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最先端リソグラフィー開発エンジニアの転職

半導体チップ開発で世界をリードするインテルへ

今やインテルは、コンピュータ/インターネット通信製品の要となるビルディング・ブロックをハードからソフトまで幅広く開発、供給する。だが、その中核はやはり半導体チップだ。今回は、集積回路を露光転写させるリソグラフィー開発者の面接現場をリポートする。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:05.09.28
インテル
応募したエンジニア 企業の面接担当者
田辺容由さん
田辺容由さん
(当時45歳)
高橋美智子氏
人事部
スタッフィングコンサルタント
高橋美智子氏
当時の職種
リソグラフィー技術開発マネジャー
募集職種
リソグラフィーエンジニア
業務内容
次世代半導体チップを実現するためのリソグラフィー技術の実用化開発。
仕事内容
半導体製造プロセスにおけるマスク作成ツールの開発、改善、導入。
職務経歴
理学博士号取得後、ドイツの研究機関に3年。帰国後に大手電機メーカーに入社し、リソグラフィー技術の研究を7年、実用化開発を7年。
応募資格
リソグラフィーまたはマスク関連業務で5年以上の経験。プロジェクトマネジメント能力。上級レベルの英語力。理系の修士号以上。
志望動機
研究・開発職を続けたい。勤務先を関東エリアにしたい。
募集背景
米国本社と緊密に連携してさらに事業を拡大していくため。
面接の流れ
人事部で選考後、配属予定部署の採用担当マネジャー(基本的に入社後の上司)が選考する。
人事部の採用担当者と配属予定部署の採用担当マネジャーが面接する。所要時間は約1時間。
事業部長が面接。同時に英語力を確認する面接も行う。所要時間は合わせて約1時間。
2次面接から中二日程度で通知する。
【通過率:4〜5割】

【通過率:6〜7割】

Part1
職務経歴と研究・開発のスキル
※ 面接にはウエハプロセス装置部長も同席したが、
  ここでは便宜上、高橋氏の質問やコメントに含めて掲載した
大手電機メーカーで14年の研究・開発経験
高橋:
 それでは、1次面接を始めさせていただきます。【Point1】まず、職務経歴を簡単にご説明ください。
田辺:
 私は今の会社、○○○(大手電機メーカー)に14年勤めています。前半の7年間は研究所、後半の7年は開発部門です。一貫してリソグラフィー技術の研究と開発に携わってきました。
高橋:
 【Point2】アシスタントマネジャーに昇格して以降、現在のマネジャーに至るまでの間、何人くらいのグループを率いてきましたか?
田辺:
 研究所では5人程度、開発部門へ移ってからは最大で20人くらいのグループをマネジメントしてきました。現在は開発部門の中でも生産寄りのところにいて、6人のグループです。
最先端リソグラフィー開発者としての豊富な経験
高橋:
  これまで、そのときどきの最先端に近い研究・開発をされてきたようにうかがえます。【Point3】その中で自分がやり遂げたと自負する実績をご紹介ください。
田辺:
 【Point4】大きなものを挙げれば5年前の、0.13μのmDRAM用リソグラフィーの開発です。この仕事ではマスクのほかに、別グループが行っていたレジストの選定にも加わり、新しいOPCソフトの選定や導入は直接担当しました。その後、90nm用のArFエキシマステッパーの選定作業にも加わりました。
高橋:
 研究所時代にはどんな仕事をされましたか?
田辺:
 【Point5】最初は位相シフトマスクの試作です。次は、所属部署がArF露光装置、マイクロステッパーの開発をしていたので、主にマスクのほうから加わりました。ですから、当時はハーフトーンマスクやレベンソンマスクをたくさんつくりました。
高橋:
 【Point6】職務経歴書を拝見すると、リソグラフィー関連以外の技術スキルとしてUNIX、C、C++といったソフト技術が記載されています。これらは社内の業務で使用したのですか?
田辺:
 私はもともと、計算のほうが得意なのです。例えば、光露光シミュレーターのプログラミングなどをしました。
高橋:
 研究・開発には障害が付きものです。障害を乗り越えていったような、具体的な経験を挙げてください。
田辺:
 障害ということなら、研究所時代にはたくさんありました。位相シフトマスクの実験をするにしても、当時はマスクメーカーを簡単に買える時代ではなかったので、ほかの部署から装置を借りてくる。
 あるいは、【Point7】研究所の中だけではそろわなくて、半導体製造装置メーカーさんに交渉してレーザーライターを貸してもらう。研究所にはまだステッパーもなかったので、遠くの開発部門まで出掛けて行ったりもしました。ないない尽くしの環境での研究でした
Point1
[面接官]実際の面接では、ここで守秘義務に抵触しそうな事柄についてはその旨を言っていただき、お答えいただかなくとも結構ですという前置きをします。
Point2
[面接官]マネジメント経験の事実確認をするために、この質問をしました。後からプロジェクトマネジメントに関して詳しく尋ねることになります。
Point3
[面接官]職務経歴書には過去の実績が列挙され、各担当業務の詳細が4〜5項目書かれているものです。それらの中から何を取り上げ、どんな業務をキーとしてアピールするかに注目します。技術力を推測できるからです。
Point4
[面接官]5年前にこの開発をしたのは大変評価できます。当時の最先端でした。また、田辺さんがマネジャーであると同時に、そのころまでは開発実務者であったことがわかります。弊社がエンジニアに求めるのは、ほとんどの場合はプレーイングマネジャーです。その要件にも合致するのです。
[応募者]リソグラフィーの要素技術はマスク、レジスト、装置の3本です。私が得意とするのはマスクですが、レジストと装置の選定も経験してきました。リソグラフィー全般にひととおりの経験があることを改めてアピールしたくて、こんな答え方になったのです。
Point5
[面接官]田辺さんがマスクの専門家であることはわかっていましたが、研究所時代からずっとマスク中心に取り組んできたことを知り、リソグラフィー全体の知識と合わせて技術力は優秀と思いました。
Point6
[面接官]リソグラフィー技術にソフト技術は直接関係しません。しかし、加点要素として評価できますし、ポテンシャル判定の材料にもなります。
Point7
[面接官]制約がある中で手を尽くしたこの経験は、田辺さんが30代前半でのこと。若いころからこんなふうに動き回れたのですから、さまざまな協力会社や米国本社とコラボレートする弊社の開発スタイルでも、十分に活躍できると考えました。
Part2
 マネジメント能力と柔軟な対応力

