仕事が辛い状態から抜け出すには?気持ちが軽くなる7つの方法

仕事が辛くて会社に行くのがしんどい――誰しも思ったことがあるのではないでしょうか。中には、「仕事が辛いと思うなんて、甘えではないか」と自分を責める人もいるようです。
この記事では、これまでに1万人超のメンタルを救ったという「金髪アフロと赤メガネ」がトレードマークの精神科医&メンタル産業医・井上智介先生が、仕事が辛いと感じる原因や対処法、辛くてもやらないほうがいいことなどをアドバイスします。

仕事をしているビジネスパーソンのイメージ画像
Photo by Adobe Stock

仕事が辛いと思うのは、甘えではない

仕事が辛いと感じている人の中には、「仕事が辛くてしんどいと感じるのは甘えではないか、自分が悪いのではないか」などと捉える人がいます。「仕事は辛くて当たり前」と、自分の気持ちに蓋をしてしまう人も少なくありません。

しかし、誰しも一度は「仕事が辛い」「もう働きたくない」と思うものです。つまり、仕事が辛いと思うのは極めて当たり前のことであり、まったく甘えではありません。まずはその認識を捨てるところから始めてください。

誠実で責任感が強い人ほど、仕事に辛さを感じやすい傾向にあります。仕事がきつくても投げ出せず、心身ともに限界を迎えてしまう人や、自分も忙しいのに周りの人の分までサポートしてしまい、バーンアウトしてしまう人などを数多く見てきました。

仕事が辛いと感じるのには、何かしらの原因が必ずあるはずです。「仕事が辛いのは甘えだ」と自分のせいにしてあいまいにやり過ごすのではなく、原因としっかり向き合い、対処法を考えることが大切です。

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仕事が辛い現状を整理し、対処法を考えるための3つのステップ

仕事が辛いという状況を変えたいと思ったときは、次の3ステップで考えてみましょう。辛い気持ちに向き合うことで、現状を変える方法が見えてくる可能性があります。

一人で抱え込まず、誰かに相談する

大前提として、仕事が辛いという気持ちを一人で抱え込まないことが何より大切です。同僚でも友人でも、もちろん上司でも構いません。誰かに頼り、アドバイスを得て、場合によってはサポートしてもらうことが必要です。

仕事の辛さを一人で解決するのは難易度が高いものです。今の状態を変えたいならば、原因ごとに頼るべき相手を考え、相談してみましょう。

そもそも、人に頼ることに抵抗感があるという人もいますが、こと仕事においてはそのハードルを下げてほしいですね。たとえ原因の根本解決にならなくても、誰かに相談するだけで心が軽くなる効果があり、辛さが軽減できるでしょう。

仕事が辛いと感じる原因を洗い出してみる

仕事が辛いという現状を受け止め、原因を整理してみましょう。「何となく仕事が辛い」という人もいますが、原因は必ずあるはずです。もやっとしたまま放置していると、辛さの解消法もわからないままストレスを溜め込んでしまうことになります。

自分の気持ちに向き合い、何に辛さを感じているのか、紙などに箇条書きでいいので書き出してみましょう。些細なことでも書き出してみると、どんどん心の奥底にある思いが引き出されるかもしれません。

原因に合わせた対処法を試してみる

仕事が辛い原因が見えてきたら、どういう方法を取れば辛さが軽減できるのか考え、行動に移していきましょう。

以下の項目で、仕事が辛いと感じる主な原因と、その対処法について紹介します。自分に当てはまるものを、ぜひ試してみてください。

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仕事が辛いと感じる主な原因とは?

仕事が辛いと感じる主な原因は、大きくわけて7つ挙げられます。それぞれについて解説していきます。

人間関係にストレスを抱えている

上司や先輩、同僚や後輩、クライアントなど、仕事で日常的に接する相手にストレスを抱え、辛いと感じている人は非常に多いです。私のもとに相談に訪れる人も、その大半が人間関係の悩みを抱えています。

中でも多いのは、上司やお客さんとうまくいかず悩むケースです。仕事で必ず関わる相手であるだけに、日々ストレスを抱え、仕事への意欲も湧かなくなる人は少なくありません。

