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エンジニア給与WAVE! Vol.54 平均格差83万円!外資vs国内企業の30代年収ギャップ
「外資系は給与が高い」とは一般的にいわれるところ。実際にはいくらくらい違うのか?2006年1月に行ったエンジニア3074人の年収調査から、外資系企業と国内企業勤務者の職種別、年代別年収比較を試みた。ぜひ自分の年収と比べてみてほしい。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/kucci(クッチー) 撮影/加納拓也)作成日:06.04.05
外資系企業の平均年収687万円に対して、国内企業は604万円
 外国企業が日本国内に現地法人などを設立して行う直接投資が伸びている。2002〜2003年度の3年間は1997年度の3倍強の規模で投資額が増え、2004年度の上半期だけでも、2003年度1年間を上回る2兆2308億円の投資額があった。外資比率100%の子会社設立だけでなく、M&Aや株式資本投資などによる直接投資も増えている。金融ビックバンなど、経済グローバリズムを背景とした国内市場の規制緩和が背景にあるものと思われる。法人設立件数でいうと業種別には、金融・保険が目立つが、機械・化学関連の製造業、通信、IT、コンピュータ関連も伸びている。

 以前から、国内企業と外資系企業の賃金格差がいわれてきた。外資系企業には「仕事はハードで能力主義だが、実力さえ発揮すれば男女差なく高い給与やボーナスがもらえる」というイメージが強かった。そのことを働くエンジニアの実感値としてとらえようとしたのが、今回のエンジニア3074人の年収調査だ。技術系職種に絞ったこの種の調査は国内でも例が少ないだろう。

 ちなみに、公的機関が法人企業を対象に行った調査では、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が2005年1月に発表した「外資系企業の労使関係等実態調査」があるが、これによれば、外資系企業(2003年、対象3100社)の新規大卒者の初任給額(事務系)は男子が213,200円だった。これは外資を含む国内一般企業の同年の数字、199,000円(2003年賃金構造基本統計調査)に比べても大きなものである。

 さて、今回のアンケート結果では、結論からいうと、たしかに国内─外資の賃金(年収)格差は存在した。外資系全体の平均賃金(年収)が687万円であるのに対して、国内企業は604万円(アンケート対象者の平均年齢35.5歳)。差額83万円は国内企業の平均年収の13.7%に相当する。ボーナス1回分ぐらいの差ともいえる。以下、調査内容を詳しく分析していこう。
ソフト系職種でより顕著な差がついた
 本調査は、外資系企業に勤務する対象者の数が国内企業のそれに比べてかなり少ないため、統計的には完ぺきな比較ということはできない。少数の外資企業勤務者の年収が特異的に高い場合、国内企業の平均と著しく差が生じることがある。それでも、実態をうかがい知ることはできよう。

 ソフトウェア・ネットワーク関連のいわゆる「ソフト系」職種と、電気・電子・機械関連の「ハード系」職種の大きく2つに分けて、職種別年収比較をしたのが、DATA1である。ソフト系全体では外資が720万円(国内596万円)、ハード系が661万円(同614万円)。どちらも国内企業を上回るが、その格差はソフトウェアのほうが圧倒的に大きい。

 ソフト系職種の中でも国内企業との開きが目立つのは、「コンサルタント、アナリスト、プリセールス」(外資898万円:国内713万円)、「システム開発(Web、オープン系)」(765万円:581万円)、「通信インフラ設計・構築(キャリア・ISP系)」(1075万円:669万円)などである。

