株式会社マクアケは、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」を運営する会社。社員数や拠点数の増加に加え、コロナ禍によるリモート勤務で社内コミュニケーションが希薄となる中、社員をゲストに招いて仕事やプライベートに関するトークを配信する社内番組「幕ウラでダル絡み」をスタート。リモートワーク下で社内の共通体験(内輪ネタ)を増やし、社内コミュニケーション活性化を実現しています。
その取り組みは、リクナビNEXT主催の「第7回 GOOD ACTION アワード」(※)を受賞するきっかけともなりました。今回は、発案者の一人であり番組総合プロデューサーの北原成憲さん(R&Dプロデューサー/クリエイティブディレクター)に、興味深いエピソードや取り組みの成果などを詳しくうかがいました。
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▲株式会社マクアケ 北原成憲さん
会社が成長する中で、社内コミュニケーションの希薄化が課題に
――昨年3月より、社員のパーソナリティに踏み込み紹介する社内番組「幕ウラでダル絡み」(通称「ウラダル」)をスタートし、現在までに45回以上配信されているそうですね。このような番組を作ろうと思った背景について、教えてください。
北原 当社は2019年12月に上場しましたが、それを期に社員数が急増し、いわゆる「100人の壁」を突破。徐々に社員一人ひとりの顔が見えづらくなり、社内コミュニケーションが希薄になりつつあるのを感じていました。
そして昨春以降、コロナの影響で私たちは在宅勤務を余儀なくされ、対面でのコミュニケーション機会が激減。当社ではカルチャーによるワンチームな組織づくりと、ビジョンドリブンな空気感を大事にしていますが、リモートワーク下でそれを維持する難しさと、新卒・中途採用含む新入社員のメンバーに理解してもらう難しさを感じていました。
そんな中、社内コミュニケーション活性化を目的に始めたのが、この「ウラダル」。社内の有志メンバーが企画から演出、出演、撮影、配信すべてを手がけ、毎週木曜21時より配信しています。
――「番組を配信する」というアイディアが生まれたきっかけは何ですか?
北原 もともと当社には、社員が自由に意見やアイディアを発信し、意見交換するカルチャーがあります。「ウラダル」のアイディアも、昨年2月ごろ、業務終了後のオフィスでの立ち話がきっかけで生まれました。
私は社内を盛り上げるような活動が好きで、かつ以前からYouTubeなど動画で発信するスキルを伸ばしたいと考えていました。また、現在番組MCを担当している武田は、会議などでのファシリテーション力を磨き、セルフブランディングを強化したいとの思いを持っていました。そこに、法務担当ながら動画配信のノウハウを持つ安倍、もっと社内メンバーと交流したいと思っていた成毛が加わり、皆の思いが「番組配信」という形になった格好です。
コンテンツ内容は当初から、「新入社員や活躍している社員のパーソナリティ紹介」で固まっていました。特に、毎月のように入社してくる新入社員にスポットを当て、仕事上では見えにくいプライベートな側面を知ってもらうことで、皆に親近感を覚えてもらい仲良くなってほしいと考えました。
昨年3月に第1回の配信を行いましたが、初回から手ごたえは上々。経営企画部門に入社した新入社員に登場してもらい、彼の「アイドルオタク」な側面を紹介したところ、「(所属部門的に)堅そう」という印象とのギャップがウケて、配信翌日には彼の席の周りに人だかりができたほどでした。
なお、第1回は会議用ZOOMで行ったのですが、皆が参加すると単なる「オンライン飲み会」のような雰囲気になり、“番組感”が薄れてしまうため、2回目以降は出演者と視聴者を切り離し、「配信はZOOMで、視聴者はウェビナー経由で視聴しチャットでコメントする」方法を取っています。
番組配信で「仲間との絆」が生まれ、より強固な一枚岩に
――昨年5月1日には、24時間コンテンツを配信し続ける「24時間テレビ」を実現されたそうですね。
北原 番組を続けるからには、全社員に注目してほしいし話題になりたいと思っていました。5月1日は当社の創立記念日。コロナ禍で外出できず、帰省もできない中で、家に居ながら思い出に残るような企画を提供できれば、会社、社員、そしてわれわれの「三方よし」になると考え、「インパクトを考えたら24時間テレビだ!」と思い切って挑戦しました。
さまざまな部署の社員が集まって大喜利をしたり、男性取締役が自慢の料理の腕を披露したり、女性取締役が恋バナをするなど、新入社員だけでなく既存社員のパーソナリティにもスポットを当て、コンテンツを企画。のべ50名以上の社員に出演してもらいました。
その結果、視聴者も含め皆が当事者意識を持ってこの24時間テレビに関わってくれて、会社全体で作り上げた文化祭のような一体感を生み出すことに成功。夜中や早朝も含め、随時20~30%の視聴率を維持し続け、瞬間最高視聴率は80%超を記録しました。
ラストに、24時間のダイジェストムービーとオリジナルのエンディング曲を流したところ、社長を始め感動して号泣する社員が続出。感動的なフィナーレを飾ることができました。
――「ウラダル」がスタートしてもうすぐ1年、社内コミュニケーション希薄化という課題は解消されたと感じますか?
