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暗号プログラミングから組み込み系、汎用系からWebへスイッチ IT技術者の寿命を延ばすキャリアチェンジ転職の魅力
ITエンジニアとしての自分のスキルの将来性に悩むとき、考えるのがIT内キャリアチェンジ。汎用系からオープン系へ、アプリケーション開発から組み込み系へなど、キャリアチェンジ転職を受け入れている企業に、転職成功の秘訣を取材した。
(取材・文/宮尾有希 総研スタッフ/山田モーキン)作成日:07.12.05
キャリアチェンジに成功するエンジニアは誰?
 ITエンジニアとして「自分が極めるスキルに将来性はあるのか?」と悩むとき、または「もっと新しい技術にチャレンジしていきたい!」と野望を抱くとき、考えるのがIT業界内で別の分野へと移るキャリアチェンジ。まったく他業界に転職するよりリスクも少なく、経験を生かせるようにも思われる。とはいえ、ひと口に「IT系」とくくることができないほど、業界内は、さまざまな業種に細分化されているのが現状だ。ソフトハウス、SIer、メーカー、事業会社、コンサルティングファーム……畑違いの業種になると、スキルがリセットされるのはもちろん、仕事のスタイルも求められる適性もまったく違うことがある。果たして転職が成功するのか?と二の足を踏むITエンジニアも多いことだろう。
 そこで、キャリアチェンジ転職を望む人材を積極的に採用している企業に取材した。どのような人材がキャリアチェンジ転職で成功するのか、企業側は転職希望者の何を見て採用しようと思うのかを紹介したい。
キャリアチェンジの方法(1) 株式会社KSK:教育研修プログラムが充実している会社で、バックアップを受ける
株式会社KSKは、ソフトウェア、ハードウェア、ネットワーク、システムLSIなどの開発を手がけるトータルソリューションプロバイダ。中でもシステムコア開発事業部は、システムLSIを中心とする半導体設計や、携帯電話端末の組み込みソフトウェア開発を行っている中核部署である。専門性の高い組み込み系に中途採用されたエンジニアのキャリアと、どんな研修プログラムが用意されているのかを、人事担当者とエンジニア双方に伺った。
転職エンジニア:自分の幅を狭めるより、もっと広く勉強したい…… プログラマ→組み込み開発にキャリアチェンジ
システムコア開発事業部 エンベデッドソフトウェアBU 渡部祥氏
システムコア開発事業部
エンベデッドソフトウェアBU
渡部祥氏
暗号ロジックの基礎研究をプログラムとして実装する開発に2年従事したあと、大学院で情報セキュリティを学び直し、2006年9月に株式会社KSKシステムコア開発事業部に転職。現在は組み込み系エンジニアとして活躍している。
渡部祥氏
事業本部 システムコア開発事業部 エンベデッドソフトウェアBU チームリーダー 内堀学氏
事業本部
システムコア開発事業部
エンベデッドソフトウェアBU
チームリーダー 内堀学氏
 大学を卒業後は、暗号ロジックの基礎研究をソフトウェアに実装するプログラムを組んでいました。2年ほど勤めるうちに、一技術者として暗号という特殊なスキルだけに特化していくのも自分の幅を狭めると思うようになり、もっと広く勉強をするため大学院に入学。情報セキュリティ学科で、品質管理やヒューマンエラーについて学びました。研究は楽しかったですよ。

