PDCAとは?PDCAサイクルの効果的な回し方、成果を出すポイントを解説

業務改善や効率化のためのフレームワークである「PDCA」。PDCAサイクルを高速回転させることで、事業や業務を進化させるといわれ、多くの企業、ビジネスパーソンが活用しています。一方で、PDCAという言葉は知っているけど、実はあまり理解できていない、より良い活用方法まではわからない…という人も少なくありません。そこで今回は、PDCAの基礎知識から、効果的なPDCAサイクルの回し方などについて、中尾マネジメント研究所代表の中尾隆一郎さんに伺いました。

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中尾隆一郎さん中尾マネジメント研究所 代表 中尾隆一郎さん

1964年大阪生まれ。大阪大学工学部卒業。リクルートに29年間勤務し、リクルートテクノロジーズ代表取締役社長、リクルート住まいカンパニー執行役員、リクルートワークス研究所副所長を歴任。メディアの学校(リクルート社内大学)の「KPIマネジメント」「数字の読み方・活用の仕方」の講師として11年間、受講者1,000名超を担当。2019年、業績向上コンサルティングや経営者塾などを手掛ける株式会社中尾マネジメント研究所(NMI)を設立。主な著書に『最高の結果を出すKPIマネジメント』『最高の結果を出すKPI実践ノート』(フォレスト出版)『「数字で考える」は武器になる』(かんき出版)など多数。

PDCAとは?

Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取ったもので、継続的な業務改善を図るためのフレームワークです。アメリカの統計学者W・エドワーズ・デミング氏が1950年代に提唱したもので、目標に向け改善を行いながら前進するための手法として多くの企業で導入されています。

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PDCAサイクルの回し方

PDCAサイクルとは、「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)のサイクル」を繰り返し回すことを指します。最後のステップ、Action(改善)が終了したら、また最初のPlan(計画)に戻って循環させることで、業務のいい点・悪い点が浮き彫りになり、業務精度を高めることができます。

Plan(計画)

PDCAサイクルのスタート地点。目標を設定し、それを達成するための計画(アクションプラン)を立てます。

計画を立てる際には数値目標を立て、なぜ、何のためにその目標を立てるのかを考え、検討を重ねながら、できるだけ具体的かつ現実的なアクションプランを考えます。

Do(実行)

「Plan」で立てたアクションプランに沿って行動します。単にプランを実行するだけではなく、この方法で本当にいいのか、ほかに有効な方法はないのかを考えながら進めることが大切です。

Check(評価)

「Plan」と「Do」を踏まえ、設定したアクションプランを達成できたのか、計画通りに実行できたのかを振り返り、評価します。計画通りに実行できた場合はその成功要因を、計画通りに行かなかったのであればどこに原因があったのかを分析して洗い出し、検証を行います。

Action(改善)

「Check」で洗い出した成功要因や失敗の要因について、改善点を考えて、次回に繋ぎます。改善点を明らかにすることで、新たな「Plan」を立てられるようになります。場合によっては「やめる」(PDCAサイクルを止める)という判断を行うこともあります。

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PDCAがうまくいかない原因と対応法

PDCAがうまくいかず失敗してしまう原因は、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の各ステップにあります。途中で壁にぶつかったり、頓挫しそうになったりしたら、以下の項目をチェックしてみてください。

Plan(計画)

  • 設定した数値目標が高すぎて計画倒れになっている
  •  目標に至るまでのアクションプランが描けていない(ヌケモレがある。あるいは具体的なアクションをするには具体性が欠けている)

目標を設定したら、実現可能かどうかを自分なりに検証したうえで、抜け漏れのないよう計画を立てましょう。

Do(実行)

  • 計画がきちんと立てられていない
  •  実行イメージができていない

いわゆる「見切り発車で始めてしまう」「ただがむしゃらに頑張る」というケースです。Planの段階でしっかりアクションプランを立てられていれば防げる失敗なので、まずはしっかり計画を立て、それに沿って行動することを意識しましょう。

Check(評価)

  • きちんと評価が行われていない
  •  曖昧で主観的な評価が多い

上記のように、評価をおざなりにするケースが見受けられます。また、早く成果を出したいあまりに、「おおよそこれで大丈夫だろう」と抽象的で主観的な評価を下すケースも少なくありませんが、評価があいまいでは改善もできません。事前に立てた数値目標を基準に、定量的な観点で客観的に評価しましょう。