北原 第1回放送の翌日に、「出演者の周りに人だかりができた」ことが、その後も再現され続けています。
出演者は、プライベートを含めた新たな一面を全社員に発信することができ、翌日からキャラクターを開花させることも珍しくありません。出演者の人となりを知ることで、周りも声がかけやすくなり、「仕事でのコミュニケーションが円滑になった」「プライベートでも仲良くなった」などの声が多く寄せられています。
当社では、「生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきものが残る世界の実現」というビジョンを掲げ、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」を展開しています。
世間で前例のなかった取り組みであり、「これが正解」というものがない中で事業を進めるには、「仲間との絆」が何より重要。「ウラダル」が社員の絆を深め、ビジョンを実現するためのワンチームな組織づくりにつながっていると実感しています。
コミュニケーションの輪を社外にまで広げたい
――今回の取り組みは「GOOD ACTION アワード」の中で、今の働き方のトレンドを象徴する取り組みである「トレンド賞」に選ばれました。
北原 本当に嬉しいですね。社内で作り上げてきたものを第三者から評価され、さらなる社内の結束につながったと感じています。そして、今回の取り組みが、同じような課題を抱える企業の参考になればとも思っています。
コロナ禍でリモートワークが中心となり、社内コミュニケーションの希薄化に悩んでいる企業は多いと思います。われわれのノウハウを共有することで、一緒になってこのコロナ環境を乗り越え、日本経済を盛り上げられたらと考えています。
「挑戦する人を応援する」のがわれわれの本業でもあるので、今回の取り組みが多くの企業への応援につながれば、こんなに嬉しいことはありません。
なお、「社員が楽しみすぎて、会社的にNGなことまで発信してしまうリスクはないか?」と聞かれることがありますが、社長も役員も自由に視聴する番組なので、特にルールを決めずとも自然とガバナンスが効いています。
そもそも、事前にガチガチにルールを固めてしまっては自由な発信ができなくなり、われわれも面白くないし、視聴者にも楽しんでもらえません。
――今後、この「ウラダル」をどのように発展させていきたいと考えていますか?
北原 現在は社内限の番組ですが、今後はその定義を様々なステークホルダーにまで広げようと計画しています。つまり、われわれのサービスを利用いただいているプロジェクト実行者や、事業提携先などのパートナー企業にまで広げ、番組に出演いただきたいです。これにより、「チームマクアケ」としてのより強固な一枚岩が築けるのではないかと考えています。
もちろんカルチャーの差はあるでしょうが、興味を持ってくださった人や企業に参加いただき、少しずつ「祭りの輪」が広がれば、輪に加わりたいと思う人が徐々に増え、ムーブメントにつながるはず。リスクを恐れてできない理由を挙げるのではなく、まずはやってみてPDCAを回していきたいと考えています。
――今回の取り組みで得られた経験を踏まえ、読者である若手ビジネスパーソンにメッセージをいただけますでしょうか。
北原 やりたいことがあれば、まずはアクションすることが大事だと身をもって感じています。
一歩踏み出してみれば、何らかの反響が得られ、仲間が増えます。そして成果が上がるまで頑張ってみることで、会社からも認めてもらえるようになります。
そして、何より大切なのは、「楽しんでやる」こと。
本人が楽しまないと、周りも楽しそうに感じないからついてこられないし、そもそも楽しくないと続けることができません。
この「ウラダル」も、有志メンバーそれぞれに伸ばしたいスキルや叶えたい目標があり、番組配信を通してそれを実現できているから、続けられています。ぜひ新しいチャレンジを恐れず、楽しんでほしいですね。