ビジネス』を日ごろから徹底して実践しているところに魅力を感じ、入社を決めました」と、イトクロの徹底した顧客志向が転職の決め手になったと語る。

「逆提案していくためには、自ら考え行動していくことが前提。その点、イトクロには将来、起業を目指す社員が多いためか、社員自身が常に顧客やエンドユーザーの立場に立って自然に考えているんですね。それによって顧客よりも早くエンドユーザーのニーズを把握することができ、さらにそこから積極的に逆提案していけることがすごいと思いましたね」
K氏が前職で会得した「逆提案」を仕掛けていくことは、内容次第では「本当に自分たちで提案したことが実現できるのか?」というリスクに対して不安を持つエンジニアも多い。だが、イトクロがほかの一般的な企業と違うことを見出し、驚いたとK氏は語る。

毎日30分の勉強会で、チーム全員が目標達成への自信を深めていく

イトクロに入社後、K氏はWebプロモーション支援事業の基幹システムのプロジェクトマネージャーを担当しつつ、「保険ライフ」というエンドユーザーにファイナンシャル・プランナーを紹介するWebシステムの開発も担当している。
「保険ライフでは、開発チームの窓口として開発リソースの調整や開発サポートを行っています。このシステムの企画・運営は社内ベンチャーが担当していて、その会社が『第一の顧客』となります。参加した当初は企画、つまり第一の顧客からの要望が開発チームに伝達されにくい状態だったため、システムの改善や機能追加のスピードが遅くなっていました。
そこでプロジェクト管理ツールの導入やリリース計画を私が提案し、システムの方向性を現実的なものにすることに貢献できたと感じています。次はエンドユーザーの立場にたった開発提案に取り組みたいですね」と、入社後早くもK氏は、逆提案による顧客志向型の働き方を実践している。

またK氏は周りの開発メンバーの情報・レベル統一を図るべく、定期的な社内勉強会を開催しているそうだ。
「実は今の業務は自社開発がメインなので、社内とエンドユーザーが顧客にあたりますので、双方のニーズに積極的に応え開発していくことが重要。ですから今でも毎日、30分程度ですが社内勉強会を開催し、新しい知識やノウハウを吸収する機会を設けることで、どんな要求にも自信を持って対応できる訓練を、私も含めた開発メンバー全員が取り組んでいるところです。」
そのほかにも、営業チームに対しては週2回の定期ミーティングだけでなく、席から声を掛け合いディスカッションをしたり、通りすがりのホワイトボードでインスタントミーティングをしたりと、社内では「always available」の関係を築いているそうだ。そうすることで社内とエンドユーザーに対して、最適なソリューションを「逆提案」という形で提供できる体制を築き、顧客に対する「+α」が提供できるようにしているという。

さらにK氏は、逆提案するメリットには「リスクを減らす」効果もあると指摘している。
「実はこちらから提案していくことは、実現したい内容だけでなく、それに伴う開発リスクを包み隠さず話すことも含まれています。そこで開発をオーダーする側に開発していくことのメリットとリスクを共有してもらえるので、その後のトラブル発生時の理解や協力も得やすくなり、仕事を進めやすくなるのです。」
最後にSEが顧客志向である意義について、K氏は「いくら技術に長けていても、最終的にその技術がお客様を通して、製品やサービスという“名前の付いた作品”に結びつかなければ、この仕事の意味はない。顧客志向を貫くことで、SEとしての生きがいを見いだせるのでは」と指摘する。

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