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それは甘えなのか? 脱出すべき臨界点なのか?
今どきITエンジニア
不条理のボーダーライン
組織の中で仕事をする限りぶつかるさまざまな不条理の壁。人はどこまで我慢できるのか。ITエンジニアが成長するために、死守すべき「自由」とは? その自由を得るために果たすべき「責任」の範囲は? トップエンジニアの座談会から不条理の臨界点を探る。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/関洋子) 作成日:03.03.26

THANKS! 「これって不条理、それとも甘え?」──。今回は、厳しい外圧・内圧の中で、競争優位確保のために失われてゆく自由を同世代のITエンジニアはどう考えているのか?という多くの声にこたえて、検証しました。
序 論  || 複雑化するITエンジニアの不条理ポイント
Part1  || 会社の技術“非”尊重姿勢はどこまで我慢する?
Part2  || やっぱり人間関係。ダメな上司はどこまで許せる?
Part3  || 会社を超えたネットワークをどこまで保障してくれる?
序 論 複雑化するITエンジニアの不条理ポイント
「やりたいことができる」「尊敬できる先輩や面白い仲間が集まっている」「拘束なんてないよ。カンファレンスやアキバにだって自由に行ける」──。もしも、そんな環境があればエンジニアライフはハッピー。しかしながら実際にはそんな自由だけを主張できるわけではない。組織の中で働くためにはさまざまな不条理──「旧態依然のルール、理不尽な上司」「仕事のやり方が悪く、残業ばかりの体制」「納得のいかない評価、年収」……など我慢ポイントは山積みだ。
 
 上司が嫌だからといってすぐに会社を辞めたのでは、同じことの繰り返し。どこまで許容できて、どこからはオサラバなのか、自分なりのボーダーライン(境界)を明確にしておく必要がある。
 
 一般に、エンジニアの我慢のボーダーラインを左右する要素としては次のようなものが挙げられる。
■複雑化するITエンジニアの
不条理ボーダーライン
▲支点のズレ因子によって、負荷と利得のバランスが異なってくる。それによって不条理のボーダーラインが変化。
※(WANT、CAN、MUST)とはやりたいこと、できること、しなければならないことの意

■イマドキITエンジニアたちの7つの不条理ポイント
その1. イケテない評価、給与、教育制度など、制度・待遇
その2. 劣悪なマシン環境、勤務時間など設備・職場環境
その3. 技術の分からない社内(先輩)、社外(顧客)など人間環境
その4. 階層的、閉鎖的な社風、組織など風土・慣習
その5. 進歩、やりがいがまったくない仕事内容(技術、プロジェクト)
その6. 技術力はあってもまったく売れない事業、製品の競争力
その7. 流行に流されふらふらと定まらない企業戦略・目標など会社の将来性

 これらがどこまで満たされれば人はそこで働き続け、何が欠落すれば外に自由を求めるようになるのか。このボーダーラインは、年齢や志向性、技術の性格によっても違ってくる。エンジニアに求められる仕事の幅も複雑化する一方だから、ボーダーラインも単純には語れなくなっている。そのあたりをトップITエンジニアの座談会で明らかにしていこう。

[座談会出席者の横顔]
●Aさん
大手部品メーカーをて、新興の組み込み関連会社に転職。デジタル家電関連の組み込みソフト・ハードの設計・実装から、社内情報システムの企画まで幅広く担当。32歳。
●Bさん
大手電気メーカーに在職中からJAVAの可能性を探り、日本のJAVA技術者コミュニティの創成にもかかわった。ユーザー系SI企業を経て、3年前ソフト会社を起業。37歳。
●Cさん
大手電気メーカーに在職15年目。FTTH関連装置開発のプロジェクトマネジャー。プロダクトのラインナップから市場投入時期の検討まで担当。年齢のわりに裁量権はかなりある。37歳。
●Dさん
大手SIerのシステムエンジニアを経て、外資系ソフト会社に転職。大企業向け自社アプリケーションの導入コンサルタント。能力ゆえに火噴きプロジェクトの火消し役も担う。34歳。
Part1 会社の技術“非”尊重姿勢はどこまで我慢する?
技術屋なのに技術力では評価されない?
──会社や仕事への不満というのはもちろんだれにもあるものですが、今日お集まりの皆さんは入社早々の新卒と違って、プロマネ経験があったり、会社を起業されていたりと、酸いも甘いもわかったエンジニアばかり。ただ、それだからこそわかる、グチと正当な問題意識の違い、ストレスを感じる環境に居続けるべきか、飛び出すべきかの判断というのがおありだと思います。
 
Aさん:僕がいちばん若いんですが、私も含めて皆さん30代。いろんな現場の矛盾を一手に引き受けざるを得ない年齢層かなと思います。だからこそ悩みも深い。僕が最近いちばん感じているのは、自分の技術がきちんと評価されていないなあということですね。
──具体的にはどういうこと?
Aさん:僕らはモノをつくる職種。どんなにエンジニアが頑張っても、売り方が悪ければうまくいかない。市場性がないというのならまだしも、非技術的な社内外の政治的要因で世に出ない技術もある。逆に他社がやっているならやる、みたいな物まね発想が強い。技術優位で市場を取っていくんだという気概が、少なくとも私の職場には希薄なんですよね。そのくせ、技術が売れないと僕らのせいにされて、評価も下がる。
 
