英単語を語源で覚える学習法─3つの注意点とは?

最近、ブームとなっている英単語を語源で覚える英語学習法。語源は、ボキャブラリーを増やすために有効な方法であることに間違いはありません。語源を活用した書籍も多数発行されています。ただし、この学習法には向く人と向かない人がいます。今回は、英単語の学習に語源を活用する際の注意点について、英語学習のやさしい“お医者さん”、「イングリッシュ・ドクター(R)」の西澤ロイ先生にお話を伺いました。

英単語を語源で覚える学習法イメージ画像

西澤ロイ(にしざわ・ろい)イングリッシュ・ドクター

西澤ロイ著書『英語を話したいなら、まずは日本語の話し方を変えなさい!』表紙英語に対する誤った思い込みや英語嫌いを治療し、心理面のケアや、学習体質の改善指導を行なっている。英語が上達しない原因である「英語病」を治療する専門家。最新刊『英語を話したいなら、まずは日本語の話し方を変えなさい!()』、ベストセラーとなっている『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)や『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)などの著書がある。さらに、ラジオで3本のレギュラーがオンエア中。特に「木8」(木曜20時)には英語バラエティラジオ番組「スキ度UPイングリッシュ()」が好評を博している。
★「イングリッシュ・ドクター」HP(

語源学習法はボキャブラリーを増やすためには効果的

英単語は、語源を使って覚えるのが効果的だということは、実はずっと昔から、英語の使い手の間では知られていました。2018年に発売されて大ベストセラーになった『英単語の語源図鑑()』(かんき出版/清水建二、すずきひろし著)が出る以前から、語源を活用した英単語暗記に関する書籍は、たくさん出版されています。

語源学習法は、英単語を丸暗記するのではなく、パーツに分解し、そのパーツの意味から単語全体の意味を理解して覚えるため、ボキャブラリーを増やすためには有効な方法です。

しかし、英語のレベル、あるいは学習者の性格・性質によっては、語源を使った英語学習は向かないケースもあり得ます

せっかく英語学習に意欲的に取り組みたいのに、向かない学習法で回り道するのはもったいないことです。そこで、「語源から学ぶときの注意点や向かない人」について、お伝えしたいと思います。

注意点1:初級者に、語源学習は不向きである

さきほど、語源を使った学習はボキャブラリーを増やすには適切だ、と述べましたが、まずは、ここでいう「ボキャブラリー」が指しているのは、中学英語ではないことにご注意ください。

中学英語で覚える単語は、基本的に日常会話で使われるもの──。「基本単語」を覚える時には、語源は不向きです。語源がその力を一番発揮するのは、「教養語」と呼ばれる難しい単語であり、高校英語以降で習う単語や、専門的な言葉などに対してなのです。

従って、英語の初級者や、日常会話を上達させたい方には、語源はあまり必要ではありません。「基本単語」を覚える上で重要なのは、動詞が持つイメージを感覚的につかみ、理解することです。

例えば、「引く/引っ張る」ことを表す動詞として、pullとdrawがあります。これらの違いをご存知でしょうか?

pullは「力を入れて、グッと引く」ことを意味し、「引っ張る」ことを表す最も基本的な単語です。それに対してdrawは「なめらかな動きで引く」動作であり、例えば名詞のdrawerは「(タンスや机などの)引き出し」です。以下のイラストのように、動作が異なるのです。

『頑張らない英文法』(あさ出版/西澤ロイ著)より引用
(イラストは『頑張らない英文法()』(あさ出版/西澤ロイ著)より引用)

このような動詞のイメージを理解するための参考図書としては『ネイティブスピーカーの単語力1基本動詞()』や、『頑張らない英会話フレーズ()』(あさ出版/西澤ロイ著)がお勧めです。また、ビジネス英会話でも使える動詞力を身につけたいのであれば『ちゃんと伝わる英語が身につく101動詞()』(ダイヤモンド社/阿部一著)も良書です。

少し話がそれましたが、英語初心者の方には、語源よりも、まずはこうした動詞力を磨くことをお勧めします。

注意点2:語源の情報は、英単語以上に「味気ない」

例えば、ビジネスで一定のTOEICスコアが求められていて、英単語を覚えたい人。もしくは、大量の英文を読まなければいけないが、ボキャブラリー不足を感じている人。そういった方であれば、語源をうまく活用することで、ボキャブラリーを効率的に増やすことができるでしょう。

ただし、そこでもいくつかの注意点があります。

まず、英語への苦手意識が強い人は、特に注意してください。なぜなら、語源の情報は英単語以上に「味気ない」ものだからです。例えば、-duceには「導く」という意味がある──といきなり言われて、「なるほど!」と思えるでしょうか。

例:intro-(内側)+-duce(導く)=introduce(紹介する)

語源は、漢字に置き換えるならば部首──つまり、偏(へん)や旁(つくり)、冠(かんむり)などに分けるのと同じであり、例えば「しめすへん(示・ネ)」にはこういう意味がある……などと学ぶものなのです。そういった部首に詳しい人は、かなりマニアックな人や専門家ではないでしょうか。英語の語源も同じことであり、万人向けの学び方とは言い難いのです。