プロジェクトマネジメントの成功例と注意点
高橋:
 田辺さんはマネジメント経験も長いわけですが、【Point8】プロジェクトマネジメントで特に成功したような実例を挙げてください。
田辺:
 それでは、OPC選定プロジェクトについて話します。このプロジェクトをスムーズに進めるには、リソグラフィー技術者だけでは不十分と考え、CAD技術者も加えてチームを編成しました。
 それによってソフトの話が順調に展開し、OPCの選定がうまくいきました。結果として、製品づくりにもかなりの効果が出ました。
高橋:
 【Point9】逆に、プロジェクトマネジメントで困った例は?
田辺:
 ArFの露光機を選定するプロジェクトでは、実に困った事態に直面しました。 チームを編成し、日本のメーカー数社について公平な立場で検討したのですが、 チームの結論とは別のメーカーに決まりました。
 そのことをメンバーにどう説明するかで悩みました。なぜなら、選定の理由が 技術的な性能ではなく、コストが優先された結果だったからです。メンバーのモ ラールに影響しかねないと思いました。
高橋:
 先ほど最大20人のグループを率いていたというお答えでしたが、人をマネジメントするうえで気に掛けているのはどんな点ですか?
田辺:
 やはりコミュニケーションです。数人の場合は全員と毎日顔を合わせられますし、いくらでも話ができます。【Point10】しかし、20人となるとそうはいきません。いくつかのチームに分けて各リーダーに任せる形になります。私に届かない情報があったりして、実際には難しかったです。
高橋:
 何か工夫された点があれば、教えてください。
田辺:
 毎週1回、全員を集めてミーティングをするようにし、そのほかのときにもできるだけメンバーから直接情報を吸い上げるようにしました。しかし、数人のときと比べると、満足のいくコミュニケーションがとれなかったのは事実です。
計画途中での指示変更に対応した経験
高橋:
 弊社では判断と行動のフレキシビリティーを重視し、計画途中での軌道修正が珍しくありません。【Point11】これまでの業務経験上、急に指示が変わって対処を迫られたことはありますか?
田辺:
 私の勤める○○○でも方向性はよく変わります。例えば、半導体のプロセス ルールを新しいバージョンにする場合に、当初はひとつ下の微細加工技術を採用 しました。しかし、それから1年半近く経った中途半端な段階で、より微細な別 のルールを採用すると決定されました。
 開発現場では激論が起こりました。なぜなら、そのルールは当初の選択肢に あったものの、技術的に開発が難しく、量産時のコストダウン効果も小さいた め、採用を見合わせたものだったからです。結局、3カ月間も議論を重ね、全員 が合意したうえで移行しました。
高橋:
 路線変更の際、田辺さん自身はどんな役目を果たしたのでしょうか?
田辺:
 先ほど技術的に開発が難しいと申し上げましたが、その難しさはプロセスでは なく、主に回路に由来していました。そのため、私のほうでは回路の難しさを理 解し、その内容をチームのメンバーに説明して、路線を変更して開発を進めるよ うに徹底させました。
Point8
[面接官]ここからプロジェクトマネジメント能力を判定する質問です。どんな点を重視したのか。課題を解決していく力があるのか。答えの内容によってはマネジャーとしてのストレス耐性まで見えてきて、評価を高める応募者もいます。
Point9
[応募者]プロジェクトマネジメントというもの自体が、日本企業と外資系企業とではかなり違います。外資系では明確に進めるのに対して、日系はあいまいです。面接のとき、私も面接官もその違いに気づいていなかったため、どこかちぐはぐな質疑応答になってしまった感じがします。
Point10
[応募者]数人のマネジメントと並行して開発実務に携わることが入社後の希望であり、私の適性に合っていると思っています。マイナスに受け取られそうな答え方をしたのも、実は意図的でした。
Point11
[面接官]この質問のようにストレートに尋ねる場合もあれば、プロジェクトのエピソードの中で応募者の柔軟性を探る場合もあります。
