40代で「仕事を辞めたい」と思ったら?40代ならではの辞めたい理由と対処法を紹介

40代になり、いわゆる中堅・ベテラン層と呼ばれる層になったものの、いまいちやりがいを感じられず「仕事を辞めたい」という気持ちがぬぐえない…そんな悩みを抱える人もいるようです。
40代で仕事を辞めたいと思う理由や、辞めたい気持ちへの対応方法、注意したほうがいいことなどについて、組織人事コンサルティングSeguros代表コンサルタントの粟野友樹さんに伺いました。

仕事を辞めたいと考えている40代ビジネスパーソン
Photo by Adobe Stock

40代で「仕事を辞めたい」と考える人は少なくない

令和5年の「労働安全衛生調査」(※1)によると、40代で「仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスを感じる事柄がある」と回答した人は87.9%にのぼっており、全世代のうちもっとも高い割合となっています。不安や悩み、ストレスの具体的な内容は、上位より「仕事の量」「仕事の失敗、責任の発生等」「顧客、取引先等からのクレーム」「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」「会社の将来性」となっています。

実際、この年代で勤務先を退職し、新たな環境に転職する人も一定数います。厚生労働省の「令和5年雇用動向調査」(※2)によると、40代の転職入職率は、40歳~44歳の男性が6.3%、女性が11.4%、45歳~49歳の男性は5.3%、女性は8.9%となっています。

(※1)出典:厚生労働省「令和5年労働安全衛生調査」

(※2)出典:厚生労働省「令和5年雇用動向調査」

8,568通り、あなたはどのタイプ?

40代が仕事を辞めたいと思う「5つの理由」

前述の調査結果などから考えると、40代が仕事を辞めたいと思う主な理由は、仕事内容や人間関係、仕事の責任の重さや将来展望などにあると考えられます。それぞれ具体的に紐解いてみましょう。

仕事内容や役割に不満がある

40代は、マネジメントなど責任ある役割を任されやすい年代です。それに伴い業務量も増える傾向にあり、重責かつ業務量の多さにストレスを抱える人が少なくないようです。人手不足の中、チームのマネジメントに加え個人の成果も追う「プレーイングマネージャー」としての活躍を求められるケースもあり、疲弊する人もいるようです。

一方で、「40代なのに責任ある仕事を任されない」という悩みを抱える人も一定数いるようです。企業によっては、組織が硬直化し上位ポストが詰まっていることから、役職に就けず以前と同じ仕事を続けているケースもあるようです。「もっとできるはずなのに機会が与えられない」と自身の扱いに不満を覚える人もいるようです。

人間関係に不満がある

40代は、いわゆる中間管理職が多い年代であり、上司と部下の板挟みになって苦労するケースがあるようです。
特に部下や後輩である若手世代との価値観の相違に悩み、指導や育成方法、コミュニケーションの仕方がわからない、飲み会・社内イベントなどの誘い方がわからない…とストレスを抱える人は少なくありません。

社外の人間関係にストレスを覚えるケースもあるようです。40代は、責任者としてクライアントや取引先と相対する機会が多いのが特徴。トラブルやクレームの矢面に立たねばならず、辛さを覚える人もいるようです。

給与に対して不満がある

ビジネスパーソンの場合、40代はキャリアの折り返し地点に差し掛かる年代です。ライフスタイルを見直し、今後の支出と現在の収入を見たときに、「もっとお金がないとやっていけないのでは?」「今の会社の給与だけでは足りないのでは?」といった給与に対する切迫した不安・不満が大きくなり、仕事を辞めたいと考えるようです。

会社の給与水準が低く、40代なのに同世代に比べて明らかに収入が少ないという人は、なおさら給与への不安を覚える傾向にあるようです。会社の業績が芳しくなく、賞与が少ない、なかなか昇給しない、手当が少ない、役職手当がもらえないなどの不満を抱えるケースもあります。

仕事へのモチベーションが上がらない

40代になると、これから先の昇進や昇格ペースがある程度読めてしまい、先が見えてしまったことでモチベーションが低下してしまったり、徐々にキャリアやスキルアップに停滞感を覚えたりする人が増えるようです。

また、時代の変化に対応するためにリスキリングを強いられ、これまで長年培ってきた経験やスキル、能力が活かしにくくなったことへの不満ややるせなさも影響しているようです。

