会議がぐんと盛り上がる!テレ朝アナウンサーが教える「ファシリテーション力」の磨き方

会議やミーティング、打ち合わせなどを円滑に進める手法である「ファシリテーション」。ビジネスパーソンに必要なスキルとされていますが、具体的にはどのようなスキルなのか、どんなシーンでどう発揮すればいいのか、ご存知ですか?

さまざまな番組を通じてファシリテーション力を磨き、先日『超ファシリテーション力』を上梓したテレビ朝日アナウンサーの平石直之さんに、ファシリテーションの基本やポイントなどを詳しく伺いました。

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テレビ朝日・平石直之さん平石直之さん

テレビ朝日アナウンサー。早稲田大学政治経済学部を卒業後、テレビ朝日に入社。報道・情報番組を中心に、「地球まるごとTV」「やじうまテレビ! 」などでMCを務め、「ニュースステーション」「スーパーJチャンネル」「サンデー・フロントライン」「報道ステーション」などでは、キャスターおよびフィールドリポーターとして全国各地を回る。2019年からABEMAの報道番組「ABEMA Prime」の進行を担当。アナウンサーという枠を超え、ファシリテーターとしての役割を存分に発揮。個性が強い出演者たちを巧みにまとめ上げる、“アベプラの猛獣使い”として番組を盛り立てている。昨年10月に初の著書『超ファシリテーション力』(アスコム)を発刊。

ファシリテーションはデキるビジネスパーソンの必須スキル

会議を行うこと自体が目的化してしまい、有意義な意見も出ないままダラダラと時間ばかりが過ぎていく。なかなか意見が出ず、会議が全然盛り上がらない。こんなマンネリで不毛な会議にうんざりしているという人、多いのではないでしょうか?

ファシリテーションとは、会議やミーティングにおいて活発な議論を促したり、対立する意見を調整したりしながらスムーズに進行させることを指します。そして、その役割を担うのがファシリテーター。ファシリテーターが適切に進行すれば、出席者一人ひとりの意見を引き出しチームの力を最大化させて、成果につなげることが可能。会議におけるコミュニケーションの密度が濃くなれば、組織の活性化にもつながります。

企業を取り巻く環境が目まぐるしく変化する中、臨機応変に対応し高い成果を目指すファシリテーションは、ビジネスパーソンの必須スキルと言えます。コロナ禍でオンライン会議の機会が増える中、物理的に離れた人同士の議論を活性化し、意見を引き出しまとめる力はますます求められるでしょう。

ファシリテーションは、あらゆるスキルの集合体です。ファシリテーターとして場をうまく回しながら成果を挙げるには、事前の情報収集が欠かせませんし、会議が始まれば対話力、コミュニケーション力、論理的思考力、リーダーシップなど、あらゆるビジネススキルを総動員することになります。つまり、ファシリテーション力をつければ、ビジネスパーソンとしての総合力が養われるのです。

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ファシリテーションを構成する3つの要素

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これまでの経験を踏まえて実感しているファシリテーションに必要な要素は、「準備力」「聞く力」「場を作る力」の3つ。それぞれなぜ必要なのか、どのように行えばいいのか、解説したいと思います。

準備力

ファシリテーションは準備が9割。目的からぶれることなく進行するためには、しっかりとした準備がモノを言います。まずは会議の目的を確認したうえで、時間や会場のほか参加者は何人か、どんな顔ぶれかなど、必要な情報を集めて整理しておきましょう。

特に大切なのは、参加者のバックグラウンドを知っておくこと。どんな業務に携わり、どんなミッションを抱えているのか、この会議で何を話したいと思っているのかなどを調べておきましょう。

大事な社内会議であれば、できれば事前に対面なりオンラインなりでコンタクトを取るのがお勧め。根回しに近いですが、会議のテーマに対してどんな思いを持っているのか聞いておくと、議論の方向性がイメージできるので、進行がスムーズになります。社内の会議ではなく取引先との商談やプレゼンなどの場合は、取引先のホームページやSNS、ネットで記事を検索するなどして、最新の動向をチェックするといいでしょう。

聞く力

会議が始まった後は、目の前の会議に全エネルギーを集中します。ファシリテーターは受け身のポジションを取りながら、参加者の言葉を拾って補足し、軌道修正しながら芯を外さない進行を実現させることが重要。そのためにも、参加者の主張を聞き、空気をつかむ姿勢が大切です。

