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動画配信、音楽配信、ネットゲームなど、オンライン・デジタルエンターテインメント業界が“Web2.0”時代を迎えた今日、新たな局面を迎えている。市場規模が大きく膨らむ中、ユーザーの支持を得られる配信サービスの姿とは!?
(取材・文/井元康一郎・臼井 隆宏 総研スタッフ/宮みゆき)作成日:07.12.25
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神田敏晶さん
ビデオジャーナリスト。KandaNewsNetwork,Inc. 代表取締役。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送局「KandaNewsNetwork」を運営開始。ビデオジャーナリストとして活躍中で、IT業界では知る人ぞ知るカリスマ的存在。ビデオカメラ一台で、世界のIT企業や展示会取材に東奔西走中。現在、impress.TVキャスター、早稲田大学非常勤講師、デジタルハリウッド特別講師。 デジタルエンターテインメントの世界はここ数年の間に、本当に大きく変わったね。以前はコンテンツ配信といえば、すでに出来上がったものを一方的に受け取るだけ。またインタラクティブ(双方向性)なんて言っても、結局はコンテンツを配信する側と受け取る側という上下関係みたいなものがあった。 今や、その状況は大きく崩れてきている。インターネット上でのコンテンツの楽しみ方が大きく変わったからね。たとえば最近人気のニコニコ動画(※動画を見たユーザーが思い思いに映像にコメントを付け加えられる機能を持つ動画アップロードサイト)だけど、ニュースやドキュメンタリーの画面にユーザーのコメントがテロップで流れたら、それはもはや別の作品ですよ。 ユーザーはそんな体験を重ねることで、自分が鑑賞者でありながら、同時にクリエイターの立場にもなり得るという感覚を持つ。一度その面白さにハマったユーザーは、決まったコンテンツを配信されるだけというサービスには、もうけっして満足しないよ。 実はそんな現象が、Web上のいたるところで起きているというのが、今の配信ビジネスの実態なんだ。音楽でも映像でも、特定のクリエイターの手による決まったものをただ干渉するというスタイルはどんどん古くなる。今でもただコンテンツを受け取るだけの人はもちろんいる。だけど、そういう人もいずれはコンテンツを改変して遊ぶ楽しみを知って、それに対応したサービスを求めはじめる。この流れはもう止まらないと思うね。 そういう時代の流れを直視できずに、音楽でも映像でも著作権でガチガチにしばって一方的に配信するような旧態依然としたビジネスモデルにしがみつくような勢力は、そのうち本当に淘汰されると思う。元がどんなに素晴らしい作品だって、まったくのオリジナルの形しか許されないなら、ワンパターンでそんなに繰り返し見たりしないでしょう? でも、オリジナルからの改変をOKにしたらどうなるか。その作品をベースにさまざまなパロディが出てきて、その数だけ楽しみが増殖するんだ。 実際、アメリカではすでにそんなビジネスモデルが登場している。あの著作権にうるさいハリウッドで、映画のキャラクターを使ったパロディ作品を作ることを、商用に使わないという条件で許可しているんだ。スターウォーズのC3POに笑えるジョークを言わせたりとかね。そうやって生まれた作品が多くの人を楽しませて、またその作品のヒットによって、オリジナルが改めて注目されたりもする。そういう循環のなかでは、改変OKであってもオリジナルの価値が損なわれたりなんかしないんだよ。 今後、デジタルコンテンツ配信は、そういうビジネスモデルに大きく舵を切るべきだ。改変はダメというのではなく、商用利用禁止という条件をつけて1年間にオリジナル作品の使用料を課金するとかね。ほか、ゲームでも何でも、カギはユーザー自身が作品なり世界観なりを作ることに参加できているんだと実感できるような仕組みを作るべき。これからのデジタルエンターテインメント業界は、そんな巨大なパラダイムシフトを迎えることになると思いますよ。 |
音楽コンテンツ業界のCD販売減が世界的に続いている。そこにくさびを打ち込んだのがi-Podに象徴されるデジタルコンテンツ配信。オリジナル音源から“着うた”まで、さまざまな配信サービスが音楽業界を盛り上げる。 |
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磯貝幸正さん
レーベルモバイル株式会社 執行役員 システム本部長。 現役のトランペットプレイヤーとしても活動し、週末は全国各地を飛び回っている。数社の転職経験があり、SIer、IT製品ベンダー、ITコンサル、ユーザー企業などITをさまざまな角度から経験した後、2005年6月同社入社。 音楽のデジタル化が進み、携帯音楽プレーヤーが飛ぶように売れる一方で、CD販売は縮小を続けるなど、音楽ビジネスを取り巻く状況は大きく変わってきた。レコードからCDへの転換に匹敵するほど、いやそれ以上の変化がここ数年で訪れている。 「日本では携帯が大きな影響を及ぼしましたね」 諸外国と異なり、日本の音楽配信ビジネスは、その9割がモバイル、つまり携帯電話向けのもの。その(モバイル配信の)市場規模は482億円と、シングルCDの505億円に匹敵する金額まで急成長している。(数字は2006年日本レコード協会調べ)その(モバイル配信の)市場規模は482億円と、シングルCDの505億円に匹敵する金額まで急成長している。(数字は2006年日本レコード協会調べ) 「私たちは一種の流通業。レコード会社とユーザーをつなぎ、音楽との出会いの場をITを駆使して提供するのが仕事です。当社は、メジャーレコード会社が集まって作られた会社。「レコード会社直営♪」のブランドが示すとおり直営店舗です。おかげさまで携帯向けでは日本有数の「レコ直♪」のブランドが示すとおり、音源を保有するレコード会社の直営店舗です。シェアを占めています」。