 再度就職先を探すにあたっては、品質やセキュリティの管理がしっかりしていて、質の高いものを作り上げる会社にしたいと考え、まったくの異業種であるエンベデッド(組み込み)開発の世界に飛び込みました。ハードも基板も触ったことがない私には、大幅なキャリアチェンジです。仕事のスタイルも進め方も、何もかもが違っていて、最初は戸惑いの連続。周りのサポートや、KSKカレッジという社内の充実した研修制度に助けられつつ、実践の中で必死に新しいことを吸収しました。現在は戦力として活躍できていると思っています。
 今の仕事は、おおざっぱに言うと、携帯電話の音声を制御するような仕組みづくりです。どんな操作をしたら、どこのスピーカーからどの程度のボリュームで、どのような音声を出すかなど、音声ひとつとっても、いろいろな制御があるんですよ。制御というのは難しいもので、ハードを直接触るし、ソフトも理解しなければなりません。非常にコアな部分に携わっている実感があり、私は単なるプログラマではなく「エンジニア」なのだと、今はプライドをもてるようになりました。
 私自身を振り返ってみるに、スキルアップのための努力を楽しめる人や、自分のキャリアに固執せず広い視野で仕事に取り組める人は、キャリアチェンジ転職に向いているかもしれません」
企業側:独自の研修プログラムでキャリアチェンジをサポート
 渡部氏の話の中に出てきた、研修制度「KSKカレッジ」について、システムコア開発事業部で人事採用にも携わる内堀学氏に伺った。
「IT業界というのは、次々に新しい技術が出てくる、ライフサイクルの速い世界です。人材を育成するために、KSKカレッジという社内向けの教育機関が設けられています。土曜セミナーで専任の講師から新しい技術を学べるほか、コンプライアンス関連はもちろん、ヒューマンスキルを高める講義もあり、新入社員、中堅社員、管理職それぞれに見合った研修プログラムが多数用意されているんですよ。
 KSKカレッジに用意されていない専門的な研修については、各部署で独自の研修プログラムも展開しています。例えば私たちのエンベデッド開発チームでは、今年の春から、デジタル時計などシンプルな構造のものの模擬開発を通して組み込みのさわりを勉強できる研修を始めました。模擬開発といっても設計、製造、試験などは社内の実際の作業と同じ工程を体験してもらうので、実践的です。
 採用にあたって問うのは、C言語を使用した開発の実務経験のみ。組み込み開発のキャリアがなくても、社内でサポートできる体制は整っています。関心のあるITエンジニアの方には思い切って飛び込んできてほしいですね。組み込み系の開発は、技術の盛衰が激しく、常に勉強が必要な分野。新しいことに対して柔軟で、好奇心の旺盛な方なら、楽しめると思います」
キャリアチェンジの方法(2) 株式会社アンティー・システム:自分の成長度合いに合わせて、実践の中でレベルアップを支援してもらう
株式会社アンティー・システムは、ウェブサイトの企画、設計、開発、運用を、アプリケーションからサーバ構築までトータルに提供する開発会社である。関連デザイン会社との連携により、デザイン性に富んだ使いやすいインターフェースを兼備した機能的なウェブサイトを提供している。案件が拡大傾向にあるウェブサイト構築の世界にキャリアチェンジしたプログラマと、中途採用者はほぼIT異業種からの転職というキャリアチェンジに肯定的な人事担当者に話を伺った。
転職エンジニア:HTMLすらわからなくても、Web開発がやりたい…… 汎用系→Web開発にキャリアチェンジ
プログラマ 和地孝樹氏
プログラマ
和地孝樹氏
前職は、銀行システムの中で、バッチ処理などの開発を担当していたプログラマ。4年間勤めた後、2006年1月に株式会社アンティー・システムに転職を果たし、現在はウェブサイト開発にトータル的に携わっている。
和地孝樹氏
システムエンジニア 黒田敏男氏
システムエンジニア
黒田敏男氏
 前職は銀行システムの開発です。作業が発生すればなんでもやるという立場で銀行に常駐していました。汎用系のシステムからくるデータを、行員さんが使うオープン系システムのデータベースに流し込んだり、日時バッチ処理を行ったり。人間関係に不満はなかったのですが、私の立場では銀行システムのごく一部にしか携われず、エンジニアとしてスキルが頭打ちになることを考えてキャリアチェンジ転職を決意しました。
  私の希望は、システム全体を把握できるような、一部ではなくシステム全体を作れるような仕事をしたいということ。ウェブサイトの構築なら、サーバ、アプリケーションの開発からすべてが手がけられるのではないかと考え、ウェブ開発をトータルで行っているアンティー・システムに転職しました。

