画像処理技術／増殖する技術と用途に挑戦する

一瞬たりとも進化を止めようとしない画像処理技術の、注目度は高まるばかりだ。生体認識、
ITSなど、未来社会のインフラづくりに欠かせない技術であり、国際競争も激化している。
常に世界最先端を要求されるだけに、得られる充実感は格別なものがある。

（取材・文／伊藤憲二　総研スタッフ／高橋マサシ）　作成日:03.12.3

　文書のデータベース化やデジタルカメラ（デジカメ）、スキャナーといったコンシューマー向け商品から、高度道路交通システム（ITS）、オプトメカトロニクスまで。画像処理システムは今や、ビジネスになくてはならない重要なテクノロジーである。デジカメやプリンターは民生用、工業用、事務機器用など用途が幅広いが、今年前半の世界のデジカメ出荷台数は前年比85％増（カメラ映像機器工業会）、工業用の市場規模では2006年に約800億円になるという予測もある。

　従来、画像処理技術の開発は高速化と精密化の2方向だったが、最近は画像処理チップのハイパワー化やアルゴリズムの高度化によって、データ量の大きい精密画像を、高速で処理できるようになってきた。この進歩が、国内系・外資系、大手・ベンチャーを問わず、多くの企業の開発意欲に拍車をかけている。

　例を挙げれば、製造業における生産ラインでの自動検査システムなどは、そうした技術の進歩によって生まれてきたもの。そして、今後の性能向上によって、新しい用途が次々と見いだされることはまず間違いない。
　さらに、近年急速に研究が進みつつあるバイオメトリックス（生体認識）やITSなど、社会のインフラ関連でも画像処理は重要な技術となってきている。職種や技術分野を超えて、エンジニアなら情報だけでも集めておきたい技術だ。

「画像処理」をキーワードにリクナビＮＥＸＴで検索すると、66件がヒットする（11月10日現在）。電子デバイス、大手家電、自動車部品、照明装置、光学機器など、多分野のメーカー系企業が名を連ねている。間口が広いぶん、企業によって専門とする分野もまちまち。将来の有望技術であることを含め、転職の際には焦ることなく、企業研究を十分に行っておきたい。

　必要とされるスキルはハードウェア、ソフトウェアの2つに大別される。ハードウェアのほうは企業によってまちまちで、CCDカメラ、画像・映像処理回路設計、システムLSI、発光ダイオードなど。回路、LSIなどはトータルでの仕様書までこなせると有利だ。

　ソフトウェアでは、ほぼ共通してリアルタイムOS、画像処理アルゴリズム、ネットワークシステム開発などの経験があると評価がアップ。もちろんファームウェアや組み込みOSなどのニーズも高い。
　画像処理技術は日進月歩なので、常に論文検索などで、技術動向に目を向けておきたい。技術分野、対象製品、業種・業界などが多岐にわたるため、自分自身の「芯」を決めて、好きな世界にどっぷりとつかろう。