さて、同社のエンジニアはどのような仕事をしているのだろうか。
では、やりがいや、面白みはどういうところにあるのだろうか。 今後はNGNやWIMAXなど、市場環境が大きく変わるのに合わせてどう対応するのか、それを考えるのも自分たちの仕事だと語る磯貝さん。 |
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21世紀に入った頃から音楽メディアは多様化してきた。2002年くらいから登場したネット配信の市場規模拡大は顕著だ。現在、CD販売は低迷してきたが、、ネット配信の市場規模拡大がそれを補ってあまりあるという状況だ。携帯電話とプレーヤーの融合により、さらにダウンロード数が伸びるか。 |
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荻原和之さん
株式会社ゲームオン 執行役員 システム管理本部長/CISO 大手ゲーム会社のゲームプログラマとして数々の人気コンテンツの開発に携わった後に、2001年設立時に同社入社。ユーザーの反応がリアルタイムで感じられる日々にやりがいを感じている。 人気アドベンチャーゲーム「RED STONE(レッドストーン)」をはじめ大型オンラインゲーム7タイトルを擁するオンラインゲーム配信大手のGame On(ゲームオン)。2001年の発足後から先行投資状態を続け、この1年間で会員数が250万人から350万人へと急伸。利益も出始めるなど、ここにきて成長軌道に乗りつつある。 ゲームオンのコンテンツは、基本的には韓国で開発されたオンラインゲーム。日本語化や日本仕様独自のイベント・機能追加などのローカライズ作業はあるものの、自社ではソフト自体の開発は行っていない。 では、ゲームオンの仕事とはいったい何なのか――。最大の業務は、オンラインゲームの運営である。この“運営”という部分が、実はオンラインゲームビジネスにとって、コンテンツ開発と同等以上に重要なファクターなのだ。 「オンラインゲームの面白さは、実はゲームのコンテンツの出来だけでは決まらないんですよ。不特定多数のユーザーが関わるオンラインゲームを面白くするには、ゲームの世界内において、公平さが保たれなければならないんです。不正に所持金やアイテムを増やしてゲームを荒らそうというユーザーは、残念ながら必ず出てきてしまうものなのですが、そういう不正を素早く見抜いて排除することで、ユーザーの皆さんが安心して遊べるようにするのは、私たちの重要なミッションです」 セキュリティの責任者を務める萩原和之執行役員は語る。 「公平性だけではなく、ゲームのなかでの有料会員登録やアイテム課金、またオンラインでのグッズ購入など、オンライン決済システムを実装する必要があるため、カード決済などのセキュリティも充実させる必要があります。オンラインゲームビジネスは、実は商用サイト、ソフトの設計ととても似たところがあるんですよ」
ゲームオンを含め、オンラインゲーム業界はこのところ市場拡大傾向にある。それにともない、人材不足感も少なからずあるという。 サーバーはもちろん、巨大なユーザーデータから効率的に必要な情報を引っ張り出すためのデータベース技術者も、オンラインゲーム業界では重要な存在だ。DB、SQL/MySQLなどのサービス系データベースの経験者はすんなり業界入りできるだろう。 ゲーム業界において、このようなバックヤードの仕事は、果たして面白みを感じられるものなのだろうか。萩原氏は、間違いなく面白いと語る。 |
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このところ、年率およそ20〜30%という割合で伸び続けているオンラインゲーム業界。2006年は暦年で初めて売上高が1000億円を超えたが、そのうち約4分の3は運営サービス部門の売り上げだ。月ぎめ料金だけでなく、アイテム課金など新しいシステムを各社が導入したのが売り上げ増につながったものとみられており、実際、2006年にはアイテム課金が定額課金を上回ったという。2007年以降もオンラインゲームの拡大基調は続くとみられている。 |
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音楽・映像配信、オンラインゲームなど、何かとホットなオンライン・デジタルエンターテインメント業界。エンドユーザーを対象とする業界だけに、エンジニアにはスキルもさることながら、エンターテインメントに関する豊かなイマジネーションが求められそうだ。以下に挙げたエンタメ系エンジニア1つでも当てはまるというエンジニア諸君、ぜひデジタルエンターテインメント業界の扉を叩いてみては!? |
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音楽配信サービスの企画・運営、コンテンツ・サービスの企画・運営 他 ■音楽ダウンロードサイト「レコチョク」をはじめとする音楽配信事業 ■映像配信事業 ■プラットフォーム事業(音楽専門クラウドファンディング「WIZY」・買ったCD/DVDをスマホで簡単再生「プレイパス」) ■音楽ソリューション事業 ■フ…続きを見る
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