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エンジニア給与“知っ得”WAVE! Vol.85
エンジニア400人に聞いた住宅手当・社員食堂の満足度
先進的なIT企業の中には、従業員が都心の好きなところに住めるように住宅手当をはずんだり、社員食堂を充実させるところが増えてきたという「食・住」環境の充実は、エンジニアの働く意欲にも影響大。あらためて、エンジニアの住宅手当・食事手当の実態に迫ってみた。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/絵理すけ) 作成日:08.10.06
意外と多かった「住宅手当ナシ、社宅・寮ナシ」の人
 衣食住は人間生活の基本。それは技術者にとっても当然だ。基本給はその生活のベースを保証する原資になるものだが、同時に、基本給外の住宅手当や食事手当、さらには社員寮や社員食堂の充実ぶりなど、福利厚生の内容には常に関心が集まる。最近の社員食堂事情をレポートしたTech総研の記事「腹が減っては技術はできぬ? エンジニア社員食堂の世界」も大好評で読者に迎えられた。そこで今回の給与WAVEでは、住宅手当、食事手当の実態に迫ってみた。

 今回、アンケートに答えてくれたのは全国のエンジニア400人。職種はソフト・ネットワークなどのIT系職種、電気・電子、機械系などのモノづくり系職種がそれぞれ半数だ。 まず彼らに住宅手当に関する質問をぶつけてみた。「会社から支給されている住宅手当制度をすべて選んで下さい」という質問には、「住宅手当がある」41%、「社宅・寮がある」20%、「住宅ローンが安く利用できる」8%などの回答が得られた(複数回答)。ただ、「住宅に関する手当はない」とする人も48%と約半分を占めている。約半分の人は住宅手当を支給されておらず、社宅や寮の制度があるのも2割程度ということになる。

DATA1 会社から支給されている住宅手当制度は?(複数回答)
DATA1 会社から支給されている住宅手当制度は?(複数回答)
 日本企業では以前から福利厚生の一環として社宅・寮の整備、持ち家推進のための住宅融資ローン、さらに住宅手当など住宅関連の補助政策を重視してきた。終身雇用が前提であった時代はこうした福利厚生策は社員のモチベーションを維持する上で重要な役割を果たしたものである。しかし、そうした福利厚生策は、バブル崩壊後に縮小される傾向が続いている。今回のアンケートにもその傾向は顕著に表れている。
 その中で住宅手当が支給されている人はまだマシなのかもしれない。住宅手当が支給されている人に月々の住宅手当の金額を聞いてみたところ、最も多いのは「1万円〜2万円未満」20%(住宅手当が支給されていない人も含む全体の中での割合、以下同様)、ついで「1万円未満」の15%となった。中には「10万円以上」という人もいるが、割合は1%ほどだ。

 もちろん住宅手当で実際の住宅費をすべてまかなえるはずはない。それなりの自己負担は必至だ。住宅費の自己負担分を聞いてみたところ、最も多いのは「5万円〜6万円未満」9%、ついで「3万円〜4万円未満」8.%となった。中には「10万円以上」負担する人も1%と少ないながら存在する。

 回答者の年収で最多層を占めるのは「400〜500万円」と「500〜600万円」(ともに24%)。仮に回答者の平均年収を500万円とすれば、自己負担額「5万円〜6万円未満」はほぼ年収の12〜14%を占める額だ。この負担を減らすためには、年収を上げるか、住宅費を抑えるか、あるいは手当など会社からの補助額を増やすかしかないということになる。
DATA2 月々に住居に支払っている金額、会社からの支給額は?
DATA2 月々に住居に支払っている金額、会社からの支給額は?
地域・個人格差のある住宅費。これをどうにか補填してほしい
 賃貸マンション・アパートなどの住宅費は地域差が大きい。同じ負担額でも、どこに住んでいるかで負担感は変わってくる。
ナマゴエ!!
住んでいる地域により格差が生じるので、手当でバランスをとって欲しい(33歳/コンサルタント/愛知県)
首都圏に住んでいるのだから、管理職でも住宅手当がほしい(33歳/プリセールス/東京都)
 地域による不公平感の一方で、家族のあるなし、実家に住んでいるか否かによる差を気にする人もいる。家族が多くても単身者でも支給額は一律という会社や、実家に住んでいる場合は、住宅手当が出ない会社も多いからだ。