Bさん:でも、それってやっぱりエンジニアがガンガン言っていかなくちゃいけないことなんじゃない? 技術とマーケットの両方を見ていく視点、プロダクト・マーケティングのセンスはこれからのエンジニアにとって重要だもの。サラリーマンといえども、エンジニアは個人商店のつもりで、自分の技術を世に出す努力をやっていかないと。

技術優位性を本気で考えている会社か
Aさん:市場性を優位に考えればそういうことになるけれど、市場を追いかけるだけじゃなくて「これを作れるのはうちしかない」というぐらいの抜きん出た技術を生み出さないと、10年先、会社はないでしょう。
 
Cさん:10年先なんて考えられない。3年先だって。いま僕らが会社から要請されているのは、年度内に売り上げを立てられるような技術ということだもの。
Dさん:そうそう、日々自転車操業。でもその陰で3〜5年先の技術の仕込みもしないと、僕たち自身が生き延びていけないという危機感は確かにあるね。
 
Aさん:自分への技術投資ってエンジニアにとって不可欠だけれど、それをするだけの時間や精神的ゆとりがない。このままだと自分がつぶされちゃうと思うことがあるよ。

[会社の技術“非”尊重姿勢から見る「甘え−脱出」の境界線]
1)「売れる・売れない」だけでエンジニアを評価するか
これからのITエンジニアにはプロダクト・マーケティングのセンスは必須だ。「売れる・売れないで評価されてしまう」とボヤくだけでは、エンジニアの甘え。でも技術判断、市場判断にエンジニアの決定権がない場合は脱出か。
2)技術の先見性を尊重しているか
新しい技術投資へエンジニア自ら戦略的なシナリオを描き、会社に訴えかることなく、後追い感だけを嘆くのは甘え。でも会社側も将来性のある技術開発にどれだけ投資しているか、尊重しているかががないと要脱出。
3)事業戦略の先の見通しがあるか
事業戦略が絶えずぶれている会社は、エンジニアにストレスばかりをもたらす。企業とともにエンジニアも共倒れする危険大。ただしエンジニアもコミットメント後に事業戦略を愚痴るのは甘え。
Part2 やっぱり人間関係。ダメな上司はどこまで許せる?
事業部長の判断ミスはカバーできない
──サラリーマンの不満で最たるものは上司問題です。このあたりはどうでしょう?
Bさん:僕は上司に不満があって会社を辞めた経験者です。適切なコーチングもできないのに、文句ばかり言う上司。こちらが案を持っていって初めて小言を言う。で、それが有望な提案だと自分の手柄にしちゃう。
 
Cさん:大企業だと会社にぶらさがっているだけの“おじさんたち”がたくさんいます。中でも事業戦略にかかわる階層の人が、技術の先を読めないとその事業部は不幸ですね。事業部長の判断ミスは、僕らカバーできない。それどころかこちらが詰め腹を切らされそうになったら、ホント「辞めてやる!」

Dさん:今は事業部単位で業績評価されることが多いから、自分のプロジェクトは業績を挙げていても、ほかのプロジェクトが足を引っ張っていると、僕のボーナスにも影響しちゃうんです。たまらないなあ。
 
Cさん:問題なのは、自分たちに裁量権が少ないのに責任ばかりが押しつけられるということ。技術者集団が何をどう作るか、どう売るかということにもっと決定権を持つきだと思うんですね。でも、会社が大きくなると、一エンジニアじゃそんなことなかなかできませんからね。
 
Aさん:最近思うのは“上司教育”が必要だということ。技術はどんどん新しくなるから、勉強しない上司だと話のベースがかみ合わなくなる。「30年前は8Bitで動かしてたんだぞ」なんて自慢されても困る。だから最低限話を合わせるためにも、上司に新技術を教えなくちゃいけない(笑)。
 
Cさん:上司だけじゃなくて、僕らの年齢になると部下もいますよね。部下の出来がよくないと、それに足を引っ張られることもあります。

しがらみで辞められないこともあるなあ
──そういう人間関係を含めたしがらみが仕事の不満のベースにありますね。何年も上司や人間関係に恵まれなかったら、皆さん会社を辞めますか?
Aさん:そこが難しい。人のしがらみというのは、会社を辞める理由にもなり、辞めない理由にもなるから。いま自分が抜けたら、一緒にやっている同僚たちに迷惑をかけるだろうなと思うと、転職にも二の足を踏む。
 