成長機会が得られない

40代のベテランになると、これまでの経験値で対応できる範囲が増えたことで、仕事の中で刺激を受けることが少なくなりマンネリを感じやすい傾向にあります。いくつになっても成長し続けたいのに、そのチャンスが得られないことに不満やいら立ちを覚えるケースがあります。
また、40代になるとフィードバックを受ける機会が減ってしまい、自身に足りない点、磨くべき点などを把握しにくい傾向もあり、歯がゆさを感じて「辞めたい」と思う人もいるようです。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

40代は「仕事を辞めたい」という気持ちにどう対応すればいい?

上記のような理由で、40代で「仕事を辞めたい」と思う人は少なくありませんが、役割や立場、家族の存在などもあり、安易に踏み切れないという人が大半かと思われます。
40代が「仕事を辞めたい」と思ったとき、その気持ちにどのように向き合い対応すればいいのか、解説します。

社内で不満、不安を解消できる方法を考えてみる

まずは「辞めたい理由」に向き合い、仕事を辞めずに不満や不安を軽減・解消できる方法がないか、考えてみましょう。
仕事内容や役割への不満、人間関係のストレスなどは、今いる環境を変えることで解消できる可能性があります。例えば、部署異動を申し出たり、転勤や出向などを願い出たりするのは一つの方法です。

重責かつ業務量が多く、疲弊している場合は、同じような立場にある先輩や同僚に相談したり、気心の知れた上司に「自分のような立場だったときにどのように対処したか」など経験談を聞いてみたりするのもいいでしょう。現状を変えるためのヒントを得られる可能性があります。

思い切って休暇を取るのも有効です。有給休暇も取らずに働き続けてきたのであればなおさら、数日間仕事から離れ、ゆっくり休養するのもお勧めです。リフレッシュでき、仕事への活力も復活するかもしれません。

副業で新たな可能性を模索してみる

仕事に対するモチベーションが上がらない、給与が安くて不満などの場合は、副業にチャレンジするのも選択肢です。

今の環境で我慢して40代を乗り切ったとしても、よりハードな状況が待っているかもしれません。例えば50代は、多くの企業で役職定年があり、年収も役職も上がりにくい傾向にあります。それに伴い以前の部下が上司になる可能性もあるでしょう。リスキリングの推進を受け、担当業務によっては社内失業状態に陥ってしまうケースも散見されます。

そのような状況に陥る前に、副業に挑戦して自分でキャリアの選択肢を増やしておくことは重要です。自身の強みをより活かせる仕事や、経験をベースに新たなチャレンジができる仕事、自分が得意であり楽しみながらできる仕事などを副業に選べば、自身の引き出しが増やせる充実感や、自分の可能性を再発見できるワクワク感、いざというときのために収入減を増やせる安心感などが得られると思われます。

独立、起業を考える

やりたいことが明確にあるならば、これまでの経験やスキル、そして人脈を活かし、独立・起業するのも方法です。自分の強みが活かせる仕事で、裁量権を発揮しながらイキイキ働けるでしょう。

安定した会社員の座を捨てることになるため、チャレンジングではありますが、40代ともなれば自身の方向性が定まり、ベースとなるスキルは十分に持ち合わせている人が多いはず。これまでの経験やスキルに加え、否応なく経営の知識も磨かれることから、50代・60代に向けたキャリアの可能性も広がると考えられます。

転職を検討してみる

一昔前までは、40代以降の転職は難易度が高いとされていましたが、深刻な人手不足を受け、ベテラン層を積極的に採用する企業は増えています。それに伴い、40代以降の転職者も増加傾向にあります。

株式会社リクルートが発表した「ミドル世代の転職動向」(※)によると、40代・50代のミドル世代の転職者が増えており、リクルートエージェントにおける転職者の推移を見ると、2014年度を1とした場合2022年度は3.79、2023年度は5.00に増加しています。人手不足に加え、多くの企業が事業変革のために豊富な知見・経験を持つ人材を求めており、これまで20代・30代を中心にキャリア採用をしていた企業が、ミドル世代に採用ターゲットを広げている格好です。以前よりも求人が増え、選択肢も広がっていることから、転職で現状の不安や不満を解消するという方法も大いに考えられます。

