転職は20代を過ぎると厳しい?キャリアアドバイザーに本音を聞いてみた

転職は20代のうちにしたほうがいいだろうか、35歳までにしないと転職できなくなるのではないかなど、転職に際して「年齢」を気にする人は多いようです。
そこで、転職に年齢は関係あるのか、転職活動ではどんな点が見られるのか、について、多くの転職者と接しているキャリアアドバイザーに詳しく伺いました。

キャリアアドバイザー プロフィール

株式会社リクルート リクルートエージェント 中原俊郎さん

CA 中原さん

転職エージェント歴20年以上。求職者専門のキャリアアドバイザーとして、これまでに3千人以上の転職を支援する。担当領域は幅広く、エンジニアから営業職までサポート経験を有する。現在は法人営業経験者を中心に担当。「転職を検討するに至ったそれぞれの背景や想いを本音で話していただけるように」面接では質問と傾聴を大切にしている。転職市場を勝ち抜くための現実的なノウハウを、わかりやすく伝えることを得意としている。

キャリアアドバイザー プロフィール

株式会社リクルート リクルートエージェント 進藤理也子さん

CA 進藤さん

人材サービス企業、リサーチ企業を経て現職。キャリアアドバイザーとして主にIT業界全般の第二新卒からシニア層まで幅広く担当。IT業界内でのキャリアアップを希望する転職事例はもとより、IT業界にキャリアチェンジを希望する第二新卒者の転職にも数多くの実績をもつ。面接では本人の気持ちに寄り添うことと、転職の軸を明確にすることを意識し、本人にとって後悔のない転職をサポートすることをめざす。

転職できるのは何歳まで?年齢制限はある?

結論から言えば、転職に年齢制限はありません。厚生労働省では労働の機会均等のため、労働者の募集および採用の際には、原則として年齢を不問としなければならないと定めています。従って、年齢を理由に採否を決定するのは、基本的には法律違反となります。

「私自身の現場感覚で言っても、一般的に取り沙汰されているような転職の『35歳の壁』をあまり感じていないです実際に転職支援した方の中では、40代で複数内定を獲得される方もいらっしゃいました」(進藤さん)
「私も50代の方の転職支援に携わったことがありますが、ある50代男性は長年の営業経験と専門知識を活かして、地方企業に年収アップ転職を果たしました。自身の経験・スキルがピッタリはまる環境と出会えれば、年齢の壁はないと感じています」(中原さん)

ただ、6つの例外事由が設けられていて、それらに当てはまる場合は年齢制限が認められています。その中の1つ、「長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合」に該当する求人募集は、転職情報サイトなどでも散見されます(リクナビNEXTに掲載されている求人情報の場合、年齢制限を設ける場合は年齢制限理由が併記されています)。

<年齢制限の例外事由について、詳しくはこちらをご覧ください>

企業が見ているのは年齢だけではなく、年齢と経験のバランス

「求人企業が見ているのは年齢そのものよりも、年齢と経験のバランスです。年齢で転職するべきかどうかを考えるのではなく、今の会社に居続けても同じような仕事ばかりでスキルアップが見込めないとか、チャレンジの場がなくステップアップができないなどという場合は、年齢と経験のギャップが広がらないうちに転職を考えたほうがいいと思います」(進藤さん)

「そのためにも、5年後、10年後どんな自分になりたいのか、将来どんなキャリアを目指したいのかをじっくり考えることが大切です。目標は後々軌道修正すればいいので、まずは今の自分の思いをまとめてみましょう。そして、上司や先輩の働きぶりやポジションなどから、自身の目標がこの会社で叶えられそうかどうか考えること。もし、今のままでは難しそうだと感じたら、転職活動を始めるいいタイミングかもしれません」(中原さん)

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転職の際に求められるスキルとは?

思案にくれるビジネスパーソン
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転職活動において企業がチェックしているスキルは、主に「テクニカルスキル」と「ポータブルスキル」の2つです。

「テクニカルスキル」特定の領域で発揮される専門的な知識や技術

テクニカルスキルとは、職種別の専門スキルのこと。求められる具体的なスキルは業界や職種によりさまざまであり、企業によっても異なります。
一般的には、20代であれば自身の専門分野において自走する力が求められます。そして30代以降であればマネジメントスキルや、専門分野内外問わない課題発見・解決のスキルなど、周囲にいい影響を与え、組織に貢献するスキルが必要とされる場合が多いようです。

「転職活動の際には個社の求人情報を読み込み、仕事内容や求める人材像に沿って、自身のテクニカルスキルをアピールすることが大切です。企業が採否を判断する際には、自社内の同年齢社員の経験・スキルと比較するケースが多いので、志望企業と近しい業態に勤める友人に『自分と同じぐらいの年齢だとどれぐらいの経験、スキルが求められるのか』を聞いてみるといいでしょう。もちろん、転職市場の動きを理解している転職エージェントに、求められるスキルレベルを聞くのも一つの方法です」(中原さん)