 ハード系職種はソフト系に比べて内外格差はそれほどではないとはいえ、例えば「サービスエンジニア」(636万円:555万円)、「セールスエンジニア、FAE」(892万円:647万円)など、100万円から200万円以上の年収差を示す職種もある。
DATA 1 “外資vs国内”職種別・年代別平均年収(単位:万円)
職種分野 職種 20代後半(25〜29歳) 30代前半(30〜34歳) 全体
平均
外資系
国内 平均 外資系
国内 平均
ソフトウェア・
ネットワーク関連
コンサルタント、アナリスト、
プリセールス
670 784 713 837 634 677 762
システム開発(Web・オープン系) 563 496 481 645 536 521 562
システム開発
(マイコン・ファームウェア・制御系)
500 473 454 600 552 566 592
システム開発(汎用機系) 900 545 508 500 574 545 577
ネットワーク設計・構築
(LAN・Web系)
- 508 515 - 582 545 576
パッケージソフト・
ミドルウェア開発
- 493 463 960 540 557 575
運用、監視、テクニカルサポート、保守 450 509 483 550 534 503 572
研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理ほか 600 668 596 - 552 555 646
社内情報システム、MIS - 517 533 623 530 544 640
通信インフラ設計・構築
(キャリア・ISP系)
- 517 496 900 778 599 640
ソフトウェア・ネットワーク関連 平均 559 526 507 695 552 547 596
ハードウェア関連 サービスエンジニア 617 462 499 492 517 512 559
セールスエンジニア、FAE - 479 467 850 653 608 648
回路・システム設計 - 475 472 500 555 585 617
機械・機構設計、金型設計 500 479 481 550 509 516 590
研究、特許、テクニカルマーケティングほか 475 486 488 538 595 591 665
光学技術 - 410 410 - 494 534 605
制御設計 - 430 444 - 525 529 618
生産技術、プロセス開発 525 480 476 750 520 545 623
半導体設計 - 518 518 - 575 630 707
品質管理、製品評価、品質保証、
生産管理
900 470 509 575 529 538 608
ハードウェア関連 平均 577 475 480 539 531 550 614
素材、食品、
メディカル関連
素材、半導体素材、
化成品関連
450 463 477 658 545 552 632
全体 564 503 495 617 547 548 607
職種分野 職種 30代後半(35〜39歳) 40代後半(40〜44歳) 全体
平均
外資系
国内 平均 外資系
国内 平均
ソフトウェア・
ネットワーク関連
コンサルタント、アナリスト、
プリセールス
918 729 818 982 717 838 762
システム開発(Web・オープン系) 876 631 605 950 670 688 562
システム開発
(マイコン・ファームウェア・制御系)
700 604 581 - 720 712 592
システム開発(汎用機系) - 596 587 612 667 628 577
ネットワーク設計・構築
(LAN・Web系)
660 606 593 - 702 724 576
パッケージソフト・
ミドルウェア開発
- 611 622 690 621 627 575
運用、監視、テクニカルサポート、保守 840 639 656 550 633 624 572
研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理ほか 850 684 699 600 685 702 646
社内情報システム、MIS 745 718 655 901 716 720 640
通信インフラ設計・構築
(キャリア・ISP系)
1250 682 742 - 789 803 640
ソフトウェア・ネットワーク関連 平均 887 637 631 830 679 691 596
ハードウェア関連 サービスエンジニア 706 573 583 748 667 617 559
セールスエンジニア、FAE 738 596 638 1210 786 847 648
回路・システム設計 797 676 645 800 679 706 617
機械・機構設計、金型設計 600 606 625 - 644 693 590
研究、特許、テクニカルマーケティングほか 745 664 707 750 765 836 665
光学技術 - 639 650 - 800 719 605
制御設計 - 617 620 800 786 751 618
生産技術、プロセス開発 600 590 614 638 751 769 623
半導体設計 800 692 674 975 897 889 707
品質管理、製品評価、品質保証、
生産管理
657 616 617 650 698 670 608
ハードウェア関連 平均 715 621 633 785 709 720 614
素材、食品、
メディカル関連
素材、半導体素材、
化成品関連
835 627 686 975 739 764 632
全体 776 634 636 813 695 712 607
外資では30代前半に大幅年収アップの可能性がある
 外資系企業という場合、ふつうは外資比率が50%以上を指す場合が多い。したがって外資比率が50%と100%では、賃金政策においても違いが生じる可能性は残されている。今回の調査では外資比率までは見ていないが、企業規模による年収の違いは見てとれる。

 同じ外資系といっても、ベンチャー(全体平均591万円)→中小(704万円)→大手(766万円)と、規模が大きくなればなるほど年収も高くなる傾向が見られる。むろんこの傾向は国内企業についても同様で、中小(563万円)→ベンチャー(581万円)→大手(669万円)という順になる。(DATA2)
DATA 2 企業規模で変わる年収格差 (単位:万円)
  外資系ベンチャー
外資系大手企業
外資系中小企業 外資系企業全体
国内 ベンチャー企業
国内大手企業
国内中小企業
国内企業全体
全体
ソフトウェア・
ネットワーク関連
577 794 789 720 583 664 565 604 596
ハードウェア関連 638 717 627 661 584 668 560 604 614
素材、半導体素材、化成品関連 450 870 638 653 523 684 563 590 632
全体 591 766 704 687 581 669 563 604 607
DATA 3 外資vs国内 年収格差はどの年代で生まれる?
DATA3
(単位:万円)
  興味深いのは、国内の中小・大手間格差に比べると、外資系のそれは小さいということだ。外資系企業の業態や事業形態を考えたとき、法人の規模と年収の関係は、国内企業ほど固定的ではない、という見方もできる。

