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40年ぶりの国内新工場、さらに北米・アジアでライン増設を予定 ホンダ・国内マザー工場新設で生産技術者を大量採用
ホンダが生産技術者の採用を本格化させた。2010年に稼働予定の寄居工場がその核だが、世界各地で建設が続く工場やライン、国内工場での人材増強など、その背景には総合的な世界戦略がある。現場で働くエンジニアたちを、のどから手が出るほど欲している。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ) 作成日:06.11.29
Part1 世界の工場を支える生産技術系エンジニアを積極採用
 世界に何十もの生産拠点をもつホンダの生産技術は、国内のマザー工場で培われる。その技術が世界へと運ばれ、年間で何千万台という二輪車や四輪車が生産される。いわば世界の製造現場を支えるのが生産技術者の仕事だ。こうしたエンジニアを積極的に募集する理由を、人事担当の太田康さんが語った。
世界のマザー工場となる国内生産体制を強化
 世界で売れ続けるホンダ車。その生産台数は年間で四輪が約340万台、二輪で約1300万台に上る。新工場の設立や生産ラインの増設はラッシュ状態であり(下表)、2010年の生産台数は四輪で450万台以上、二輪で1800万台以上を見込む。
「弊社の生産拠点は世界各地にあるので、統一的な品質管理が必要となります。一方では性能、安全性、燃費、コスト、環境問題など、クルマや二輪車に求められる技術的な難易度は非常に高い。この両方を支えるのが生産現場の技術であり、生産技術は国内でリードして世界へと発信していきます」

 ホンダは本田技研工業、本田技術研究所、ホンダエンジニアリングの3社が大きな柱だが、高品質で高効率な量産システムを確立し、世界の拠点に水平展開する役割を担うのは本田技研工業だ。
「いかによいものをつくって、お客様に早く届けるか。国内の四輪工場ではひとつのラインで7〜8車種のクルマを生産しており、需要変動に対応したフレキシブルな生産システムを実現しています。国内工場で生産技術をさらに磨き、それを世界に展開していきます」
 モノづくりの核となるのが国内で開発する先端的な生産技術。国際的に生産能力が増す今後はますます重視されるため、最先端の新工場を埼玉県の寄居町に建設し、新しい技術を創造する体制を構築する。新工場の生産能力は約20万台、要員約2200人で、2010年に稼働予定である。
太田 康さん
生産本部 E人事開発センター
所長
太田 康さん
夢をもっているエンジニアを募集
 こうした背景を受け、ホンダでは生産技術者の確保に動いている。そもそもホンダの社員の約3分の1は中途採用であり、転職者であることはもちろん、学歴や年齢での処遇差はない。
「転職者は大歓迎です。というより、来てもらわないと困る(笑)。ほかのところでメシを食ってきた人が入ると刺激になりますし、戦力として期待できます。ある程度の予算が組まれる開発事業と違い、効率的なシステムを考える生産技術は予算面で多少の制約があるのかもしれない。ただ、安くて質の高い製品を現場がつくるから、お客様に喜んでいただき、今のホンダがあるのです」

 採用では技術力だけでなく気持ちを重視。「これをやりたいからホンダにきた」「世界の生産現場を支えてやる」といった、チャレンジングな人材が欲しいという。もうひとつはホンダ・フィロソフィーという企業理念に共鳴できる人だ。
「青臭い言い方ですが、夢がある人がいいんです。ホンダはやりたいことがある人が、それを実現できる場。「自分がこうしたい」ということをかなえられる会社です。そして、それぞれの業務を通じて、お客様の期待を上回る価値の高い商品をつくり出し、喜んでいただくというのがホンダの基本理念なんです」
ホンダの世界主要拠点における生産能力の強化
Part2 寄居工場で最先端技術を確立して世界に発信する
 寄居工場は国内ではホンダが約40年ぶりに建設する四輪完成車の新工場であり、生産技術の粋を集めて世界へと発信するマザー工場となる。具体的なプランや内容は現在プロジェクトで検討中だが、その実動部隊の約60人をまとめるリーダーが山根庸史さんだ。
「海外で生技がやりたい」と手を挙げて1年後に渡米
「今までの延長線上にある工場にはしません。先端技術を確立するのはもちろんですが、環境に配慮した工場、働く人に優しい工場、そして『将来競争力』をもつ工場にします。『将来競争力をもつ』とはラインの入れ替えや改良などに柔軟に対応し、技術の受け皿をもつという意味です」
 こう語る「寄居プロジェクト」の実質的なリーダーである山根庸史さんも、ホンダに転職したエンジニアだ。元は「材料屋」として内装品を開発していたが、入社3年後にアメリカで生産技術をやりたいと手を挙げ、約1年後にはオハイオでの勤務が始まった。
「よく行かせてくれたと驚きましたよ。4年と少し現地にいて、帰国後は国内で生産技術のプロジェクトにかかわっていたのですが、またすぐ『今度は二輪をやれ』と(笑)。二輪の生産技術をしばらくやった後は、世界の二輪工場の立ち上げに携わりました。1カ国に3週間ほど滞在し、現地の方々の文化や考え方を吸収したうえで、工場企画に反映します。これを数回繰り返すときもあります。1年間で5カ国の工場企画を行いました」

