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世界で3番目に高い、日本のITエンジニアの年収 |
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そこで今回は、オフショア開発が発生する遠因となっているIT技術者の給与の国際比較を試みた。水が高いところから低いところへ流れるように、給与の国際格差がある限り、海外への業務シフトの流れは今後も続くからである。
ニューヨークに本拠を置く組織・人事コンサルティング会社マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティングが2004年6月に発表した2003/2004年のIT技術者給与比較(※データ2)によれば、日本のIT技術者は、スイス、ドイツに次いで世界で総合3番目に高い給与を受け取っていることがわかった。世界32カ国約3300社のIT専門技術者4万3000人を対象に、職位ごとの手取り金額を調べたもの。上位5カ国はスイス、ドイツ、日本、香港、米国の順。逆に最も低い国は、下から順にフィリピン、ベトナム、ブルガリア、マレーシア、インドネシア、インドとなっている。
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データ2 |
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日本のIT技術者給与、世界で総合3番目の水準 |
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世界のIT技術者の給与上位ランキング |
順位 |
主任・上級専門職クラス |
課長職クラス |
部長職クラス |
役員職クラス |
国名 |
金額 |
国名 |
金額 |
国名 |
金額 |
国名 |
金額 |
1 |
スイス |
$75,100
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スイス |
$97,600
|
スイス |
$126,900
|
スイス |
$164,900
|
2 |
日本 |
64,500 |
ドイツ |
83,200 |
ドイツ |
107,900 |
香港 |
144,300 |
3 |
ドイツ |
64,100 |
日本 |
77,500 |
香港 |
97,700 |
米国 |
141,200 |
4 |
米国 |
59,000 |
デンマーク |
70,000 |
日本 |
93,000 |
ドイツ |
140,000 |
5 |
デンマーク |
53,600 |
米国 |
67,800 |
デンマーク |
91,400 |
デンマーク |
119,300 |
6 |
カナダ |
49,700 |
香港 |
66,100 |
米国 |
89,800 |
ベルギー |
112,900 |
7 |
ベルギー |
48,800 |
ベルギー |
64,500 |
ベルギー |
85,300 |
日本 |
111,600 |
8 |
オーストラリア |
48,400 |
カナダ |
64,000 |
カナダ |
82,400 |
カナダ |
106,200 |
9 |
アイルランド |
46,200 |
オーストラリア |
62,100 |
スペイン |
75,000 |
イタリア |
104,900 |
10 |
香港 |
44,700 |
アイルランド |
58,600 |
オーストラリア |
74,700 |
メキシコ |
101,200 |
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世界のIT技術者の給与下位ランキング |
順位 |
主任・上級専門職クラス |
課長職クラス |
部長職クラス |
役員職クラス |
国名 |
金額 |
国名 |
金額 |
国名 |
金額 |
国名 |
金額 |
23 |
ベネズエラ |
$17,600
|
ブラジル |
$25,400
|
ブラジル |
$43,000
|
台湾 |
$64,400
|
24 |
ブラジル |
16,400 |
ベネズエラ |
24,900 |
ポーランド |
41,000 |
アルゼンチン |
61,400 |
25 |
アルゼンチン |
14,100 |
アルゼンチン |
21,800 |
アルゼンチン |
35,800 |
ポーランド |
58,500 |
26 |
マレーシア |
13,100 |
中国 |
19,100 |
中国 |
31,700 |
中国 |
58,400 |
27 |
中国 |
12,400 |
マレーシア |
17,600 |
インドネシア |
26,500 |
インドネシア |
44,600 |
28 |
ブルガリア |
10,400 |
インドネシア |
15,800 |
インド |
24,500 |
インド |
39,000 |
29 |
インド |
9,700 |
インド |
15,400 |
ベトナム |
24,000 |
ブルガリア |
34,200 |
30 |
インドネシア |
9,400 |
カナダ |
14,200 |
マレーシア |
23,700 |
マレーシア |
31,900 |
31 |
ベトナム |
8,300 |
ベトナム |
14,100 |
ブルガリア |
22,100 |
ベトナム |
28,700 |
32 |
フィリピン |
7,900 |
フィリピン |
11,600 |
フィリピン |
17,000 |
フィリピン |
24,900 |
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出典:マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング2004年6月調査 http://www.mercerhr.co.jp |
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日本とアジアを比較すると、主任・上級専門職クラスの年収ベースで、日本が6万4500ドル(約664万円)なのに対し、中国は1万2400ドル(約127万円)と格差は5.2倍ある。インドは9700ドル(約99万円)で、日本の7分の1程度だ。もし潤滑なコミュニケーションができ、製品品質にも問題がないとすれば、日本で日本人技術者を1人雇うコストで、インド人や中国人技術者を5〜7人雇える計算になる。各国の経済状況、生活水準の違いから単純比較はできないが、平均的なプログラマクラスの給与を比較すれば、その差はもっと大きいという予測は十分成り立つ。(※データ3)
海外のIT技術者に仕事を奪われる恐れ。それは、日本以上にオフショア開発が進む米国では、現実のものとなりつつある。米就職斡旋サービス大手のChallenger,
Gray & Christmasは2004年10月に、コンピュータ、電子、通信、eコマースの分野で、技術者などの雇用削減が進行しているとの報告書をまとめている。
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データ3 |
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世界主要都市の生計費指数 |
都市名 |
国名 |
指数 |
チューリッヒ |
スイス |
106.5 |
バンクーバー |
カナダ |
106.0 |
フランクフルト |
ドイツ |
105.0 |
東京 |
日本 |
101.0 |
ニューヨーク |
アメリカ |
100.0 |
香港 |
中国 |
93.0 |
台北 |
台湾 |
85.0 |
ソウル |
韓国 |
81.5 |
上海 |
中国 |
76.0 |
北京 |
中国 |
67.5 |
ムンバイ |
インド |
59.0 |
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出典:マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング |
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米国の2004年第2四半期の雇用削減数5万5000人は、前期よりも60%増加しており、前年同期比でも14%増となっている。すべてがオフショア開発による業務の海外シフトが原因とはいえないが、こうした状況が続く限り、雇用担当者は国内IT技術者の雇用に積極的にはなれないのでは、という指摘もされている。
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