コンポジット材料／性能・機能向上のカギはここに？

宇宙から医療まで、さまざまなイノベーションを支えるコンポジット材料。
画期的な材料開発は数十年にわたってモノづくり業界をリードできると、世界の化学、金属、窯業
などのメーカーが先行投資を行っている。先端志向の強いエンジニアにオススメだ。

（取材・文／伊藤憲二　総研スタッフ／高橋マサシ）　作成日:04.04.14

　コンポジット材料は、複数の素材を使用して作られる強度の高い物質である。代表的なものには、航空機やスペースシャトルの機体、F1のボディーなどに使用されるカーボンコンポジット、船体用のアルミハニカムなどが思い浮かぶが、実はそれだけではない。
　近年は人工骨や人工歯根、人工心臓弁などの医療用コンポジット材料、ナノテク材料を使用した基板向けコンポジット材料、エネルギー産業向けの発電素子材料など、用途が急拡大している。

　コンポジット材はMMC（金属系）、PMC（ポリマー系）、CMC（セラミック系）といった現行技術のものに加え、フラーレン、カーボンナノチューブを使ったナノコンポジット材料も、実用化に向けた研究が進められている。
　強度、耐熱性、寿命、コストなど未解決の問題が残されているが、MMC、PMCは自動車、船舶、宇宙航空、ロボットなど、CMCは人工歯根、人工骨やセラミックエンジン、セラミックタービンなど、ナノコンポジットは燃料電池用材料や軽金属の代替素材向けと、幅広い用途が想定されており、開発競争は世界規模で行われている。

　素材開発を地味に思うエンジニアもいるが、いったん優れた新材料が完成すると、青色発光ダイオードのように世界を一変させるほどのインパクトがある。カリスマエンジニアとして名を残したい。そんな野心家にとって、コンポジット材料は大いに魅力的なジャンルである。

　コンポジット材料の開発を手がけている企業は、主に製鉄、非鉄金属、窯業、化学、繊維など。ほかには、基板材料向けに電気関連企業の参入も見られる。
　リクナビＮＥＸＴでは「素材」をキーワードに検索すると材料系の求人が多数出るので、その中からコンポジット材料を手がける企業を探すのが早道である。

　求められる人材は、主に化学系・材料系のエンジニア。ただ、有機化学、無機化学、分析化学、電気化学、材料学、工業化学、応用科学、応用物理などの知識があれば、採用の対象になると考えてよい。
　コンポジット材の開発ではまだまだイノベーションが要求されており、野心的な企業のなかには、画期的素材を開発するという観点から物性化学の知識を歓迎する向きもある。
　スキルとしては半導体素材、ポリマー、金属、セラミックなどの材料開発経験者は有利。フラーレンなどのナノ材料の経験者はさらに優遇されるだろう。非破壊検査や特性実験の経験者も求められている。

　ナノ領域ではまだ発見されていない物性があると考えられており、シミュレーションのニーズも高い。アルゴリズム開発などに自信があれば、そのスキルをアピールするのも手だ。
　コンポジット材料は世界の素材メーカーが開発競争を手がける最先端分野。エンジニアとして名を成したい向きには、絶好の活躍場といえよう。