免震住宅開発／年商20兆円市場で新製品ラッシュ

年間20兆円という巨大市場を擁する住宅産業が、新製品ラッシュに沸いている。
大地震がきても倒壊しない、免震住宅の消費がどんどん伸びているのだ。大手・中堅の
住宅メーカー以外にも、免震装置専門メーカーや他分野の企業が参入。伸び盛りの今がチャンスだ。

（取材・文／伊藤憲二　総研スタッフ／高橋マサシ）　作成日:04.07.28

　今、住宅をめぐる技術開発が熱い。2000年に住宅メーカーの一条工務店が、ブリヂストンとの共同開発による本格的な免震工法住宅を売り出したところ、大きな話題をさらった。そして、木造住宅は大地震に対して弱いという固定観念を根底から覆した免震住宅の開発は、その後住宅業界のトレンドとなったのだ。現在、関連各社は免震技術の競争で火花を散らしている。

　免震工法は、さまざまな方法で住宅全体をフローティング構造とし、地震がきても揺れが住宅の構造物を直撃しないというもの。例えば板の上に玉を乗せて揺すっても、玉はほとんど揺れない。この慣性の法則を利用しているのである。
　ただ、実際の開発は簡単ではない。住宅メーカー各社は、複数の減衰特性をもつ樹脂インシュレーターを敷く、ボールベアリングによって振動を逃がすといった、独自の方式を開発しているが、これらは構造力学、高分子化学、振動などの技術の結晶だ。並行して、地盤解析、ジオマティクスなど、建築物以外の要素についても研究が進んでいる。

　住宅業界には、長期不況の影響を受けた不調のイメージがある。しかし、免震住宅は通常の住宅より最低でも数百万円は高価なのに、売り上げを年々伸ばし、各社のドル箱商品となっている。
　そもそも住宅は、年間約20兆円という巨大市場であり、ヒット商品の創出が即、巨大な利益につながる世界。免震住宅は今後も性能向上、コスト低減のための開発が続けられると予測され、エンジニアのニーズも高まっている。人に喜ばれ、多様な技術を扱う住宅設計は、やってみると本当に楽しいと多くのエンジニアが口をそろえる。住宅業界への転職は、まさに今がチャンスだ。

　免震住宅は今や、大手・中堅の住宅メーカーにとって必須の商品。エンジニアを求める企業も増加中だ。リクナビＮＥＸＴでは「免震」「耐震」で検索すると、求人情報がヒットする。ただ、住宅開発に免震はつきものなので、免震に限定せずに「住宅」などで検索してもよい。

　スキルとしては、建築物の構造設計の経験があればもちろんいいのだが、そういうエンジニアは多くないだろう。自動車のシャーシ、船舶、航空機、鉄道車両など、中空構造物の経験があれば、建築物の経験がなくとも認められる可能性は高い。
　また、建築物や免震システムに使用する金属、ポリマー、ゴム、プラスチックなどの材料系エンジニアは、住宅業界には不足気味。有利な条件での転職も期待できそうだ。構造解析、振動解析といった解析のノウハウをもっていればなおよい。
　ちなみに構造系、材料系ともに、技術力に自信があるエンジニアなら、収益力の高い免震ユニットの専門メーカーの戸をたたくのも手だ。

　日本において地震対策は永遠のテーマであり、今後も免震住宅の需要はますます高まるはずだ。また、日本の免震ノウハウは世界的な水準にあるが、今後は地震が多い諸外国に免震装置が輸出される可能性もある。住宅業界は今、転職を考えるエンジニアにとっても、ビジネスチャンスの宝庫なのである。