 海外拠点の工場で技術的な支援・指導を行う生産技術系エンジニアは、現地駐在で約800人、出張で滞在するスペシャリストが約2500人ほどだという。
「工場新設や新機種の生産開始といったタイミングで多くのエンジニアが現地へ行きますが、その環境先端技術の開発拠点となるのが寄居工場です。要員2200人の予定ですが、現在でも国内工場で生産技術者が足りませんし、海外拠点に向かう人材も想定しなければいけません。今後の数年は、ホンダを挙げて生産技術者を積極的に採用したいのです」
山根庸史さん
生産本部 寄居プロジェクト
プロジェクトリーダー
山根庸史さん
ホンダという企業は「走り続けるオートバイ」
 山根さんもまた世界の工場を知る生産技術者のひとりだ。寄居工場を全産業と全世界に「魅せる」工場にしたいという思いも強いが、完成した後の夢も大きい。
「海外で生産するには、『地域への貢献』を考えることが非常に重要。同じことをする場合でも、各国での受け取り方は千差万別なのです。また、現地の人と前向きに議論できる熱意も必要。私は寄居で確立する新しい環境先進生産技術を世界中に広めたい。まずは寄居工場の中に世界の人々への技術伝承の場をつくり、世界の人々が集まるグローバル環境工場としたい。また、私自身もその技術を引っ担いで世界を回り、現地の人に寄居工場で培う技術や考え方を根づかせたい。それが私の集大成です」

 Part1の太田さんと山根さんは同僚というより友人だ。そんな二人が最後にこんな話をしていた。
「やっぱりホンダは二輪の会社だよな。止まると倒れるし、走り続けると安定する。速度を上げるともっと安定する。だって俺たちはずっと走ってきたし、結局はそれがいちばん面白いってことだよな」
埼玉製作所。寄居工場稼働後は最新鋭の生産拠点にリノベーションをする予定
Part3 本田技研工業に転職した生産現場のエンジニアたち
 本田技研工業に転職した、生産技術系エンジニアを紹介する。品質管理と設備設計を担当する2人で、勤務地はどちらも四輪工場である埼玉製作所。白い作業着にそろいの帽子を手に現れた2人は、既に将来の目標までを考えていた。
電気以外でも勉強を重ねて、品質管理のプロになりたい
何千という電装品の不具合を解析する
 電子機器メーカーでカーナビの解析エンジニアをしていた清水健さん。もとは設計希望だったが、人手が足りないからと電気・電子系の解析業務へ。大学で学んだ電子回路の知識が役に立ったと笑う。
「前職では顧客から戻ってきた不具合品の電気的な解析をしていました。不具合の個所を特定し、社内や顧客に報告するのが仕事です」
 前職での自動車メーカーとの情報交換を通じて、品質目標の設定が高いことを肌で感じた。より高い次元でのモノづくりに興味をもったことから、転職を考え始める。清水さんが担当したカーナビにはホンダ車に搭載されたものもあり、「仕事が直結しているのは強みになる」と応募して、採用が決まった。

「今はナビ、ライティングシステム(照明)、キーレスエントリーシステム(リモコン鍵)、パワーウインドーなど、年間で400点くらいの部品を見ています。電装品は外から見ただけでは原因がわからない場合も多いので、サプライヤーから図面を取り寄せたり、実験車に50日間取り付けて再現したこともあります」
 上記の400点とは1車種分の数にすぎない。清水さんは約10車種を担当しており、各モデルは仕様ごとに装備が異なるから……とんでもない数を扱っているのだ。
清水 健さん
品質管理室 企画管理ブロック
清水 健さん(29歳)