私はアナウンサーなので、「しゃべりの力で場を回しているのでは?」と思われがちですが、ファシリテーターとして番組を仕切るときは圧倒的に「聞く力」を使っています。自分が何かを言いたいかではなく、いかに参加者の言葉を受け止めるかが重要であり、聞く力こそがファシリテーションの要だと感じています。

場を作る力

会議をイキイキとしたものにして、議論を活性化させるために必要なのが「ムード作り」。参加者が緊張していたり、惰性で参加していたりする会議と、参加者が真剣に本音で話す会議とでは、議論の深みや成果に大きな差が生じます。

アイスブレイクで緊張を解きほぐし、初対面の人、初参加の人がいたら背中を優しく押しながら、あの手この手で自由に語れるムードを作りましょう。参加者に「あの人がファシリテーターを務める会議は、自由に意見が言える」という印象を残せれば、徐々に皆が自発的に準備してくれるようになり、会議の場がより有意義なものになります。

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会議が盛り上がる、楽しくなる!ファシリテーションのポイント

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会議の目的をぶらさず、参加者一人ひとりに気を配って意見を引き出し、脱線しそうになったらうまく本筋に引き戻し軌道修正する…。ファシリテーターの役割は幅広く、難しさを感じる人もいるかもしれませんが、ポイントを押さえればうまくいきます。もともとファシリテータータイプではなかった私が、さまざまな現場を通して身につけたコツをいくつかご紹介します。

立ち位置はメンバーや目的などによって臨機応変に変える

ファシリテーターはサッカーでいうボランチのようなもの。ボランチは攻撃と守備の両方を担い、試合状況によって今何をすべきかを常に考え、試合をコントロールする働きが求められますが、会議におけるファシリテーターも同じ。参加者の顔触れや議題、話の流れなどによってファシリテーターに求められる動きも変わります。例えば、以下のような立ち回りが考えられます。

・鋭く厳しい発言をする人がいたら…受け身になったり他者のフォローをする立場に回ったりしてバランスを取る。
・なかなか発言が出ず盛り上がらない場合は…自身が口火を切って意見を行ったり仮説を投げかけたりして、自らが先導役になる形で徐々に活性化させる。
・初参加の人がいたら…その人をフォローし寄り添いながら場に馴染んでもらい、意見を言いやすい環境を作る。
・議論が活発化してきたら…「鳥の目」になって冷静に全体を見渡し、「意見を言いたそうな人」に話を振ることで議論を掘り下げていく。

ファシリテーターは単なる司会進行役ではありません。場を見ながら攻守の立場を柔軟に変えることで、議論がより効率的かつ機能的になり、会議のクオリティーも向上します。

参加者一人ひとりの「引き出し」をつかんでおく

「ファシリテーションを構成する3つの要素」でもお伝えしましたが、準備は何より重要です。
特に優先度が高いのは、会議の目的に関する情報収集と、参加者に関する情報収集。重要な会議であればあるほど、準備を十分に行うことで進行がスムーズになり、どんな場が荒れたり脱線したりしようと、冷静に場を仕切ることができます。

重要な会議であればあるほど、以下の項目については事前に十分リサーチしておくことをお勧めします。

・今度の会議の参加者はどのようなメンバーか調べる。
・どんなバックグラウンドを持っている人なのか、今の役割やミッションは何か調べておく(特に初参加の人がいたら、その人に関しては特に徹底的にリサーチ)。
・会議の目的は何か、そして目的に関する周辺情報を調べておく。
・今回の会議のゴールはどこに置くのかを確認しておく。

特に、参加者がどういう引き出しを持っている人なのか頭に入れておくことは重要。どういう意見が出そうかある程度予測できるので、議論の流れがシミュレーションしやすくなります。また、「今回の会議では、この視点を持った人はいなさそうだ」と気づいたり、「対抗意見を投げかけたほうが良さそうだ」などと感じたりしたら、自身がその欠けている部分を担う準備もできるので、場の進行がよりスムーズになります。

冒頭に会議の目的とゴールを示し、「全員に意見を聞く」と伝える

会議を円滑に進めるために最も重要なのは、会議の目的を理解し、それを伝えること。参加者の協力を得るためにも、今日の会議の目的は何か、何をゴールとするのか、冒頭に伝えておきましょう。そうすれば、ゴールを目指し、目的に沿った議論が行われるようになり、話が脱線しにくくなります。