グラフ_ミドル世代の転職者数の推移グラフ

出典:株式会社リクルート「ミドル世代の転職動向」(2023年)

現状に強い閉塞感があり、ガラっと環境を変えたいという場合は、物理的に生活環境が変わるU・Iターン転職やJターン転職で地方に移住するという選択もありだと思います。少子高齢化が進む地方では、40代でもまだまだ若手というケースが少なくありません。都心の企業に比べると、給与水準や人材制度などの労働条件などは変わるかもしれませんが、「自分は必要とされている」と感じながらモチベーション高く働けるでしょう。

 

40代で「仕事を辞めたい」と思った時の注意点

前述のように、40代で「仕事を辞めたい」と思った場合にはさまざまな選択肢が考えられますが、同時に注意しておきたい点もあります。次のような点に注意したうえで、現状を変える行動を取りましょう。

40代こそ「自分を知る」が大切、自己分析&経験の棚卸しを

40代ともなると、社会人歴も20年を超え、さまざまな経験を積んでいます。だからこそ、自身の強みの軸や、得意・不得意を見失っているケースも見受けられます。

仕事を辞めるという決断をする前に、まずは「自分を知る」ために自己分析を行うことをお勧めします。仕事でさらなる成果を挙げるためにも、そして転職でキャリアを選択する際にも、自己分析の結果が活かせるでしょう。

これまでの経験を振り返って棚卸しし、経験やスキルを洗い出すとともに、特に力を注いだこと、熱心に取り組んだことなどを思い出していくと、自分の強みや持ち味が見えてきます。そして、ターニングポイントごとになぜその選択をしたのか、当時の気持ちになって思い出してみると、自分が大切にしていることに気づけるでしょう。

これからのキャリアプランを立てよう

40代の中には、「もう先が見えてしまった」「これ以上の成長は難しいだろう」などと、自分のキャリアを半ば諦めている人も見受けられます。ただ、現在は「人生100年時代」と言われています。80歳まで働くのも当たり前になりつつある今、40代からのキャリアは「あと40年近くもある」とも考えられます。

不安や不満、ストレスを抱え「仕事を辞めたい…」と悩んでいるのはもったいない。前述のような方法で悩むに向き合って対処し、気持ちを切り替えましょう。自己分析などをもとに、自分の強みや持ち味が最大限活かせそうな環境はどこか考えるなど、前向きに今後のキャリアを検討する姿勢が重要です。

 

たとえ仕事が忙しくても「辞めてから転職」は避ける

ミドル世代の採用が増えていることをお伝えしましたが、仕事を辞めてから転職活動をするのはあまりお勧めできません。業務量が多く転職活動する暇がないという場合も、できる限り在職中に情報収集を行うなど、転職活動を進めるようにしましょう。

40代は、子供の教育費や住宅ローンなど、支出が多い世代でもあります。辞めてから転職活動しても、すぐに次が決まればいいのですが、難航してしまった場合に生活費などの懸念が生じ、焦って意に沿わない転職を決めてしまう可能性があります。

自分の力が最大限に活かせそうな場所をじっくり探すためにも、業務効率化などを進めながら、転職活動の時間をねん出して臨みましょう。

方向性が定まったら、家族にも相談を

退職・転職は、家族の生活にも大きな影響を与えます。家族やパートナーがいる場合は、「辞めたい」と思った時点で相談し、話し合ったほうがいいでしょう。
仕事を辞め、転職することに賛同してくれるか否か、OKであればいつ頃のタイミングがいいのか、生活費を考えると年収はどの水準を維持しなければならないのか…などをすり合わせておくことが大切です。

40代は「仕事を辞めたい」と思っても、不満や不安をなかなか口に出せず、一人で抱え込んでしまう人も少なくありません。家族に仕事への不満や愚痴を聞いてもらい、「辞めたい」という気持ちに共感してもらえるだけでも、心が軽くなるかもしれません。

▶あなたの隠れた才能を見つけ出す。転職活動にも役立つ!無料自己分析ツール「グッドポイント診断」

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント・粟野友樹さん組織人事コンサルティングSeguros
代表コンサルタント粟野友樹氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

EDIT&WRITING:伊藤理子

 

PC_goodpoint_banner2

Pagetop