「仮説思考」とは?今ビジネスで必要とされる理由と磨き方を解説

「仮説思考」をご存知でしょうか。以前から、仕事のスピードアップにつながる思考法と評価されていましたが、コロナ禍で今、脚光を浴びていると言います。
なぜ今、仮説思考が注目されているのでしょうか?そして、仮説思考を磨くにはどうすればいいのでしょう?人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所社長の曽和利光さんに伺いました。

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曽和利光さん顔写真曽和利光さん

株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)など著書多数。最新刊『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)も好評。

先を見通し、自分なりの「仮の答え」を立てる思考法

「仮説思考」とは、今見えている事実と自身の知識を元に先を読み、「おそらくこうなりそうだ」という有力な仮説を立て、それをピンポイントに検証していく思考法です。
仮説を先に立てることで検証すべき項目をぐっと絞り込めるので、効率よく問題を解決したり、結論にたどり着いたりすることができます。

変化が激しく先行き不透明な時代においては、問題点を素早く見極め、大局を読みながら迅速に仮説・検証に臨む姿勢が求められます。企業を取り巻く環境が目まぐるしく変化している今、仮説思考を用いた問題解決手法は、時代に合っていると言えます。

なお、仮説思考とは真逆の思考法としては、「探索的思考」が挙げられます。こちらは仮説を立てず、考えられる可能性をすべてしらみつぶしに調べることで、結論を導き出す思考法です。

仮説思考はスピーディーな問題解決に向いている

仕事には、「問題解決型」と「理想実現型」のものがありますが、前者の仕事には仮説思考、後者は探索的思考が向いているとされています。

問題解決型は、例えば「売り上げ減少に歯止めをかけたい」「増え続けている退職者を何とか減らしたい」など今ある問題を解決するための仕事を指します。一方の理想実現型は、「もっと会社を大きくしたい」「会社の認知度を上げたい」など目標を実現するための仕事を指します。

仮説思考は、問題をスピーディーに解決することに長けています。企業にとって早急に対処したい問題であれば、たとえそれが次善の策であろうとまずは仮説を立ててそれに絞って検証し、解決を急ぐ姿勢が求められます。

一方の探索的思考は、将来的に叶えたい目標を実現することに向いています。目的を実現するために考えられる方法をとにかくたくさん挙げ、片っ端から試し検証していくため、時間もお金もかかりますが、より精度の高い仕事が実現できます。

仮説思考のメリット・デメリット

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仮説思考は今の時代にあっており、メリットが大きい思考法ではありますが、もちろんデメリットもあります。仕事内容やシーン、目的などに合わせ、真逆の思考である探索的思考と使い分ける必要があります。

メリットは「企業が抱える数多くの問題を迅速にさばける」こと

仮説思考を取り入れる最大のメリットは、前述の通り「スピーディーに結論を導き出せる」点です。

企業は業績のテコ入れや新しいビジネスの模索、テレワーク拡大を受けた評価制度の再構築やオフィスそのものの見直し、社員のエンゲージメント、社内でのコロナ対策など、数多くの問題を抱えています。
これらすべてを解決するためには、仮説思考で考えたほうが圧倒的に効率的。最も問題解決に効果がありそうな仮説を立て、どんどん検証に回していけば、数ある問題にスピーディーに対応することができます。

例えば、退職者が増えていて何とか歯止めをかけたい場合。退職を選んだ社員にヒアリングをしたり、既存社員にアンケートを取ったりしてデータを集め、それを分析するという方法もありますが、かなりの労力と時間がかかります。一刻も早く原因を突き止め、食い止めたいのであれば、ある程度確からしい仮説を立てて先に進むという仮説思考のアプローチが有効です。

実際、企業経営者は仮説思考に優れた人が多いのが特徴。数々の問題をどうさばいていけばいいのか、常に頭を働かせているからです。

デメリットは「ほかの可能性を見落とす」「イノベーションが生まれにくい」こと

一方で、仮説思考では「仮説以外の可能性」はいったん捨てることになります。仮説思考は、仮説を立てる人の情報収集力と元々持ち合わせている知識によるところが大きいため、仮説の精度が低ければ、「実は別にあったベストな結論」を見逃してしまう恐れがあります。

もちろん、間違った仮説を立ててしまう可能性もあります。ただこの場合は、間違いに気づいた時点で仮説を立て直す…を迅速に繰り返すことで、精度を上げながら早く問題解決にたどり着くことが可能。仮説を立て直す経験を積むことで徐々に仮説思考が磨かれ、より確からしい仮説が立てられるようにもなるでしょう。

仮説思考は、イノベーションを生みにくいという側面もあります。イノベーションはいろいろなものを試す中で偶然新しいものを発見したり、新しい発想に気づいたりすることで生まれる、どちらかというと探究的思考寄りのもの。仮説を立て、それに絞って検証を行う仮説思考のやり方では、クリエイティブな発想が生まれにくいという難点があります。

ちなみに発明家のエジソンは、電球発明の実験に5000回失敗したとされています。探究的思考の下、あらゆる方法をしらみつぶしに試したことで、たどり着いた発明といえるでしょう。

仮説思考を磨くには、「知識の幅を増やす」のが近道

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仮説思考における仮説は、現時点で見えている「事実」と、元々持ち合わせている「知識」をもとに立てるものだとご説明しました。従って、仮説思考の精度を上げたいのであれば、「事実」と「知識」両方を増やすことが必要となります。

事実を増やすには、とにかく徹底的に情報収集してファクトを集めるのみ。個人の努力や工夫ではなく、「やればできる」ことなので、他者と大きく差をつけるのは難しい部分でもあります。

他者との差別化につながり、かつ仮説思考の精度向上も期待できるのは、「知識を増やす」こと。豊富な知識をもとに、いろいろな選択肢を考え出せるため、その中から最も確からしい仮説を選ぶことができるからです。

一番の近道は、「いろいろなことに興味を持ち、幅広くインプットする」こと。仕事に関する知識に留まらず、アンテナを高く広く張り、あらゆる情報を収集するといいでしょう。実際、私の周りの優れた仮説思考を持つ人は、業務領域以外の知識や、仕事を離れた雑学やエンターテインメントなどにも詳しい人が多いという印象です。

「自社の知識や、仕事回りの知識に長けているだけではだめなのか?」との声もありますが、それだけでは仮説を見誤る恐れがあります。

日本企業はバブル崩壊後、「失われた30年」を生き抜いてきましたが、今度はコロナ禍に翻弄され、先行き不透明な中で試行錯誤を続けています。長らく試練が続く日本企業には、成功事例よりも失敗事例のほうが数多く蓄積されているため、社内にあるノウハウやナレッジだけでは仮説のバリエーションが増やせず、陳腐になってしまう可能性があります。

従って、自社だけでなく同業他社や他業界・他分野の事例をインプットするのはもちろん、歴史や文学、哲学やスポーツなど仕事以外の知識も意識して取り入れるといいでしょう。それが、良質な仮説を立てる上での引き出しになります。

まとめ

仮説思考による結論は、あくまで特定の仮説検証で導き出されたものであり、根本治療にはなりにくいですが、さまざまな問題を抱える今の日本においては必要な思考法と言えます。この記事をもとに、どの分野であれば仮説思考が活きるのかを理解し、探索的思考と上手く使い分けながら、仕事に活かしてほしいと思います。

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EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭
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