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エンジニア給与WAVE! Vol.62 IT業界の給与格差を探る!元請と下請でいくら違う?
元請け─多重下請け構造として形成されてきたIT業界。発注側、受注側、下請け側と、それぞれの階層にいるエンジニアの給与格差はどの程度あるのか。アンケートを通して、浮かび上がったその現実とは……。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/kucci(クッチー) 撮影/加納拓也)作成日:06.12.06
IT業界の多重下請け構造に、給与格差という視点でメスを入れた
 どのような仕事でも、ビジネスではつねに発注側と受注側という関係が生じる。その両方に同職種のエンジニアが存在することが多いが、その立場が構造化されるにしたがって、同じエンジニアでも仕事の性格や仕事の満足度、そして給与も違ってくるのが通例だ。いわゆる下請け構造に伴う仕事の質の変化と給与格差の存在だ。

 まず、仕事のフローの出発点は、発注側と受注側にわかれることから始まる。受注側企業群のとりまとめとして元請け企業が果たす役割は大きい。元請け企業は受注案件やプロジェクトを個々のタスクに細分化し、それぞれを下請け企業に再発注する。さらに下請け企業が孫請け企業に、さらにその孫請け企業がその下に……というような多重下請け構造が存在する。

 官公庁や大手ユーザー企業のビックプロジェクトでは、大手コンピュータ会社やSI会社が元請けとして受注するケースが多い。大きなプロジェクトでは工程が下流に流れれば流れるほど、人員的にも多くのエンジニアを動員しなければならず、膨大な作業を遅滞なくこなすためには、協力会社と呼ばれる下請け企業をいくつか使う必要が出てくる。その下請け構造は、2次や3次に止まらず、4次、5次に及ぶこともある。

 資本系列が同じグループ内の下請け構造、つまり大手コンピュータ企業が受注したものを、その冠系システム子会社に丸投げし、さらに孫会社が下請けに入るというケースもよく見られる。この段階で、業務請負専門の企業や人材派遣会社が入るケースも多い。下請け構造が下層になればなるほど一般に受注企業の企業規模は小さくなる。最終的には、フリーランスのエンジニアにまで達する例も少なくない。

 たとえ受注総額が10億円に及ぶプロジェクトでも、5次受けぐらいまで降りてきて、最終的にはフリーランサーが受けるというようなところまでくれば、受注額は数万円から数10万円単位にまで小さくなる。たとえ「丸投げ」の形での発注であっても、当然ながら中間マージンが存在するため、エンジニアの売上額は、より下層になればなるほど、小さくなるということになる。

 こうした構造のなかで、各階層で仕事をするエンジニアの間には、どの程度の給与格差が存在するのか。それぞれの立場のエンジニアの仕事の質はどうなのか。その一端をアンケート調査から浮き彫りにしてみようというのが今回の試みである。
発注企業と下請け企業の分類
 調査対象は、22〜44歳のIT系企業に勤務するソフト系エンジニア1000人。視点をシンプルにするため、今回は正社員に絞ってアンケートを行った。したがって、契約社員、パートタイム社員、派遣社員のケースは含まれていない。また、IT業界内の下請け構造に焦点を絞るため、一般企業や官公庁などからシステム開発の案件を請けた元請け企業をここでは「顧客企業」とし、以下を「1次下請け企業」「2次下請け企業」と呼ぶことにする。

 今回のアンケートに答えてくれたエンジニアたちはどのような立場で仕事をしているのか、それを受注レイヤー別に分類すると以下のようになる。割合として圧倒的に多いのは、受託開発型の1次下請け企業に勤務するエンジニア。次いで、受託開発型・2次下請け企業。さらに客先常駐型・1次下請け企業ということになる。
DATA 1 発注側・受注側・下請け側・・・ どんな立場で仕事してる?
発注側 主に顧客として取引先企業や下請けに開発業務を発注する立場 7%
受託開発型・1次下請け 開発案件を元請け企業から直接請けて、自社で開発業務を行っている 47%
客先常駐型・1次下請け 開発案件を元請け企業から直接受けて、客先に常駐して開発業務を行っている 11%
受託開発型・2次下請け 開発案件を1次下請け企業から請けて、自社で開発業務を行っている立場 13%
客先常駐型・2次下請け 開発案件を2次請けで、客先に常駐して開発業務を行っている 8%
受託開発型・3次下請け 開発案件を2次下請け企業から請けて、自社で開発業務を行っている立場 1%
客先常駐型・3次下請け 開発案件を3次受けで、客先に常駐して開発業務を行っている 3%
顧客企業側と3次下請けの年収格差、30代前半で138万円
 受託開発型か客先常駐型かを問わず受注レイヤー別・年代別に年収の比較を行ったのがDATA2である。これによれば、一目瞭然。顧客企業から下請けに仕事が流れるのに沿って、年収は確実に下がっている。全体平均で顧客企業が603万円なのに対して、1次下請け577万円(顧客企業の95.6%)、2次下請け518万円(同85.9%)、3次下請け496万円(同82.2%)だ。