イングリッシュ・ドクターの意見としては、世の中に出ている語源に関する本の大部分は、かなりの英語好きや、やる気が非常にある方でないとお勧めできません。ほとんどの書籍は、芋づる式にボキャブラリーが増やせるという効率性を重視して、語源ごとにまとめてあるため、漢字に例えるならば「部首ごとに整理された辞書」みたいな作りになっているからです。

英語が苦手な人は、興味・関心事がある英単語を入り口に

英語が苦手な方や初級者の場合には、マニアックさや苦手意識といったハードルを越えるための工夫が必要となってきます。その1つが「イラスト化」であり、最近はそのような語学学習の本も増えていますが、語源(≒部首)ごとに整理されていることには変わりがありません。実際に購入してみたものの、うまく使いこなせていないという人も少なくないはずです。

別の方法としてお勧めなのが、「興味」や「好奇心」をうまく活用することです。ボキャブラリーを増やす上での効率は後回しにして、まずは興味があることや、既に知っている英単語などを入り口にします。そうすることで、英語が少しでもおもしろいと思え、苦手意識が減り、英語に関する知識を少しでも増やすことに繋がるのです。

イメージとしては、英語に関する「雑学本」が近いのですが、語源に主眼を置いた書籍を調べたのですが見つけることができませんでした。そこで、自身でそうしたコラムを英字新聞「The Japan Times Alpha」で数年前から連載しています。

バックナンバーをまとめた書籍『サッと読めて忘れない!英単語の語源と本当の意味()』がアマゾンのKindleにありますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。

英単語とイラストを組み合わせて丸暗記する

英語に苦手意識を持つ人は、別のやり方として、脳のクセを押さえた学習法でひとまず単語を覚えてしまうのも1つの手です。具体的には『イラスト記憶法で脳に刷り込む英単語1880()』(あさ出版/吉野邦昭、永井堂元著)という書籍があります。この本で紹介されているのは、語呂合わせにイラストを組み合わせることで、英語が大の苦手という人でも単語が楽に覚えられる記憶術です。

「語呂合わせ」というものは、効果的に記憶に残りやすくなるのは事実ですが、本質的には余計な(正しくない)情報ですから、使わずに覚えらえるならそれに越したことはありません。

しかし、ボキャブラリーは知らないよりも知っていたほうが圧倒的に強い上に、知っている単語が増えるほど、語源も活用しやすくなります

その意味で、“劇薬”と言えるかもしれない方法ではありますが、単語への苦手意識が特に強い人や、単語がなかなか覚えられないという人は、語源学習の前に、まずはこういった学習方法を活用してみるのも良いでしょう。

注意点3:語源から深い「納得感」は得られにくい

もう1つ、語源に関して誰も指摘しない欠点があります。それは、語源からは深い納得感は得にくいことです。

例えばemergency(緊急事態)という単語があります。語源を見ると「ex-(外)+merge(水に沈む)」であり、つまり「水中から出てくる」ことを表しているのです。ここだけをお伝えしたならば、「水中で息が苦しくなって、あわてて外に出るから緊急事態なのだ」……などとイメージをする人もいるかもしれません。

例:ex-(外)+merge(水に沈む)=emergency(緊急事態)

ただし、似た単語でemergenceというものがあり、こちらの意味は「出現」です。「水から出てくるから出現」というように、語源からつなげることはできますが、「緊急」などといった意味合いはどこにもありません。2つの単語の意味の違いは、語源からは分からないのです。

自己流の論理でこじつけ、自分を納得させる

納得を重視したい学習者の方もいるでしょうが、最終的には、自分流の論理を「こじつける」ことで、自分を納得させて暗記するしかありません。つまり、語源は「なぜ?」という疑問を解消してくれるものではないのです。

(なお、語源に限らない話ですが、自分がこじつけた論理を、まるでそれが正しいかのように語る──そういう情報が最近特に増えているように感じています。英語を学ぶ方はもちろんのこと、英語を教える人たちにもぜひご注意いただきたいと思います)

まとめ:語源学習は英語中級者以上に向いている

語源を活用する際の3つの注意点をご紹介してきました。もちろん、語源をうまく使えば、ボキャブラリーが芋づる式に、効率的に増やすことができますし、暗記量が圧倒的に減ることには間違いありません。

ただし、語源学習が向いているのは、もともとある程度のボキャブラリーを持っている英語中級者以上で、ボキャブラリーをもっと増やしたいと思っている人たちなのです

英語が苦手な方や、まだそんなにボキャブラリーが多くないという方は、あわてて語源を学ぶ必要は全くありません。まずは、英語を楽しく学ぶことをぜひ優先してください。

その中で、語源に関する情報も少しずつ、耳に入ってくることでしょう。そこで興味が出れば、もっと深掘りして調べてみればよいのです。ご自身の興味や好奇心を重視して、英語を楽しく学んでいただきたいと思います。

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