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これまで常駐SEシリーズを3回にわたってお届けしてきた。その中で、常駐SEのエンジニアとしての誇りや悲哀を浮き彫りにする一方、客側SEの本音や言い分もお伝えした。今回は、客先に信頼され、「次もあなたに任せたい」と言わせるための処世術を、200人分のアンケートと3人の取材から見つけ出してお届けしたい。そしてさらに、客先の業界ごとにも特色があるのか探ってみた。皆さんの日々の仕事生活と照らし合わせてもらえたら幸いだ。 |
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K・Hさんは一見すると気の良いイケメン風。明るくて話しやすいタイプだ。彼は今、通信キャリアでサーバー側のシステム開発に携わるエンジニアだが、現場でも明るいノリで周囲に溶け込んでいると言う。客先の担当者も彼のペースにのまれ、誰とも友達感覚で話すので、状況を知らない人から見ればどちらが発注側かわからない雰囲気である。それでいて、彼のキャラクターとスキルは客側から高く評価されている。つい先ごろも「ぜひ、今後も残ってくれないか」と言われたそうだ。 「どの業界よりもシステム障害を避けるための努力と手間を惜しまないのが通信業界です。日ごろから顧客と何でも話せる雰囲気をつくっておくことで、重要な懸案もいつも本音で話し合えるし、ミスを隠すような間柄にはなりません。結果的につくったシステムは安定します。お客様は何よりそれを望んでいるんですよ」 客側と一線を画すよりも、何でも言い合える友達感覚のほうがかなりマシ。ちょっとしたバグも未然に防げたりするのでシステムは安定し、結果的には信頼される。 |
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大手生保の客先でデータウェアハウス(DWH)の運用に携わるI・Nさん。やはり金融業界はお堅い雰囲気だそうだ。配属前にはノーネクタイでも構わないと言われたのだが、実際に顧客との打ち合わせが頻繁にあるので、自然とスーツを着用していると言う。こうした「けじめ」のつけ方は、それなりに必要なようだ。昨今は企業の個人情報漏えいが大きく問題視されているが、最もシビアに対応しているのはやはり金融機関で、開発現場にPCどころか携帯電話も持ち込んではダメ。開発用のPCからはインターネットにもつなげない。必然的に開発現場では客側と、折り目正しいビジネスライクな関係になるのだろう。それでも人間的に認められる方法はいくらでもあると言う。 「プラスアルファをもった人材と見られることですね。私はDWHでデータのマイニングを指示どおり行っているのですが、顧客の業務や金融商品を勉強して、顧客が使いやすいような資料にまとめて分析結果を提供するように心掛けていたところ、“I・Nさん個人と直接契約したい”と言われました」 |
また、金融業界は競争力向上のためにITを大幅に活用している業界でもある。意外とエンジニアとしてのスキルを品定めしており、有用な人材は他社に取られまいと、抱え込もうとする傾向もあるようだ。そのため、業務知識など、付加価値のアピールは有効だ。 |
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Y・Tさんが常駐しているのは大手電機メーカー。同社には情報システムの事業部門もあるが、Y・Tさんの配属先は家電部門で、そこで業務システムの開発を行っている。顧客側の担当者は回路設計や組み込みソフトの開発などには詳しかったりするが、業務システムに関してはスキルが決して高くないそうだ。それゆえ、会議などでY・Tさんの意見がけっこう通るし、質問をされることも多い。つまりエンジニアとして認められた存在なのである。一方でY・Tさんも、先方担当者をモノづくりに情熱を燃やすエンジニアと認識し、一緒に良いシステムをつくりあげましょうという姿勢をアピールしている。 「発注者・受注者というビジネスライクな関係性よりも、エンジニア同士の絆を強めたほうが開発はスムーズに進みますよ。仕事がやりやすいのは間違いない。飲みの席でも興味のある製品で盛り上がったりします」。 Y・Tさんはほかの企業のシステム開発にも参加して、技術の幅や知見を広げたいそうだが、当分は手放してくれないようだ |
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3人の常駐SEの例を見てきたが、共通して言えることは、配属先業界独特の風土に合わせてスペシャリティを発揮していることだ。本人たちのSEとしてのスキルが十分に高く、日ごろの努力を怠っていないことは大きい。だが、本人たちの個性と各業界ならではの特徴がマッチし、相性が良かったのではないかとも感じられた。例えば友達感覚のコミュニケーションが得意なタイプの人は、折り目正しいビジネスライクな関係が求められる業界に配属されたら、息が詰まったかもしれない。 今ひとつ客先と濃密で有意義な関係性が築けないと悩んでいるなら、自社に配属企業の変更やプロジェクトの異動を希望するなり、それがかなわないとなれば思い切って転職をするなどして、自分の個性が生かせそうな業界に変えるステップを踏んではいかがだろうか。最後に、あらためて「次もゼヒ!」と言ってもらうための条件を整理してみよう。 |
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