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今月のデータが語る エンジニア給与知っ得WAVE! Vol.20 最大幅100万円!年収の地域格差

日本列島は南北に長い。景気復調の今、都市部、とりわけ東京への一極集中で、大都市の状況だけでは全国を語れないという現象が生まれている。今回はエンジニアの実年収の格差という観点から、中央と地方の問題を考えてみる。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/Onsel BEHICH)作成日:04.07.21
関東と北信越の年収差103万円
 中央集権から地域分権へ──。時代の風はその方向へ吹いているはずだが、現状ではなかなかそうはいかない。一方でUターン、Iターンを志す人も増えており、収入だけに一元化できない地方生活の豊かさ、魅力もあらためて再認識されている。
 こうした現状のもとで、ソフト・ネットワーク系、電気・電子・機械系、素材系のエンジニア約2000人に居住する地域と年収を尋ねたのがデータ1だ。「30歳・大卒以上」というモデルでは、関東地区は平均年収553万円なのに対し、北信越が450万円と年収の開きの最大幅は100万円以上に上っている。この格差は、大規模製造業や情報関連産業の地域分布とほぼ見合う数字である。基本的に事業所の数が多ければ、その間で競争が行われ、それが賃金の押し上げにもつながると考えることができるからである。
データ1 エンジニア平均年収の地域格差は
最大幅100万円以上
データ1
  また全国に事務所や工場を展開する大企業と、基本的に地域に密着した地場産業との間での賃金格差も考慮する必要がある。地方のサンプルの中に、大企業の地方在住工場勤務者が多く含まれていれば、相対的に数値は跳ね上がる。データ2にみられるように、北信越で「IT・通信系」が、中国・四国で「メーカー系」が極端に高い数値を示しているのはそのためとも考えられる。

 ちなみに全業種・職種にわたって調べた厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2002年)でも、定期給与は東京を100としたとき、愛知・大阪は90、福岡は79にとどまっている。青森、秋田は45と東京の半分以下、沖縄が37と最低ランクだ。
データ2  企業業種間でこんなに違う年収格差
データ2
生計費・物価の差──愛知の家賃は東京の58%
データ  収入以上に地域格差の大きい住宅家賃
データ3
出典: 厚生労働省2002年「賃金構造基本統計調査」および、 総務省統計局2002年小売物価統計調査(1カ月、3.3m2当たり)より
 しかしながら、エンジニアの生活という視点でとらえたとき、「年収格差イコール生活の質の差」とならないことにも注意したい。生計費・物価の地域格差があるためだ。東京は世界的にも最も物価が高い都市の一つである。消費の誘惑もそれだけ多い。近年のデフレの進行、物価の安定化によって、東京とそれ以外の地域の物価の差は減少傾向にあるといわれるものの、たとえば生活支出のなかで大きな比重を占める住宅家賃でいえば、いまだ歴然とした差がある(データ3)。

 東京を100としたとき、大阪は64、愛知が58、和歌山、愛媛などは37台だ。同じ間取りのアパートに住むにしても、月額家賃(敷金・礼金の習慣は考慮しないとして)にこれだけ差があると、生活実感はかなり違ってくるはずだ。

 このように、地方と東京での実質の処分所得には差がある。また、住居費のほかにも、個人のライフデザインは人それぞれであるし、働く企業のさまざまなオプションの組み合わせをかんがみると、一律に東京は収入が高く、地方は収入が低いとはいい切れない。
改廃方向の「地域手当」。地域差より個人差が重要に
 大企業では生計費・物価による不均衡を是正するため、月額給与のなかに地域手当を加味するところもある。労務行政研究所の「地域手当の支給実態と今後の改定動向」(労政時報03.3.28号)によれば、4割の企業が地域手当(都市手当などの名称も)を支給している。当然、生計費の高い地域、つまり大都市部に厚く支給されることになり、地方は低い。東京23区を100としたときの手当額はモデル勤労者のケースで、仙台65、名古屋80、大阪72、福岡70などとなった。

 同調査によれば、実際の地域手当支給額は東京で2万3000円程度。小さくない額ではあるが、これが地域別年収格差の主要因とまではいえない。いずれにしても企業業績の低迷、成果主義の導入などの過程で、企業は諸手当の見直しや簡素化を進めており、地域手当についても36%の企業が改定の予定があると答えている。

 給与の地域格差は依然としてあり、それを是正するための大企業の地域手当は改廃の方向にある。そうだとすると、今後地域格差は永続化・固定化されるかとなると、必ずしもそうとは言い切れない。業績主義が徹底すれば、給与の差は地域差ではなく個人差に限りなく近づくはずだ。たとえ地域格差が残ったとしても、それが生活の質の差にダイレクトに結びつかないということは、先に述べたとおりである。
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