業務量が多い、勤務時間が長い

過剰な業務量や時間外労働の多さから、辛さを抱えている人も多いです。常に仕事に追われている感があり、気持ちが休まらないとの声もよく聞かれます。
明らかに自分のキャパシティを超えた業務量で疲弊しているのに、「仕事が多くて辛いと感じるなんて、自分は能力が低いのではないか」と自分を責める人もいます。

ノルマ、目標が高くてきつい

主に営業職においては、ノルマや事業目標が高く設定されて、達成するのがキツイ…という悩み、不安を抱える人が多いようです。
結果的にノルマ、目標を達成できなかった場合、「営業力が欠けているからだ」と自分を責め、辛さを覚えてしまうケースもあるようです。

仕事で成果を上げられていない

仕事で思うような成果が上げられず、会社や上司からの期待に応えられない自分に辛さを覚える人もいます。成果を上げている周りの人と自分をつい比べてしまい、落ち込み自信をなくしてしまう人も少なくありません。

仕事にやりがいを感じらない

仕事にやりがいを感じず、毎日が辛いという人も多いようです。希望していない部署に配属されてしまい、やりがいを感じないというケースのほか、自分の仕事が誰かの役に立っている実感がないという人もいます。
同じ仕事の繰り返しでやりがいはもちろん自身の成長も実感できず、毎日が苦痛だというケースもあるようです。

頑張っているのに評価されない

一生懸命仕事に臨み、自分なりに成果を出しているのに、いい評価がもらえないという場合も、辛さを感じやすいようです。どれだけ頑張っても報われないという無力感が、会社への不信感につながっているケースも見受けられます。
「この会社で頑張り続けても将来がない」という焦りから、日々の仕事に辛さを感じる人もいるようです。

大きなミスをしてしまった

自分のせいで大きなミスをしでかしてしまった場合も、仕事に辛さを感じるものです。周りに迷惑をかけてしまう申し訳なさや、評価が下がってしまう不安などから、心理的ストレスを感じて辛さを覚える人もいます。

仕事が辛い原因別・具体的な対処法を紹介

仕事が辛いと感じる原因別に、具体的な対処法をご紹介します。

【人間関係】信頼できる人に相談する、相手と関わる機会を減らす

職場の人間関係で悩み、思いつめ、自分で自分を追い込んでしまう人は少なくありません。視野が狭まり、「相手が悪い」「自分が悪い」と0か100でしか考えられなくなり、被害者思考が極端に強まってしまうケースも見受けられます。

視野を広げ、現状を変える一歩を踏み出すためにも、まずは一人で抱え込まず友人や同僚など信頼できる人に相談することをお勧めします。人と話すことで違う視点が得られ、気持ちが軽くなる可能性があります。客観的なアドバイスももらえ、今の自分に合った解決策が見えてくるかもしれません。

苦手な相手とは無理に関わるのではなく、距離を取るのもいいでしょう。フリーアドレスであれば遠くの席に座る、在宅勤務を取り入れてみるなど、物理的な距離を置くのもいいですし、業務上のやり取りを対面で行うのではなく極力メールやチャットなどのオンラインにするのもお勧めです。ストレスが減り、辛い気持ちが軽くなる可能性があります。

【業務量・長時間労働】上司や人事に現状を報告する

上司が部下一人ひとりの業務量を把握し切れておらず、不均衡になっている可能性があります。業務量が多い、残業が多いなどの場合は、まずは上司に現状を報告して判断を仰ぐのが鉄則です。

その際、「業務量が多いので減らしてほしい」などとザックリと伝えるのではなく、具体的に伝えることが大切。「平均して○時まで働いているので、残業を減らして○時までには退社したい」「○○の業務が多いので誰かに割り振れないか」などと相談すると、上司が判断しやすくなり、状況がすぐに好転する可能性があります。
そのためにも、まずは自身の業務をすべて洗い出し、優先順位をつけてみましょう。そして優先順位が下位のものについて、別の人に割り振ることができないか尋ねてみるといいでしょう。

【目標・ノルマ】上司に相談して目標を適正にしてもらう

ノルマや目標が厳しいという場合も、まずは上司に現状を報告しましょう。プレッシャーが強すぎるのであれば、辛さを一人で抱え込んでいても状況は変わりません。上司に相談して目標を変えてもらったり、ノルマを軽減してもらったりすることが大切です。