 もう一つ関心を呼ぶのが、年齢によって生じる年収の差、あるいは年収変化のカーブだ。一般に国内企業は年功序列型賃金体系の影響がいまだ色濃く残るため、年収の年代格差が明確であるのに対して、外資系は年齢にはあまりとらわれないのではないか、という仮説がある。
 そこでアンケート結果を見ると、外資系の場合は20代後半(564万円)→30代前半(617万円)→30代後半(776万円)→40代前半(813万円)、国内は20代後半(503万円)→30代前半(547万円)→30代後半(634万円)→40代前半(695万円)という数字が得られた。これをグラフにしたのがDATA3だ。

 一目でわかるように、国内企業の年収カーブは段階的に、緩やかに上昇しているが、外資の場合は30代前半から後半にかけての伸びが著しい。30代後半で既に平均年収が800万円台に手が届くところにまできているということだ。国内との差は20代後半から始まっているものの、30代後半の伸びでその差がさらに開く、という見方も可能だ。

 外資は国内企業よりも成果主義がより浸透しているという一般論を踏まえれば、30代で厳しい賃金競争が繰り広げられていることが容易に想像できる。実際には年季を積んでもなかなか年収が上がらない人がいる一方で、昇進とともに大幅な賃金アップを果たす人もいるわけだ。もしその賃金競争に勝ち抜く自信があるなら、40歳時点での年収800万円をひとつの目標として、外資系で頑張ってみるという選択は大いにありうる。
ハイリスク、ハイリターンの外資系企業
 外資系企業はなぜこうも年収が高いのか、ということについて、少し考えてみよう。すぐに想像できるのは、そもそも日本市場に上陸する外資系企業は、全世界でビジネスを幅広く展開するグローバル企業だということである。つまりそれだけ商品力、技術力の競合優位性をもつということであり、それを背景にした高収益経営を展開していることが多い。もともと社員に高給を支払えるゆとりがあるのかもしれない。

 また参入間もない外資では、優秀な人材を国内の同業界から引き抜いて人材基盤を固めることに力を注ぐ。転職初任給は国内企業よりも高めに設定する傾向が強く、それが高止まりしているということもいえよう。

 それ以上に重要なのは、賃金分配についての考え方だ。欧米系企業では伝統的に、利益はその成果に応じて個々の社員に還元するという、個人主義的・成果主義的な給与配分の考え方をするところが多い。企業内留保を増やし、給与は終身雇用を前提にした年功型で配分するという多くの日本企業の考え方と大きく異なる点だ。

 また、福利厚生や必要経費についての考え方も日本企業と外資では異なる。日本企業は基本給+成果給以外に残業手当、住宅手当、家族手当などの諸手当部分が厚いのに対し、外資系ではそれらを全部込みの賃金体系であることが多い。

 もちろん、こうした違いは、年々小さくなっている。日本企業でも成果主義は浸透しつつあり、職種別賃金体系や年俸制を採用するところも増え、年功型の残滓は払拭されつつある。とはいえ、外資ほど大胆な年収格差をつけにくい風土は依然として残っている。

 今回は、外資企業VS国内企業の年収をキーワードに見てきた。もちろん、働きがいとは、イコール年収だけではない。転職者比率、自己申告制度・社内人材募集制度など社員の自発性を重んじた評価制度やジョブ・ローテーションなど、外資系と国内系で異なるといわれる点も見逃せない。

 先の「外資系企業の労使関係等実態調査」によれば、年間の休日数についても、「120日以上」の企業が外資系では82.8%を数えるのに対し、国内企業は24.5%にすぎない。そうした非賃金的な待遇面での差も無視できない。
 もちろん、成果主義の下で、年収が下がり、突然リストラされるリスクも、一般的には外資のほうが多いとされる。つまり、外資のほうがよりハイリスク・ハイリターンの職場ともいえ、そのあたりも含めた総合的な判断が必要になるだろう。
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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ 宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
今回の調査では、現在の年収が仕事内容に見合っているかという質問をしたところ、半数以上が「仕事内容より安い」と回答していました。しかしながら、今後1年の間で会社からの評価は上がるかと尋ねると、「上がる」と回答した外資系の46%に対して、国内企業は37%。給与額が必ずしも仕事の報酬のすべてではないとしても、大きなモチベーションの一つではあります。今後の企業選びの参考になればうれしいのですが、いかがでしょうか?

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