大学の電気・電子工学科卒業後、設計業務などの経験を経て、電子機器メーカーでカーナビの解析に約3年携わる。2006年4月にホンダに転職。
私たちが安全なクルマづくりを支えている
 いわば、前職とは逆の立場で解析を行う清水さんだが、入社して半年が過ぎ、今では膨大な電装品の一つひとつが新しいチャレンジだと語る。
「きちんと原因を突き止めないと再発してユーザーに迷惑が掛かります。事故を起こす場合だって考えられますから、私たちが支えているという自負はあります」
 新卒時には自動車業界など考えもしなかったと、清水さんは振り返る。
「当時は自動車に電気なんてと思っていましたが、インテリジェント化が進んで電装品がこれだけ増え、今後もどんどん搭載されるでしょう。ただ、電気・電子の知識だけでは解決できない問題もあるので、将来的にはエンジンなど別分野の勉強もし、クルマ全体の品質管理のプロになりたいですね」

 ホンダ車はもともと好きだったが、入社して一層ホンダのよさを知ったという。役職ではなく「さん付け」で呼ぶ社風もそうだが、埼玉製作所は毎週水曜日と金曜日がノー残業デーで17:20に終わること、福利厚生がしっかりしていることも大きい。
「中学時代は水泳の県大会で優勝したんです。敷地内にプールがあって、いつも泳いでいるんですよ」
埼玉製作所では工場見学も実施している。取材当日も多数の小学生が訪れ、従業員が案内していた
設計者だけでなく「設計ができる生産技術者」になりたい
3D-CADが未経験でも憧れのホンダに入社
 10月に入社したばかりの吉原信之さんは、前職の自動車部品メーカーで、主に配管部品の生産設備を設計していた。4年半の実務経験で、設備設計エンジニアとしてひと通りのことを学んだという。
「仕事は楽しかったですし、1m四方の小さな設備でしたから、ひとりでやりたいようにできました。会社にも不満はなかったんです。ただ、今後は数をこなす仕事が多くなるでしょうから、何かほかの可能性はないかと考えていました」
 そんな時にホンダが寄居工場を立ち上げることを知り、応募を決めた。

「私にとってホンダは昔からの憧れ。入れるものならぜひと思いました。ただ、不安を感じたのは私に2D-CADの経験しかなかったこと。即戦力を求めての募集でしょうから、主流の3D-CADを知らないのは大きなマイナスだと思いました」
 吉原さんは面接でその旨を伝えるが、結果は採用。そして部門配属後の1週間で、3D-CADの講習をみっちり受けたと語る。
「面白いんですよ、これが(笑)。入社前は技術面も含めて不安ばかりでしたが、先輩に『外の世界を知っていることがお前の武器であり、財産なんだぞ』と言ってもらいました。もう、微塵も心配していません」
吉原信之さん
事業管理部 工機金型ブロック
吉原信之さん(27歳)

大学の機械工学科卒業後、自動車部品メーカーにて生産設備設計に4年半携わる。2006年10月にホンダに転職。
「プラモデル感覚」のモノづくりが面白い
 設備設計の醍醐味を吉原さんは、「理詰めで考えることとセンスを生かすこと」と語る。そのため、四輪車の巨大な組み立てラインと前職の小さな部品との規模の差にも、設計は同じはずだという。
「大きな全体も小さな部分の集合ですから、これまでの経験は役立つと思います。言葉は適切でないかもしれませんが、絵にしたものが形になるという『プラモデル感覚』がいいんです。だからモノづくりは楽しくてやめられません」

 吉原さんが入社して感じたのは、ホンダの企業理念が個人レベルまで浸透していること。従業員一人ひとりが「ホンダのあるべき姿」を自覚しているという。
「将来はパワートレイン系の生産ラインを設計してみたいですし、寄居工場の立ち上げにも参加したい。私は生産技術が大好きなんです。だから、まずは優秀な設計者を目指しますが、将来は『設計ができる生産技術者』になるのが夢です」
埼玉製作所の最終チェックライン。この工程を完了してクルマが出荷される
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
記事の写真にもあるHONDAのエンブレムが入った白い作業着って、かっこよくありませんか? 私はこれを着たエンジニアが社員食堂でそろってメシを食べる姿が、とても好きなんです。ただ、私のような普段着の人間が交じると、妙に浮いていましたけど(笑)。開発もいいけど、現場のモノづくりも楽しそうです。本当にチャンスだと思いますよ。

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