Bさん:懇意に付き合っているお客さんの顔が浮かんで、辞めにくくなるというのもあるね。
 
Cさん:でも会社の看板抜きでつき合っているお客さんだったら、会社を辞めても関係は続くんじゃないかな。

[社内外の人員構成から見る「甘え−脱出」の境界線]
1)技術がわかる上司、役員がいるか
上層部が最新の技術をアップデートしているかどうか。「30年前……」と過去の栄光にすがる上司ばかりいる会社はお先真っ暗。でもそんな上層部に分かりやすく説明して操縦できないのは、エンジニアの甘え?
2)レベルの低すぎる部下や同僚がいないか
チームの生産性を上げるためには、部下や同僚も重要。したがって、自分の周りにハイパー人脈をネットワークしておくのはエンジニアの務め。しかし、それを自由に選べない、禁止されればジレンマで、自分自身に崩壊の兆しが……。
3)顧客との関係がどれだけ親密か
会社の看板なしでもつき合ってくれる顧客がいないようでは、それはエンジニアの甘え。でも付き合う顧客があまりにもお任せ主義、評価ができない顧客だらけなら脱出か。でもその顧客を育てていくのもエンジニアの務め?
Part3 会社を超えたネットワークをどこまで保障してくれる?
休日が自己啓発に使えないなら「辞めます!」
──将来の自分のための投資を、会社がどれだけサポートしてくれるかというのは大切ですね。
Cさん:まずは自分の気持ちが重要ですね。ただ、独身者と家族持ちでは少し事情が違うかもしれない。土日に技術書を読みたいと思っても、つい家族サービスということを考えてしまいますから。家族を犠牲にしてまでの自己投資というのはなかなか。
 
Aさん:土日なんてなくて、たまの休日も体がぐったりなんてことが続くと、やはりもう少し余裕のあるところに転職したいなと思うことはありますね。

Dさん:僕は時期によって繁閑の差が極端なんですが、暇な時期は休日を利用してデータベース技術の啓蒙本を書いていました。本を書くというのは自分も調べないといけませんから、これは大変勉強になった。
 
Bさん:本を書くのも、会社によっては絶対認めないというところと、会社の許可が必要なところ、休日を使うのだったら何をしてもよいというところなど、いろいろありますね。

企業や国を超えたエンジニアとの横の交流は絶対必要
Cさん:本来の業務から少し離れたところで自己啓発する機会はほしいですね。私の場合は、定期的に出張する米国での技術フォーラムがいい機会。国内外の同業他社のエンジニアと腹を割って話せるし、いろいろ刺激になります。こういうことが自由にできなくなったら、転職を考えるかもね。
 
Aさん:研究者には学会があるけど、エンジニアにはそういうコミュニティがほとんどない。米国は企業の枠を超えたエンジニアのコミュニティが自在に組織される風土があります。ところが、そういうコミュニティに参加することを罪悪視する風潮が日本にはまだありますよね。それがエンジニアを腐らせるんだと思うな。
 
Dさん:会社の風土って案外大事。前の会社のときはエンジニア同士フランクに話せる風土がなかったので、僕の場合はネットに友達を求めました。パソコン通信の技術系フォーラム。ここでの交友関係が本を書くきっかけになっています。
──ネットで知り合うということを含めた、横のネットワークって大切ですよね。外の人と知り合うと、あ、こんなにオレって給料安いんだということがわかって、それが転職のバネになったりもしますね。今日は、皆さんお忙しいところありがとうございました。

[社外ネットワークの自由度から見る「甘え−脱出」の境界線]
1)自己啓発しようと思う心のゆとりが得られるか
自分への技術投資のために会社に働きかけずにグチるだけでは、エンジニアの甘え。しかし、制度だけは用意しているが、休日はもうぐったりというようにその気力さえも奪ってしまう過剰労働を強いられる会社なら要脱出。
2)エンジニアコミュニティに参加する自由があるか
会社を超えた横のつながりこそ、エンジニアに豊かな発想をもたらす。「大事な技術を外に漏らされたくない」とエンジニアを企業内に囲い込む風潮の会社は論外。自ら会社を超えたネットワーク作りをしないのは、エンジニアの甘え。
3)自分の市場価値を判断できる機会があるか
社内の評価に縛られて、不満を蓄積するだけのエンジニアはNG。自分と会社を客観的な視点で判断できる機会とゆとりが必要だ。会社が与えないのなら、自分でつくり出すしかないが、そのチャンスさえもないのはもはや脱出しよう。
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関洋子(総研スタッフ)−座談会を終えて−
座談会終了間際、Cさんが勤務する会社に興味が集まった。「Cさんの会社は非常に硬直な感じがしますが、そのイメージは本当なんですか?」という問いかけに、「確かに硬直なところはあります。でも硬直だからいいところもあるんです」という答えを返した。今回の命題もまさにこれと同じで、ひとつの軸だけで判断できないところがある。しかし知らず知らずしてエンジニアを腐らせていく要因は多少、明らかにできたはずだ。
みなさんも「私が考える脱出のポイントはココだ」というのがあれば、ぜひ、ご意見をお寄せください。みんなで「エンジニアの腐敗・老化を防ぐ」特効薬を作っていきましょう。

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