「ポータブルスキル」業種・職種に関わらず持ち運び可能な汎用スキル

ポータブルスキルとは、どの会社でも評価される社会人としての基本スキルのこと。例えば、論理的思考力やプレゼンスキル、交渉力などが挙げられます。
中でも中途採用の際に重視されるのは、問題解決力とコミュニケーション力の2つ。

「問題解決力といっても、大きな問題を解決できるスキルだけでなく、日常業務における日々の課題に向き合い、試行錯誤したり工夫を凝らしたりするスキルも含まれます。受け身ではなく、物事を自分事として捉えて主体的に改善や解決に臨んだエピソードを伝えられるといいでしょう」(進藤さん)
「コミュニケーション力に関しても、しゃべりが達者であることが求められているわけではなく、仕事で関わる相手が何を求めているのか、関係各所の思惑や大事にしていることなどを正しく理解したうえでやり取りできる力が評価されます」(中原さん)

過去の経験を振り返り棚卸しをする過程で、主にこの2つのスキルについて具体的なエピソードとともに言語化しておくことが大切。応募先企業に「うちの会社でもその経験を再現し活躍してくれそうだ」と印象付けることができるでしょう。

「例えば、36歳でフラワーショップの販売職から出版社の営業職に転職した例があります。営業としての経験はありませんでしたが、長年の接客経験で培った『人当たりがよくお客様とすぐ仲良くなれる力』が高く評価されて、未経験分野への転職を実現しました」(進藤さん)

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未経験分野に転職したい場合は、年齢による制限はある?

基本的には転職に年齢制限はありませんが、未経験の業界、職種にキャリアチェンジを目指す場合は、ある程度年齢を考慮したほうがいいでしょう。

「年齢が高くなるとキャリアチェンジができなくなる、というわけではありませんが、どうしても難易度は上がります。例えば40歳の人がキャリアチェンジを目指すとなった場合、それまで20年近く別の仕事をしてきたわけで、その仕事ならではの習慣や癖がどうしても身に染みついてしまっているはず。企業側としても、新しいことを一から覚えられるだろうか…という不安や懸念は少なからずあります。また、『年齢が高い人には指導しにくい、遠慮してしまう』という社内の声が採否に影響を及ぼすケースもあります 」(進藤さん)

「未経験分野へのキャリアチェンジということは、テクニカルスキルはほぼ活かせず、ポータブルスキルだけで転職活動に臨むということになります。第二新卒層であれば、テクニカルスキル不足をポテンシャルで埋めることも可能かもしれません。しかし、年齢が高くなればなるほど『テクニカルスキルとポータブルスキルの両方を備えているベテラン層』がライバルになるため、その分転職成功のハードルもぐんと上がってしまいます」(中原さん)

それでも、どうしても未経験分野に転職したい場合は、応募先を工夫する必要があります。
知名度が低い、企業規模が小さい、創業して間もないなどの理由で応募が集まりにくい企業を狙うのは一つの方法例えば、BtoC企業に比べるとBtoB企業は知名度が低い傾向にありますが、中にはニッチ分野でトップシェアを持つなど、隠れた優良企業が多いのも特徴。そういう企業を探してみるのは有効です」(進藤さん)

未経験分野における「資格取得」はプラス材料にはなる

キャリアチェンジに際して、目指す職種に関連する資格を取得するのは、評価材料にはなります。

「ただ、資格そのものが評価されるわけではなく、その経緯が大切。『実務経験がないので、少しでも知識をつけるために勉強した』など、なぜその資格を取ろうと思ったのか、どれほど勉強したのかなど、プロセスとともに伝えれば新しい仕事に対する熱意と本気度が伝わります」(進藤さん)

年齢の壁について悩んだら…「第三者に相談する」「まずは活動してみる」

30歳、35歳など、節目となる年齢が近づいてくると誰しも焦りを覚えるもの。「このままでいいのだろうか」「転職しておくべきではないだろうか」などと一人で悶々と考え込む人も少なくないようです。ただ、一人で悩んでも解決にはつながりません。第三者に相談するなどしてモヤモヤを晴らすことが大切です。

「年齢のことでモヤモヤするということはおそらく、そもそも転職への潜在的な思いがあり、それが年齢という節目にあたって顕在化しているのでしょう。迷ったり悩んだりしているならば、友人や家族に相談したり、転職エージェントなどの専門家に聞くなどして、『年齢以外の自分の強み』を洗い出してみることをお勧めします。自分の強みがつかめれば年齢に振り回されにくくなりますし、その強みをもとに転職するか、今の会社でもっと強みを磨いたほうがいいのか、今後の方向性が見えてくると思います」(中原さん)

「悩んだら、まずは転職活動してみることをお勧めしたいですね。転職と転職活動は別物、転職活動したからといって必ずしも転職する必要はありません。活動を通して、世の中にどんな会社、どんな仕事があるのか、自分のどんな経験・スキルが評価されるのかがつかめることで、年齢に関する不安やモヤモヤが晴れるかもしれません。転職エージェントなどプロのアドバイスをもらうことで、目指すキャリアが明確になる可能性もあります」(進藤さん)

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WRITING:伊藤理子

 

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