議題が複数ある場合は、「本日はAとB、Cの3つの議題があります」と伝えておけば、「一つの議題に対して約20分か。あまり長々と意見を言うのは避けよう」など参加者に時間の使い方を意識させることができ、ゴールに向けての一体感が高まります。

ただ、参加人数が多い会議の場合、「意見を言うのは一部の人だけで、あとはオーディエンスのように相づちを打つだけ」というケースもあるでしょう。

有意義な会議の条件は、「すべての参加者がそれぞれの立場から自由に意見を言える」こと。多種多様な意見やアイディアが出てこそ、会議は有意義で実りあるものになります。参加者を傍観者にしないためにも、初めに「今日は皆さん全員にご意見を伺います。アイディアでも質問でも何でもいいので、用意しておいてください」と伝えておくと、参加者全員の集中力と会議への参加意識が高まります。

特にオンライン会議では、中心となって話す人だけがマイクをオンにして、それ以外の人はミュートで「話を聞いているふりをする」という状態に陥りがち。活発で建設的な議論を行うためにも、ファシリテーターが全員参加を促すことで地ならしを行っておきましょう。

進行に困ったとき即使える「キラーフレーズ」集

準備を万全に行っていても、会議を進行する中で「これは困った…」というシーンに直面することがあります。こんなときに役立つのが、ファシリテーターによる「場を仕切るひと言」。普段、私が番組の中でよく使っている「キラーフレーズ」をいくつかご紹介します。

●参加者同士で言い合いが始まったとき
「わかりました。この話はいったん、こちらで引き取らせていただきます」
メンバー同士の主張がぶつかり合ったときには、「まあまあ」とか「そのあたりで…」などと中途半端に間に入ると、却って火に油を注ぐことになりかねません。言い合いを強制終了させるのではなく、ファシリテーターがあくまで「引き取る」ことで、当事者の顔を潰さず次の議論に移行することができます。

●脱線した話題を本題に戻したいとき
「今のお話の中にもありましたが…」
脱線した会話の中から本題に関連するキーワードを拾い、話題を引き戻しましょう。例えば、リモートワークの方針について話していたのに、「ステイホームの辛さ」で話が盛り上がってしまったとしたら「今のお話にもありましたが、皆さんステイホームでストレスを抱えていますよね。ではリモートワークの方針としては…」などと引き戻します。単語1つでもいいので、脱線トークの中から関連する言葉を見つけられれば、場の雰囲気を壊さず自然に本題に戻すことができます。

●本来の目的とは異なる方向で盛り上がってしまったとき
「これは是非改めて時間を設けて話し合いたいテーマですね」
余談から生まれるアイディアもありますが、残り時間が迫っていたり、明らかに本題と外れた方向に話が進んでいたりしたら、ファシリテーターが軌道修正しなければなりません。そんなときは「別の機会を設ける」ことを提案するのが、議論をスムーズに前に進めるコツ。「余談ですませるには惜しい」と暗に伝えることで、参加者の熱量を保ったまま議論を進めることができます。

●会議の残り時間が気になり始めたとき
「残り10分です。そろそろまとめに入らせていただきます」
タイムマネジメントを行うのもファシリテーターの役割。残り時間が迫っても議論の腰を折ることなく残り時間を意識させることで、「あと10分でゴールを目指そう」と参加者の集中力が高まります。なお、会議の初めに「今日は〇〇の件で、何時までお時間をいただきたいと思います」と時間を明確にしておくことも大切です。

誰でも「ファシリテーション上手」になれる?

私はもともと、自分から場を仕切るタイプではありませんでした。しかし、24年間のアナウンサー人生の中でさまざまな番組やイベントを仕切ってきたことで、着実にファシリテーション力が磨かれたと感じています。現在、ABEMAの報道番組「ABEMA Prime」の進行として、個性的な出演者の意見を引き出すことができているのも、ファシリテーション力のおかげだと思っています。

会議のファシリテーションは、上司やリーダー的な立場の人が担うケースが多いかもしれませんが、場数を踏むほどにスキルが磨かれます。若手ビジネスパーソンこそぜひ、「自分がファシリテーターを務めたい」と名乗りを上げ、今回ご紹介したファシリテーションのポイントを実践してみてください。

前述したように、ファシリテーション力をつければ、ビジネスパーソンとしての総合力が養われます。若いうちから経験を積み、スキルを身につけてほしいですね。

テレビ朝日・平石直之さん

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EDIT&WRITING:伊藤理子
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