高分子材料／化学と材料が融合した先端技術

化学と材料の両分野の融合体である先端技術、高分子材料。電子機器を高性能化する電子材料、
衣服向けの新合成繊維、簡易リサイクルのための樹脂材料など、ニーズは高まる一方だ。
化学系エンジニアにとって、無限の可能性と夢が広がる世界といえる。

（取材・文／伊藤憲二　総研スタッフ／高橋マサシ）　作成日:04.09.15

　自動車、金属、電気など、テクノロジーを要求される業界にとって、高分子材料は必ずといってよいほど何らかの形で関与している。優秀な材料を手にすることが、製品の開発競争を勝ち抜くために何より重要とあって、常に新材料が求められているのである。

　高分子材料の世界は現在、最先端分野と実用化分野に二極化している。最先端分野は複雑系の化学の世界に属し、まったく新しいロジックで生まれた高分子をどう材料化するかを考える領域だ。
　それに対して、従来型の樹脂や金属といった分野での高分子材料は、実際に販売に耐えうる製品としてどう実用化するかが焦点となっている。例として金属粒子と高分子材料を使用した高強度・高弾性複合材料、燃料電池用スタックに使用する固体高分子材料などが挙げられる。
　高分子材料の市場は拡大傾向を続けており、富士キメラ総研は、2006年にはエレクトロニクス向けだけで2兆5000億円を超えるとの予測を発表している。

　高分子材料の特徴は、使用の対象となる製品のほとんどが最先端の分野にあること。つまり、高分子材料を手がけることは、常にエンジニアリングの最先端をウオッチし続けることになる。
　また、近年の高分子化学は、生物、化学、物理といった複数のジャンルのクロスオーバーテクノロジーとなっており、材料構造の研究からスタートして生命化学に行き着くといった、エキセントリックな研究も見受けられるようになってきた。高分子材料のニーズは今後もますます広がるに違いない。

　高分子材料は、技術力を看板とする化学メーカーにとっては開発力を内外に知らしめる基幹技術であり、著名な化学メーカーのみならず、特定技術に注力した中小企業でも優秀な製品を生み出しているケースが多い。
　エンジニアの募集も盛んで、リクナビＮＥＸＴでは「高分子」をキーワードに検索することで求人情報をゲットできる。

　要求される知識や経験は、言うまでもなく化学関連である。しかし、高分子でなければ採用されないとは一概にいえない。
　最先端分野では、まったく新しい概念から新材料を生み出すため、低分子化学的発想が必要とされるシーンが往々にしてあるという。高分子の知識をもちつつ、実務的には低分子を手がけているといったゼネラリスト的エンジニアも重宝されているのだ。また、高分子材料の経験者であればスムーズにキャリアアップできることも多いが、顔料、樹脂、金属など、幅広い知識をもっていたほうが当然有利だ。

　自分の化学的センスに絶対の自信があるというエンジニアにとって、高分子材料はステップアップを図るのに、またとないジャンルである。また、大学などで化学を学んで異なる分野で活躍しているエンジニアにとっても、再挑戦するだけの価値あるテクノロジーといえる。
　無から有をつくり出す先端テクノロジー、高分子材料開発の先にあるキャリアは、材料のエキスパートだけではない。多くの分野を融合させて、ジャンルを超えた未知の領域に踏み出すことも十分に可能なのだ。