この場合も、単に「目標が高すぎるので軽くしてほしい」と伝えるのではなく、具体的に伝えることが大切です。たくさんの目標を追わねばならず疲弊しているのであれば、「今の自分のキャパシティでは、すべての目標をクリアするのは難しいので、○○の目標は外してもらい、△△の目標に力を注いで成果を上げたい」などと相談すると、上司も具体的な行動に移しやすいでしょう。
ノルマが厳しすぎるので軽くしてほしいという場合も、「A社の業績が厳しくアップセルの難易度が高い」など、現状を具体的に伝えると、窮状を理解してもらいやすくなるでしょう。

【成果】小さな目標を設定しそれを達成する

毎日何か1つ小さな目標を設定し、それに向かって取り組んでみましょう。「午前中に伝票整理を終わらせる」「今日中に1つ資料を作る」など、1日で完結するような簡単なものでOKです。自分で設定した壁を越えていくことで、「自分は成果を出している」という実感につながります。自分に自信がつくことで、仕事に対するモチベーションも回復すると期待されます。

同じ仕事をしている上司や先輩に相談するのも一つの方法です。上司や先輩も過去に、成果が上がらず苦しんだ経験を持っているはず。相談を持ち掛ければ、自分の時はその辛さや苦しみをどう乗り越えたのか、仕事をうまく進めるポイントやコツなどを具体的に教えてくれるでしょう。

【やりがい】自分の仕事が何に影響を及ぼしているのか確認する

仕事に価値が感じられないという場合は、自分の仕事の前後が何につながっているのか、思いを馳せてみることをお勧めします。たとえ雑務であっても、必ず何かの仕事につながり、誰かの役に立っているはずです。そして、さらにその先をたどっていけば、エンドユーザーのためになっていることに気づき、介在価値を感じられるかもしれません。

思いを馳せるのが難しい場合は、上司や先輩に聞いてみるのも方法です。会社の中で、自分はいったいどの部分を担っているのか、そして会社全体にどのような影響を及ぼしているのか、質問してみましょう。仕事の全体像と自分の立ち位置が見えてくれば、自身の仕事の重要性を理解でき、やりがいも感じられる可能性があります。

別にやりたい仕事があるから、今の仕事にやりがいを感じないという場合は、キャリア面談や1on1などの場で、上司に伝え続けましょう。自ら発信することで、やりたい仕事につながるような新たなチャンスが回ってきたり、研修の機会が得られたりするかもしれません。

また、この場合も「小さな目標を設定し、それを達成する」のは効果的です。1日でクリアできそうな目標を設定し達成し続けることで、自己肯定感が高まり、日々の仕事にもやりがいを感じられるようになるでしょう。

【評価】会社が自分に求めているものを確認する

頑張っているのに評価されないという場合は、「自身の頑張り」と「会社に求められているもの」の方向性がずれている可能性があります。
例えばですが、自分は「顧客とじっくり関係性を築きながら成果を上げている」けれど、「会社はもう少しスピード感を持って数字に向き合ってほしい」と考えている…など、何らかのギャップが生じているかもしれません。

キャリア面談や1on1などの場で、上司に「自分にはどういう働きが求められているのか」を確認し、もしズレがあったらそれを埋める行動を意識するといいでしょう。評価基準も具体的に確認しておけば、無駄なく評価につながる動き方ができると思われます。

【ミス・失敗】失敗を引っ張り過ぎず、「学ぶ」姿勢を意識する

大きな失敗をしてしまった場合、誰しもメンタル的に落ち込んでしまうと思います。もちろん、失敗を反省することは重要ですが、ネガティブになり過ぎる必要はありません。仕事において失敗はつきものであり、デキる上司や先輩も過去に必ず何らかの失敗を経験しています。失敗を成長の機会と捉え、「この失敗を次に活かそう」という姿勢を示すことで、上司の評価も変わり、適切なアドバイスももらえるでしょう。

なお、ミス発覚を恐れて隠そうとする人がいますが、ミスが起こった時点で迅速に共有すべきです。一人で抱え込み、自分で何とかしようとしても、たいていの場合は事態が大きくなってしまい、ますます辛さを感じるようになります。部下のミスのフォローやリカバーも、上司の仕事の一つです。まずは素直に相談し、指示を仰ぎましょう。

