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今月のデータが語る エンジニア給与知っ得WAVE! Vol.14 消え行く福利厚生「住宅手当」の相場はいくら?
社宅・独身寮の提供、家賃補助、持ち家支援の社内融資制度などの名目で、社員の住まいに気を配る住宅手当。企業にも福利厚生の余力がなくなり、それらは廃止・縮小の傾向にある。今回はその現状を探った。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき) 作成日:04.04.07
急に廃止されては生活設計に狂いが…
 Tech総研が今回実施したエンジニア500人へのアンケートによると、51%が「住宅手当が支給されている」と答えている。一方で「以前は支給されたが、最近廃止された」と答える人が10%あり、全体的な廃止・縮小の傾向を裏付けている(データ1参照)。

データ1 「住宅手当」の支給は約半数
データ1
 最初から無ければそれなりにやっていけるものだが、急に社宅や住宅手当がなくなると当惑する。とりわけ家族持ちや転勤者には痛い。最近、福利厚生の大幅な見直しを進めている精密機械大手の元従業員Aさんの声。
「本社採用で地方勤務の従業員には家賃補助の名目で手当が支払われていました。私の場合は地方勤務時にワンルーム賃料7万円のマンションが借り上げで、うち会社負担が6万円もあったので、住宅費はかなり楽をしていました。東京本社に戻ったときはワンルームの独身寮に入りましたが、このときも自己負担が2万円ですみました。しかし、この家賃補助が最近全廃されたんです。保養所もなくなったと聞きました。私はその前に会社を辞めましたけど、残った同僚たちはヒーヒー言っています。成果を上げて給料を上げればいいと会社は言いますけど、そう簡単にはいかないものです」

 では、この事例が表す住宅手当が廃止・縮小トレンドは事実なのかを解明していこう。
 
福利厚生の“王様”だった住宅手当だが
 住宅は、それを購入するにしても賃貸するにしても、生計費に占める割合がかなり高いものである。とりわけ都市部は家賃が高いから、給与の3分の1から半分近くが住宅費で消えていくという人も少なくない。こうした事情もあって、日本の企業では以前から福利厚生の一環として社宅・寮の整備、持ち家推進のための住宅融資ローン、さらに住宅手当など住宅関連の補助政策を重視してきた。終身雇用が前提であった時代はこうした福利厚生策は社員のモチベーションを維持する上で重要な役割を果たした。また、バブル期には優秀な新卒学生を採用するために企業がこぞって豪華な独身寮を建設するなど、雇用政策の一環だったこともあった。

 しかし時代は変わった。バブル崩壊後の構造不況のもとで、企業が社宅や寮を拡充することは経営的にも難しくなり、全国に点在していた社宅用地を売却する企業が目立つようになる。
 そもそも福利厚生の考え方が大きく転換した。企業の側は総人件費を抑制し、成果を挙げた人には厚く、そうでない人には薄くという成果主義的な賃金配分を考えるようになった。社員の側にも、お仕着せの福利厚生よりも、総額給与を増やしてもらい、そのなかから自己責任で生計プランを立てたいという意向が芽生えている。

住宅手当は今後廃止・縮小に流れていく
 福利厚生策の変化のなかで、廃止対象の最優先ターゲットとして挙がるのが住宅手当である。賃金・人事制度の専門誌「労政時報」(労務行政研究所)2004年3月5日号が引用した経団連の2002年度福利厚生費の実態調査によれば、法定外福利厚生費のなかで最も大きな割合を占めるのが社宅・寮、住宅手当や家賃補助などの住宅関連で、その支給額は全体の51.3%に上っている。この比率をいかに下げるかが、福利厚生問題の眼目であるといっても言いすぎではない。

 実際、対前年度の増減率をみると、住宅関連の項目は0.5%の減少だ。また、福利厚生項目のなかで今後「縮小・廃止の意向」とされるトップにも、この住宅関連が挙げられている。半面、今後「充実・新設」される予定のものには、健康・医療、自己啓発、財産形成などの項目が並ぶ。これまでの福利厚生の“王様”だった「住宅」の位置は近年凋落の傾向といわざるをえない。

データ2 住宅手当の相場は「月々1万円〜2万円」
データ2
 とはいえ現実にはまだ住宅手当を支払う企業が多数派。2002年の中労委の調査によれば、住宅手当を実施している企業は調査対象の68.3%。支給額には差があるものの、平均額は1万5100円。Tech総研のアンケートでも、支給額は「月々1万円〜2万円未満」というのが最も多かった。(データ2参照)また、高額な手当てに満足している人や、手当ての金額の少なさに嘆く人、その満足度にもばらつきがみられるが、将来の廃止を見越しても現在支給されていることにはメリットを感じている人が多い。

Engineer Voice 支給額に必ずしも比例しない「満足度」
・月15万ほどする新しい1軒家の社宅を月5万程度で借りている。
(借上社宅/メーカー/機械・機構設計)
・金額としては多い方だとは思うが、満足はしていない。
(住宅手当支給月々7万円〜8万円/IT・通信系企業/システム開発)
・定期昇給が廃止され給料が少なくなったため、無いよりはもらえた方が助かる。
(住宅手当支給月々3万円〜4万円/メーカー/サービスエンジニア)
・3年前までは家賃、光熱費が全額会社負担だったのに現在は補助で7割程度しか出ない。
(住宅手当支給月々5万円〜6万円/IT・通信系企業/システム開発)
・住宅手当単独ではなく給与全体として見ており、それで満足がいく。
(住宅手当支給月々1万円〜2万円/メーカー・回路・システム設計)

転職時に住宅手当の有無は気にしない人は52%
データ3 「住宅手当」を転職の条件としてこだわる?
データ3
 ところで、住宅手当の有無は転職にあたってどれだけ気になるものだろうか。Tech総研のアンケートによれば、「転職にあたってその有無にこだわる人」が48%、「こだわらない人」が52%という結果だ(データ3参照)。こだわらない人が優勢とはいうものの、その差はわずか。まさに手当が存続するか・廃止されるか、いまはその瀬戸際にあり、転職時のメリットとしてそれを考慮するかどうかについても、みんな迷っているという感じなのである。

 住宅手当があればそれに越したことはないが、人はそのためだけに働くわけではない。グロスの賃金でカバーできるのかどうかシビアに考えつつ、手当を廃止・縮小するのなら、そのぶん公平な評価と成果に応じた賃金アップを望みたい、というところが本音ではないだろうか。
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