 全体に、住宅手当のない会社では「支給してほしい」、住宅手当のある会社では、その金額を「上げてほしい」という声が圧倒的に多い。ただ、以下のような声もあることには耳を傾けたい。
ナマゴエ!!
住宅は選択の自由度が高く、社員それぞれによって金額が異なるので、平等性から考えるといらないのではないか。住宅手当というより(基本給の)ベースをアップさせることでいいのではないか(30歳/システム開発/神奈川県)
食材高騰を、弁当持参やワンコイン・ランチで自己防衛
  もう一つの根源的欲求「食」についてはどうだろう。「あなたの会社では、社員食堂などの食事に関する手当がありますか?」という質問には、「社員食堂がある」40%、「食事手当が支給される」15%という回答があった。その一方で「食事に関する手当はない」が51%だった。食にかかわる会社の補助施策の「ある・なし」は、ほぼ半々というところだ。
DATA3 会社に社員食堂や、食事に関する手当はある?
DATA3 会社に社員食堂や、食事に関する手当はある?
 ちなみに、ふだんの昼食をどこで食べているかについて聞いてみると、「お弁当を持ってくる」38%、「近所のコンビニや、弁当屋などで買う」32%、「社員食堂で食べる」31%が上位3位にランキングされた。「会社の近くのお店で外食」23.5%、「外出先の近くで外食」5.5%を上回る回答率である。
DATA4 普段の昼食どうしてる?(複数回答)
DATA4 普段の昼食どうしてる?(複数回答)
 小麦原料の高騰などで、食品価格が高騰するおり、比較的高くつく外食が敬遠され、外食産業の売上が落ちていることが報道されている。反対に伸びているのは、コンビニ・弁当チェーン店の売り上げだ。「弁当持参派」の割合が多いことも含めて、消費者の生活防衛的行動が、外食から中食(調理不要の弁当など食料品を購入後自宅・職場等で食べること)、さらに自炊への動きを加速しているのかもしれない。

 ちなみに平均の昼食代は「301〜500円」というのが35%で最も多い。500円玉一個のいわゆるワンコイン・ランチだ。ワンコインで、美味しく、ボリュームがあり、できれば栄養バランスのある食事となると、実際はなかなか難しいが、いまやぜいたくなど言っていられない状況なのだ。
DATA5 一日平均の昼食代はいくら?
DATA5 一日平均の昼食代はいくら?
 こうした防衛策を側面からバックアップするのが、本来の社員食堂の役目でもあるはずだ。社員食堂は、会社が一定の負担をすることで、安くて、栄養バランスの取れた食事を社員に提供することができる。しかし、今回のアンケートによれば、社員食堂の整備率は4割にすぎない。アンケートでも、「社員食堂が必要だと思う」人が59%に達した。物価が急に上昇したからといって、会社は給与を上げるわけではない。だとすれば、せめて食と健康のためのサポートを会社で、と要求する気持ちもわからなくはない。
DATA6 会社に社員食堂が必要だと思う?
DATA6 会社に社員食堂が必要だと思う?
 アンケートの中から一つだけ、食事に関する不満というより、悲痛な叫びを引用しておこう。
ナマゴエ!!
外食すると値が張る地区に最近会社が引っ越した。外食は高いから、買ってきたり、自宅から持ってきたお弁当を社内で食べようとするが、今度は「自席でも会議室でも食べるな」と言われた。リフレッシュルームという名の休憩所はあるものの、明らかに全社員の昼食をまかなえる席数ではない。結果的に、以前は500円弁当を買ってきてすんでいたのが、今は外食で1000円ランチ。外に食べに行かざるを得なくなった分、給料上げてくれ!(31歳/運用・保守/東京都)
転職先選びでも重要視される住宅手当の有無
 これまでの記述からもおわかりのとおり、エンジニアの住宅手当、食事手当への満足度はきわめて低い。「満足している」人は2割で、約8割が「満足していない」。こうした「食・住」への不満は、転職意識にどの程度影響を与えているだろうか。「あなたがもし転職するとしたら、住宅手当、食事手当は転職を選ぶ際の選択基準となりますか?」という質問では興味深い回答が得られた。

 住宅手当については、「支給されない会社には転職しない」と強い“決意”を述べる人が15%、「何社かで悩んだら、支給されるほうを選ぶ」人が46%に達した。「まったく気にしない」のは8%にすぎない。それだけ住宅手当を重視していることの表れだろう。
 ただ、食事手当(社員食堂も含む)については、住宅手当に比べると重要度は低い。49%の人が「参考にするが、あまり気にしない」と答えており、「まったく気にしない」人も14%に上っている。

DATA7 勤務先への住宅手当、食事手当に満足してる?
DATA7 勤務先への住宅手当、食事手当に満足してる?
DATA8 住宅手当、食事手当は転職先の選択基準になる?
DATA8 住宅手当、食事手当は転職先の選択基準になる?
 一般的に住宅費は食費よりも大きな割合を占め、その心理的負担度も高いことからすれば、予想された回答ではある。ただ、いずれにしても、給与額や仕事のやりがいといった項目と並ぶようにして、これからは会社の従業員住宅施策が問われてくるかもしれない。福利厚生の切り捨て施策のままでは、これからの企業は優秀なエンジニアを採用できないことになるかもしれない。
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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ 宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
勤務先は都心が多いIT系と、地方も多いモノづくり系では、住宅手当や社員食堂の支給や金額などの違いがありました。でも、双方ともに多かったのは意外にもお弁当持参。社員食堂や、食事手当よりも愛妻弁当をうらやましく思ってしまいました。

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