それでも現状が変わらない場合は異動や転職を検討する

これらの方法を試してみても現状が変わらないという場合は、社内異動や転職などで、働く環境を変えたほうがいいかもしれません。一人で抱え込むと視野が狭くなる可能性があるため、例えば転職エージェントのキャリアアドバイザーなど第三者のプロの力を借りると、解決の筋道が見えやすくなるでしょう。

なかなか辛い状況が改善せず、心身ともに追い込まれている感じがしたら、早めに産業医や医療機関などに相談しましょう。誰かに辛い気持ちを明かすことで、心が軽くなるだけでなく、話す過程で辛い気持ちの中身が整理され、自分に合った対処法が見えてくる可能性もあります。

仕事が辛いときに、やらないほうがいいこと

いくら仕事が辛くても、やらないほうがいいことがあります。辛いという気持ちが強まると、次のような行動を取りがちなので注意しましょう。

辛い気持ちを一人で抱え込む

辛い気持ちを一人で抱え込んでしまう人は、とても多いです。前述のように、誠実で責任感が強い人ほど「自分一人で解決すべきだ」と捉え、誰にも相談せずに解決しようとする傾向がありますが、辛い理由に一人で臨むのは限界があります。場合によってはどんどん自分を追い込み、心身ともに疲弊してパンクしてしまう恐れもあります。
まずは友人でも家族でもいいので、誰かに相談してみましょう。心の内を明かすだけでも気持ちが軽くなりますし、別の視点でのアドバイスを得ることで解決の糸口も見えやすくなります。

周りの人と比較する

仕事に辛さを覚えると、つい周りと自分とを比べてしまうようになります。「あの人は成果を上げているのに、自分はできていない」「あの人は上司とうまくやっているのに、自分はぎくしゃくしている」など。辛いときに周りと比べても、自信が喪失しモチベーションが低下するだけです。

このような「人との比較」は無意識に行ってしまうことが多いため、意識的に「人は人、自分は自分」と考え、割り切ることが大切です。
比べるならば、周りの人とではなく、「過去の自分」と比べること。今が辛くても、過去の自分に比べて少しでも成長できていると実感できれば、心が軽くなるでしょう。

無断欠勤する

辛い気持ちを解消せぬまま溜め込んでしまうと、朝起き上がれずどんどん時間ばかりが経ってしまい、会社に連絡もせず無断で休んでしまう…という事態に陥る場合があります。無断欠勤は誰もが悪いことだと理解しているのに、辛さを溜め込みすぎると「休むことへの罪悪感が強すぎて、連絡できない」「休みの連絡をしたら怒られるかも」」という極端な思考に陥ってしまい、無断欠勤してしまう可能性があるのです。

ただ、1回でも無断欠勤してしまうと、職場での信頼を失い、辛い状況にますます拍車がかかってしまう恐れがあります。心身ともにしんどく、出社が難しいと感じたときでも、せめて会社に一報だけは入れましょう。

仕事ができないほど辛い場合は、無理をしないこと

ここまでさまざまな対処法や考え方を紹介しましたが、仕事が辛すぎて会社に行くのがしんどい、辛すぎて仕事が手につかないという場合は、自分で対処できるレベルを超えています。くれぐれも無理はせず、早めに人事や産業医に相談したり、医療機関を受診したりしてほしいですね。

責任感が強い人ほど「辛いなんて甘え」「休むなんて逃げだ」などと自分を追い込みがちですが、休むことも人生の選択肢の一つです。一時的に充電期間だと捉えて心身を休めることに集中することで、状況は確実に改善するはずですよ。

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メンタル産業医・精神科医 井上 智介さんメンタル産業医・精神科医 井上 智介さん

兵庫県出身。島根大学を卒業後、大阪を中心に精神科医・産業医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、一般的な労働の安全衛生の指導に加えて、社内の人間関係のトラブルやハラスメントなどで苦しむ従業員にカウンセリング要素を取り入れた対話を重視した精神的なケアを行う。さらに、すべての人に「大ざっぱ(rough)」に、「笑って(laugh)」人生を楽しんでもらいたいという思いから、SNSや講演会などで心をラクにするコツや働く人へのメッセージを積極的に発信中。『職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』(日本能率協会マネジメントセンター)、『職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全』(大和出版)など著書多数。

EDIT&WRITING:伊藤理子

 

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