 ウェブ開発経験がないため、HTMLすらわからない状態での入社です。PHPという開発言語も、自主勉強はしていましたが、実務経験はありません。巨大な銀行システムの中の、一要員だったころとは、仕事のやり方も何もかもが違います。不安はありましたが、リーダーが、様子を見ながら少しずつレベルが上の仕事を任せて、徐々にひとり立ちさせてくれました。悩んでいるとチームの誰かがアドバイスをくれたりと、周りの支えも大きかったと思います。
 キャリアチェンジ転職をして感じたのは、コミュニケーションスキルは大切だということ。話しやすい人には、周囲もフォローしやすいのです。それと、困って悩んで乗り越えたことは、実践的な力として身についていくので、最初は安易に人に聞かず、勉強して、調べて、なるべく自分の力で解決していく努力をすること。そして本当に手に負えないことは質問し、素直にアドバイスを聞き入れることが大切だと思います。
企業側:何かしらのIT系開発経験があれば十分、キャリアチェンジできる
「チームリーダーが、様子を見ながら徐々に仕事を振ってくれた」と和地氏は語る。会社としては、キャリアチェンジしてくる中途社員をどのように育てているのだろうか? 採用も担当しているシステムエンジニアの黒田敏男氏に伺った。

「転職してくる人は、ほとんどが異なるITジャンルからのキャリアチェンジです。基幹システムからの転職者が多いですね。中途教育のカリキュラムはありませんが、それぞれの成長速度に合わせて、段階を踏んで実際の案件を振っていくことで、実践的な教育としています。やる気さえあればクリアできる課題を渡すようにしているし、努力する人にはサポートを惜しまない風土があるので、最初はわからなくても、あきらめずに食いついてきてほしいですね。だから、キャリアチェンジすることそのものは不安に思わなくて大丈夫です。経験してきた言語やシステムが何であれ、IT関係の開発経験があって、システムやアルゴリズムの考え方さえわかっていれば、ウェブシステム開発への応用はそれほど難しいものではありません。

 それよりも採用側として見るのはヒューマンスキルです。社会人としての常識、コミュニケーション能力、吸収していきたいというやる気があるかどうか。新しい職場で、新しい環境と仕事を咀嚼し、自分のキャリアにしていく素養は、ヒューマンスキルに負うところが大きいです。あとは、インターネットが好きという気持ちがあるなら、ウェブ開発そのものについてはサポートできますので、キャリアチェンジは歓迎ですよ」
キャリアチェンジ転職に成功するためのヒント
 上記で紹介した2社のように、IT内キャリアチェンジ転職を積極的に採用している企業は増えつつある。企業としても、中途採用ならば教育の必要がない経験豊富な即戦力が欲しい、というのが本音のところではあるだろう。それでもエンジニア不足の中、多少のコストをかけても間口を広げて、少しでも素養のある人材を確保しなければ、仕事が回っていかないのが現状だ。キャリアチェンジするなら、エンジニア売り手市場の今はチャンスといえる。

 しかし、エンジニアにとって本当の問題が始まるのは、むしろ転職した後。同じIT系とはいえ、ジャンルが違えば仕事の内容も進め方もまったく違う。新しい仕事を覚え、新しい環境に慣れ、新しいキャリアを積み上げていくことは、簡単なことではない。そこで、2社の取材から見えてきた、キャリアチェンジ転職に成功するポイントをまとめてみた。
キャリアチェンジ転職に成功するポイント
まとめ
 キャリアチェンジを行うことで確実に言えるのは、エンジニアとして世界が広がるということ。仕事のやり方やスタイルの違いを吸収して環境になじんでいく柔軟さや、IT系全体を包括的に見る広い視野など、新しいスキル以外にも得るものは大きい。
 それはキャリアチェンジ転職を受け入れる企業も同じこと。別種のキャリアをもった人間を受け入れることで、より効率的なやり方や、思わぬ視点からの新しい考え方がもたらされ、活性化することは大いにあるだろう。お互いに還元し合える関係が、キャリアチェンジのメリットといえるのだ。
 成長するチャンスであるキャリアチェンジを積極的に受け入れている企業は増えつつある。興味のある方は、こちらから探してみてほしい。
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山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ 山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ
そもそも転職すること自体、全く異なる環境に移る不安があるうえ、さらにキャリアチェンジとなれば仕事の中身も大きく変わって不安が大きくなるのも致し方ないことだと思います。ただ今回ご紹介した事例のように、今、キャリアチェンジ転職で自分の可能性を大きく広げているエンジニアの方も多くいらっしゃるのもまた事実。まずは一度、キャリアチェンジ転職を歓迎する企業の話をじっくり聞いてみることを、おすすめします。

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