 年代別にみると、20代前半では大きな開きがないどころか、1次下請けが顧客企業を上回ってさえいるが、年代を経るごとに格差が開いていく。30代前半では顧客企業と3次下請け企業との差は138万円にも達する。
DATA2 客先・発注先と比べて給与格差はどのくらい?
客先・発注先と比べて給与格差はどのくらい?
 もしも下請け企業のエンジニアが、顧客先企業のそれよりも仕事量が少なく、負担も軽いのであればこの格差もやむを得ない。しかし実態は異なる。客先、つまり受注レイヤーでいえばより上位層のエンジニアに比べて、自分の業務量は「やや/かなり多い」と感じているエンジニアは、1次請けで60%、2次請けで48%、3次請けで35%となっている。これと対照的に、顧客側では発注先(下請け先)のエンジニアよりも業務量が「やや/かなり少ない」と感じるエンジニアが34%に上っている。全体の傾向としては、他の受注レイヤーのエンジニアに比べて業務量は同じかまたはやや多いとするエンジニアが多数を占めている(DATA3)。
DATA3 客先・発注先と比べて業務量は多い?少ない?
客先・発注先と比べて業務量は多い?少ない?
 つまり、顧客側と受注企業で業務量は変わらないか、受注側のほうが多いと感じているエンジニアが多い一方で、給与は顧客企業に勤めているエンジニアのほうが圧倒的に高い──という現実が浮かび上がるのだ

 こうした状況に対する満足度を、仕事の内容と年収との比較として表現するとどうなるのか。その結果が図3だ。全体的には「見合っている」または「仕事内容に比べて100万円程度年収が低い」とする人の割合が高い。ただ、その不満は顧客側にいてもあまり変わらないというのも興味深いところである。「顧客企業にいるからといって仕事は楽ではない。外注管理も大変なのだ」という、顧客企業側のエンジニアの内なる声が聞こえてきそうである。
DATA4 仕事の内容に比べて給与は高い?低い?
仕事の内容に比べて給与は高い?低い?
100万円以上アップならぜひとも上位企業へ転職したいが…
 現状の仕事への不満を解消するための行動の一つとして転職がある。この1〜2年の好景気を受けて、いまや転職マーケットは全般に人手不足、売り手市場の様相を呈している。そこでは、上流から下流へ、元請けから下請けへと流れる仕事のフローとは「逆の」流れが生じている。これまで下請け、孫請け企業で働いていたエンジニアが、より上位の受注レイヤーへの転職を次々に成功させているのだ。またこれまで派遣で働いていた人が正社員として登用される道も広がってきた。「下請けにいるよりは発注側に立ったほうがより面白い仕事ができそうだ」「より高い給与が望めそうだ」という願いが、上位レイヤー転職の動因になっている。

 DATA2で見たように、顧客側(発注側)と受注側では厳然とした年収格差がある現状では、その格差を埋めるためには、レイヤーの壁を飛び越えて転職するというのが最も現実的な解になる。たとえば、20代後半では顧客→1次下請け→2次下請け→3次下請けと階層が下がるごとに、それぞれ30万円、19万円、28万円の年収差があった。もしも3次請けから“飛び級”でいきなり顧客側に移れば、76万円の年収アップということになる。ただ、この70万円前後という金額が、転職の強いモチベーションになるかというと、必ずしもそうとはいえない現実もある。

 今回のアンケートでも、「年収が200万円以上上がるのなら転職したい」エンジニアが全体の38.6%、「100万円以上なら」という人たちが32%を占めた。しかし「50万円以上」となるとガクンと減って6.6%に過ぎない(DATA4)。100万円アップとなれば、かなり真剣に転職を考えるが、それ以下の数十万円レベルだと、必ずしも転職の強い因子にはならず、それ以外の条件・待遇、仕事内容などを吟味する必要がある、ということなのかもしれない。
DATA5 もし給与が上がるとしたら転職したい?
もし給与が上がるとしたら転職したい?
同じ業務なのに15%も単価が安いのはなぜだ
 最後にアンケートから、発注側と下請けという立場の違いについて、2次請け、3次請けの企業に勤めるエンジニアの声を拾ってみよう。
「1次請けのリーダーが仕事もスケジュールも管理できず、そのフォローをしながら自分は仕事をしている。割に合わない」(テクニカルサポート/3次請け/28歳)「同程度の仕事をしている元請けと比較して、自分は仕事に見合った給与を受けていないと感じる」(システム開発/2次請け/31歳)、さらにより具体的に「2次請けの我々と元請け(親会社)の社員は同じ業務を行っているのに、我々の方が15%程単価が低い」(システム開発/35歳/2次請け)という指摘もあった。年代を問わず、下請け構造のなかで下に行けばいくほど劣化する待遇・条件についての不満が募っている。

 中には「残業代がつかないのに、月100時間程度の残業がある。また、休日出勤も最近多い。顧客のスケジュールにあわすことが多いため、休みが取りにくい」(システム開発/2次請け/38歳)という声もある。ここでは、顧客のスケジュール優先で振り回されることによる不満、さらに企業として残業代を支払わないことへの不満が重層化している。まさに多重下請けの中小企業の悲哀がここに凝縮されているともいえよう。

 もちろん、「自分の客先との契約額を知っているので、その金額からすると現在の給料は妥当ではないかと思う」(システム開発/3次請け/33歳)と、諦め半分の客先常駐エンジニアがいないわけではない。しかしここで簡単に諦めてしまってよいのだろうか。

 かつては、多重下請け構造のもと企業間の役割分担は固定化され、エンジニアがその壁を越えて転職することはけっして容易ではなかった。しかし、最近は全般的なIT業界の人手不足を反映して、発注側企業が下請け企業のエンジニアを欲しがる、あるいは従来は2次請け、3次請けで仕事をしていたエンジニアをより上位のレイヤーの企業が採用するという傾向が強まっている。レイヤーの壁を越える「階層アップ転職」の門戸が大きく開き始めたのだ。たとえ100万円以上もの大幅な年収アップは望めないとしても、とりあえずは階層を一ランクステップアップさせておいて、より上流の仕事にかかわるなかで、自分のスキルをアップするというキャリア戦略が現実的なものになっているのだ。そのチャンスをみすみす見逃す手はない。
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