|
|
先進的なIT企業の中には、従業員が都心の好きなところに住めるように住宅手当をはずんだり、社員食堂を充実させるところが増えてきたという「食・住」環境の充実は、エンジニアの働く意欲にも影響大。あらためて、エンジニアの住宅手当・食事手当の実態に迫ってみた。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/絵理すけ) 作成日:08.10.06
|
衣食住は人間生活の基本。それは技術者にとっても当然だ。基本給はその生活のベースを保証する原資になるものだが、同時に、基本給外の住宅手当や食事手当、さらには社員寮や社員食堂の充実ぶりなど、福利厚生の内容には常に関心が集まる。最近の社員食堂事情をレポートしたTech総研の記事「腹が減っては技術はできぬ? エンジニア社員食堂の世界」も大好評で読者に迎えられた。そこで今回の給与WAVEでは、住宅手当、食事手当の実態に迫ってみた。 今回、アンケートに答えてくれたのは全国のエンジニア400人。職種はソフト・ネットワークなどのIT系職種、電気・電子、機械系などのモノづくり系職種がそれぞれ半数だ。 まず彼らに住宅手当に関する質問をぶつけてみた。「会社から支給されている住宅手当制度をすべて選んで下さい」という質問には、「住宅手当がある」41%、「社宅・寮がある」20%、「住宅ローンが安く利用できる」8%などの回答が得られた(複数回答)。ただ、「住宅に関する手当はない」とする人も48%と約半分を占めている。約半分の人は住宅手当を支給されておらず、社宅や寮の制度があるのも2割程度ということになる。 |
DATA1 会社から支給されている住宅手当制度は?(複数回答) |
日本企業では以前から福利厚生の一環として社宅・寮の整備、持ち家推進のための住宅融資ローン、さらに住宅手当など住宅関連の補助政策を重視してきた。終身雇用が前提であった時代はこうした福利厚生策は社員のモチベーションを維持する上で重要な役割を果たしたものである。しかし、そうした福利厚生策は、バブル崩壊後に縮小される傾向が続いている。今回のアンケートにもその傾向は顕著に表れている。 |
|
DATA2 月々に住居に支払っている金額、会社からの支給額は? |
賃貸マンション・アパートなどの住宅費は地域差が大きい。同じ負担額でも、どこに住んでいるかで負担感は変わってくる。 |
|
|||||||||
地域による不公平感の一方で、家族のあるなし、実家に住んでいるか否かによる差を気にする人もいる。家族が多くても単身者でも支給額は一律という会社や、実家に住んでいる場合は、住宅手当が出ない会社も多いからだ。 全体に、住宅手当のない会社では「支給してほしい」、住宅手当のある会社では、その金額を「上げてほしい」という声が圧倒的に多い。ただ、以下のような声もあることには耳を傾けたい。 |
|
|||||
もう一つの根源的欲求「食」についてはどうだろう。「あなたの会社では、社員食堂などの食事に関する手当がありますか?」という質問には、「社員食堂がある」40%、「食事手当が支給される」15%という回答があった。その一方で「食事に関する手当はない」が51%だった。食にかかわる会社の補助施策の「ある・なし」は、ほぼ半々というところだ。 |
DATA3 会社に社員食堂や、食事に関する手当はある? |
ちなみに、ふだんの昼食をどこで食べているかについて聞いてみると、「お弁当を持ってくる」38%、「近所のコンビニや、弁当屋などで買う」32%、「社員食堂で食べる」31%が上位3位にランキングされた。「会社の近くのお店で外食」23.5%、「外出先の近くで外食」5.5%を上回る回答率である。 |
DATA4 普段の昼食どうしてる?(複数回答) |
|
DATA5 一日平均の昼食代はいくら? |
こうした防衛策を側面からバックアップするのが、本来の社員食堂の役目でもあるはずだ。社員食堂は、会社が一定の負担をすることで、安くて、栄養バランスの取れた食事を社員に提供することができる。しかし、今回のアンケートによれば、社員食堂の整備率は4割にすぎない。アンケートでも、「社員食堂が必要だと思う」人が59%に達した。物価が急に上昇したからといって、会社は給与を上げるわけではない。だとすれば、せめて食と健康のためのサポートを会社で、と要求する気持ちもわからなくはない。 |
DATA6 会社に社員食堂が必要だと思う? |
アンケートの中から一つだけ、食事に関する不満というより、悲痛な叫びを引用しておこう。 |
|
|||||
これまでの記述からもおわかりのとおり、エンジニアの住宅手当、食事手当への満足度はきわめて低い。「満足している」人は2割で、約8割が「満足していない」。こうした「食・住」への不満は、転職意識にどの程度影響を与えているだろうか。「あなたがもし転職するとしたら、住宅手当、食事手当は転職を選ぶ際の選択基準となりますか?」という質問では興味深い回答が得られた。 住宅手当については、「支給されない会社には転職しない」と強い“決意”を述べる人が15%、「何社かで悩んだら、支給されるほうを選ぶ」人が46%に達した。「まったく気にしない」のは8%にすぎない。それだけ住宅手当を重視していることの表れだろう。 ただ、食事手当(社員食堂も含む)については、住宅手当に比べると重要度は低い。49%の人が「参考にするが、あまり気にしない」と答えており、「まったく気にしない」人も14%に上っている。 |
DATA7 勤務先への住宅手当、食事手当に満足してる? |
DATA8 住宅手当、食事手当は転職先の選択基準になる? |
|
|
||||
このレポートの連載バックナンバー
エンジニア給与知っ得WAVE!
キャリアプラン、ライフプランの設計に「お金」の問題は欠かせません。エンジニアのお金に関する疑問に独自調査データとトレンド情報でお答えします。
このレポートを読んだあなたにオススメします
今月のデータが語る エンジニア給与知っ得WAVE!
バブル時代が懐かしい?エンジニア福利厚生の実情
バブル崩壊以降、企業の福利厚生策は大きく転換。社員の個を重視し、より生産性に結びつく実効のある福利厚生へと転換してきた。さらに近…
今月のデータが語る エンジニア給与知っ得WAVE!
消え行く福利厚生「住宅手当」の相場はいくら?
社宅・独身寮の提供、家賃補助、持ち家支援の社内融資制度などの名目で、社員の住まいに気を配る住宅手当。企業にも福利厚生の…
今月のデータが語る エンジニア給与知っ得WAVE!
外食、弁当、社食…エンジニアのランチ代は平均562円
ランチ代を節約する人は意外に多いのでは? 今回はエンジニアが昼食にかけるお金について、25〜35歳男性のエンジニア30…
エンジニア給与知っ得WAVE!
住宅・食事・開発環境…エンジニアが喜ぶ福利厚生は?
優秀なエンジニアに気持ちよく仕事をしてもらうべく、開発環境や技術習得の支援制度、そして住宅や食事手当などの福利厚生に注…
エンジニア給与知っ得WAVE!
社員食堂が1位!平均418円のエンジニア・ランチ事情
国の経済政策は、もちろんサラリーマンにも多大な影響がある。ましてやランチ代にも! Tech総研もこの「重要課題」に取り…
やる気、長所、労働条件…人事にウケる逆質問例を教えます!
質問を求められたときこそアピールタイム!面接逆質問集
面接時に必ずといっていいほど出てくる「最後に質問があればどうぞ」というひと言。これは疑問に思っていることを聞けるだけで…
あなたのメッセージがTech総研に載るかも