Part3
技術者としての志向性と実務英語力
リソグラフィーの開発を最先端の場所で続けたい
高橋:
 田辺さんは転職を希望されていますが、【Point12】その理由はどんなところにあるのでしょうか?
田辺:
 私は入社以来ずっとリソグラフィーの研究と開発を続けてきましたが、最近、量産技術部門への異動話が出ています。しかし、私の希望はこの先もリソグラフィーの開発です。
 また、異動先の工場は遠く地方にあり、そちらへ赴きたくない理由があります。それで、東京近郊でリソグラフィーの開発ができる会社を求めて転職の決心をしました。
高橋:
 特に弊社を志望するのはどんな考えからですか?
田辺:
 御社は半導体業界、特にリソグラフィー技術で最も先行しています。その環境で先端の開発ミッションに打ち込めたらと考え、応募しました。
日常業務の中で培ってきた使える英語力
高橋:
 ところで、【Point13】英語はこれまでの仕事の中でどのくらい使ってきましたか?
田辺:
 大学院を出てからドイツへ3年間、ポストドクターとして赴任していました。研究所の中は英語が共通語でしたので、日常的に使っていました。また、今の会社では中国の企業と共同開発をしているので、メールは英語ですし、年2回ほどの中国でのミーティングも英語です。
(この後、田辺さんのほうからの質問があり、面接官がそれに答えた)
Point12
[面接官]転職理由と志望動機はセットで受け止めます。返答内容にある程度の合理性や納得感があれば、根掘り葉掘り尋ねませんが、必ず質問する事項ではあります。特に田辺さんの場合は、14年間も活躍してきた国内大手企業から外資系企業への挑戦的な転職です。確認しないわけにはいきませんでした。
Point13
[面接官]弊社の採用選考では、TOEICの点数は参考程度の扱いとしています。むしろ、実際の仕事で使ってきた、あるいは海外に出て使った頻度を重視します。また、第2次選考では英語面接も行い、現時点での実力をチェックするようにしています。
面接官はココを見た!
●最先端リソグラフィー技術の研究・開発に十分な技術力があるか。
●仕事内容やポジションの変化に対応できるか。
●志望動機と社内業務がマッチしているか。
 技術力に関しては、基礎的研究と実用化開発の両方の経験を問う。過去の時代時代で最先端の仕事をしてきたことが必要で、リソグラフィー全般にわたる業務経験が理想的。ただし、現在募集中の同職種ではマスク関係が中心になるため、その経験のみでも採用の可能性がある。変化対応力は潜在能力と人物素養の両面から探る。志向性のマッチングは短期と中期の視点でチェックし、プレーイングマネジャー志向であることがポイントのひとつ。
田辺さんはコレで決めた!
「マスクを中心に最先端の技術開発に携われると確認できました。
2次面接で米国本社のリソグラフィー技術担当者の考えもわかり、
安心して転職先に決めることができたのです」
 1次、2次の面接を通じて、マスクを中心とした最先端のリソグラフィー技術開発に携われることが確認できました。これが入社を決めたいちばんの理由です。入社後の上司になるはずの面接官の考え方や人柄もわかり、私への期待も大きそうに感じられたので、転職先として申し分ないと判断しました。若干気掛かりだったのは米国本社の考えですが、2次面接のときに電話でリソグラフィー技術担当者と話ができ、好印象を受けました。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
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すごい人が出てきました。リソグラフィーの開発者はほかの職種に比べると数が少なく、広い知識と高い技術が要求されるので、優秀なエンジニアも数多い。その中でも田辺さんはトップクラスではないでしょうか。「面接現場の舞台裏」では、今後も幅広い転職例を取り上げていきます。
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