医療機器／ロボット、光学などの先端技術が集積！

先端技術大国日本が世界市場で苦杯をなめ続けてきた医療機器分野。だが、厚生労働省の後押しで
国産先端医療機器の開発が活発化するなど、明るい兆しが見えてきた。ロボットや光学など異業種からの
技術導入も盛んであり、他分野からの転職も狙い目な業界である。

（取材・文／伊藤憲二　総研スタッフ／高橋マサシ）　作成日:04.10.27

　先進国での高齢化、発展途上国での公的医療の整備などが進むにつれ、医療機器業界への注目度が高まっている。小さなガンや狭心症を、切開することなしに治療できる内視鏡。体のあらゆる部分において、ごく小さな異常をも見つけ出す核医療機器。こうした高度先端医療向けのものから、心電図やレントゲンといったコンベンショナルな技術のものまで、現在ではさまざまな分野の製品需要が拡大している。

　医療機器市場は現在、世界で約16兆円、国内2兆円という規模だが、高度先端医療向けをはじめ、多くの分野で日本は欧米製品の輸入国に甘んじている。
　厚生労働省は国産医療技術の向上を図るため、科学振興費を医療機器業界に投入して研究開発を促進するなど、産業振興に懸命になっている。特に日本が出遅れている治療関連機器や放射線検査機器については、ほとんどを輸入に頼っており、内外価格差が数倍という状況にある。このため、医療機器メーカーも政府の動向を受け、研究開発投資を増やしている状況だ。

　これらを背景にして人材ニーズが拡大中だ。医療機器は専門のエンジニアのみが手がけるという風潮が濃かったが、最新の先端医療機器では画像処理、ロボット技術、情報処理、レーザーなど、多分野のテクノロジーの集合体という色彩が強い。このため、異分野のエンジニアを採用するケースが目立ち始めているのが、近年の特徴である。

　医療機器業界の求人は、もともと少ないほうではない。医療機器メーカーだけでなく、医療機器を扱う商社などでも、技術開発のためにエンジニアを採用するケースがある。リクナビＮＥＸＴでは「医療機器」をキーワードにするか、職種から「技術系（素材、食品、メディカル）」で「医療用具関連」で探すと求人情報を得られる。
　ただ、大手制御機器メーカーなどでは、医療機器関連での採用を掲載していないケースもある。そこで、医療機器メーカーを調べて、社名で求人情報を検索するといった方法も有効だ。

　求められるスキルは実に多様である。医療機器業界での開発経験があれば問題ないが、未経験でも前述のような理由で、要素技術に精通している人材が採用されるケースも多い。
　特にホットな話題の多い高度先端医療では、パルス波のような高周波回路、CCDやCMOSセンサー、画像処理回路、放射線照射といった「見つける・探すための技術」に関するスキルは重宝されるだろう。
　また、機器をミクロン単位で動かすといった精密制御、MEMSなどの経験、それ以外のメカトロニクス全般についても、医療機器のハードウェア開発に活用可能だ。膨大な生体情報を瞬時に解析するための処理回路やアプリケーション開発では、コンピュータ関連（ソフト、ハード双方）からの転職も狙える。

　日本の医療機器の技術水準向上は焦眉の急とされる社会的課題である。自分のスキルをその難問の解決のために提供することは、エンジニア冥利に尽きるといえる。