PDPや液晶などが昨年来のデジタル家電景気を牽引してきたが、ここにきて第3のFPDといわれるリアプロジェクターテレビが存在感を増し始めている。その名が示すとおり、プロジェクターによって画面後方から収束光を投射することで、映像を画面に表示させるテレビのことだ。

　リアプロジェクターテレビの特徴は、液晶やPDPに比べて制御回路、ディスプレイ本体ともに低コストで済み、大画面でも価格が安いということ。日本で大画面テレビといえばPDPか液晶というイメージが強いが、欧米では既にリアプロジェクターの販売が急伸しており、今後しばらくは大画面テレビの中核技術となると評する声すら上がっている。
　北米市場を見ると、販売台数は03年には60万台程度だったが、米国メリルリンチは今年の販売台数が300万台程度にまで拡大すると予測している。

　弱点といわれてきた画質についても劇的に改善されてきている。まず、LDP、LCOSなどの画素型リアプロジェクターの登場で、最大1920×1024dpiのHD（ハイビジョン）化が可能となった。また、高輝度光源の開発などにより、外部プロジェクターと違って、明るい室内でも一般的なテレビと変わらない映像を映すことができるようになった。
　 現在、家電メーカー各社は欧米向け製品の増産で活況を呈しており、新規参入企業も増加中である。今のところは住居スペースの広い欧米での需要増が目立っているが、低価格や低消費電力を武器に日本でヒットする可能性も十分にある。

　リアプロジェクターの需要は急速に増大しており、家電メーカー各社は新製品の開発、画質の向上、コスト削減などに迫られている。それに伴い、人材ニーズも増加中だ。
　リクナビＮＥＸＴでは「リアプロ」「プロジェクター」などをキーワードに検索すれば求人情報を得ることができる。主な企業はリアプロジェクターを手がける家電メーカーのほか、プロジェクターのユニットメーカー、スクリーン材料メーカーなどだ。

　求められるスキルは光学、回路、材料の3つが主たる分野。プロジェクターユニットの開発では前2者が関連する。
　高圧水銀ランプないしLEDを使用した光源ユニットの制御回路では、パワー回路、電源回路といったスイッチング回路関連のスキルが要求される。ハードだけでなく、組み込み系などソフトウェアの経験者も対象となる。また、プロジェクター用レンズ（フレネルレンズなど）の設計では、3Dシミュレーションを含む光学レンズの設計経験があると、即戦力として重宝されるだろう。
　スクリーン部は液晶との関連が深く、半導体や材料関連の技術が生きる。TFTに限らず液晶全般の経験者はもちろん、フォトリソグラフィー材料、薬品、製造プロセスの経験者、シリコンなど半導体設計経験も評価される。

　リアプロジェクターは技術革新次第で、高価なハイエンドモニターに取って代われるだけの十分な可能性をもつ。つまりエンジニアにとっては、将来有望なグローバル製品の、開発先駆者となることもできる分野。今後の動向を調べておきたい対象のひとつだ。