Action(改善)

  • 改善する内容が明確になっていない
  • 改善対策が間違っている

的確な評価を行い、改善点が明確になったとしても、実際に改善が成されなければ意味はありません。改善につながる方法を複数考えて実行し、トライアンドエラーを繰り返すことが重要です。

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PDCAのメリット:やるべきことと課題が明確になる

まずは、目標を立ててPDCAを回すことで、やるべきことが明確になる点が挙げられます。業務のフローをシンプルに4段階に分けたのは、PDCAの大きな功績。個人でもPDCAに沿って行動すれば、業務改善を実現し成果を上げることができます。

PDCAを通して、計画を立ててから実行することの大切さ、やりっぱなしではなくしっかり振り返り検証することの大切さ、そしてそれをもとに改善することの重要性を、多くのビジネスパーソンが学んだことと思います。

また、PDCAを通して現状の課題が明らかになるというメリットもあります。PDCAを回す中で、必然的に不足している点、課題点が明らかになり、打つべき策が見えてくるようにもなります。

PDCAのデメリット:ゴールという視点が欠けている

PDCAには、致命的なステップが欠けています。それは「ゴール」。私は仕事を通していろいろな会社のハイパフォーマーと接していますが、彼らに共通しているのは「常にゴールを意識している」点です。

ゴールを意識することで、事前準備に時間を使うようになり、変化にも臨機応変に対応できるようになり、計画ではなく、本来のゴールに対して振り返りを行い次回以降に活かす…という好循環を生み出しています。

逆に、成果を出せていない人の多くは、ゴールを設定せずに見切り発車的に業務に着手してしまい、たくさんの手戻りを発生させたり同じ失敗を繰り返したりしています。ゴールという発想が抜け落ちているPDCAを回していると、こうした悪循環に陥ってしまう可能性があります。実際、より有効なのはG(Goal)-PDCAだという方もたくさんいます。

PDCAとOODAの違い

PDCAと比較される言葉に、意思決定サイクルの「OODA(ウーダ)」があります。Observe(観察)、Orient(方向づけ)、Decide(判断)、Action(行動)の頭文字を取ったものです。

観察やそれに伴う状況判断に重きを置いていて、迅速な判断や行動が可能であり、変化が激しい今の時代に向いているという意見はありますが、これにも「ゴール」という視点がありません。

PDCAと意思決定サイクルの「OODA(ウーダ)」Observe(観察)、Orient(方向づけ)、Decide(判断)、Action(行動)の比較画像

逆算思考のフレームワーク「G-POP」とは

PDCAのデメリットを踏まえ、私は「ゴール」という要素を加えゴールから逆算して考えるフレームワーク「G-POP」を提唱しています。

これは、ハイパフォーマーに共通する思考「この仕事のゴールは何なのか」を常に意識するための考え方で、Goal(ゴール)、Pre(事前準備)、ON(実行)、Post(振り返り)の頭文字を取った言葉。私が手掛ける経営者塾に参加している企業を中心に、約100社が導入しています。

G-POPでは下図のように、まずゴールから逆算して事前準備を設計し、当日に実行、事後の振り返りを設計・実行します。応用範囲はかなり広く、さまざまなプロジェクトや業務などのほか、日々の会議など日常的に活用できます。

例えば、何のためにやっているかわからない会議でも、始める前にアジェンダごとのゴールを確認することで、会議で何をするのかが明確になり、活発に意見交換できるようになるでしょう。

●PDCAに代わる考え方「G-POPマネジメント」

G-POPマネジメントイメージ画像
出典:中尾隆一郎氏提供資料をもとに編集部で作図

G-POPの逆算思考を繰り返すと、一つひとつの仕事を始める前にゴールを確認する習慣がつき、日々の仕事の生産性が上がります。

特に上司や同僚など、周囲の人と協働する仕事で力を発揮します。例えば上司から仕事の依頼を受けたとき、その仕事のゴールを確認することで無駄な仕事をなくし、時間を空費する可能性を大幅に減らすことができます。

同僚や後輩、外注先などに仕事を任せるときも同様に、まずゴールをすり合わせることで相手と意識合わせができ、抜け漏れや手戻りを防ぐことが可能です。

PDCAサイクルがうまく回せない、なかなか成果が上げづらくなったという場合は、ぜひこのG-POPのフレームワークを試してみてください。

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取材・文:伊藤理子  編集:馬場美由紀
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